築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者向け
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収益ビルは、分散修繕の建物長寿化プランを作成しても、賃貸が継続できなければ、経営が成り立たず建物の維持ができなくなります。建物が古くなると賃料収入が右肩下がりに下がる一方で、修繕工事費用は右肩上がりに増加する。この状況を改善するには、特に賃貸効果目的の資本的支出工事を低予算低リスクかつ「高(賃料)効果」で行い、高いレバレッジをかけて賃料収入の右肩下がりを止める必要があります。とはいえ工事は先行投資だから「ゼロ効果」のリスクも十分にあります。そこで必要になるのは、建物アセットマネジメントの考え方です。これが上手くいくようになると、建物を延命しながら、賃貸も成功させ、安定したビル資産経営の継続を実現します。収益ビルは、築年を重ねても永続的にでも安定利益を産み続けるようになります。
日本のビル経営は、プロパティマネジメント(管理)です。プロパティマネジメントの目的は、収益最大化です。賃貸は不動産屋や賃貸仲介業者に相談をします。建物の事は、建物管理者(会社)専門工事業者に相談をします。ただこれだけではビルが古くなると経営が難しくなるのです。これに対して安定ビル資産経営は、建物アセットマネジメントです。地域賃貸マーケティングをベースに、低予算低リスクかつ「高効果」は、資本的支出工事で、建物を一定賃料水準で選ばれる状態で維持し、建物の資産価値(利益を産む価値)を失わないようにするのが、建物アセットマネジメントです。ビルが築古になると、この考え方が必要になります。そこで、この安定ビル資産経営の全体像を理解しましょう。
築古ビルの延命では、賃貸継続も問題です。いくら建物を延命しても、空室だらけで経営が回らなくなれば、建物は負債化します。そして日本では築古の賃貸は難しいと言われます。
1.11 何もしなければ賃料収入は減少する
古いビルだから選ばれない事はありませんが、古いビルが手入れをしなければ、見るからに古臭くなり美観や清潔感を失います。するとテナントに選ばれにくくなり、成約賃料が下がったり空室が長期化します。賃料収入減少は避けられません。
1.12 建物が古くなると工事費用が増大する
古い建物は、建物設備機能等のトラブルが増えて、修繕費やリニューアルの資本的支出工事費用が激増します。そこに加えて賃貸効果目的工事も必要になります。
1.13 従来日本のビル経営では、どう対応してよいかわからなかった
日本のビル経営は、プロパティマネジメント(管理)です。プロパティマネジメントの目的は、収益最大化です。古くなって不動産屋にリフォーム工事・リノベーション工事が必要だと言われても、高額工事をどう判断してよいかわかりません。そこで工事をしなくても、「えいや」で高額リフォーム・リノベーション等工事を行っても、見合った賃料効果がなければ、赤字負債を作ります。
1.14 そして築古ビル経営の負のサイクルに陥る
ビル経営も多少の問題で揺らぐほど「やわ」ではありませんが、賃料収入の悪化や、高額工事での赤字負債の流れを止められなければ、より悪化する負のサイクルに陥ります。そして経営が継続できなくなります。
日本のビル経営では、ビルが築古になると経営が難しくなる理由は、プロパティマネジメント(管理)では、「ビルの寿命を延長する資本的支出工事」をどう扱ってよいかわからないからです。そこで収益ビル資産は、
1.21 収益ビルの資産価値
収益ビルの資産価値は、そのビルの賃料収入が産む利益で決まります。これを収益還元法といい、現在では日本の市街地の不動産は原則収益還元法で評価されます。これはつまり、建物の築年数に関係なく、そのビルが利益を産み続ける限り、その土地と建物には資産価値があるという事です。
1.22 収益ビルの資本的支出工事
資本的支出工事は、建物資産の寿命を延ばし建物の資産価値を失わないようにする工事です。分散修繕は、建物の資産価値を守るためにこれを低予算低リスクで行います。収益ビルは、そこに「高効果」も必要です。
1.23 収益ビル資産は、資本的支出工事のレバレッジで、利益を産み続ける
それを会計的に見ると次の通りです。
収益ビル資産では、資産の部の建物は減価償却で減少をしていきます。物の建物も経年劣化が進行します。けれど賃料収入の一部で、資本的支出工事を低予算低リスクかつ高効果に行う事で、その資本的支出工事は、レバレッジがをかけて賃料収入効果を産みます。そして生まれる賃料収入から、更なる資本的支出工事予算が捻出できます。そうしてビル資産経営は継続し、建物の資産価値を守り続ける事ができるのです。
1.24 「高効果」資本的支出工事のために何が必要か?地域賃貸マーケティング
ではどうやって資本的支出工事に「高効果」のレバレッジをかければ良いのでしょうか?その答えが地域賃貸マーケティングです。貸しビルの賃貸は、自ビル物件の営業代理人として不動産屋に任せる事が出来ます。けれども築古のビル資産経営者も、自ビルの賃貸マーケットの特徴や、そこでどんなテナントが自ビルを選ぶのか、自ビルの賃料ポジションはどのくらいか等、自分でわかっていなければいけないのです。資本的支出工事をどうすれば、「高賃料効果」が出るか、その答えは、地域賃貸マーケットにあるからです。
1.25 収益ビル資産は4面性がある
これは言い換えれば、収益ビル資産は、ビル資産の3面性「物」「数字」「権利」に加えて、「営業」面が必要だという事です。この「営業」面とは、自分が宅地建物取引主任者の資格を取って賃貸営業する事ではなく、自物件を賃貸マーケットで「テナントに選ばれる」(売れる)商品とするために、テナントの視点を取り入れる事です。
1.26 築古ビル資産の資本的支出工事の意義
資本的支出工事の意義は、建物を一定賃料水準で選ばれる状態で維持し、建物の資産価値(利益を産む価値)を失わないようにする事です。収益ビルの資本的支出工事の意義は、自ビルを地域賃貸マーケットの中で、古くてもテナントに見込み賃料で選ばれるビルであり続けるようにして、賃料収入から得られる利益を守り、建物の資産価値を失わないようにする事です。
このように資本的支出工事を低予算低リスク高効果に行い、賃料収入から得られる利益を守り、建物の資産価値を失わないようにする取り組みは、建物アセットマネジメントです。
アセットマネジメントというと売買等投資を思い浮かべる人が少なくありませんが、それはキャピタル(資本)のアセットマネジメントです。建物の資産価値を維持する事も、建物アセットマネジメントの一部です。
1.31 プロパティマネジメントと建物アセットマネジメントの違い
日本の従来ビル経営は、プロパティマネジメント(管理)です。プロパティマネジメントの目的は、年間収益の最大化です。つまりPLだけを考えます。これに対して建物アセットマネジメントは、PLとBS(資産)の両方を考えます。
広義の建物アセットマネジメントでは、BSの右側、特に負債のコントロールも含まれます。ただビル資産経営として、より問題になるのが、PLとBSを繋ぐ資本的支出工事です。PLとしては、なるべく利益を増やすために、なるべく資本的支出工事の予算は抑えたいのは当然です。一方で、BSの資本的支出工事は、なるべく大きな賃料収入効果を作りたいのです。建物アセットマネジメントはこの両方を追求します。
1.32 賃貸経営+建物延命=利益
つまり建物アセットマネジメントでPLとBSの両方を見るとは、それぞれを都度バラバラに考えるのではなく、PLとBSを繋ぐ資本的支出工事及びそれが作る賃料収入効果という二本の橋に着目をして、その両側もしっかり見る事です。
これは、実務的には片方に賃貸経営があり、もう片方に建物延命(分散修繕)があります。(建物管理や修繕工事ではない事に留意をします。)この両方が噛み合う事で、収益ビル資産は、建物が長寿化しかつ経営も継続できるのです。
1.33 ビル資産経営が目指すのは安定ビル資産経営サイクル
具体的には、次の安定ビル資産経営のサイクルで、ビル資産経営は継続できます。
1.34 自立した安定ビル資産経営サイクルが回り続ける限り楽に経営は継続する
建物アセットマネジメントという言葉は難しく聞こえますが、けれども築古ビル資産経営は、自立して安定ビル資産経営サイクルが回る限り、楽に経営が継続します。コマの回転のようなものです。時々ふらつくと、コマと違い簡単に立て直しができます。
地域賃貸マーケティングをベースに、低予算低リスクかつ「高効果」は、資本的支出工事で、建物を一定賃料水準で選ばれる状態で維持し、建物の資産価値(利益を産む価値)を失わないようにする。外部からの追加資金は一切必要ありません。(だから自立といいます。)それでいて、永遠にでも賃料収入を産み続けるのです。本来、ビル資産は金の小槌です。
収益ビルであれ、ビル長寿化に分散修繕の自ビル長寿化プランは必要です。ただ収益ビルでは、これは単独で作成しても意味はなく、建物アセットマネジメントとして、自立した安定ビル資産経営サイクルが回り続けるものでなくてはいけません。この自立した安定ビル資産経営サイクルを見つけて、理解するために、まず30年安定ビル資産経営計画は必須です。
1.41 もちろん自ビル100年長寿化計画も必要
収益ビルも、分散修繕による自ビル100年長寿化計画は必要です。ただし資本的支出工事だけを考えるのではなく、ビル資産経営として考えなければ意味があります。
1.42 30年安定ビル資産経営計画で安定ビル資産経営サイクルを見つける
収益ビル資産経営では、30年安定ビル資産経営計画が必須です。目的は自ビルの「安定ビル資産経営のサイクル」を見つけて、常に賃貸や工事等の判断が、自ビルの安定ビル資産経営サイクルを回すものであるかどうか、確かめられるようにするためです。
1.42 30年安定ビル資産経営計画の作成
マイクロソフトエクセル等シートで
賃貸経営計画
(管理計画)
(資金計画)
分散修繕計画
が縦に並びます。30年分散修繕計画同様、分析用の計算式が埋め込まれている事が重要です。ビルオでご相談を頂きましたら、30年分散修繕計画のひな型をご提供します
1.43 30年安定ビル資産経営計画の作成
実際の作成の流れは次の通りです。
1.44 30年安定ビル資産経営計画の作成の考え方
30年安定ビル資産経営計画の作成の作成は、まず地域賃貸マーケティングから始まります。
地域賃貸マーケティングの結果でベストな賃料収入が維持できるように、賃貸方針を確かめます。そして賃貸方針に合わせた、分散修繕計画を検討します。
賃貸方針で見込める将来賃料収入から、毎年5%~10%を分散修繕予算に当て、予算の中で、見込む賃料水準で選ばれるビルであり続けられるように、分散修繕計画を検討します。例えば、どうしても難しい場合は、賃貸計画そのものを見直す事になります。そして最後に安定ビル資産経営のサイクルを確かめます。
1.45 自ビル100年長寿化計画の作成
30年安定ビル資産経営計画の中の分散修繕計画を元に、建物の使用維持に必要な工事について、自ビルの100年長寿化計画を作成します。収益ビルの100年長寿化計画は、通常注意書きが増える傾向があります。例えば収益ビルは、テナント入居中に工事が難しく、テナント退去のタイミングで行いたい工事があります。そうした工事は注意書きが必要といった具合です。
現在のビルの長寿化をお考えなら、ビルオにご相談を下さい。自分のかつ低予算低リスクで建物延命工事に取り組む分散修繕、100年の長寿化プラン、地域賃貸マーケティングに基づく安定ビル資産経営、また賃貸、管理、工事、所有問題等あらゆる問題解決の助言、棟数が多いビル資産管理会社経営者向けの、資産を守るアセットマネジメント指導、古い建物を生かす街作りまで、現在ビルの長寿化実現をトータルに助言、指導、支援しています。まず無料オンライン相談でお話をしましょう。ご要請に応じてご相談前に守秘義務誓約書を差し入れします。
地域賃貸マーケティングは、地域の賃貸マーケット状況を把握して、そこから自ビルの賃貸方針及び募集賃料を決め、賃貸効果目的工事の内容、資本的支出工事を低予算低リスク高効果で行い、安定したビル資産経営を継続するために欠かせないものです。無意識で出来ている人も多いと思いますが、何の情報に着目すべきか、あらためて確認します。
まずエクセル表に向かう前に地域賃貸マーケティングを行います。地域賃貸マーケットは、いわゆる取引所がありませんから、自ビルの地域賃貸マーケットは、自分で見つけるしかないのです。地域賃貸マーケットの全体像は次の通りです。
賃貸はその時勝負ですが、築古ビル資産経営では、将来の賃料収入を見込みがなければ、分散修繕の計画が立てられません。この賃料収入見込みは、いかに低予算低リスクで高効果な賃貸効果目的工事及び分散修繕で、見込む賃料でテナントに選ばれるかにかかっています。一方で賃貸効果目的工事は、想定する賃料効果が得られないと、赤字負債化リスクが高い先行投資です。
まず賃貸経営は、築古になるとなぜ難しくなるのか、その特徴と問題、対応の概要を理解しましょう。
3.11 築古賃貸経営の特徴
築古ビルは、成約賃料が下がり賃貸が難しくなります。それは古いからダメではなく、経年劣化による美観・清潔感の欠落や機能不足・設備トラブルにより、地域賃貸マーケットの中での競争力を失っていくからです。
とはいえ、築古ビル経営の賃料収入は、毎年賃貸マーケット評価額に比例して変動はしません。(そういう賃貸借契約であれば別ですが)一度テナントと賃貸借契約を締結すると、テナントが入居続ける限り、賃料収入は変わりません。(減賃交渉を受け入れた場合は別ですが)地域賃貸マーケットの相場には波がありますが、相場が上がろうが下がろうが、入居中部屋の賃料収入は変わりません。この安定性が賃貸経営の魅力です。
3.12 築古賃貸経営の問題
ところが長年入居したテナントが退去すると、その次の賃貸リーシングでは容赦なく地域賃貸マーケットのポジションで評価をされます。長年入居したテナントが、地域賃貸マーケット相場の悪い時に(そして大抵そうなるのですが)退去すると、募集賃料を劇的に下げなければいけなくなります。ここで困るのです。
3.13 賃貸方針
そこで諦めては、経営ではありません。そこでどのように賃料収入を維持していくかが、賃貸方針です。賃貸方針は、何もなければ現状維持です。そこから問題の度合いによって
30年安定ビル資産経営の計画としての30年賃貸経営計画の目的は、ベストな将来の賃料収入を見込む事です。同時にそのためには、賃貸効果目的工事及びその他の分散修繕の対象工事について、どの程度の予算で、何をどうすれば、高効果が実現するのか、多角的な検討が必要です。
3.21 30年安定ビル資産経営の計画の作成
30年安定ビル資産経営の計画を作成する際には、いつテナントが退去するか(定期借家契約でも早期退去リスクがあります。)、地域賃貸マーケット水準がどうなるか、将来の賃貸トレンドがどうなるか、正確に予測する事はできません。
それでも現実的な賃貸経営の問題を把握し、大まかに予算と対応を想定して、自物件が将来のどの程度の賃料水準を維持できるか、30年賃貸経営計画として見込みを立てる事は非常に重要です。この見込みがなければ、分散修繕を考える事もできません。
3.22 賃貸効果目的工事を行わない場合の賃料ポジション下落の割合を想定する
最初に、賃貸効果目的工事を行わない場合の賃料ポジション下落の割合を想定します。現在と将来の賃料予測については、次の3.3 賃料はどう決まるのかで詳しくみます。
3.23 テナント退去時期をどう想定するか:テナントサイクル
30年賃貸経営計画を作成時では、テナント退去時期は予測できませんから、テナントの退去時期は、テナント回転のサイクルを決める事で見込みます。
自ビルに入居したテナントが、どの程度入居続けるかは、ある程度傾向があります。だから5年10年といったテナント回転の期間を見込み、その終了時に退去を想定するのです。
3.24 いつ賃貸効果目的工事を加えるか
賃貸効果目的工事は、計画作成時には、予算制約の上限を見込みたいところです。(よほど案があれば別ですが)問題は、建物の貸部屋全室で、30年年の間に何回の予算を確保できるかです。これは分散修繕の計画で決まります。
例えば各部屋30年で1回賃貸効果目的工事ができるとすると、いつ頃予定するかは、重要です。(遅すぎたら賃料収入が実現しません。)
また同時に、トリガーを決めておきます。通常トリガーは、
貸しビルの賃料は、次の2つの要素で決まります。
賃貸効果目的工事は、その時々のトレンドがあります。だから計画時に細部まで考える必要はありませんが、分散修繕として予算を確保するにも、将来の選ばれるビル像を想像するにも、ある程度これならいけるというイメージが必要です。
賃貸効果目的工事では、
「物」現在の物件の強みに何をするか?
「数字」予算と費用対効果
「営業」テナントに選ばれる効果はあるか?
の3点セットの検討と検証が重要です。
3.41 賃貸効果目的工事の例
賃貸効果目的工事は、例えば次のような対象があります。
貸室やフロアで必要な工事は、数に注意します。
3.42 そもそもターゲットテナントにとって何が自物件の強みなのか?
なるべく低予算の賃貸効果目的工事で高効果を出すには、自物件を選ぶ可能性が高いターゲットテナントが、自物件を選ぶ理由として見ている自物件の強みを認識し、そこに更に強みを強化をする事です。
だからまず自物件の強みを、なるべく具体的に理解しましょう。
3.43 何が、より上のライバル物件との競争で負ける要因になっているのか?
強みを理解した上で、何が、より賃料が高いライバル物件との競争で負ける要因になっているかを、確かめます。ただ要因には、変えられる要因と変えられない要因があります。変えられない要因を嘆いても仕方がないので、変えられる要因を考えます。
検討の際の重要ポイントは、部屋・建物・物件情報の全体で考える事です。所有者はどうしても、自分が欠点と思うところに目が集中しがちですが、テナントは総合的に見ています。
3.44 具体的にどう改善すれば、賃料ポジションを守れるのか?
賃料ポジションを守るとは、何もしなければ賃料ポジションが下がった状態に対して、賃貸効果目的工事で見込む賃料のライバル物件との競争力を回復する事です。だから、見込む賃料のライバル物件との比較が鍵になります。
ターゲットテナントの選好性は、ターゲットテナントの価値観を反映します。中小ビルの場合、しばしば高額な豪華内装より、色や仕上り、些細な工夫やセンスといった、細部で評価される事が少なくありません。「神は細部に宿る」という通りです。古さの持つ肩に力の入らない自由な雰囲気が逆に評価される事もあります。ここは沢山の可能性があるのが普通です。しばしば賃貸管理者や不動産屋にも意見を聞きながら、時間をかけて検討をします。
3.45 予算上限の範囲内で案を絞る
賃貸効果目的工事は、次の3.45で計算する予算上限があります。予算上限よりなるべく少ない金額で、なるべく「効果見込み」が高いと感じられる案を絞ります。
どのみち最初は仮案です。分散修繕での工事予算削減次第でも、出来る内容が変わってきます。将来では、その時々でのトレンドもあります。あくまでも最初に、安定ビル資産経営が持続できる事を確かめるための、モデルケースとして、検討をします。
3.46 部屋・建物・物件情報全てのイメージを確かめる
予算上限内の候補案では、部屋・建物・物件情報全てを具体的にイメージして、ターゲットテナントが、目指す賃料のライバル物件ではなく、自物件を選ぶであろう事(負ける要素が大きく見当たらない事を)及びその「確度」を確かめます。
3.47 賃貸効果目的工事の予算上限(数字)
賃貸効果目的工事の中身は時間をかけて考えるとして、工事予算の上限は、30年安定ビル資産経営計画で決めておかなければいけません。過剰投資リスクが高いだけに、「予算上限」意識は非常に重要です。賃貸効果目的工事の予算上限は次の3つの数字の上限を検証して、うち一番低い数字を賃貸効果目的工事予算の上限とします。
①アップサイド賃料の上限
賃貸効果目的工事で工事をしなかった場合と比べてアップできる賃料は、地域賃貸マーケットの中で上限があります。築古中小ビルがどんなに頑張っても、新築Aクラスビルの賃料水準は無理です。上限は、地域賃貸マーケティングで調べておきます。
② 分散修繕工事の予算上限
分散修繕工事予算では、まず30年の総賃貸効果目的工事予算を決めます。
30年賃貸効果目的工事予算は、30年総工事予算から、先に建物使用に必用な必須工事予算を確保した後で、その残りです。
ここで非現実的な賃料アップを見込んで、多額予算を確保しても、見込み賃料収入を得られなかったら、負のサイクル一直線であることは言うまでもありません。それはさておき、総賃貸効果目的工事予算から該当工事にいくら配分できるかを、十分に検討します。ちなみに賃貸効果目的工事は、部屋毎に必要な工事は部屋の数、トイレ・給湯室はフロアの数、必要です。
③ 費用回収期間
ビル資産経営の観点からもう一つ重要なのが、費用回収期間です。
例えばテナントが10年程度で入れ替わるビルで、入替りの都度必要な工事で費用回収期間が10年を超しては、実質費用回収が出来ません。早期退去のリスクも考慮すれば、2-3年程度が理想です。ただし効果が続く場合はもちろん長く見る事もできます。
計算方法は次の通りです。
賃貸効果目的工事予算 /(月額目標賃料ー月額現在賃料)x12 = (年単位)
3.48 賃貸効果目的工事案の比較検討(費用対効果の比較)
いわゆる費用対効果は、良く使われる言葉ですが、これは単体で使っても意味がません。将来の実現度を評価できないからです。使用する時は、複数案の数字面での比較検討要因として使用します。「営業」面では実現性も評価に加わります。
A案、B案、C案・・・に対して、「実現性」と「費用対効果」を比較検討して、「実現性が高く」かつ「費用対効果も良い」案を選びます。
■ 費用対効果の計算
費用対効果の計算は次の通りです。
ところでここでは、30年安定ビル資産経営計画を作成した後に、賃貸方針を実現するための、賃貸経営の要点をざっと見てみます。
3.51 賃貸経営の全体像
最初に賃貸経営の全体像は、次の通りです。
賃貸方針 (賃料収入を計画して物件を準備する)
賃貸リーシング (賃料収入を実現する)
賃貸管理 (賃料収入を守る)
築浅の時は、賃貸方針は問題になりませんでしたが、築古ビルでは、この3つで総合して賃料収入を守ります。例えばどんなに賃貸効果目的工事を行って良い賃料でテナントが入居しても、すぐに減賃交渉を受け入れていては、賃料収入は守れないのです。
3.52 実際のテナント退去時に検討する事
賃貸経営は、テナント入居中は楽ですが、問題は、実際のテナント退去場面です。定期借家契約の円満終了ではない限り、テナントの6ヶ月前退去予告通知は、突然やってきます。するとビル資産経営として、
最後に、地域の地域賃貸マーケットが消滅しそう・・という場合について、軽く触れておきます。人口激減縮小時代には、街が衰退する・・学校や大きな会社・スーパー・工場が移転する・・将来の地域賃貸マーケット見込みが厳しい地域が大多数です。AがダメでもBが大丈夫という簡単な話はまずありません。
用途変更やオペレーションが失敗すると、余計に負債を作り、確実に負のサイクル一直線です。これらをを検討する場合、徹底した調査と検討が必要です。
3.61 貸会議室・シェアオフィス・貸倉庫等
こうした空間ビジネスを入れる事をオペレーション導入といいます。(空間を)オペレーション(する)ビジネスが成功するかどうかは、ビジネス運営者(オペレーター)の手腕で決まります。立地や物件は関係ありません。そして長く生き残るのはわずかです。
これに手を出して良いのは、自分の広告宣伝集客力と運営力の自信があるか、さもなければ能力が高いオペレーターと組む場合だけです。
3.62 用途変更
オフィスがダメだから居住用に変更する。ホテルに変更する。といったソリューションもあります。用途変更は最終手段です。相応の投資を要し、しかも一方通行です。
オフィスから住居、ホテルへといった場合、マーケットが変わるだけではなく、建物にかかる建築基準法の適用も変わります。住居やホテルはオフィスとは比べ物にならない程水使用量が増え、給排水管の問題も増加するといった具合です。
3.63 それも見当たらない場合、地域での話合い
検討しても、思わしい案が見つからない・・・場合が実際にはほとんどです。ではどうすれば良いのか?
安易に結論を急がない事です。
もし想定が外れないようであれば、問題は近隣地域全体です。地域として、地域の街おこし/街の維持を話し合いを作りましょう。資本を投下する街作りではなく、地域賃貸マーケティング手法を街全体に適用して、古い建物が生きる街の特徴を、一棟一棟ではなく街全体で作るのです。
ビルオでは、包括的な助言も行っています。
賃貸経営計画と分散修繕計画が出来たら、最後の30年安定ビル資産経営のサイクルを確認します。そして建物長寿化プランを作成すれば、後はあらゆるビル資産経営の問題に、負のサイクルに陥らないように対応ができます。建物の長寿化と安定した賃貸継続の両方が実現できます。 経営継続適切に対応ができます。気が付いたら築100年を超えているでしょう。
30年の賃貸経営計画と30年分散修繕計画は、それぞれお互いを確かめながら作成しますが、どうしてもそれぞれの都合が優先してしまいます。だから30年分散修繕計画を作成した後に、仕上げてとして安定ビル資産経営が続く事、そして安定ビル資産経営のサイクルが出来る事を確かめます。
5.2 安定ビル資産経営とは
安定ビル資産経営とは、「数字」「物」「賃貸」面が全て「安定」している状態です。
(ちなみに安定は一定とは違います。多少変動や下落等傾向があっても、長期傾向が見えているのが、安定状態です。)
安定ビル資産経営は、
・事故を起こさず 「物」
・賃貸を継続 「賃貸」
・負債を作らず 「数字:BS」
・利益を維持する 「数字:PL」
4つが満たされた状態です
安定ビル資産経営サイクルは、安定ビル資産経営のストーリーで確かめます。次の3つのストーリーに破綻が無い事が、安定ビル資産経営サイクルの要件です。
5.31「数字」のストーリー
30年安定ビル資産経営計画表は、数字「利益」のストーリーです。
賃料収入のストーリーと分散修繕がつながらなければいけません。つまり賃貸経営計画のテナントサイクル時期に合わせて、賃貸効果目的工事等が入ります。
その上で分散修繕の数字のストーリー、予算が準備できてから工事、も極力守られます。
5.32「物」のストーリー
「物」のストーリーは建物の状態です。築古ビルとして、建物設備や内装等の経年劣化があっても、全体として見込み賃料で選ばれるビルであり続けなければいけません。悪化場所のリニューアル工事等を行い、建物全体では一定水準を保つように、必要なタイミングで必要な工事が計画されているのが、「物」のストーリーです。
5.33「賃貸」のストーリー
「賃貸」のストーリーは、賃貸経営のストーリーです。
地域賃貸マーケットの中で、空室が出たら時価で/賃貸効果目的工事を行い、目指す想定賃料で次テナントが入る。このストーリーが、地域賃貸マーケットの動向や他のライバル物件との比較で、競争力ある状態に「物」の物件が準備できていなければいけません。
理想的なストーリーは、安定ビル資産経営のサイクルを作ります。
一度安定ビル資産経営のサイクルが出来ると、サイクルのモーメンタムで楽に安定ビル資産経営を維持できるようになります。AをしたらBの結果で・・と言えるほどビル資産経営は単純ではありませんが、大きな流れで安定ビル資産経営のサイクルがあります。安定ビル資産経営のサイクルがわかっていると、問題が発生した時には安定ビル資産経営のサイクルに戻るように問題対応をするだけで、安定ビル資産経営のサイクルは持続します。
5.41 沢山のストーリーを比較検討して、ストーリーを選ぶ
結局、ビル資産経営計画とは、「自ビルが賃貸を継続して利益を産み続けるストーリーです。
私達は、より少ない資本的支出工事投資で、よりベストでより確実に将来の安定賃料収入を生み続けられる安定ビル経営サイクルを作るストーリーを見つけたいのです。
多くのストーリーを検討するほど、より理想的なストーリーを選べるようになります。それは1回30年ビル資産経営計画を作成して終わりではなく、ビル資産の経営を通して、常にブラッシュアップをしていくものです。
分散修繕計画部分は、建物長寿化プランとして、拡張をします。
30年分散修繕計画の作成が出来たら、これを元に自ビルの分散修繕による建物長寿化プランを作成します。基本方針は既に決めてあるので、さほど手間もかかりません。
これも、分散修繕で説明の通りです。最終的には、シンプルな自ビル100年の長寿化計画が出来上がります。
現在のビルの長寿化をお考えなら、ビルオにご相談を下さい。自分のかつ低予算低リスクで建物延命工事に取り組む分散修繕、100年の長寿化プラン、地域賃貸マーケティングに基づく安定ビル資産経営、また賃貸、管理、工事、所有問題等あらゆる問題解決の助言、棟数が多いビル資産管理会社経営者向けの、資産を守るアセットマネジメント指導、古い建物を生かす街作りまで、現在ビルの長寿化実現をトータルに助言、指導、支援しています。まず無料オンライン相談でお話をしましょう。ご要請に応じてご相談前に守秘義務誓約書を差し入れします。
30年安定ビル資産経営計画はの実践として、賃貸リーシングの取り組み方をここでご紹介します。もちろん宅地宅建取引業者資格を取ればよいという話ではありません。
賃貸リーシングは、退去予告が出たところから始まります。普通賃貸借でもオフィス店舗は通常6ヶ月前予告です。その時点から6ヶ月間が、次のリーシングの準備期間です。
.11 退去予告が出たらまず地域賃貸マーケティング
現在テナントから退去予告が出たら、まず地域賃貸マーケティングを行います。
現在の地域の賃貸状況がどうか、知り合いの不動産屋に聞いたり、またはネットでライバル物件の募集賃料を調べて、自物件の次の募集賃料を推測します。
5.12 何か工事が必要か?
ここで検討に上がるのが、何か工事が必要か?です。
30年安定ビル資産経営計画を参考にしますが、地域賃貸マーケット相場が良いから必要ない場合もあれば、逆に相場が悪すぎて効果がないから必要なくなる場合もあります。予定をしていなかったけれど、低予算高効果が見込めるから行う場合もあります。30年安定ビル資産経営計画で将来のビル資産経営への影響をシミュレーションをして決めます。
5.13 工事を行う場合
ここで工事を行うと決めた場合は、工事可能になったら遅滞なく工事を行い、早く次の賃貸準備ができるように、段取りよく進める必要があります。速やかに相談ができるためには、前々から業者を探して選定しておきたいものです。
ここで重ねて工事の手間を省くために、原状回復工事を費用で精算する場合もあります。こうした交渉は、通常は元受不動産屋が間に入って調整をします。
5.14 現テナントの退去条件もしっかり確認する
ところで、現在テナントから退去予告が出たら、現在テナントとの賃貸借契約書も読み込み、退去時条件を確認します。たいてい
次の募集賃料の設定は、「前と同じ」ではなく、地域賃貸マーケティングで決めます。次の募集賃料の設定は地域賃貸マーケティングで決まります。
ただ地域賃貸マーケットが上向きなら強気(高め)、地域賃貸マーケットが下向きなら弱気(低め)に設定する。着地賃料に対して、わずかに高めに募集賃料を設定して、賃料交渉可幅を不動産屋に伝えておくといった、プラスαテクニックもあります。ご興味があれば、ビルオに教えて欲しいとご要請下さい。
5.21 普通借か定借か
一時、建替えの時にテナント退去が面倒だから「定借」が流行りましたが、建替えを考えない安定ビル資産経営では、普通借で十分です。通常は普通借と定借では、定借の方が賃料が下がります。
流行の波がある店舗等は、定借の方がコントロールしやすいでしょう。ただ日本の定借は解約不可条項をいれず、再契約交渉も可のため、あまり定借のメリットがありません。
5.22 募集条件戦略
募集賃料の設定以外に、賃貸リーシングを有利に進めるための募集条件の戦略もあります。
募集条件戦略:敷金、礼金更新料を減らす。フリーレントや段階賃料を導入する。通常BC工事をA工事として行う。等初期条件を抑えて借りやすくする
ただ効果があるように行わなければ効果がありません。元受け不動産屋に実力が必用です。こうした戦略は、有望テナント候補が出てきた場合の賃料交渉札としても使います。
空室が出ると、1日も早く次のテナントを決めたいのは、誰もが同じです。そこでただ不動産屋に毎日まだかまだかと催促をしても、ウザがられるだけです。必要なのは、チームとして一緒に賃貸リーシング強化に取り組む姿勢です。
5.31 賃貸リーシングの全体像
賃貸リーシングの全体像は次の通りです。
5.32 賃貸リーシングの強化
賃貸リーシングはやってみなければ分からないところもあります。元受け不動産屋とPDCAサイクルを回しながら、各ポイントそれぞれに、改善箇所を見つけて、改善をしていきます。
入居テナントが決まると、賃貸借契約書を作成します。不動産屋のひな型を使う事が多いと思います。自ビルのフォーマットがあればそれを使います。
>5.41 賃貸借契約書はトラブル防止マニュアル
賃貸借契約書作成でまず確かめるのは、賃料その他賃貸条件ですが、賃貸借契約書はトラブル防止マニュアルです。通常条文で次の事を約束します。
例えば次のような事を、賃貸借契約書で取り決めます。
また個別の特別な約束は、特約で特記します。
更に、店舗のようにテナントが内装工事をする場合は、内装だけではなく、電気、給排水、消防設備等を含めて
工事時のABC工事区分表とともに、原状回復工事でどの状態で返還されるかも、取り決めておきます。
こうした契約内容は、覚える必要はなく、必用な場面で賃貸借契約書を思い出して確かめるだけで十分です。ただ
貸主としては、条文の約束事項が全室同じ方が、当然に楽です。だから遠慮なく書き換えを要求します。ただ契約は相手もありきだから、相手の要望がある場合は、落としどころを見つける事になります。
5.42 建物使用規則も
中小ビルでも、建物使用規則を書面で作成して、同時に交付しておく事をお勧めします。
等々を記載しておきます。
5.43 減賃交渉を受けた場合のルール
入居テナントが減賃要請をしてくる場合があります。
ここで地域賃貸マーケット状況が良いと強気に、悪いと退去されないように・・と話をする事になりますが、経営状態が悪いと言う場合、それが改善されるのかどうか、改善計画を聞きましょう。
そして賃料を減額する場合は、減額期限を設けて、覚書を締結します。期限が到来しても難しいという場合は、改めて話合いをして、期限を延長します。入居テナントからの要請に応じて期限無しで恒久的に賃料減額をしていては、経営者失格です。
→ はじめに:日本もストックの時代:時代が、建物資産を守り引き継ぐ時代に反転した
→ 日本の建物長寿化を実現する:自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕
→ 建物を延命し賃貸も継続する安定ビル資産経営
→ 築古ビル資産問題解決に欠かせない2つの視点
自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕で、現在の建物はまだ100年超長寿化できます。建替えや高額リノベーションは不要です。築30年以上中小ビル資産・一棟所有中小マンション資産のご相談はまずビルオへ。長寿化プラン、安定ビル資産経営、その他問題解決の助言・指導・支援。また古い建物が持続できる街作りに対する助言も行っています。