築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者向け

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維持思考のビルの安定経営を知る

維持思考では中小ビル経営も需要を無くす事ができます。ビルは永続的に「事故を起こさず、賃貸を継続し、赤字を作らず、安定経営を維持」して永続的に収益を維持して利益を積み上げる事ができます。


コンテンツ

Ⅰ維持思考の築古中小ビル経営

1.維持思考の中小ビル経営   2. 築50年ビルは投資か維持か   3.維持思考の築古中小ビル経営の全体像

Ⅱ地域賃貸マーケティングと賃貸経営

4.地域賃貸マーケティング   4.1地域賃貸マーケットを理解する   4.2自物件の特徴を理解する   4.3自物件を選ぶターゲットテナントを知る   4.4自物件のポジショニングを知る   4.5自物件のライバル物件を知る   4.6地域賃貸マーケットの動向を読む
5.賃貸経営   5.1自物件の募集賃料を決める   5.2リニューアル等の必要性を検討する   5.3リーシング改善   5.4既存テナントとの交渉力を高める   5.5今後の賃料収入を予測する   5.6地域賃貸マーケットの変更

Ⅲ分散修繕:地域賃貸マーケティングに基づく

6.ビル経営の分散修繕で「考える」こと   6.1ビルの総工事予算を考える   6.2今後誰がビルをどう使用するかを考える   7.ビル経営として決めることを決める   6.3 今後ビルにどのような機能性能グレードが必要かを考える   7.1個別工事の費用対効果を追求する

Ⅳ資産経営:自ビルの安定経営を見つける

8.安定ビル経営とは   8.1安定ビル経営サイクルを維持する   8.2費用対効果と費用効率及び同効果に対する費用削減の追及   9.30年ビル経営計画の作成

Ⅴ業者に仕事をしてもらう

10.適切な業者を選び仕事をしてもらうために   11.リーシングを強化改善   12.管理会社に仕事をしてもらう   13.工事業者を見つけて相談をする   14.節税や相続税対策を相談する   15.ビル経営も寿命がなくなる

Ⅰ 維持思考の築古中小ビル経営


維持思考では、ビル経営にも寿命はありません。維持思考のビル経営者は、賃貸経営、分散修繕、資産経営の総合です。ビル経営者は、これらを総合的かつ長い目で「自分で考え、決めて、専門家に仕事をしてもらい、資産を守る」のです。現在ビルの安定経営を100年200年経営続けると、どれだけ利益が積み上がるか?遠慮なく考えられるようになります。

1.維持思考の中小ビル経営

維持思考の分散修繕でビルは寿命がなくなり、厳しい時代でも永遠でも維持できます。 すると収益ビルでは永遠のビル経営継続を可能にするビル経営が必要になります。

日本で今まで「ビル経営」と言われているものの実態は、「管理」です。 管理の目的は収益の最大化です。そのために賃貸やビルの問題を解決します。 ただ管理だけでは、賃料収入が減少して工事費が増えるビルを適切に長く経営続けることは困難になります。そこで永遠のビル経営継続を可能にする維持思考のビル経営が必要になる訳です。

ビルの本場欧州を始め日本以外の国の中小ビル所有者達は、ごく自然に維持思考のビル経営でビルを100年200年過ぎても経営を続けていますから、これは特別難しいものではありません。

ここで紹介をする維持思考の中小ビル経営とは、資産を守るための「思考と判断」のフレーム(やり方)です。

維持思考のビル経営は、「自分で考え、決めて、専門家に仕事をしてもらい、資産を守り」ます。あらゆる経営の目的は、経営の継続だと言われますが、

ビル経営では、収益源であるビルと土地の資産を守らなければいけません。(資産経営)
また収益源であるビルを常に賃貸ができる状態に維持しなければいけません(分散修繕)
その上で賃貸を継続して、ベストな賃料収入を維持しなければいけません。(賃貸経営)


中小ビル所有者は、こうした考えるべきことを適切に考えるためのフレーム(やり方)を持つ事で、単に長い目でビル経営を悪化させるような判断の間違いがなくなるだけではありません。 実は適切なビル経営の「思考と判断」のフレーム(やり方)を持つ事は、ビル経営で欠かせない様々な専門業者や専門家とのコミュニケーションを劇的に向上することができるのです。 自分と自ビルに合った専門業者や専門家を選び、自ビルの事情や自分のビル経営の方針を理解してもらった上で、自ビルの事情や自分のビル経営の方針に合った提案をしてもらい、無駄のない仕事をしてもらう。昔のビル経営イメージのようにただ威張り散らすのでもなく、ただ業者の提案を取り入れるのでもなく、ビル経営者が主体的かつ双方の利益に配慮した適切な関係を構築するこれからの時代の新しいビル経営が出来るようになります。

維持思考の中小ビル経営では、地域賃貸マーケティングがコアになります。そこでここでもまず地域賃貸マーケティングを確かめてから、地域賃貸マーケティングに基づく賃貸経営を見てみます。更に地域賃貸マーケティングがどのように分散修繕に関わるかを確かめます。更に資産経営として欠かせない安定ビル経営とはどのようなものかを確かめ、これら全てを総合して「考え、決める」具体的な方法として、30年ビル経営の作成をご紹介します。最後に賃貸や工事での実践の際の考え方をご紹介します。 長くなりますが、30年ビル経営計画作成講座で、講習もあります。こちらもご活用下さい。

2.築50年ビルは投資か維持か

ところで維持思考のビル経営を見ていく前に、改めて築50年中小ビルは、なぜ維持を選択すべきかを確かめておきます。

日本人が信じるビル50年寿命は、建設業者や不動産業者が建替え投資をさせる理由として創作した神話です。日本同様の地震国や木造建造物文化の国々、日本より建築技術が低い国々でさえ、ビル寿命などと誰も言いません。

ただ日本では、ビルが築50年よりずっと前から、建設業者の建替え営業、リノベーション営業、大規模修繕改修営業に晒されます。再開発話が持ち上がる地域もあります。逆にもう投資はできないから、朽ちるまで使おう、と諦めるビル経営者も少なくありません。勿体ない話です。

ただ勿体ない云々ではなく、検討すべきは、どの判断がもっとも将来後悔しないか、です。それぞれ比較をします。

1建替え等の投資
建替えの魅力は、建替え後に賃料が新築プレミアム水準となり、一方で当分ビル工事支出が無くなる事です。築古ビルの賃貸不安と工事費用の悩みが消えて、収益は向上します。 とはいえ本当にメリットがあるのは、「現在より大きなビルに建替えて貸床面積が大きく増える場合だけ」です。建築基準法の延べ床面積制限が変わらない限り、そうお得にはなりません。一方で次のマイナス要素があります。
  • 現在のテナント退去から、建替え期間、建替え後のリーシングまでの期間(しばしば数年)、賃料収入が無くなる。
  • 建替え中に景気が悪くなると、建替え後テナントが決まるまでに時間がかかる事がある。(時に数年単位で)また建替え後の賃料が、期待していた水準より低くなる可能性もある。
  • 賃貸不安が近隣賃貸需要の減少である場合、建替えは一時的に悪化を留める効果しかない。新築時はともかく、いずれ賃料は建替え前水準と同等に下がる。


つまり建替え判断は、長期のキャッシュフローを自分で検証しなければ、損得が分からないのです。これはリノベーションや大規模修繕改修といった、建設業者が提案する高額工事の全てに当てはまります。

2維持
ここでの維持とは、維持思考の安定ビル経営でビルを維持する事です。 ビルの維持は、単なるビルの延命ではありません。ビルの維持とは、ビルを経済的寿命にも物理的寿命にもしないように、ビルの維持に必要な長期の総工事予算と総工事予算の配分をビル経営者が考えるものです。つまり、建設業者が言う大規模改修やリノベーション工事費用を頭から信じ込む事は、維持を考えるとは言わないのです。

維持のメリットは、収益安定が続く事です。例え新築の半分以下でも、建替えで準備と建替え中の賃料収入ゼロ期間も、安定した収益が続きます。建替え後に景気が悪化していても、既存ビルは、例え一部テナントが退去をしても全室空になるのはよほどの事ですから、収益は続きます。新築ビルのように借入金返済負担が重くなければ、低収益でも維持できます。 例え見劣りがする額でも、安定収益から得られる利益を100年200年積み上げれば、その利益は膨大です。日本人はそう聞くと、夢物語のように感じる人も少なくありませんが、実際維持の利益が膨大だから、英国王室や英欧の貴族はあれだけ富裕なのです。

だから必ず維持思考の30年ビル経営計画を作成して、自ビルがまだ持つ潜在利益を確かめるべきです。

3再開発
再開発話が出ると、「自分達は選ばれた者」であるかのように、自慢するビル経営者が少なくありませんが、いい加減に目を覚ましましょう。人口増大時代ならともかく、人口急減少時代に相変わらず再開発が続いて、本当に大丈夫なのかと誰もが心配に思っています。 再開発とは、街の歴史を潰し消し去る行為です。そして例え再開発で大型ビルを建てても、数十年すればまた維持が問題になります。最初は集客出来ても、次々再開発があればすぐに人の流れは変わります。運営会社が破綻したり再開発ビルが寂れてしまったりすれば、もはや個人努力では何もできません。自分達の目の前の利益のためだけに、街の過去と将来を潰す。再開発信仰はもう卒業しましょう。

3.維持思考の築古中小ビル経営の全体像

維持思考の築古中小ビル経営は、賃貸経営、分散修繕、資産経営の総合です。 維持思考のビル経営は、「自分で考え、決めて、専門家に仕事をしてもらい、利益を維持」 します。これは実際には「(専門家の意見を元に」自分で(経営を継続して利益を維持できるように)考え、決めて、専門家に仕事をしてもらい、利益を維持して経営を継続できる結果を作る」という大きな輪です。だから全体像の理解は必須です。




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Ⅱ地域賃貸マーケティングと賃貸経営


維持思考のビル経営では、地域賃貸マーケティングが必須です。ビルを数百年でも維持する事を考えれば、地域様子や賃貸事情、要求される設備機能要件が変わるのは当然だから、賃貸経営には欠かせないものです。更にターゲットテナントやライバル物件を理解することで、自ビルのベスト賃料を見つけることができるようになります。


4.地域賃貸マーケティング

時代と共に地域の様子や、ビルに要求される機能設備要件は違ってきますから、これを確かめるのが、地域賃貸マーケティングです。

数百年前の欧州のビルには、上階への上下水配管も電気もありませんでしたが現在ではあるのが常識です。地域の人口が増えて活気が増加する時代もあれば、逆に人口が減少して産業も冴えない時代もあります。こうした変化を読む地域賃貸マーケティングは、だから必須です。

賃貸は苦労していないとおっしゃる方でも、地域賃貸マーケティングは必須です。
地域賃貸マーケティングがわかる事で、
  • 賃貸経営が継続できる、だけではなく、
  • 分散修繕で総工事費用を削減し、かつ必要工事の費用対効果を向上できる
のです。つまり賃料収入維持と工事費用削減の両方に必須なのです。

地域賃貸マーケティングは、次の6つを見つけます。一つ一つ見ていきます。


4.1地域賃貸マーケットを理解する

一棟のビルにとっての賃貸マーケットの地域とは、自ビルを選んでくれる可能性があるターゲットテナントが他に物件を探す範囲の事です。不動産業者が考える渋谷エリア、東京エリアといった広域の把握とは少し違います。

例えば渋谷を例にとっても、渋谷駅周辺の商業地域だけを差す場合もあれば、渋谷駅から徒歩10分以内程度の地域を差す場合もあるでしょう。地区名としての「渋谷」を差す場合もあれば、広域に恵比寿や原宿や広尾を含む場合もあります。逆に道玄坂や宮益坂といった特定地域を差す場合もあります。ビルの特徴とターゲットテナント理解が深まるほど、地域賃貸マーケットの精度も高まります。  


4.2自物件の特徴を理解する

自物件の特徴とは、賃貸マーケットにおいて自物件が評価される要素です。自物件の特徴には、固有の特徴(変えられない特徴)と変えられる特徴があります。

特徴は個性です。特徴に良い悪いはありません。また築年数は特徴ではありません。一般にはマイナスとされる要素をあえて選ぶテナントもいるものです。

自物件の特徴がわかると、特徴を生かして強化することで、少ない投資で安定経営が維持できるようになります。


4.3自物件を選ぶターゲットテナントを知る

自物件の特徴を選んでくれるテナントタイプが、ターゲットテナントです。経営とは顧客の発見と言われる通りです。ターゲットテナントの理解は賃貸経営の肝です。

ターゲットテナントは、例えば次のように考えます。
  • 貸室の床面積は、部屋を使用する従業員数や収益規模と関係します。
  • また立地条件やビルグレードも、事業のタイプと関係します。
  • 来客型ビジネスは、駅に近い繁華街や主要通り沿いを好みます。
  • 逆に裏通りの静かな環境を好む会社も少なくありません。
  • 女性が主の会社に好まれやすいビルと、男性が主の会社に選ばれるビルとは、雰囲気が違います。
といった具合です。

一棟のビルにターゲットテナントは1タイプではなく多数あります。1タイプのターゲットテナントで需要が手堅ければ1タイプの追及で構いませんし、需要に不安があれば複数のターゲットテナントを追求して需要を確保します。


4.4自物件のポジショニングを知る

自物件のポジショニングとは、地域賃貸マーケットの中で自物件の適正賃料です。 地域賃貸マーケットの中の賃料ポジションは、次で紹介をするライバル物件との比較での賃料の上下で決まります。

この次でご紹介をするライバル物件がわかると、自物件のポジショニングを見つける事は難しくはありません。ただしオフィスは賃貸を公開しない物件もあります。また定価がない賃貸の募集賃料は、例えば賃貸マーケットを無視して従前と同じ募集賃料を設定するビルもあれば、早く決めたくて募集賃料を下げるビルもあります。そうした個別事情に振り回されないためには、ある程度の数のライバル物件との比較が必要です。

自物件のポジショニングがわかるようになると、空室が出たら「前と同じ賃料」ではなく「テナントに選ばれる募集賃料」を賃貸経営として戦略的に決めることができるようになります。


4.5自物件のライバル物件を知る

 
ここまで紹介をしてきた、全ての理解を助けるのが、自物件のライバル物件理解です。ライバル物件とは、自物件の地域賃貸マーケットで、自物件を選ぶ可能性が高いターゲットテナントが物件探しの時に他に比較検討をする可能性があるビルの事です。通常は、貸床面積をはじめ物件特徴が似通っている物件です。

ライバル物件がわかるようになると、地域賃貸マーケットは、「マーケット」という抽象的な単語ではなく、ライバル物件の集まりとして具体的に見えるようになります。例えば賃料を上げる、下げると言う場合、それは現在同賃料のライバル物件と比較してうちのビルが「勝っているか」「負けているか」の関係で決まる事がわかります。


4.6地域賃貸マーケットの動向を読む

さて、ビル経営者としては、加えて今後の地域賃貸マーケットの動向を読む訓練も重要です。

一番知りたいのは、今後も現在の賃貸が手堅く継続できるのか、何等か対策を考える必要もあるのか、です。また地域賃貸マーケットが低迷した時には、どのくらいの期間で回復の見込みがあるかの予測も重要です。もちろん将来の地域賃貸マーケットの動向なんぞ、分からないのが当然で、もし正確に読めたら不動産投資の天才ですが、日ごろから意識をしていると、だんだん視野が開けて合理的なロジックを組み立てられるようになります。

賃貸マーケットは、次の影響を受けます。
  • 社会経済環境による影響(例えばリーマンショック後や、特定産業の衰退)
  • 地域の再開発や企業・学校等の参入/移転による需要動向の変化等
  • ターゲットテナントの動向
  • そして影響には短期のものと長期のものがあります。
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5. 賃貸経営

維持思考ビル経営の賃貸経営は、昭和時代のように近所の不動産屋にお任せでも、平成時代の会社員不動産投資の賃貸経営のように、高い管理費を支払って管理会社お任せで管理会社に言われるままに賃料を決めて管理会社に言われるままにリフォーム工事を行うといった、管理会社のカモになる事でもありません。

維持思考ビル経営の賃貸経営では、ビル経営者は地域賃貸マーケティングを基に、次の3つを自分で考えて、ビル経営判断をします。賃料収入が経営根幹のビル経営では、これらの判断が収入に直結するのだから、当然です。


5.1募集賃料を決める

ビル経営と言うからには、空室が出た際に賃料収入の基盤である自物件の募集賃料は自分で決められなければ、話にならない訳です。

地域の賃料相場は、景気や地域の動向やでも大きく上下をしますが、地域賃貸マーケティングで自物件の賃料ポジションを理解し、ライバル物件を把握していれば、空室が出たタイミングでライバル物件の募集賃料や最近の成約賃料を調べれば、自物件の募集賃料の目途をつけることは難しくありません。

もちろん定価がない物件の募集賃料では、ライバル物件の募集賃料も相場とは限らないため、最終的な決定は、不動産業者(もしくはリーシング業者・賃貸管理会社)と十分に相談をします。またここでリニューアルや改装工事を検討する場合については、次で検討をします。

ちなみにビル経営者も戦略的に、
  • 早く決めるために募集賃料をわずかに下げる
  • 需要が高いので、募集賃料を強気に設定する
  • 需要が鈍いが募集賃料は下げずに、初期条件(敷金・礼金・フリーレント)を下げて決めてもらいやすくする。


といった、自物件の賃料収入を守りつつ賃貸リーシングをコントロールするテクニックが、上級になると沢山あります。使えるようになる事を目指しましょう。

5.2リニューアル等を検討する

築古物件であれば、テナント退去の際にリフォーム工事やリノベーション工事を考えたり、提案を受けたりすることは普通です。

ただ問題は、特にリフォーム工事業者や付加設備業者は、この工事をすれば賃料アップ・満室経営といったバラ色の費用対効果案を持ってきがちですが、それを真に受けてはビル経営失格だと言う事です。現実には、費用を投下すればその分賃料が上がる・早くテナントが決まるといった、単純な関係ではないのです。

リニューアル等を検討する場合、次の2つを徹底的に検証します。
■数字検証:費用対効果の効率が良いか
■内容検証:本当にターゲットテナントに選ばれる内容か


■数字検証:費用対効果の効率が良いか
ビル経営者は、地域賃貸マーケティングでライバル物件を研究して、
A=現状での募集賃料 (及び空室予測期間)
B=工事後の募集賃料 (及び空室予測期間(工事期間を含む))
を評価し、(工事費用―(Aの空室予測期間―Bの空室予測期間)*Bの募集賃料) /(B-A) 
で計算できる工事費用の回収期間が、妥当と思える期間内かどうかを検証します。

同時に、自物件のターゲットテナントがどのような仕上がりを好むかについて、十分に考えます。不動産屋に意見を聞いたり、他のライバル物件を見学したりする事で、良いヒントを得られるでしょう。

リフォーム・リノベーションの費用は上限無しですが、ビルが稼げる賃料は、地域賃貸マーケットの中での上限があります。その中でも賃料を〇円を上げるのは簡単だけれど、更に△円を上げるたけには、かなりの投資をしなければいけない、といった傾向もあります。 だから賃料収入効果の観点で、どの程度の費用投下なら出来るか、十分に検証をして決める事が重要です。

■内容検証:本当にターゲットテナントに選ばれる内容か
賃貸効果目的のリニューアル工事は、費用をかければ選ばれるのではなく、費用をかけようがかけまいがテナントの好みに合えば選ばれる事を常に肝に銘じて、本当にターゲットテナントに選ばれる内容かどうか、どこを改善すればよりターゲットテナントに刺さるか、しつこく検討します。これもビル経営の永遠の課題です。

5.3リーシング改善

自ビルの地域賃貸マーケティングができるようになると、もはや賃貸は知り合いの不動産屋にお任せではなく、ビル経営者自らよりビルに合ったリーシング業者を選んだり、リーシング改善をしたりできるようになります。

地域賃貸マーケティングを理解すると、空室リーシングとは、次の全体像だということがわかります。

リーシングが滞る場合、その原因は
  • マーケットが悪い(地域賃貸マーケットに動きが無い)
  • 営業が弱い(元受け不動産屋が適切に営業出来ていない)
  • 物件に問題がある(募集賃料が高い、建物や貸室に問題がある
のいずれかしかありません。

地域賃貸マーケティングが出来てれば、1と3は、自分で気が付くことができます。賃貸経営として対応を考えます。一方で1と3で大きく問題が見当たらない場合、疑うべきは、元受け不動産屋の「営業が弱い」可能性です。また1と3に該当していて、それを理由に元受け不動産屋が手を抜いている場合もあります。実際築古ビルでは、営業が適切にされていないため空室が長期化している物件は、驚くほど少なくないのが事実です。

通常は原因を推測しては対応するPDCAサイクルを早く回し、問題を特定していきます。

5.3今後の賃料収入を予測する

現在募集賃料を決めるだけでなく、今後の賃料収入を予測することも重要です。

今後の賃料収入見込みは、
  • 今後の地域賃貸マーケットの動向見込み
  •  今後のポジション予定とそのために必要な工事
を丁寧に分析検討して、合理的に導き出すものです。

リニューアル・リノベーション工事等費用投資をすれば、その時の成約賃料は、多少は上がるでしょう。 けれども投資金額とそれで得られる増加分賃料の利益に対して費用効果があるかは、自分で計算をして確かめなければいけません。  なるべく費用対効果が高い今後の賃料収入見込みを見つけたいものです。


物件のリニューアル工事や改善は、それ自体が費用投資ですが、その費用対効果の判断も今後の賃料収入見込みに基づきます。ここでビル経営者が自分で考えずに、工事業者が言う費用対効果をそのまま信用したものの実現できなければ、経営悪化で終わりと言う事になるのです。

5.4既存テナントとの交渉力を高める

既存の入居テナントから減賃交渉を受けた場合にも、地域賃貸マーケティングが出来ていると、適切な対応ができるようになります。

既存賃料≦現在の地域賃貸マーケット賃料 → 強気の対応
既存賃料>現在の地域賃貸マーケット賃料 → テナントの経営事情と減賃金額を話し合う


後者の場合でも、減賃後の賃料は、地域賃貸マーケティングによる現在募集賃料がボトムラインです。減賃に応じる場合には、期間を定めます。そうすることで、テナントの経営が回復をすれば賃料を戻すことができます。ただテナントに経営回復の見込みが薄い場合、テナントの経営状態に合った物件へお引っ越しいただくのも、ある意味テナント配慮ですから、遠慮なく言いましょう。

5.5今後の賃料収入を予測する

維持思考のビル経営者にとっては、今後の賃料収入予測が、次の2つを決めるだけに、今後の賃料収入予測は重要です。ここで考えるのは短期的な募集賃料上下のトレンドではなく、例えば30年といった長期的な賃料の基調です。
  • 現在の賃貸を継続できるか、何か変更が必要か?
  • 30年総分散修繕予算をいくら確保できるか?


とはいえ、社会経済の動向が不透明な昨今、年々今後の賃料収入予測が難しくなってきています。弱気になりすぎない程度に「保守的」予測を心がけるしかありません。

5.6地域賃貸マーケットの変更

賃貸経営として、賃貸方針の変更、例えばオフィス使用を住居使用に変更する、ホテルに変更する、貸会議室をオペレーターと共同経営する、シェアオフィスやコワーキングスペース・シェアハウスを自ら運営する、といった変更は、最後の最後の選択です。 こうした変更を提案する投資営業は盛んですが、こうした変更は費用がかかる上に新しい賃貸マーケットと付き合う難しさというリスクがあります。貸会議室をオペレーターと共同経営する、シェアオフィスやコワーキングスペース・シェアハウスといった空間オペレーションもしばらく流行がありましたが、長く集客と運営を続ける事は難しいのです。

ただ時に、地域の賃貸マーケットの需要が壊滅的に無くなる場合があるのも事実です。例えば地域経済の柱だった学校・大企業・工場が移転しその後の目途がないといったケースです。こうした場合、まず現状でターゲットテナントの変更を模索します。どうしても厳しい場合は、なるべく将来性がある賃貸マーケットを模索するしかありません。地域に人がいる限り、不動産の需要は何等かあります。

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Ⅲ分散修繕:地域賃貸マーケティングに基づく


維持思考ビル経営の分散修繕計画は、地域賃貸マーケティングに基づきます。長期総工事予算は今後の賃料収入見込みで決まります。自ビルのターゲットテナントを理解することで、効果の低い工事を削減して費用対効果の高い工事を追求することができます。つまり総工事予算を劇的に削減できるのです。

6.ビル経営の分散修繕で「考える」こと

維持思考では、ビル経営でもビルの維持等に必要な工事はもちろん分散修繕です。ただビル経営で「考える」すべては、地域賃貸マーケティングがベースです。
維持思考の分散修繕はこちら
中小ビル分散修繕の全体図

中小ビル経営の地域賃貸マーケティングに基づく分散修繕の全体図

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6.1ビルの総工事予算を考える

収益ビルの分散修繕の長期総工事予算は、地域賃貸マーケティングで考えた今後の賃料収入見込みがベースです。今後の賃料収入見込みから、管理経費、固定資産税、借入金返済、必要取り分等を差し引いた残りから、毎年安定して確保できる工事予算の和が長期総工事予算です。経営は波があるため、工事準備金がある場合は予備費として取っておくことをお勧めします。


6.2 今後誰がビルをどう使用するかを考える

収益ビルでの今後のビル使用者は、ターゲットテナントです。どう使用するかは、今後の賃貸方針次第です。現状通りであれば、現所通りのオフィス・店舗使用等でしょう。

問題は、ターゲットテナントをどれだけ具体的に深く理解できるかなのです。ターゲットテナント像がぼんやりしていると、多くに選ばれるよう工事が増えます。ターゲットテナントが具体的になると、ターゲットテナントの選好性に合わせて、思い切ったカスタマイズができるようになります。ターゲットテナントを具体的に考えられると、分散修繕の費用を削減し、かつ費用対効果を高めるダブル効果を作るのです。築古ビルには、既存テナントというヒントがいますから、すぐにターゲットテナントを考える事が難しければ、過去と現在のテナントがどう使用しているかを考えるところから、始められます。


6.3今後どんなビルであって欲しいかを考える

今後ビル経営として、ターゲットテナントに対して自ビルの何をどうアピールできるかを考えます。

現状のまま古いけれど賃料の安いビルを通すのも一つの選択肢です。低コストでビルの印象を変える手法も沢山あります。現在だから省エネや自然エネルギー導入を売りにしてみる、もしくは災害対策や災害時用に非常用電源設備があることを売りにすることも選択肢です。ターゲットテナントの選好性に応えて、尖った特徴をつけて、他のライバル物件とは差別化することも選択肢です。

頭の中で想像するのは無料ですから、現状や予算に縛られずに色々考えて見られることをお勧めします。ビル経営者であれば、普段から街でイケている雰囲気のビルを見つけたら、なぜ「イケて」見えるのか観察しておくことをお勧めします。

7.ビル経営の分散修繕で「決める」こと

分散修繕では、工事について考えるべき事を考えた後に、ビル所有者は総工事予算の配分らを決めます。こちら  ここでは収益ビルならではの留意点のみを述べます。こちらもそれぞれを単独に決めるのではなくて、全体を同時に考えながら予算配分をします。
分散修繕で「決めること」はこちら


1.30年分散修繕工事予算を決める
先にビルの総工事予算を考えた通り、将来の賃料予測から毎年確保できる予算の30年合計です。

実際には、準備可能額を上限いっぱいに使いたいのではなく、必要な工事はするが必要ではない工事は行わず、なるべく工事予算を削減したいと考えるのが、普通です。そのためには最初の工事予算は仮と考えて、検討を通して具体的に削減できる費用を見つけては削減をして、30年分散修繕工事予算を削減します。永遠のビル経営課題です。

2.何の工事が必要かを決める
3.機能性能グレードの程度を決める
この2つは、「何の工事をどうするか」に対する予算配分です。収益ビルの必要工事対象は、ビルの使用維持に欠かせない基本工事のみならず、賃貸目的の内装や付加価値工事が加わります。重大です。基本工事と賃貸目的工事とは分けて考え置くことをお勧めします。賃貸目的工事の中身は、時と共に変化するからです。

4.いつ頃必要かを決める
工事がいつ頃必要か(=工事サイクル)は、収益ビルでは地域賃貸マーケットの中でビルのグレードをどの程度維持したいか、にも直結します。賃料が高めであれば、相応にトラブルがないことが求められます。古くて安いビルであれば、多少のトラブルは容認してもらえるのでしょう。

5.相談をする業者のサービス水準を決める
収益ビルの場合、依頼者向けサービス内容に加えて、工事業者にどこまでテナント対応やテナント配慮を要求するかが、大変問題になります。細かいテナント対応を希望するのであれば、相応のサービス水準の業者に依頼しなければいけません。


7.1個別工事の費用対効果を追求する

維持思考のビル経営では、ビルの工事は全て、ビルの今後の賃料収入を作るために行うものと考えます。

維持思考のビル経営では、各工事に際して追求すべきは、単なる費用削減ではなく、費用対効果です。つまり将来への効果の観点から、費用対効果の高い工事内容を必要工事とし、費用対効果が低い部分は削減するのです。

単に工事見積金額を削減するための、相見積や「負けて」お願いで費用を削減する事は、業者と健全な関係が築けず、工事内容が適切かどうかの検討もできず、維持思考のビル経営の長期的な視点で見ると、損をします。

同じ問題対応で同じ予算の工事でも、工事の中でどこに費用をかけるかで、効果が違います。かける費用が大きい程大きな結果がでるのではなく、かけた費用に関わらず、ビルの使用維持とターゲットテナントの選好性に刺さる工事をすれば、効果が出るのです。

工事に際しての費用対効果の追及とは、地域賃貸マーケティングでターゲットテナント像とライバル物件を分析して、どのように工事をすればターゲットテナントが他のライバル物件ではなく自物件をより選ぶか、を数字計算の後ろで深く追求して考える事です。これもビル経営の永遠のテーマです。

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Ⅳ資産経営:自ビルの安定経営を見つける


資産維持の観点からビル経営維持に欠かせないのが、「事故を起こさない、賃貸を継続する、赤字を作らない、安定を維持する」安定ビル経営の維持です。変動はリスクなのです。これは安定ビル経営サイクルで維持できます。これらを「自分で考え、決めて、専門家に仕事をしてもらい、資産を守る」ツールとして、30年ビル経営計画を作成は必須です。

8.安定ビル経営とは

資産経営の基本は、収益源であるビルと土地の資産を守ることです。 もちろん資産経営全体では、投資による資産拡大や資産の組み換え、ポートフォリオ戦略といったものもありますが、本来そうした投資戦略はまず、現在の資産を守る力をつけてから行うものです。日本では維持思考がないために、ビルは古くなると価値がなくなるから、資産維持のために投資を続けなければいけないと考える人をしばしば見かけますが、そうした建設業者の洗脳からはいい加減に目覚めなければ、難しい時代に言われるままに投資を続ければ、いずれ資産を失います。

収益源であるビルと土地の資産を守るM資産経営の基本は、安定ビル経営です。 安定ビル経営とは、ビルが「事故を起こさず、賃貸を継続し、赤字を作らず、安定を維持している」経営の状態です。

資産経営では、変動はリスクです。金融であればボラティリティと呼ばれて、警戒されます。リノベーションのような高額な工事投資を行い、巨額の赤字を作る変動は、何か計算が狂うと、経営が破綻します。そんな心臓に悪いリスクは、維持思考では「避けるべき」なのです。維持の基本は安定維持です。

だから先に考えてきた賃貸経営と、地域賃貸マーケティングにもとづく分散修繕の計画を、総合してビル経営計画としてまとめるにあたり、分散修繕での予算とリスクの分散に加えて、資産経営として安定ビル経営の継続を考えた調整が必要になります。


8.1 安定ビル経営サイクルを維持する

この安定ビル経営は、安定ビル経営サイクルを作ることで維持できます。

管理中心の考え方では、築古ビルは賃料収入が減少して工事支出が増えるのだから、経営維持は難しく見えます。これに対して維持思考のビル経営は、時間軸が加わるサイクルで安定ビル経営の維持を実現するのです。

分散修繕で将来の賃料収入のために現在の工事を行い、その将来の賃料収入が次の工事予算を作ります。そして将来の賃料収入のために次の工事を行い・・・というサイクルです。一つ一つの工事が直接賃貸に影響する訳ではもちろんありませんが、常に将来のビルを作るこの積み重ねで、ビルが「事故を起こさず、賃貸を継続し、赤字を作らず、安定を維持する」安定ビル経営を永遠でも維持します。サイクルの大きさ(収支規模)は関係ありません。小さくても安定していれば、維持できます。


8.2 費用対効果と費用効率及び同効果に対する費用削減の追及

ビル経営というからには、なるべく少ない支出で最大の賃料収入を得たいのは当然です。
管理の考え方とは違い、維持思考のビル経営では、求める効果は、目先の賃料収入ではなく、長い目で維持できる安定ビル経営サイクルの大きさです。そして具体的には2つのステップがあります。

1費用対効果と費用効率の追及
  地域賃貸マーケット内での成約賃料水準には上限があります。リフォーム等費用をかければその分成約賃料が上がる訳ではなく、例えば自ビルの適正賃料ポジションより低い状態のビルに手入れをして適正賃料ポジションに戻す場合は効果が出やすいですが、適正珍用ポジションより上の賃料水準を狙うとなると、わずかの上昇のために相応の投資が必要となります。だからまず追求したいのは、費用対効果の費用効率が高い賃料水準と総工事予算の組み合わせです。

2同効果に対する費用削減の追及
結果同じ賃料収入効果を得る場合でも、効率が悪ければ工事費用は無限大です。一方地域賃貸マーケティングを徹底してターゲットテナントに「刺さる」工事を厳選し、更に出来る事は自分で行い業者に支払う中間費を削減できれば、相当少ない予算でも同じ結果を得る事ができます。まあ最大の費用削減は全て自分で工事をすることですが、それはそれで自身の時間を費やし、経験不足による工事の間違いや失敗のトラブルのリスクがあります。(海外では、電気工事を自分で行い感電する事故の話がしばしばあります。)人それぞれに事情もあります。だから自分なりの水準を見つけられれば、十分です。


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9.30年ビル経営計画の作成

賃貸経営と分散修繕の経営等をとりまとめ、安定ビル経営のサイクルを検討する具体的な方法が、30年ビル経営計画の作成です。

30年ビル経営計画の作成は、何もToDoを決めようというのではありません。ここまで見てきた「考えるべき事を考える」「決めるべき事を決める」ためには、ビル経営の全体と将来の結果を視覚的に俯瞰して検証ができるツールが必要なのです。

築古ビルを経営していると、空室が出た時に次のリーシングをどうしようか、時に漏水事故がある、雨漏りもある、キュービクルもそろそろ古くなり、更新を言われる、セキュリティーも強化したい、この古臭いエントランスでは、次のテナントが決まらないのではないか、もう少しお金が残らないものか、その他多様な問題が次から次へと発生しますから、全ての問題と課題を整理し優先順位をつけて取り組むためには、全てを俯瞰して考えることができるツールが必要なのです。

30年ビル経営計画は、
  • 30年賃貸経営計画
  • 30年管理計画
  • 30年工事資金計画
  • 30年分散修繕計画

が一体化したものです。借入金返済等がある場合には、これも含まれます。現在ではこれはパソコンの表計算ソフトを使用して簡単に作成できます。ビルオでご相談を頂きますと、マイクロソフトエクセルによる計算式入りの30年ビル経営計画ひな型をご提供しています。
こうしたツールが無かった昔は、ビル経営判断力を身につけるまでに、長い経験が必要でした。長いビル経営の伝統がない日本では、業者の言うままに結局ビルを経済的寿命にしていました。ツールを使うことで、長い経験の時間と失敗リスクを回避できるようになったのですから。使わなければ損というものではないでしょうか。

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Ⅴ 業者に仕事をしてもらう


30年ビル経営計画は、ビル経営者が所有ビルを自分でどう経営して資産を守るのか」の考えをまとめたものです。ただこれを実現するには、更に専門業者・専門家に自ビル経営の考えを理解して、方針にあった提案・仕事をしてもらわなければいけません。BtoBとして主体的に適切な業者を選び、適切に相談をするための主なコツをご紹介します。

10. 適切な業者を選び仕事をしてもらうために

ビル経営では、ビル経営者と業者や専門家との関係は、BtoBで対等です。BtoCのように騙されたから消費者保護を、は言えません。とはいえビル経営のために、宅地建物取引主任者の資格を取ったり、ビル管理や設備系の資格を取ったりする人もいますが、そこまで必要はありません。専門知識でビル経営ができれば、不動産屋や管理会社は全員素晴らしいビル経営が出来るはずですが、そうではない訳です。

ビル経営に必要なのは、業者と同じ知識を持って業者の話にケチをつける事ではなく、業者の話を聞いて、自ビル経営の観点で「考え判断する」プロセスです。例え宅地建物取引業者の資格があるだけでは、空室の入居テナントを見つけられない訳です。そこでここまでは、その「考え判断する」プロセスを見てきました。

ただいくら立派な30年ビル経営計画を作成しても、そもそも業者が話を聞いてくれない。業者の考えとビルの方針が合わない。業者の強みが違う。といった齟齬があると、どうやっても上手くいかず、30年ビル経営計画は実現できません。業者の方でも、業界慣習を理解せず自分の話を聞かずに一方的に要求をするビル経営者とは、付き合いたくないと感じるのも当然です。

基本はWin-Winの関係を築く事です。そのために重要な事は、ビル経営者が、問題毎に業者の適正や相性を見極めて、適切な業者を選び適切に相談をすることです。そして業者の利益優先ではなく、自ビルの利益を守るための「要所」を抑えられる事です。知識よりこちらの方が、よほど役に立ちます。

業者の適正や相性を見極めて、適切な業者を選び適切に相談をする・・ことも1日、2日で成長出来る事ではなく、これもビル経営者にとって一生の課題です。何かしらの助けになるように、テーマ別に簡単に要所をお話します。

11.リーシングを強化改善

先に賃貸経営で空室リーシングとは、次の全体像だということがわかるという話をしました。

そして空室になかなか次の入居テナントが決まらない場合、その原因は
  1. マーケットが悪い(地域賃貸マーケットに動きが無い)
  2. 営業が弱い(元受け不動産屋が適切に営業出来ていない)
  3. 物件に問題がある(募集賃料が高い、建物や貸室に問題がある)
のいずれかしかない話をしました。

ここでは特に2を想定して、自物件を営業してくれる不動産屋/オフィス仲介業者等を開拓する場合についてです。

不動産の事は「何でも相談下さい」と宣伝している不動産屋/オフィス仲介業者ですが、ビル経営者が理解すべきは3つあります。
  1. 「宅地建物取引主任者」を持つ不動産屋・オフィス仲介業者やその担当者には、それぞれ営業の得意不得意があるということです。住居が強い業者もいれば、特定地域・特定分野のオフィスに強い業者もいます。
  2. こうした不動産屋・リーシング業者の営業力や強みは、変化するということです。親しかった担当者が辞めた途端に、テナントが決まらなくなったというのは良くある話です。
  3. ターゲットテナントの部屋探しトレンドも常に変化している事です。

詰まるところリーシング中の、元受け業者の営業状況は「必ずすべき」だと言う事です。現在はオフィス物件探しもインターネット検索が主になっているため、地域の主要なオフィス物件紹介サイトで自物件の紹介状況をサーチするだけでも、確認ができます。

それから、自物件を営業してくれる不動産屋/オフィス仲介業者は常に開拓しているべきだということです。やはり現在では多くの不動産屋・オフィスリーシング会社がインターネット上に情報を公開しているので、インターネットでも探す事ができます。例えばターゲットテナントがどのようなサイトを見て物件を探しているかを考えると、ターゲットテナントにより強い不動産屋・オフィスリーシング会社が見つかります。

尚、不動産屋/リーシング業者によって、専属選任媒介を希望する人がいますが、これは必要ありません。また広告宣伝費増額を希望する業者もいますが、広告宣伝費増額は、業者が希望した場合ではなく、自分でこの人は自物件の特徴とターゲットテナントをよく理解してくれて、良いテナントを見つけてくれる、と思える業者と出会えた時に、出しましょう。自物件の強みとターゲットテナントを理解しない不動産屋に広告宣伝費を増額して相性の悪いテナントを連れてこられても、賃料を叩かれる長く入居してもらえない等、長い目で見て良い結果にはなりません。

元受け不動産屋/リーシング業者の数に制約はありませんが、数か増えると面倒なため、元受け不動産屋/リーシング業者は1社にしたまま、ビル経営者が相性の良い不動産業者を開拓して、テナント探しを直接お願いするのは、よくある話です。ここでこなれたビル経営者は、「お願い」と言うだけですが、手ぶらで「お願い」は行きにくいと感じる場合には、広告宣伝費の増額を手土産にします。

12.管理業者に仕事をしてもらう

ビルの管理会社や管理者は、ビル経営者の重要なパートナーですが、なかなかベストな管理会社を見つけることは難しいものです。
ビル管理会社は、会社の経緯と規模によって、強みが違います。
管理会社に安さを重視するのか、サービスの質を重視するのかでも違います。
管理は経験あるビル管理会社担当者に任せたいと考えるか、全ての問題・課題を一緒に考えたいと考えるか、でも違います。
ここでもビル経営者がまず、何を特に管理会社に求めるのかが分かっていなければ、難しいのです。

管理会社選びでまず留意すべきは、
  • 工事が必要な場合の取り組み姿勢・フロー
  • 管理業務委託契約の中に過剰や不明な項目はないか


管理業務委託契約の中には、「そんなこと自分でもできる」ことに結構な費用が掛かっている場合があります。例えば公的な報告書類の提出など、昔は手書きで書類を作成して窓口に持参をしていたものが、今はワードで作成してオンライン提出だったりするのです。また、清掃頻度や時間も、ビルの方針で調節すべきです。工事の取り組み確認も重要です。管理費を安く抑えて、工事で儲ける管理会社は多いから要注意です。ここではあまり親切に「自社や自社グループで工事ができる、や提携業者がいる」から工事業者選びの心配はありませんと言われたら、「やたら工事をさせられるのかな」と警戒レベルを上げておくことを、お勧めします。 ちなみに管理会社変更をためらう人の中には、管理会社や担当者の付き合いが長い方が、過去の工事履歴等の記憶があるので良いのでは、と考える方も少なくないようですが、費用を削減したり、より良い提案をもらえたりするメリットの方が高い事を見るべきです。管理会社との管理委託契約は、自動更新にせずに更新の度に管理内容を見直すことをお勧めします。一見月額単価が安い項目でも、年月を重ねると相当の金額になります。

13.工事業者を見つけて相談をする

工事に関してビル経営者がまず理解すべきは、「相見積」をして良い工事としてはいけない工事があるということです。

照明器具の交換や、流し台下の漏水修理等、どの業者でも出来る工事であれば、「相見積」で安い業者を選んでも良いでしょう。一方で給排水管の更新や電気幹線・キュービクルの更新といったビルの重要工事では、工事を決めるまでに業者に相談をして話し合うべき事が沢山あります。そしてどのように工事をするか、業者に考えてもらわなければいけません。こうした工事で相見積もりをすれば、あなたは永遠に信頼を無くし、適当な工事しかしてもらえなくなるでしょう。 もしある業者の意見に対して、他の業者の意見も聞きたいのであれば、話をして意見を聞けばよいのです。費用感が知りたければ、概算の費用目安を聞けば良いのです。調査や見積書を作成してもらうと、相手に仕事が発生している事に配慮すべきです。相見積りとして例え単価は隠しても、A社の見積をB社に見せれば、A社の工事ノウハウがB社に漏洩します。そうした気遣いができないビル経営者が、安さだけを求めれば、どの業者も手を抜くのは当然です。

■業者を探す
インターネット時代の現在では、多くの業者がHPを持ち、強みや実績を紹介しています。普段から検索をして、相談をしてみたい業者リストを作成しておくことをお勧めします。複数業者と話をすることで、比較検討ができます。知り合い等の紹介の場合でも、知り合いの問題や相性と自分の問題や相性が同じとは限りませんから、やはり比較検討のために、他の業者の話も聞くことをお勧めします。

■業者の実力
ある程度ビル工事の実績がある業者であれば、実力は疑う必要はありません。不安であれば、過去の工事について話をしてもらい、実績ビルを見学させてもらいます。

■サービス水準
これは費用に直結する評価ポイントです。既に分散修繕の工事計画を決める際に、サービス水準にどの程度予算を配分できるか考えているはずですから、既に考えてあるサービス水準を意識します。

電話をすれば直に営業パーソンが駆けつけてくれる。綺麗な営業資料を沢山作成してくれる。工事前のテナントとの調整やテナント対策から全てばっちりで、アフターの保証も手厚く行う。といった話を営業担当者が話すと、魅力的に聞こえてしまいますが、全て費用と考えるべきです。

■相性・相談のしやすさ
人間対人間だから、最後は相性ではないでしょうか。ただビル経営者の立場では「相性が良い」と感じる業者が、実は「仕事を取るために合わせてくれていただけだった」「サービスの罠だった」という事はないよう、本当に工事の中身についての話し合いについて、相談のしやすさを感じているかどうか、ビル経営者は意識したいものです。特に建替えやリノベーションのような高額工事ほど、接待が手厚くなる事は、わかると思います。ちなみに相性・相談のしやすさは、経験と共に変わるものだと思っておいて丁度良いです。

■良い提案が見つからない
困るのが、例え分散修繕計画作成時に業者の意見をもらっていても、実際に工事が必要となったタイミングで相談をする工事業者に、「より大きな工事が必要」と主張され、更に資材高騰等で見積金額が計画より相当に超過する場合です。他の考えの業者を探すとともに、あまりインパクトが大きい場合は30年ビル経営計画そのものを見直します。

14.節税や相続税対策を相談する

ビル経営者であれば、税理士、金融機関、相続税対策のコンサルタント等から節税や相続税対策の助言を受けているでしょう。信頼できる相手であれば問題ありませんが、ただこうした数字の職業の人達は、「ビルという物」を知りません。そして日本人として「ビルを長く維持する」概念を知りません。だから、「維持思考で現在のビルを寿命にせずに長く経営して利益を維持する」場合にも適切かどうかは、改めて相談をする必要があるでしょう。特に昭和の世代では「相続税節約」が全てで、相続後の維持を考える風潮が全くありませんでしたから、留意が必要です。

ビル経営の相続は、個人の資産相続とは違います。ビル経営を維持するためには、「修繕工事予算の確保」「ビル経営力がある人が実権を握る」といった事業承継の考え方も入ります。こうした問題を考えるにも、30年ビル経営計画の作成は必須です。

15.ビル経営も寿命がなくなる

ビル経営者が、専門業者/専門家の意見を元に、経営を維持して資産を守れるように「自分で考え、決めて、それを適切な専門業者/専門家に理解してもらい、専門家に仕事をしてもらう」ことで、ビル経営にも寿命がなくなります。


安定ビル経営のサイクルを回し続けて、「事故を起こさない、資産を守り、赤字を作らず、安定を維持する」安定ビル経営を継続できる限り、現在のビルは維持され、利益を生み続けます。日本の中小ビルも、ビルの本場欧州や日本以外の世界の他国の中小ビルと同様に、100年200年、ビルを承継する子供の代、その子供の代、その先まで、時代の荒波の中低リスクで、現在のビルの使用・経営を続け、利益を積み重ねることができるのです。

早速この維持思考の安定ビル経営を知り取り入れようではないですか?

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