築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者のための
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ビルの本場ヨーロッパを初め、他国の中小ビル資産所有者達は、利益があるから古いビルの使用維持に必要な工事を行って、古いビルを使用続けます。つまり、安定利益が残るように、古いビルの使用維持に必要な工事を行うから、維持できているのです。
分散修繕の対象は、ビルを老朽化させないために必要な工事です。これは同時に、ビル資産の使用維持に必要な工事です。通常の修繕工事とは違います。まず修繕工事との区別が必要です。
ビルの本場ヨーロッパや世界中の他国で築100年やそれ以上の鉄筋コンクリート造等ビル・マンションが現役で使用できている理由は、経年劣化した建物設備を更新したり、内装や外壁をリニューアルするといったビルの使用を続けるために必要な工事を行っているからにほかなりません。
ではなぜ他国では、ビルの使用を続けるために必要な工事を行えるのか?理由は、低予算で経済的にビルの維持に必要な工事を行い、使用経営の利益を残せているからです。利益がなければ、誰もビルの修繕工事は出来ません。
ビルの本場ヨーロッパや世界中の他国のビル資産所有者達は、ビルを「安定利益を産む特別な資産」と考えています。ただの「箱物」とは考えていないのです。 ビルは土地の価値を実現します。ビルは土地と一体で使用経営の利益を産みます。利益が続く限り、ビルも土地も価値が失われないのです。 だから自ビルの安定利益を守れるように、ビルの使用維持に必要な工事を行います。その方法が、これからご紹介する中小ビルの分散修繕です。
中小ビルの分散修繕は、ビルの使用を続けながら
ビルの使用維持に必要な工事を自分で判断して低予算、かつリスクを分散して低リスクで行い、ビル寿命を延ばし続ける方法です。
分散修繕は、
です。だからビルを無理なく100年200年それ以上維持できるのです。
日本の中小ビルが築50年前後で老朽化寿命と言われる理由は、技術の問題ではなく、経済的な理由です。今まで築古ビルが負のサイクルに陥る事を避ける考え方がなかったから、難しく思われたのです。
日本はビルやマンションは、どうして築50年前後で老朽化だから建替えと言われるのでしょうか?
日本の建物だけが、建築の質が悪い事はありません。その逆です。技術的には、リノベーションや大規模設備改修、ビル再生の技術があります。でもどうして皆、それを選択しないのか?
理由は、経済的な理由です。そもそも古いビルに価値がないと考えています。だから古いビルに高額な工事投資ができないと考えるのです。それよりも、建替えをした方がマシ。さもなければ朽ちるまで使う。と考えるのです。
現実には、ビルはある日突然老朽化して使えなくなることはありません。
ただ築30年も過ぎると、あちこちの設備で小さなトラブルが発生するようになります。また美観や清潔感も失われていきます。そこで適切な工事資金を投下しないでいると、だんだん問題が増えてかつ深刻化していきます。そうした問題が増えると、無理に工事をして負債化したり、事故が発生したり、最終的に廃墟になります。ただこのサイクルは数十年かけて進行していきます。
この負のサイクルが進行した状態を、ビルの老朽化というのです。
従来日本で選択されがちな、リノベーションや大規模改修工事、もしくは壊れたら修繕式は、いずれもこの負のサイクルに陥る事を避ける考え方がなかったため、負のサイクルに陥るリスクが高いものでした。
負のサイクルに陥るリスクを回避する考え方がなかったから、古いビルの維持は難しいと考えられてきた訳です。
分散修繕に取り組むにあたっては、ビル資産維持に必要な工事の理解が欠かせません。特にいわゆる修繕工事とは考え方も会計的な性質も違う事に留意が必要です。
ビル、と一言で言っても、実際には躯体、使用維持に欠かせない電気、給排水、エレベータや消防設備等建物設備、機能、内装やコンクリートを保護する外壁等、様々な設備機能とパーツの集合です。
ビルの躯体は丈夫ですが、使用維持に欠かせない電気、給排水、エレベータや消防設備等建物設備、機能、内装やコンクリートを保護する外壁機能等は、それぞれ経年劣化します。
大抵の物は法定寿命よりずっと長く使用ができますが、それでも経年劣化がが進行すると、トラブルが発生するようになります。トラブルは修繕工事で対応します。ところがだんだん規模や回数が増えてきます。すると更新なり根本解決が必要になります。それがビル資産維持に必要な工事です。
重要なのは、ビル資産維持に必要な工事と修繕工事とでは、工事に対する考え方が違う事です。この違いの区別が重要です。
ここではこのビルを老朽化させずビル資産の使用を維持するために必要な工事を、分散修繕工事と言います。
この修繕工事と分散修繕工事とでは、会計上の扱いも違います。
修繕工事は修繕費として費用計上します。つまり修繕は費用支出です。すると、ビルが古くなるとBSの資産価値は減価償却で減るのに、PLの費用支出が増えるから、「この古いビルにこんなに費用をかけられない」「このビルは古いから寿命だ」となる訳です。
けれども分散修繕工事、つまり「ビルを老朽化させずビル資産の使用を維持する工事」は、ビルの寿命を延ばし、ビルの将来を作る工事です。これは会計では、賃借対照表(BS)のビル資産の寿命を延ばす資本的支出(CAPEX)に該当します。減価償却の対象です。この資本的支出(CAPEX)を上手に使う事で、賃借対照表(BS)の資産を守り、修繕費は増やさずに損益計算書(PL)の利益も保つ事ができます。
そして「資産に関する工事」支出は、ビル資産所有者が決める事です。
もう一つ分散修繕に取り組むにあたって重要な事が、ビル資産所有者がビルの工事を決めるとは、工事業者に口出しをする事ではない事を、心にする事です。ビル資産所有者が決めるとは、物だけではなく、利益の数字、更に現在だけではなく将来のビルが負のサイクルに陥らないよう考えて、ベストを選択する事です。その判断を可能にする方法が、30年分散修繕計画を作成です。
分散修繕では、ビル資産所有者が工事を決めるといっても、工事をどうすべきか、予算はどのくらいか、勝手に決められる訳ではありません。
物の状態がどうであるか。どのように工事ができるか、決めるのは専門の工事業者です。専門知識を持たない私たち一般の中小ビル資産所有者は、せいぜい「選択する」事しかできません。でもそこで考える事があるのです。
ビル資産所有者は、物と数字を考えます。「ビル資産」は利益という数字が残ることで資産価値があるからです。工事に際して、費用と利益を考える必要があります。
またビル資産所有者は、現在の問題だけではなく、将来も考えます。具体的には、将来も負のサイクルに陥らない事を考えます。現在の問題解決のために予算を使いすぎて、他の必要な工事が出来なくなり、負のサイクルに陥れば、元も子もないからです。負のサイクルに陥るリスクは、予算とリスクの綱引きです。そのバランスを考えます。
そうして物と数字、現在の問題解決だけではなく将来も負のサイクルに陥らない事に留意しながら、ビル資産所有者は、分散修繕では、次の3つを考えます。
また分散修繕での留意として、相見積もりが厳禁である事も加えておきます。
では、そうした分散修繕の工事取り組みで決める事を決めるために、ビル資産所有者は何がわかっている必要があるのでしょうか?専門知識でしょうか?専門知識は特別には必要ありません。(実際の検討や工事取り組みでは、最低限の知識は必要になるとしても。) ビル資産所有者がわかっている必要があるのは、次の3つです。
ビルの本場ヨーロッパや他国の中小ビル資産所有者は、長年古い中小ビルを維持してきているので、こうした事を自然に身に着けています。けれども日本人はそうではありません。従来はこうした事がわかるためには、長い経験が必要と考えられてきました。
けれども現在は、エクセル等表計算ソフトを使用して30年分散修繕計画を作成を通して、長い経験に相当する判断力を身に着ける事ができます。だから作成しない事がもったいない話です。そこでここから、30年分散修繕計画の作成を通して、分散修繕の考え方を理解していきます。
分散修繕についてのご質問、30年分散修繕計画作成のご相談他、築古ビル維持のご相談はお気軽にお問合せ下さい。オンライン相談は無料。夜間週末も可能です。
30年分散修繕計画作成の前に、次の3つをじっくり時間をかけて考えます。
今後30年のビル維持工事の財源を考えます。財源がなければ、どうやっても工事ができません。借入は最終手段です。
望ましいのは、
修繕資金の準備がある場合や、臨時財源の予定がある場合でも、加えて毎年定額で確保できる安定財源を考えます。収益ビルの場合はビルの賃料収入です。事業用ビルの場合は、事業売上から原価や経費を差し引いた事業収益です。現在だけではなく、30年後まで現実的に見込みます。
今後誰がどのようにビルを使用するのか、は時間をかけて具体的に考えます。それによって将来のビルに求められる物が違ってくるからです。ここを考える事は、何より予算削減に欠かせません。
例え現在と同じ・・と言う場合でも、例えば女性が多いか、男性が多いか、若年層が多いのか平均年齢が高めか・・、使用は事務所か、店舗か、事務所と一言言っても、来店型か、堅い雰囲気か、自由なスタイルを好むか・・等で、必要とする将来のビルの機能性能や好む内装仕上がりが違います。
検討手法としてマーケティングのペルソナ手法が役に立ちます。インターネットで検索をするとサンプルが多数出てきますから、ぜひ参考にして作ってみてください。
今後誰がどのようにビルを使用するのかを考えたら、30年後そのビル使用者がどんな状態の自ビルを使用しているかを、具体的に思い描きます。これが、分散修繕で何の工事をすべきかの判断基準になります。
例えば現状維持と一言で言っても、30年後には更に経年劣化老朽化していますから、何らかの手が入ります。そこで、現状と全く同じなのか、改善が入るのか、もちろんここで既に、「予算」の2文字が頭に現れますが、考えるだけであれば、費用もかからないから自由に考えましょう。
内装や見た目、建物設備機能や使い勝手等、ビルの使用体験の全てを考えます。
ここは一度考えて終わりではなく、常に念頭においておいて、他のビルの事例を見たり、良いアイデアが浮かんだりする度に、アップデートする事になります。
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自ビルの予算を決めて、その予算配分を決めるために考えるポイントが7つあります。それを一つ一つ確かめます。
とある通り、決めるのは自ビルの総工事予算とその配分です。ここで問題になるのが、
何の工事を必要と考えるか、と同時に
各工事にいくらの費用を見込むか、です。そこで専門判断とは別にビル資産所有者として考える事があるのです。
とはいえ、各工事の費用目安がどうやって分かるのか、も問題に感じるでしょう。
現在ではインターネット検索が第一手段で、かなりの情報は手に入ります。ただ専門性が高い建物設備工事関係など、まだわかりにくい分野は多数あります。何より前提条件がわからないので、どの程度が自ビルにとって妥当かわかりません。
管理者や工事業者との相談は欠かせないでしょう。「こうした工事に、どのくらい費用がかかるものなのか?」とざっくり聞きましょう。見積書は必要ありません。あくまでも概算です。その質問の際に、この後の③~⑦を考えて相談をします。
それぞれの違いが分かると同時に、そうした話を通して、相性を確かめられます。いざという時に具体的な相談が出来る工事業者を見つけておく訳です。
まず、①30年総工事予算を決めます。
財源は既に考えた通りです。準備資金や臨時資金はもちろんですが、基本は毎年定額確保する予算です。
安定確保する予算目安は、収益ビルであれば、賃料収入の5%前後~10%が、分散修繕の工事予算準備金の目安です。(収益規模とビルの状態によって異なります。)事業用ビルや自用ビルでも、賃貸を想定して、同様目線で考えます。予算が厳しい場合は可能な金額で十分です。より少なくても、どうにかなりますから、遠慮は必要ありません。最初はとりあえず仮決めです。検討を重ねるうちに、プラスマイナスしまます。
30年総工事予算を配分する工事をある程度決めます。ここでは、自ビルに必要な工事対象の洗い出しと優先順位付け、そして工事サイクルを決めます。
自ビルに、躯体以外にどのような建物設備機能や外壁、内装等の潜在的な工事対象があるは、ビル資産所有者であれば把握をしておくべきです。
ただし、全部が次の30年でリニューアル工事が必要な訳ではありません。次の30年でリニューアルを必要としない(使用を継続できる場合もあれば、既にリニューアル済みの場合もあります。)対象もあれば、もう廃止するといった場合もあります。また一方で新規で加えたい建物設備機能もあるでしょう。それを加えます。
目指すは、
「2.13.30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子」で考えたビル像です。
業者が作成した長期修繕計画があれば、それをベースにできます。わからなければ管理者や工事業者と話し合いながら洗い出す事になります。
リニューアル等の対象工事を洗い出したら、必用と思われる工事に優先順位をつけます。厳密ではなく、絶対必要、なるべく必要、できれば 程度に分類で十分です。便宜上、4つのカテゴリーに分けておくと、後で考えやすくなります。優先度が付ける事で、後で工事予算の削減がやりやすくなる訳です。
何の建物設備機能を次の30年のリニューアル工事対象とするかは、どの程度の劣化でリニューアルが必要と判断するかでも、大きく違います。
分散修繕では、工事が必要な時期を工事サイクルと考えます。ビルを100年200年維持する事を考えると、更新は一度やったら終わりではなく、また十年後何十年後かに繰り返し必要となるからです。
この工事サイクルが短いとは、100年200年の間に何度も該当工事が必要になるという事です。
逆に工事サイクルが長いと、工事回数が少ないから、100年200年で考えると、相当な工事費用を節約できます。例えばエレベータ更新を例に取れば、次の通りです。
工事サイクル延長は手っ取り早い工事予算削減方法ですが、(全部の工事サイクルを長くすれば30年の総工事予算をゼロにもできます。)数字合わせにならないよう、将来のビル使用者が被る「物」のリスクも考えて、妥当な時期を決めていきます。
ここから各工事予算の配分ポイント(予算削減ポイント)を見ていきます。専門知識は必要ありません。 ビル資産所有者の視点での予算削減ポイントです。
④工事業者のサービス水準を決める
⑤機能性能グレードを決める
⑥素材等(耐久性等)を決める
⑦工事範囲を決める
誰も教えてくれないけれど、工事費用インパクトが大きいのが、相談をする業者のサービス水準です。腕の良し悪しと言う話ではありません。サービスやマネジメントが良い工事業者は、その分の費用が嵩んされて当然だという事です。
「サービスやマネジメントの良さ」=工事の「安心」
「安心」は高額なのです。
建設業者に相談をすれば、実績あるプロが工事内容を考え、プロが工事を監督し、手厚い説明とサポートがあり安心だけれど、工事総額の30%の工事監理費その他多くの管理費が発生して超高額です。自分でDIYで工事をすれば材料費だけ、または職人に指示すれば、+人足代で済みますが、工事内容を決めて材料を選び施工まで全てが自己責任です。これは極端な例ですが、その中間のでも、サービスやマネジメントの良さ」を選ぶか「費用の安さ」を選ぶかは、ビル資産所有者が決める事です。
費用水準が低い業者に、過剰サービスを求めては、上手く行くわけがありません。とはいえ、わからない設備工事で無理にDIYしても、結果のトラブルも自己責任です。
留意をしておきたいのは、工事にはトラブルがつきものだと言う事です。工事中だけではなく、後から問題が発生する事もあります。工事の経験がなく手をかける時間もなければ、安心できる工事業者に依頼をする事も、理にかなっています。そして経験を積むにつれ、工事業者のサービス水準を下げていくことが出来ます。
ここも予算への影響が大きいところです。そしてこの削減は「ケチ」の腕の見せ所です。工事に際し、どのように工事をすべきかは工事業者が決める事ですが、その仕上がりの機能性能グレードをどの程度求めるかは、ビル資産所有者が決め事です。
例えばエレベータ更新でも、せっかくだからと内装のグレードアップや、震災時制御やらテレビモニターやらを付けると、相応に金額が嵩みます。空調にしろ消防設備にしろ、付加価値を付ければ費用が嵩みます。内装工事も、高級やデザインを追求すれば、費用は天井無しです。
ケチの観点では、将来ビル使用者が必要とする各工事の機能性能グレード水準以上のものは全部、「お金の無駄」です。見栄ではなく、堂々と「自ビルはこの水準で十分」と言えるのが、自ビルの利益と資産を守るビル資産所有者の美学です。日本のビルは設備機能グレード過剰が多いので、ここは予算の削減しどころが沢山あります。
素材、時に工法もですが、の水準を決めるのも、重要です。「どうせ工事をするなら長く使えるものを・・」は合理的な考えですが、その費用が高すぎていつまでも工事ができなかったり、他の工事が出来なくなれば元も子もないのです。
例えば。屋上防水工事も、保障期間が5年、10年、20年で比例して費用が増えます。
大抵の工事は、安全や信頼性、長持ちを優先させると比例して高額になります。
工事範囲も、しばしば重要な判断ポイントになります。
日本では、「どうせ工事をするならまとめて行った方が、共通費が節約できる」と言われますが、例えば1フロアで漏水事故が頻発するから排水管を更新する時に、ついでだから全フロアを更新するというのは、合理的に聞こえますが、でも他フロアは漏水事故もなく後100年使用できるかもしれないのです。また工事規模が大きくなると特有の問題と問題対策費用がかかります。
何よりまとめて工事は高額のため、やはり予算の都合があります。ある程度分割をした方が、予算計画が柔軟になります。
まず自分で決めた30年総工事予算内で、納得ができる工事予算の配分を目指します。そして繰り返し見直しながら、更なる予算削減を目指します。 ここでのコツは、予算削減にもいくつかのテーマを作る事です。よりアイデアが増えると同時に選択肢も広がります。
先にお話しをしている通り、決めるとは、「選択」です。だからなるばく良い選択肢を複数用意する事が、選択には欠かせません。また1度決めて終わりではなく、後から新しいアイデアを思いつく度に、また比較検討をして、選択をします。
とにかく削れる予算を削るというのは、もちろん1つの選択肢ですが、他に次のようなテーマで費用削減を考えて見る事をお勧めします。時には、「2.13.30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子」像も見直しも含まれます。
シンプルビルは、全ての機能性能グレードを低レベルに落とす方法です。
引き算思考で、思い切って利便性目的の建物設備機能を削減し、グレードを抑えて、自ビルの将来をシンプルにしてみます。ケチで知られる欧州の中小ビル資産経営者たちは、シンプルビル化の費用削減が徹底しています。
また費用をかけることろと、削減するところのメリハリをつける個性化ビルも、色々考えて見る事をお勧めします。同じ総工事予算でも、メリハリをどう考えるかで、30年後のビルの在り方が違ってくる訳です。
出来るところはDIYも、現実的な選択肢です。現在はyoutubeでDIY工事講座も学べますから、そうして工事は自分でやるから、低予算でも素材や材質にはこだわるという贅沢もできます。
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築古ビル資産が負のサイクルに陥るリスクは、「物」のリスクと「数字」のリスクがあります。
この「物」と「数字」の両方のリスクを高めないようにするのが、分散修繕の(予算と)リスクの分散です。これは分散修繕工事のサイクルで実現します。
理想的な基本の分散修繕は、
というシンプルなサイクルです。ただ机上の数字の計画でこのサイクルを作るのは簡単ですが、「物」のリスクはまた別の話です。
ありがちな問題が、ある時期に重要工事が集中して、予算が足りなくなることです。だから順番にといっても、工事予定を後ろ倒しにした一部の状態が酷く悪化して、大きな事故や機能停止があれば、元も子もありません。
そこでAの工事を優先させたら、Bで事故が起こった。とはならないように、全体の調整が必要になる訳です。30年分散修繕計画作成の際に、
理想的な分散修繕で維持されているビル資産は、次のような状態です。
一棟のビルの中に、古い設備や内装外壁と新しい設備や内装外壁とが、混在しています。多少不便なところや経年を感じるところがあっても、最新機能設備は揃っていなくても、酷く悪い状態はなく、必要最小限の機能性能や美観清潔感はあって、見た目も居心地もそう悪くありません。
そうしてビルの使用を続けながら、次のビル資産維持工事を計画しては、予算を準備して、予算が準備できたら工事を行います。
ある時期を過ぎると、ビンテージビルと呼ばれ、古いビル特有の趣と風格が良いと褒められるようになります。
ここまでの検討ポイントは、30年分散修繕計画を作成しながら、検討をします。
30年分散修繕計画は、マイクロソフトエクセル等表計算ソフトを使用して作成をします。
フォーマットに決まりはありませんが、コツを3つご紹介しておきます。
30年分散修繕計画は、縦軸にビル資産経営者の予算計画及びビル維持に必要な工事を全て並べ、横軸に30年の時間軸を取ります。右端に合計欄を作り、30年分散修繕工事予算の総額と、何の工事にいくら予算配分されているか、一目でわかるようにします。
ここで重要なのが、計算式の入れ込みです。入れるべきところに数字を入れると、自動計算で30年間の総工事予算配分状況が一目で見られるようにしておきます。自動計算が出来ると、検討とリアルタイムで、数字の結果を見ることができます。そうして物の調整に専念できる訳です。
ビルオでは、ご相談者様に、計算式入りの使いやすい30年分散修繕計画ひな型をご提供しています。
まず1つ適切な計算式を入れ込んだ30年分散修繕計画を作りましょう。 1つつくれば、ファイルやシートをコピーすれば、バリエーションは無限大に作成できます。 その検討の試行錯誤が自分の経験値になる訳です。
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実際の場面では、実情ありきです。そうして実情に合わせて計画の修正や作り直しをしているうちに、100年くらい軽く過ぎているでしょう。
実際の工事判断は、実情ありきです。予定時期になっても、問題がなければ先延ばしで構いません。予定より早くトラブルが増えて対応が必要になるかもしれません。 実際の「物」の問題については、予算ありきではなく、管理者や専門業者の意見に耳を傾けなければいけません。
「物」の工事は、「物」の対象の実情に合わせて実際の工事判断を行いますが、当然「数字」も再検討します。他の工事や予算の都合を考慮して、リスクを分散できる形に30年分散修繕計画を修正します。時には、まだもう少し後でも構わないけれど、この後に大きな工事を控えているから、先にやっとくという判断も当然あり得ます。
とにかくそうした30年分散修繕計画の見直しとブラッシュアップをすれば、またその時点から30年後を考える事になります。 その間には、他の建物設備機能の状態も違ってきます。工事予算削減のアイデアが出てきたり、インフレが進行したり、ビルに要求される機能性能等が違ってくるかもしれません。 そうしたアップデートを織り込んで、時々30年後を考えて30年分散修繕計画を作成し直していれば、気が付いたら100年は優に過ぎているでしょう。慣れたらそのうち計画表など必要なくなります。
さて、最後になりましたが、分散修繕の3つめのポイント
です。 「相見積り厳禁」が、低予算で経済的にビルを維持する秘訣なのです。
近年「相見積り」という言葉が流行して独り歩きをしていますが、「相見積り」は元々、公共工事などで、役所の規則として複数業者を相見積りして安い業者を選ぶ時に使われます。税金だからなるべく安い工事を追求するのは当然ですが、そもそも役所が工事仕様書を作成していて工事内容が決まっているから、後は単価が問題になるのです。
一方で、専門知識を持たない一般の中小ビル資産所有者は、工事仕様書など、作れません。見積書を読んで中身を判断する事もできません。にも関わらず相見積もりをすれば、安かろう悪かろうにしかならないのは当然です。
一番やってはいけないのが、Aの工事業者に相談をして色々考えてもらった後に、そのアイデアをBの工事業者に持ち込んで、「これもっと安く工事できないでしょうかね~」と言う事です。これはアイデアの泥棒行為です。
高額だけれど建設業者にお任せのリノベーションや大規模改修工事と違って、低予算で自ビルに必要な工事を行う中小ビルの分散修繕では、各工事で各工事業者や専門業者等と相談が欠かせません。
相談をして「考えてもらう事」これは無料ではありません。とくにビルの固有の事情やビルの将来まで考えてもらい、かつ低予算で工事を工夫してもらうなら、尚更です。
良い業者にしっかり考えて欲しいならば、相手が「考えてくれる」事に敬意を示し、見積書の高い安いに拘ってはいけません。しっかり考えてくれる良い業者と良い関係を維持する事は、ビルにとって長期的には利益なのです。
分散修繕での工事取り組みでは、工事業者は工事プロジェクトのチームパートナーです。
チームの一員として、工事業者がチーム方針を理解して、ベストな工事内容を精緻に考え、実際に問題なく工事をしてくれなければ。工事プロジェクトは成功しません。
一方的に指示する関係でもなければ、全部お任せで依存をして責任だけ問える関係でもありません。
分散修繕の対象となるビル資産の維持に必要な工事取り組みでは、工事業者は、一緒に工夫を持ちより力を合わせて工事の成功に導くチームパートナーとして付き合いましょう。これができれば、低予算でもしっかりとしたビル維持に必要な工事ができるようになります。
現在ビルを維持する事は、「建替えが出来ないから仕方がなく」という消極的な選択肢ではありません。これからの縮小日本の社会課題を解決する選択です。自信を持って現在ビル資産の維持に必要な工事を行い、生かし続けましょう。
子供に古いビルを残せないから建替えるという人が少なくありませんが、残念ながらその考えは間違っています。それは人口が激増して経済も急成長し木造建築から鉄筋コンクリート造ビル・マンションへの流れがあった昭和平成時代の贅沢な考え方です。けれども時代は逆転しています。先行き不透明な投資不適格時代は、例え古くてもリスク無し借金無しでビルを相続し、分散修繕で無理のない予算でビル維持に必要な工事を行いながら、安定利益を享受できる事が、一番ありがたいのです。
例え新築時より目減りがする築古利益ですが、他事業と比べると高利益です。長期的に積み上げる安定利益の総額は、ノーリスクハイリターンなのです。
人口が減少して街が縮小すれば、古いビルに競争力が無くなってやはり維持が出来ないのでは、と言う人がいますが、それは逆です。築浅物件は魅力的ですが賃料も高額です。初期投資回収が終わり、分散修繕で維持している築古ビルは低賃料でも利益を残せます。低賃料で広い面積を使ってもらう事ができるのです。
そうして日本もウサギ小屋から脱却し、欧米や他国同様に、ゆったりと暮らして働く事ができるようになります。
何よりも、ビルを建て替える、朽ちるまで使う。いずれもスクラップアンドビルドの考え方です。いずれも適切に維持すればまだ100年以上使用経営して利益を産む資産を、産業廃棄物にしてしまう事です。地球は今温暖化が急速に進み、自然環境を守らなければ、人類が滅びます。
現在のビルを維持して使用経営続ける。これは産業廃棄物を減らして、地球に優しく、私達の社会を存続に導く選択です。現在のビルを産業廃棄物にしないでください。現在のビルを100年以上使用経営こそが、現在社会のあるべき選択です。
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