築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者のための

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建物を負債化させずに長く使用するための分散修繕

分散修繕は、世界で標準の、低予算低リスクで建物工事を行う方法です。分散修繕なら、現在の建物を負債化させずに100年超使用経営の利益を産む建物資産として使用を続けられます。

私達日本の建物所有者に必要なのは、分散修繕を知る事だけだった


分散修繕は、低予算低リスクで建物の維持に必要な工事に取り組む方法ですが、いわゆる修繕工事取り組みのためのものではありません。分散修繕は、建物を負債化させず資産として維持するための建物工事取り組みの方法です。分散修繕の対象は、PLの費用の部の修繕工事ではなく、BSの資産の部の資本的支出工事です。分散修繕は、建物維持の方法ではなく、使用経営の利益を産む「建物資産」として保つための方法です。資産にかかる事は、資産所有者が判断をしなければいけません。それをどう判断するか。ビルの本場ヨーロッパや世界中の中小ビル資産所有者たちが、伝統的に実践してきている方法をまとめたものが、分散修繕です。ここで分散修繕の考え方をご紹介しますが、まず先に、従来の日本でには存在しなかった、この資本的支出工事取り組みの考え方も理解する事が欠かせません。 ここで、この考え方と取り組み方を、日本ではじめてご紹介します。尚ここでは便宜上、中小ビルを想定していますが、実際にはマンション・戸建て・工場他すべての建物に共通です。

Ⅰ資本的支出工事の判断

建物が古くなると、漏水や雨漏りなどのトラブルが頻発したり、機能不足や古臭さを感じたりして、管理者や点検者、工事業者からリニューアルや新規設置といった、通常の修繕工事とは違う種類の工事の判断が必要になります。 その時に所有者は、

  • 工事をするかしないか?
  • 工事を今するか先延ばしするか?
  • するならどの程度工事をするか?
  • どの程度費用をかけるか?
判断を自分でしなければいけません。これをどう判断するか?が問題なのです。

1 建物を長く使用するために欠かせない資本的支出工事を理解する

最初に、今までどうして日本だけ、古い建物を長く使用する事が難しかったのか、を確かめます。必要なのは、建物維持ではないのです。建物を負債化させず、利益ある資産として維持する事なのです。

1.11 古い建物に何の工事が必要なのか

建物が築40年前後となると、排水管から漏水事故が起こるようになったり、エレベータやキュービクルの交換を言われたり、外壁や内装も古臭く清潔感を失い、リニューアルが必要になります。(もっと早くからやっている方もいらっしゃるでしょう。)また何か機能不足の問題が出てくる事もあります。

今までもトラブルがあると、修繕工事を手配してきましたが、交換(リニューアル)や新規設置といった、より大きな(かつ工事が必要になるのです。)

ただ技術的にそうして古い建物を生かす事が難しくない事は、リノベーション工事等がある事はもとより、日本でも、江戸時代に建てられた古い寺社や城豪邸町屋がいまだ存続している事からも、わかるでしょう。

1.12 従来の古い建物工事取り組み

従来日本は、そうした場合にリノベーションや大規模改修工事といった高額工事が言われます。一方で経験あるビル所有者であれば、壊れたら修繕式で必要に応じてリニューアル工事も行う事で、なんとかなる事を知っています。しかしリノベーションや大規模改修工事は、ハイコスト・ハイリスク・ハイリターンな大資本の手法です。一方で後者は先の事がわかりません。だから「使えるだけ使う」として、少し上手くいかなくなるとすぐにあきらめてしまわれがちです。

1.13 建物は資産としてでなければ維持できない

古い建物が諦められる理由として、しばしば「古い建物にこんなにお金をかけられない」と言われる通り、技術的には古い建物維持は問題ではありませんが、問題はその費用です。

建物は物ですが、所有者にとっては、建物は土地の価値を実現する資産です。そして建物は、資産でなければ維持できません。負債化して負動産になったら、長く持ち続けていられないのです。

1.14 怖いのは負のサイクルに陥る事 

この「長く持ち続けていられなくなる」ですが、建物は、例えばある工事をしなかったからといって 、すぐに使用ができなくなり廃墟化したりはしません。建物は多くの建物設備機能の集合です。恐らく10年20年は問題なく使用できるでしょう。 ただ、問題がある建物設備機能が増えると、負のサイクルに陥ります。そしてだんだんと建物全体が、劣化し、20年30年といった時間をかけて、スラム化、廃墟化していきます。

怖いのは、この負のサイクルに陥る事なのです。

2 修繕工事とは違う資本的支出工事を理解する

建物を資産として維持するための工事が、資本的支出工事です。この資本的支出工事理解は非常に重要です。なぜなら、この判断を間違うと、負のサイクルに陥るからです。

1.21 修繕工事と資本的支出工事の違い

建物工事には、修繕工事と資本的支出工事があります。その違いは次の通りです。

1.22 資本的支出工事の会計的説明 

建物の資本的支出とは、修理・改良したことによって使用可能期間が延長し、資産価値が高まるものをいいます。 資本的支出は、耐用年数の延長や価値の増加が認められるものについては「資産の追加取得」と考えて、固定資産として取り扱い、減価償却をして少しずつ経費としていくものです。つまり効果が長期に及ぶとして減価償却の対象になる工事です。

具体的には、経年劣化部分のリニューアル工事や機能不足部分の追加工事が該当します。

1.23 修繕工事と資本的支出工事の会計上の扱いの違い

修繕工事と資本的支出工事は、会計上の扱いも違います。

1.24この違いは、管理判断と資産判断の違いでもある 

もう一つ重要な違いは、修繕工事は、建物管理(者)の判断領域です。そして通常は必ず対応をしなければいけません。 けれども資産の領域である資本的支出は、建物資産所有者が判断すべきことです。そこには、工事をしない、選択肢もあるのです。(例えば古い建物にお金をかけても仕方がないから工事をしない・・も資産所有者判断です。)

3 資本的支出工事で、所有者は、何を自分で判断しなければいけないかを理解する

つまるところ、自ビルの将来を決める資本的支出工事は、資産所有者が判断をしなければいけません。問題は、何をどのように考えて、工事の判断をするかです。

1.31 資本的支出工事で所有者が判断するとはどいう事かを理解する

建物工事で、所有者が判断をするといっても、専門工事業者が判断すべきことに素人が下手に口をだしたら、嫌われて良い工事をしてもらえません。 工事について、工事業者が決める事と、建物所有者が決める事とは違います。まずこの違いを理解しなければ、建物工事はうまくいきません。

資産所有者が決めるのは、

  • 工事をするかしないか?
  • 工事を今するか先延ばしするか?
  • するならどの程度工事をするか?
  • どの程度費用をかけるか?
つまり、「数字」(お金)に関する事は、自分で決めなければいけないのです。それも自ビルの利益が残るようにです。

1.32 資本的支出工事で所有者は何を考えるのか:工事予算

この資本的支出工事を判断する時にまず留意をすべきは、現在ある建物設備機能を「そのまま」維持しなければいけない訳ではない事です。年月とともに建物の使用者や使用形態が変われば、必要な機能性能や見た目も違ってきます。年月とともに、使われなくなる機能性能もあれば、新しく要求される機能性能もあります。

資産所有者は、建物の将来の使用を考えて、何の工事(機能性能グレード等)が必要で、何は省けるかを、判断しなければいけないのです。

1.33 資本的支出工事で所有者は何を考えるのか:将来の建物使用

そこで資産所有者が考える事として、重要になるのが、工事予算です。 現在手持ちのお金がなければ、借入金をしてまでも必要かどうか、という重要な問題が発生します。また現在は手持ちの準備金があっても、そこで気前よく工事をしたら、その次に重要工事が必要になったけれど、お金がない。も困ります。これは負のサイクル一直線です。

資産所有者は、手持ちの建物工事予算を長い目で考えて、何の工事に投下するか、決めなければいけないのです。当然に、予算があればやりたいけれど、予算が厳しいから我慢する建物工事も出てきます。

1.34 資本的支出工事で所有者は何を考えるのか:低リスクであること

この資本的支出工事の判断は、間違えると負のサイクルに陥るリスクが高まります。つまり、「負のサイクルに陥るリスクを高めない事」も、建物資産所有者が考える事です。

この負のサイクルに陥るリスクは、また2つのリスク体系に分けられます。 物リスクVS数字リスク 建物設備トラブルは困るからと、少しの故障ですぐに資本的支出工事を投下してリニューアルをしていては、工事費用が膨らみ数字(負債化)リスクが高まります。一方で極力支出を惜しんでトラブルが増えても必要工事を行わなければ、重大な事故リスクが高まります。 現在リスクVS将来リスク こうした工事判断で、目先の物リスク/数字リスクだけを考えると、将来の数字リスク/物リスクが高まる事になります。けれども将来の(ひょっとしたら)リスクばかりを考えては、支出過剰で数字リスクが高まる事は間違いありません。

古い建物にゼロリスクはあり得ません。つまり、特定リスクを高めず、いずれものリスクを低い状態にバランス良く保つことが、建物資産を長く持ち続ける秘訣なのです。

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Ⅱ分散修繕の考え方

このように、古い建物を負債化させず、資産として維持するために、資本的支出工事を自分の予算かつ低予算低リスクで取り組む方法が、分散修繕です。特徴は、自分の予算かつ低予算と低リスクを両立している事です。

2.1 分散修繕の考え方

分散修繕は、資本的支出工事取り組みの考え方です。いわゆる修繕工事は対象ではありません。

分散修繕は、建物を負債化させないよう、自分の予算かつ低予算低リスクで資本的支出工事を行います。

2.11 自分の予算とは

建物工事を考える際、まずいくら必要か教えてくれなければわからない、と考える方は多いですが、実際にはまず自分が総工事予算を決めなければ、各工事の予算は決まりません。

これが小遣い管理でも、企業の事業予算管理でも同じですが、積み上げ式ではどんどん予算が膨らみます。先に自分の予算=総工事予算の枠を決める事で、工事対象(内容)に優先順位をつけて、必須工事(内容)は行い、優先順位の低い工事(内容)は削減する、という判断ができるようになりるのです。

ここでの自分の予算とは、もちろん十分に使用経営の利益が残る予算です。この考え方は、後で具体的にご紹介をします。

2.12 低予算

ここでいう資本的支出工事の低予算とは、単に工事見積書を叩く事ではありません。 これは、工事対象(内容)に優先順位をつけて、必須工事(内容)と、削減ができる優先順位の低い工事(内容)を判断して、削減ができる工事(内容)を削減する事で、工事費用を抑える事です。

これももちろん考え方があります。後で具体的にご紹介をします。

2.13 低リスク

低リスクには、物リスクVS数字リスクと現在リスクVS将来リスクがあります。

■ 数字リスク

分散修繕の基本は、予算を準備してから資本的支出工事をする。です。すると数字(負債化)リスクの高まりを防げます。

分散修繕は、基本は各建物設備機能等の資本的支出工事について、「必要になタイミング」で工事ですが、この数字リスク管理は、「壊れたら工事」とは違う事を意味します。分散修繕の工事判断は、行き当たりばったりではなく、ある程度は大まかに計画をして、予算と次の物リスクを考えてあるのです。


■ 物リスク

とはいえ数字を優先させて、必要な工事が必要なタイミングで出来なければ、やはり負のサイクルに陥ります。そうならないためには、建物全体の各建物設備機能等「物」の状態もみて、必要なタイミングで必要な工事予算が準備できているように、調整をしなければいけなくなります。 この調整法は、後でご紹介をします。

■ 現在リスクと将来リスク

現在と将来のどこかにリスクが集中しないためには、工事の予定について、現在から将来の時間軸で考える必要があります。

最初は、これを検討するために、30年分散修繕計画の作成が必要です。

2.2 最初は30年分散修繕計画の作成が必要

最初に分散修繕に取り組むには、リスクを十分検討するために、30年分散修繕計画の作成が必要です。 ただし、必要なのは最初だけです。自ビルの分散修繕のリスクバランスに慣れたら、計画は必要なくなります。ビルの本場ヨーロッパや世界中の中小ビル資産所有者たちは、特に計画を作成せずとも、自然に分散修繕ができています。伝統的に体得しているからです。つまり、さほど難しくはないと言う事です。

2.21 30 年分散修繕計画の作成

分散修繕でリスクをトータルで考えた判断ができるためには、 ・将来の建物と数字を考える ・建物全体を考える ・工事の優先順位をつけられる 必要があります。

これらを可能にするのが30年分散修繕計画の作成です。 ちなみに30年は、長期修繕計画表やERレポートでも採用される、一般的な建物の「長期」を見る期間です。

2.22 作成の目的は予算配分のイメージを掴む事

30 年分散修繕計画の作成の目的は、「いつ何の工事をするか」決める事ではありません。 30 年分散修繕計画の作成の目的は、工事判断が必要な時に、上記3つをすぐに考えられるようにする準備です。 「こう工事をして、低予算低リスクを保ち、負債化リスクを避ける事が出来る」イメージを持っておくことで、負のサイクルに陥ったり負債化させたりするリスクを遠ざける事ができるのです。

2.23 30 年分散修繕計画はエクセルで簡単に作成ができる

30年分散修繕計画は、実際にはエクセル等で簡単に作成できます。ただし、単なる計算表ではなく、試行錯誤のツールとして使うには、適切な計算式の入れ込みが必要です。ビルオでは、ご相談者様に計算式入りのフォームをご提供しています。

2.24 30年分散修繕計画の作成方法

30年分散修繕計画は、次の手順で作成をします。次章で順番に見ていきます。


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ビル等ご所有建物の資本的支出工事の取り組み、地域賃貸マーケティングを基にした安定ビル資産経営、その他所有問題から、管理改善、賃貸工事等ソリューション選択まで、ビルオには縮小時代日本のビル資産所有者・経営者・後継者のお悩み、ご相談に応えるすべてがあります。ご所有ビルはまだ100年超使用経営利益を産む資産です。一棟から十数棟ポートフォリオ、更に古い建物の街づくりまで。まず無料オンライン相談でお話をしましょう。ご要望に応じて守秘義務誓約書を差し入れします。

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Ⅲ30年分散修繕計画作成

30年分散修繕計画の作成は、まず最初に考えておくこと(3.1)と準備(3.2)があります。どちらも非常に重要です。それから具体的な検討に入ります。30年総工事予算を決めて、総工事予算の配分を検討し、(3.3) 各工事予算の削減も検討します。(3.4)そして仕上げにリスクの分散を確かめ、必要に応じて修正をします(3.5)

3.1 まず考える

分散修繕計画を考える前に、ビル資産所有者としては次の3つは常に考えておきます。

ビル維持工事予算の財源を考える
原則、安定財源を考えます。つまり収益ビルなら賃料収入、企業なら事業売上、個人であれば個人手雲集です。既に修繕資金の準備や、臨時財源の予定がある場合は、ボーナスとしておきましょう。

将来のビル使用者を想像する
今後30年のビル使用者を、具体的に想像します。例えばビル使用者は女性が多いか、男性が多いか、若年層が多いのか平均年齢が高めか・・、使用は事務所か、店舗か、事務所と一言言っても、来店型か、堅い雰囲気か、自由なスタイルを好むか・・手法としてマーケティングのペルソナ手法が役に立ちます。

30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子
すると現実的な」予算で、将来おビル使用者が使用している自ビルはどんな様子でしょうか?

具体的に想像をします。将来の自ビルの在り方に解はあ解りませんから、普段から自由に考えておきます。当然に何の工事をするか?の結果ですから、次の検討の過程でも何度も見直します。

3.2 準備:必要工事を洗い出す

実際に30年分散修繕計画の作成に入る前に、もう一つ準備があります。それは、ビルの使用維持に必用な工事を洗い出して、優先順位をつける事です。また過去の修繕履歴も調べておきます。 場合によっては、資料を探したり、管理者等に聞いてみたり、設備工事業者に意見を聞いてみたり、少し時間がかかる事があります。ただし工事業者の調査や見積書は必要ありません。ここで見落としがっては話になりませんから、必要な時間をかけて確認をします。

3.21 自ビルの建物設備機能を全て洗い出す

潜在的な工事対象は、すべて洗い出しておきましょう。

業者が作成した長期修繕計画表がある場合には、その項目を見ます(キュービクル、給排水管等、概項目で十分です。細かい項目は工事業者の考える領域です。)竣工図は細かすぎます。長期修繕計画表がなければ、ビル管理会社/管理人に洗い出してもらうか、目視で点検確認をします。

3.22 洗い出した自ビル建物設備機能の方針を分類する

洗い出した工事候補対象を、まず次の工事方針で分類します。2.13 30年後の自ビル使用者が使用している自ビル像実現を目指します。最初はなんとなく、経年で推察して分類で構いません。どうせ後で見直します。

3.23 工事対象候補に優先順位を付ける

分類した工事対象候補に、優先順位を付けます。といっても3分類(絶対必要/なるべく必用/できれば)に分ける程度で構いません。もし同一カテゴリ内でどれを入れるか・・となったその時に、相互の優先順位を考えれば十分です。ついでに4分野に分類をしておきましょう。後で色々考えやすくなります。

3.24 工事対象候補の優先順位付けでの留意

工事対象候補の優先順位付けは、想像つくと思いますが、重要です。かつ簡単ではありません。 基準は、将来の建物にとって「必須」「なるべく必要」「あればうれしい」です。このカテゴリは建物の使われ方やグレードによって異なります。例えば高級ホテルや高級マンションであれば、利便性や快適さは高いレベルで「必須」ですが、普通のビルであれば、「あればうれしい」です。 収益ビルの考え方は、30年安定ビル資産経営計画作成で、みてみます。自用ビルであれば、その工事と、「総工事予算を節約して利益を得る事」、とを天秤にかけて、選ぶ事になります。

3.25 リニューアル/新規追加工事対象について、具体工事名を挙げる

30年内にリニューアル/新規追加工事に分類した対象建物設備機能等について、実際に必要となる具体工事を調べます。中には技術が変わって単純リニューアルではない対象もある事には留意します。例えば屋上高置給水タンクは、現在では直結増圧式が水道局で推奨されています。

3.26 優先順位が高い工事の予算目線も調べておく

各工事予算の目線も調べておきます。現在であればインターネット検索でかなり調べられます。わからなければ、ビル管理者や工事業者にさらりと聞いてみます。調査や見積書作成は提案を受けても断りましょう。

各工事予算目安には、幅があります。だから各工事予算は、例えば200万円~400万円といった費用幅として把握しておきます。

3.27 過去の対象工事履歴の整理もしておく

また、先に過去の建物設備機能のリニューアル等工事の履歴を確かめておきましょう。ビルの状態理解や工事サイクル検討の重要情報です。

いつ頃どこをどうする工事をしたか、だいたいわかれば十分です。正確な年月や金額は必要ありません。

過去の工事履歴情報があれば一番ですが、無い場合過去の確定申告書を見ましょう。税理士が固定資産一覧表を作成管理している場合には、それが参考になります。ただ本来資本的支出対象工事を修繕費計上している場合もあるから、要注意です。記録がなければ、人の記憶や目視で工事の後をみつけて、なんとなく推測しておきます。どのみち築25年前は、それほど大きな工事はしていません。


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3.3 分散修繕計画作成の考え方

まず、「自分の予算」「低予算」「物」の大まかな低リスクを考えます。 数字と物のバランス、現在の将来のバランスをを取る「低リスク」は、この後に考えるので、ひとまず置いておきます。

3.31 30年分散修繕計画の考え方

30年分散修繕計画は、自分の30年総工事予算を決めて、そこにいつ頃何の工事にどの程度の予算を配分するか、の計画です。
同じ30年総工事予算でも、

  • 何の工事を必要と考えるか?
  • どの程度の予算を割り当てるか?
  • いつ頃必要と考えるか?
で、30年後のビルの様子は大きく変わってきます。だから色々検討をして、「低予算」「低リスク」かつ、「先に考えた30年後のビル像」を実現できる組み合わせを見つけたいのです。

更になるべく工事予算の無駄をなくすために、30年総工事予算そのものの、削減も検討をします。

3.32 30年総工事予算を仮決めする

まず、30年総工事予算を仮決めします。 原則は、毎年一定金額確保です。
理想は、自用ビルであれば賃貸を想定して3%‐5%
収益ビルで財源である賃料収入の5%-10% 財源確保が厳しければ、可能な限りで十分です。例え年間100万円でも30年で3000万円分工事ができます。

3.33 必要工事に工事予算を配分してみる

30年総工事予算の箱を仮決めしたら、既に確かめた工事優先順位に従って、予定工事を入れていきます各工事予算は、この後の「各工事予算削減」でもっと考えますから、最初は調べた工事幅から、任意で選んでおきます。

最初は、全然予算が足りない!と絶望的に感じる事は普通です。

3.34 必要工事を調整する

工事予算のやりくり手法として

  • 工事時期を先延ばしにする
  • 工事対象を減らす
  • 各工事予算を削減する
があります。もちろんいずれも数字操作ではできません。

3.35 工事時期を先延ばしするとは

工事を先延ばしにするというのは、「壊れたら工事」式でもよくやる手法です。

ただこれはやりすぎると、現在の数字リスクを高めない一方、その過程の「物」リスクと将来の「物と数字」リスクを高めます。 ビルを長く使う場合、各必要工事は、工事サイクルとして考えます。これはこの後ご紹介しますが、自ビルの適正工事サイクルは自分で決めます。そして自ビルの適正工事サイクルからどの程度先延ばしにしてよいかは、工事対象にもよりますから、個別に検討をして、決めます。

3.36 工事対象を減らすとは

工事対象を減らすとは、優先順位の低い工事対象を、30年の「工事対象」から、「次の30年では工事しない」もしくは「廃止」に再分類をする事です。

  1. 工事時期を先延ばしにして、次の30年では工事対象に入れない
  2. 工事対象の建物設備機能を、使えるだけ使った後は廃止にする
先延ばしはすでにご説明しましたが、廃止も含めて、その結果で、30年の自ビルの在り方は変わります。だから工事対象を減らす場合は、「30年の自ビルの在り方」をよく考えて検討をします。

3.37 各工事予算を削減するとは

工事予算の削減とは、もちろん見積書の単価や総額を叩く事ではありません。見積書の中身は、各工事業者が考える事です。素人の口出しや、また意見をもらおうと見積書を他社に見せるような事は厳禁です。そこで「ぼったくられているかも」と感じるような信頼できない専門業者に、相談をしている事に問題があります。

資産所有者の目で見ると、ビルの工事費用には、性格的に次の分類ができます。

中身は次の2.4 各工事予算の削減で見ます。 それぞれ専門工事業者の考えもあり、必ずしも実際の工事でその通りに出来るとは限りませんが、資産所有者として適正水準を考えてある事で、実際の工事の場面でそれぞれを話し合い、工事内容を煮詰める事ができるようになります。

3.38 判断の基準は、将来のビル像実現と、その過程での負のサイクルリスク

この検討において、意識をすべきが、先に ご紹介をした将来のビル像と過程のリスクです。



つまり望ましい分散修繕は、将来の利益を得るために、低予算で資本的支出工事を行い、かつ低リスクを維持して途中も物や数字のリスクを高めないのです。

この実現度は、計画の比較検討でしかわかりません。(単独案では判断ができません。) だから沢山の可能性を比較検討して、より望ましい案を選んでいくのです。

3.39 工事予算削減とは、将来のビル像の見直し

また工事予算の削減とは、つまり将来ビル像の見直しです。まあ最初はたいてい、贅沢に想像しているので、工事予算削減と同時に、将来のビル像も見直しを繰り返します。

ここで大まかな方針として、
シンプルビル化(すべてにわたって、必須以外の機能性能グレードを削ぎ落とす)

個性ビル化(費用投下にメリハリをつける)
は、是非考えておく事をお勧めします。 またもちろん30年総工事予算そのものの削減にも取り組みます。

工事予算削減は、経験とともにより思い切った削減ができるようになります。何度も計画を見直し、より低自分の予算かつ低予算低リスクで、よりよい使用経営利益を生み続ける自ビルを追求します。


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3.4 各工事予算の削減

ここでは各予算削減の重要なポイントをまとめて確かめます。工事サイクルは、工事予算そのものの削減ではありませんが、長い目で見て各工事の総工事予算を削減します。

基本は建物としての方針を見つけます。(それが一番無駄がありません。)ただ、工事対象によって色を付ける事で、より柔軟に予算を削減したり、またはより個性あるビルを実現したりすることができます。

■ 工事時期の考え方(工事サイクル)
各建物設備機能や内装等のリニューアル工事は「サイクル」です。1度で終わりでありません。このサイクル概念が非常に重要な理由は、ここをどう考えるかで100年200年といった長期での工事総額が大きく変わるからです。エレベータの例は次の通りです。

完全に機能停止すれば別ですが、その前の「経年劣化状態」の判断は人によって違います。その時間的幅は大変広いのです。ただリニューアル工事を早め早めに行えば「物」の事故のリスクは高まりません。けれども長期間で総額が相当に高額になります。一方でリニューアル工事を引き延ばせば、工事費用は節約できますが、「物」の事故リスクは高まります。だからどの程度にするか、「物リスク」と「数字リスク」を天秤にかけて自分で決めなければいけません

尚、素材や工法の進歩でサイクルが劇的に伸びるものもあります。(例えば給排水管が鋳鉄管から塩ビへ移行)そもそも終了するものもあります。(多くの地域で屋上高置給水タンクが推奨されなくなった)

■ ソリューションの選択
1つの問題対応にソリューションはいくつもあります。高額なもの、安価なもの、築古ビルとしてどの程度が必要か、適切なソリューションの検討も、工事予算削減には欠かせません。過剰なほど営業熱心な傾向があるだけに、自分でよく考えなければいけません。



■ 工事業者のサービス水準
誰も教えてくれないけれど、工事費用インパクトが大きいのが、相談をする業者のサービス水準です。腕の良し悪しの話ではありません。

高レベルのサービスやマネジメントには、その分費用を請求されて当然だという事です。サービスやマネジメントの良さは、工事の「安心」です。「安心」はお高いのです。費用水準が低い業者に、高サービスを求める事は、「業者いじめ」と言います。

建設業者に相談をすれば、実績あるプロが工事内容を考え、プロが工事を監督し、手厚い説明とサポートで安心です。ただ工事総額の30%の工事監理費その他多くの管理費が発生して超高額です。自分でDIYで工事をすれば材料費だけ、または職人に指示すれば、+人足代で済み激安です。YoutubeビデオでDIY を学べる時代です。ただ工事内容を決めて材料を選び施工まで全てが自己責任です。どの程度が自分には望ましいか、決めるのは自分しかいません。

■ 機能性能グレードを決める
ここも予算への影響が大きく、「ケチ」の腕の見せ所です。 工事に際し、どのように工事をすべきかは工事業者が決める事ですが、その仕上がりの機能性能グレードをどの程度必要と考えるかは、工事発注側の判断です。例えばエレベータ更新でも、せっかくだからと内装のグレードアップや、震災時制御やらテレビモニターやらを付けると、相応に金額が嵩みます。空調にしろ消防設備にしろ、付加価値を付ければ費用が嵩みます。内装工事も、高級やデザインを追求すれば、費用は天井無しです。

機能性能グレードは工事業者に利益になる事と、後から足りないと文句を言われないために、余裕を持った提案になりがちです。この程度で十分。はビル所有者側が言うべき事です。日本の建物は設備機能グレード過剰が多いので、ここは予算の削減しどころが沢山あります。

■ 素材等(耐久性等)を決める
素材、時に工法についても、予算と相談をして決めます。「どうせ工事をするなら長く使えるものを・・」は合理的に聞こえますが、 それだけの「高額費用」をそのタイミングで出す事が合理的か、も問題です。例えば屋上防水工事も、保証期間が5年、10年、20年と伸びると、相応に費用が増額します。

■ 工事範囲
工事範囲も、予算削減の重要ポイントです。日本では「どうせ工事をするならまとめて行った方が、共通費が節約できる」と考えられがちですが、実は違います。中間費が増え、また使える部分もスクラップにする無駄があります。

例えば1フロアで漏水事故が頻発するから排水管を更新する際に、ついでだから全フロアを更新するのは、合理的に聞こえますが、他フロアは漏水事故もなく後100年使用できるかもしれません。工事規模が大きくなると、中間費も増額します。隠れ費用も増えます。建物使用者への影響が大きくなります。


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3.5 リスクの分散

だいたい30年分散修繕計画の概要が出来たら、最後にリスクの分散を確かめます。もしリスクが高まる時期があるようであれば、更にリスクの分散を調節します。 まず「数字のリスク分散」次に「物のリスク分散」の順番で見ていきます。

3.51 リスクのコントロールと分散

先にすでに確かめていますが、古いビル資産でリスクゼロはありえません。ただ「物」リスクと「数字」リスク、「現在リスク」と「将来リスク」のバランス取る事で、特定リスクを高めず、負のサイクルに陥るリスクを低減できます。その方法が、リスクの分散です。

3.52 まず数字のリスク分散

30年分散修繕計画の作成では、まず数字のリスク分散から取り組みます。工事の判断は、現在の物のリスク対応です。それを基本、先に考えた30総工事予算の箱の中で、予算計画に合わせて予算を準備してから工事をする事で、赤字負債を作らず、数字のリスクを高めません。

3.53 現在から将来に至る物リスクを確かめる

とはいえ、例えば重要工事の工事サイクル時期が重なっていた場合、単に数字操作で後回しにしては、工事サイクルには余裕があるとはいえ、一部の物のリスクが高まります。

30年分散修繕計画で、30年に渡る各年の各建物設備機能の状態とビル全体の状態を、想像して確かめます。将来の物リスクの高まりは、その後に対応のための数字リスクの高まりを意味します。

3.54 必要に応じて将来に至る物リスクを調整する

工事予定時期には幅があるとはいえ、重要工事時期が重なって前後の調整が難しい時期がある場合があります。どちらかの工事を遅らせると物リスクが高まってしまいます。特に築50年前後であまり必要工事をしてきていない場合、最初の10年で重要工事が重なります。

  • より重要な工事を早めに行う(サイクルは変えずに)
  • 重要度の低い工事を少し後ろ倒しにする(サイクルは変えずに)
  • 重なる時期の工事規模を更に分割して予算を下げる
  • 重なる時期の工事予算を更に削減して予算を下げる
  • 臨時予算増額

3.55 30年分散修繕計画は沢山作る

リスクの分散を確かめると、1つの30年分散修繕計画の出来上がりです。

ただ1つ作成で終わりではなく、沢山作成します。エクセルのシート及びファイルをコピーして、思いつく色々な可能性やリスク検討のバージョンを作ります。

決めるとは選択です。どうせ将来はわからないからこそ、多くの可能性をシミュレーションをする事で、少なくとも避けらるリスクを避ける事ができます。そして状況に合わせた臨機応変な判断ができるようになります。

3.56 いずれ計画なしでも自然に分散修繕ができるようになる

資本的支出工事は、築40年-築50年前後は最初の経年劣化時期が重なり、大きな工事も重なるかもしれませんが、山場を越えれば、後は自然に工事サイクルが分散されます。

自ビル維持のために毎年準備しておく分散修繕の工事予算も、予算感を掴めば、後は計画なしでも、自然に準備ができるようになります。

そうして時々、「低予算」「低リスク」で「負債化させない」ようにビルの経年劣化部分のリニューアル等工事を行い、分散修繕が出来ている築古中小ビルは、古くても建物設備機能や見た目が酷く悪化する事はありません。気が付いたら現在ビルは、築100年築200年を過ぎているでしょう


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Ⅳ 実際の工事取り組みの流れ

30年分散修繕計画が出来たら、ここでそれを活用して実際の工事判断をどのように進めるか、例をご紹介します。工事取り組みスタイルに決まりはありませんから、この通りである必要はありませんが、相談をする専門工事業者に過大な負担を与えない配慮及び資本的支出工事で相見積りは厳禁であることは、留意をしてください。

4.1 実際のビル資産維持工事検討の流れ

実際のビル資産維持工事のような重要工事検討の流れは、次の通りです。

ビル資産所有者は、工事の必要性を認識すると、30年分散修繕計画をもとに、必要に応じて他の工事も調節して、工事予算を確保し、工事の検討を始めます。

4.11 資本的支出工事の必要性を認識する

工事の必要性の認識は、前の資本的支出工事の後、毎年次の分散修繕工事予算を留保する段階で決める場合もあれば、予算だけ留保しておき、きっかけがあった時に、予算の配分を決めます。

予算を準備し、また相談する専門工事業者を探して相談をする・・・といった事前準備ができるよう、年月の余裕を持って前もって認識をします。

きっかけは、該当建物設備のトラブルが増えたり、見た目が経年劣化していたり、建物管理者が工事が必要と言うトーンが強くなってきたり、30年分散修繕工事計画で今後の工事予定を考えて、ここで工事をしてしまおうと考えたり、様々です。

4.12 30年分散修繕計画表を確認する

30年分散修繕計画表を確認し、他の工事予定と重ならないか、ここで分散修繕予算を使う事ができるか、確認をします。ここでバッティングがある場合、改めて調整を検討します。

  • より重要な工事を早めに行う(サイクルは変えずに)
  • 重要度の低い工事を少し後ろ倒しにする(サイクルは変えずに)
  • 重なる時期の工事規模を更に分割して予算を下げる
  • 重なる時期の工事予算を更に削減して予算を下げる
  • 臨時予算増額

4.13 相談する専門業者を探す

基本は、2.41 工事業者のサービス水準 で決めたサービス水準の業者を探します。管理会社や人の伝手、HP検索など方法はいろいろあります。

誰かの紹介だから、で決めるのではなく、まずなるべく多くの業者と話をします。この業者で良いかどうか分からないという場合、それは話をする数が足りていないのです。

最初は話をします。ゴールは、より具体的な相談に進む業者を決める事です。最初から見積書作成や現地調査は断ります。まず同様事例や費用目線を聞きます。それから自ビルお問題に対してどう対応を考えるか、軽く聞きます。評価は、実力や仕事に対する熱意、同様事例の経験、それから人間的相性です。ただ営業担当者がトークが上手なだけ、という場合もあるので、そこは留意をします。

次に分散修繕計画作成で考えていた、

  • 工事方針
  • 機能性能グレードの目線
  • 耐用年数及び工事個所の考え
  • 予算目線
を伝えます。所有者側の考えに対して、どのような態度でどう言うかは、重要な相性の評価ポイントです。

緊急ではない限りここは妥協せず、1年2年3年かけてでも、じっくり納得できる専門業者を探し求めます。もちろん望ましくはもっと早くから専門業者サーチをしておく事です。

4.14 相談する専門業者を選ぶ

感触の良い専門業者に出会えるようになったら、相談をする専門業者を選びます。

  • 技術
  • 経験
  • 費用
  • 相性
  • その他
それぞれで評価点をつけて、比較検討をしてもよいでしょう。

ここは契約ではないので、必ずしも決めなければいけない訳ではありません。また複数の専門業者に同時に相談をする事も可能です。ただ、それなりに相談をする側にも相手側にも、手間と時間の負担をかけますから、なるべく1回で済むように、慎重に選びます。

4.15 専門業者と事前相談をする

ここで現地調査が入る場合もあります。ただしまだ見積書は貰いません。 最初に伝えた、分散修繕計画作成で考えていた、

  • 工事方針
  • 機能性能グレードの目線
  • 耐用年数及び工事個所の考え
  • 予算目線
を改めて伝えて、具体的に何が実現できて何が難しいのか、どう代案があるのかを話し合います。また将来のビル使用者や他の工事計画等も話をしておくと、専門業者さんもより具体的に考えやすくなります。この時点で、専門工事業者から意見が入る場合もあるでしょう。すれば提案の方針を話し合います。

最初の提案が出てきます。最初から完璧な案が出てくる事はまずありません。最初の提案が出てきたら、お互いに意見を出し合ってブラッシュアップをしていきます。 話し合いをすると、ビルの方針に沿ったベストな提案を考えてくれる専門工事業者と、専門工事業者の方針を押し付けようとしてくる専門工事業者と、どちからわかるようになります。そこで相手の専門業者とどうも相性が悪いと感じた場合には、なるべく早めに断りましょう。現地調査が入っている場合、調査費用だけお支払いする場合もあります。

4.16 30年分散修繕計画表に入れて全体の計画を確かめる

ある程度予算目線が見えたら、30年分散修繕計画表で、該当工事について現在に予算を入れてアップデートします。数字リスクを上げないように、他の工事予定も修正が必要になるかもしれません。 この時点で予算を使えるか、他の工事予定に影響はないか、全体を見て確かめます。

どうして物のリスクが高まる場合は、「3.54 必要に応じて将来に至る物リスクを調整する」の調整を入れます。

4.17 工事見積書作成及び最終ブラッシュアップ

ある程度工事案が固まり、またこの専門工事業者さんで任せられる、と思えたら、工事見積書の作成に進みます。通常工事見積書には有効期限があります。見積書はほぼ発注の意思が固まってから作ってもらうものです。

もちろん見積書が出てきたら、中身についても詳しい説明をしてもらいます。そこから細かな修正を入れる場合もあります。費用削減や負けて交渉は、ケースバイケースと言っておきます。

緊急ではない限りここは妥協せず、1年2年3年かけてでも、じっくり納得できる専門業者を探し求めましょう。望ましくは早くから専門業者サーチをしておく事です。

■ 相見積もりは厳禁

分散修繕対象のビル資産を維持するための資本的支出工事では、相見積りは厳禁です。現在費用節約を狙って現在のリスクを避けて、将来のリスクを上げる行為です。

ちなみに公共工事では相見積りを行いますが、役所が工事仕様書を作成します。時に工事仕様書を作成するコンサルタントを雇っています。そして安い業者に依頼したことを議会で説明するために行いますが、談合等問題が多い事はご存じの通りです。

けれども一般の私達は、工事仕様書など作成できません。そして「低予算」=必要以上の工事(内容)を省いて工事予算を削減するには、専門工事業者に考えてもらう事が沢山あります。ただその「考えてもらう」は無料ではありません。相手に考える時間、手間、そして何より貴重な知恵をサービスしてもらっています。これは相見積りをするなら、本来コンサルタントにお金を払って考えてもらう事が含まれています。

ところが、相手が手間と時間と知恵を費やして作成した見積書を、安易に相見積りと称して他の専門工事業者に見せたり、内容を話したりする中小ビル所有者が後を絶ちません。これが非常に問題になっています。

例えばそこでAという工事業者が考えた見積書を、相見積りと称してBの工事業者に見せれば、それはA社のアイデアをB社に流出させる窃盗行為です。B社はA社のアイデアをいただいた上で、アイデアを考える手間もなく、より安い見積書の作成ができます。ただB社もそんな人のために、良い仕事はしません。A社もB社も、将来にわたってそのような人は信頼しません。

相見積もりの背景にあるのは、「ぼったくられるのではないか不振」「相手を損させても自分だけは損したくない」という、業者不信です。それでは、工事業者と良い関係を築き、低予算でかつ良い仕事をしてもらう事は難しいでしょう。

本当に工事業者に、低予算で良い仕事をしてもらうためには、相見積は絶対に厳禁です。

4.18 工事請負契約の内容と補償・保証もよく理解しておく

工事請負契約締結に際しては金額及び支払時期、工事内容及び工事期間の確認はもちろんのことですが、発注側の重要権利として、

  • 請負工事としての補償(賠償)対象及びその期間
  • 工事の保証内容及びその期間
は必ず確かめておきます。賃貸借契約書同様に、工事請負契約書も、トラブル解決マニュアルです。また追加費用発生する恐れがあるのか、ある場合にはどのようなケースなのかも、事前に説明を受けておきましょう。

4.19 工事は共同プロジェクトだが、工事中リーダーは工事業者

資本的支出対象の工事は、基本ビル資産所有者と専門工事業者の共同プロジェクトです。検討の段階では、ビル資産所有者がプロジェクトリーダーですが、工事請負工事契約を締結した後は、工事終了まで、専門工事業者がリーダーです。

専門工事業者は工事を請負い、工事期間中は自らリスクを請け負って工事をしてくれます。だから専門工事業者の工事取り組みに協力し、素人口出しで邪魔をしてはいけません。発注者としても、工事中は不慮の事態にいつでも対応ができるように、心積もりをしておきんます。

4.20 工事が終了したら

工事が終了したら、工事完了検査は必ず立ち会います。 工事仕上がりで気になった点は、すべて遠慮なくここで言い、修正が必要であれば修正をしてもらいます。図面、工事仕様書、説明書、保証書の類の書面は必ず受け取ります。

4.21 工事保証期間の終了前

工事保証期間がある場合には、補償期間終了の直前に、自分で点検をするか、工事をした専門工事業者に工事保証終了前点検をしてもらいます。(空調や消防設備といった「物」系はあまりやりませんが、屋上や外壁の防水等工事は、必ず見てもらいます。)


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Ⅴ 主要工事の取り組みヒント

ここでは、主要工事取り組みのヒントをご紹介します。

5.1 電気設備・幹線

キュービクルある建物では、電気主任技術者と相談をします。キュービルのリニューアルが必要な場合でも、中の設備の必要部分だけを交換する、箱ごと総リニューアル等いろいろなやり方があります。もちろん後者が高額です。

近年電気使用量が増えて、増えた電気使用量に合わせて電気幹線も交換する場合もあります。

部屋の照明器具やコンセントは、内装リニューアルの際にリニューアルし、LED化もされていると思いますが、古いコンセントは火災リスクがあります。また蛍光灯は廃棄費用が高額になりつつありますから、あればどこかで更新をします。 忘れがちが収益ビルの子メータですが、法律上は、10年に1回交換です。

5.2 給排水管・設備

排水管漏水はよくあるトラブルです。昔の鋳鉄管や、ジョイント部分に鋳鉄管が使われているタイプでは、更に錆リスクがあります。 水使用量が多い居住用マンション・飲食ビルは、漏水事故が起こりやすいですが、水使用量が少ないオフィスビルは、さほど漏水事故は起こりません。

よほど酷くならない限り、ライニング工法(管更生)工事で対応ができます。ただ漏水事故が頻発する箇所では、該当横菅を更新します。

ビル・マンション等の給水は、昔は高置給水タンクが一般的でしたが、現在は多くの地域で、10階建てくらいまでは、直結増圧式が水道局に推奨されています。(時々対象外がありますが、給排水菅工事の業者に聞けばわかります。)高置給水タンクから直結増圧式にリニューアルをすると、建物内水質が良くなる上に、毎年の高置給水タンク清掃・保守・修繕費が発生しなくなります。ただ一方で、単純リニューアルとはならず、給水縦管を増圧に耐えられるものにリニューアル、ついでに排水縦管もリニューアル。また必要なくなった屋上高置給水タンクを地上に降ろす、その後を防水処理する・・等工事が不随して総額が高額になりがちです。やるにしろ、予算確保とタイミングは30年分散修繕計画で計画をします。

給水ポンプや排水ポンプは、定期的に壊れますから、その都度修繕費で交換します。

5.3 外壁・屋上

外壁は、マンションも含めて大規模修繕工事業者は数多くありますが、高額になりがちな一方で、サービスや考え方が千差万別で、業者を選ぶのも工事内容を決めるのも、大変難しい領域です。

外壁修繕工事には、雨漏り止める、美観を回復する、防水保護をする、の3つの目的があります。同時に鉄部やサッシ工事等を行う場合もあります。それぞれ何が必要か、どうすべきか、丁寧に話し合います。 市街地の防火地域の耐火建物で隣建物と隣接している場合建物は、前面だけで手入れで済む場合がほとんどです。(雨漏りがない限り)外壁タイルが古く、補修タイルが手に入らない場合、タイルの上から塗装する手法もあります。このあたりはアメリカでは既に3Dプリンタで安価に補修タイル作成ができていますから、3Dプリンタ修繕の導入を待ちましょう。

屋上の防水塗装は、既に行っていると思います。近年防水工法によって、10年や15年20年等がありますから、予算と相談をして選びます。防水工事は必ず保証があります。保証内容をしっかり確かめます。

5.4 エレベータ

エレベータのリニューアルは、やり方で費用インパクトが多いところです。だから慎重に考えましょう。

エレベータリニューアルの判断そのものの相談相手は、現在のエレベータ保守会社です。だいたい築30年を過ぎると交換を言われます。40年程度で保守部品保管期限が過ぎたという手紙をもらう事がありますが、部品はあるものです。(他の交換エレベータから取った部品が保管されています。)既存不適格を指摘される場合がありますが、これは違法ではありません。

ただしリニューアルに際しては、リニューアル費用+30年の保守費用の総額で考えます。

■会社を選ぶ
エレベータ会社には、メーカー系と独立系があります。前者は、三菱・日立・東芝・日本オーチス・フジテックの5大メーカー三菱や東芝といった大手メーカーです。独立系は、多くは保守会社ですが、自社でエレベータ開発をしている会社や外資もあります。両社を比較すると、メーカー系は高額で独立系はかなり経済的です。

■工事内容を選ぶ
エレベータのリニューアル工事は主に2つのやり方があります。基盤交換と籠ごと交換です。前者は、経年劣化するのはエレベータを制御する基盤だから、その基盤だけを交換します。ただ数十年たつとエレベータ内部も汚れてきます。新しい地震制御や緊急通話等の追加もしたい。すると籠ごとすべて全交換することになります。もちろん後者の方がはるかに高額です。

■その後の保守メニューを選ぶ
エレベータ保守には、フルメン契約(フルメンテナンス)とPOG契約があります。フルメン契約では、故障の際の対応や(軽微な)交換部品がすべて込みです。POG契約は、故障の際の対応を都度修繕工事費として支払います。ただしフルメン契約は、毎月のエレベータ保守費がPOG契約と比べて、はるかに高額です。エレベータリニューアルの際は、その後の保守について、両方の費用を聞いて、それぞれの30年総額を比べて、どちらにするか選びます。例えば30年総額で、フルメン契約の方が1千万円よりはるかに高い場合、それでもう1回エレベータリニューアルが出来る訳です。

5.5 内装工事

日本では内装工事もすぐに、内装工事業者にお任せですが、本場ヨーロッパや他国の一般のビルやマンション、戸建て住宅所有者は、内装工事のかなりを自分でやります。建物内部のリフォームを、必要なところだけ職人さんを雇って、住みながらすべて自分で工事をする人も少なくありません。現在では、工事のやり方を教えるyoutubeプログラムも沢山あります。

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はじめに
→ 建物を負債化させずに長く使用するための分散修繕
→ 地域賃貸マーケティングで賃貸も継続する安定ビル資産経営 
→ 建物資産のアセットマネジメントと多面性

ビル等ご所有建物の資本的支出工事の取り組み、地域賃貸マーケティングを基にした安定ビル資産経営、その他所有問題から、管理改善、賃貸工事等ソリューション選択まで、ビルオには縮小時代日本のビル資産所有者・経営者・後継者のお悩み、ご相談に応えるすべてがあります。ご所有ビルはまだ100年超使用経営利益を産む資産です。一棟から十数棟ポートフォリオ、更に古い建物の街づくりまで。まず無料オンライン相談でお話をしましょう。ご要望に応じて守秘義務誓約書を差し入れします。

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