築40年以上中小ビルの分散修繕2

賃貸リスク

築40年以上中小ビルのリスク管理と分散修繕計画の取り組み方


分散修繕では、築古ビル賃貸こそ面白いのです。

2空ビルになるリスク

ビルの賃料収入は、建物維持の原資です。だから空室が長期化するリスクも、対応しないという選択肢はありません。

ビルが古いからテナントに選ばれないことはありません。経年による劣化や陳腐化が問題であれば賃料を下げれば選ばれます。環境変化で需要がなくなった場合は、ビルの責任ではありません。

空室が長期化するリスクがある時、できることは主に次の4つです。

1 不動産屋を変える。
2 賃料を下げる。
3 物件価値を上げる。
4 マーケットを変える。

特別なことはありません。ただ問題は、選択と内容を間違えると長期的には赤字負債になるリスクも高いことです。

・そのままテナントが入らず空室が続き収入が減少する。
・費用投資をしてもテナントが入らず、損失が広がる。
・費用投資をしてテナントが入ったが、短期間で退去をしてまた空室が続く。
・費用投資をしてテナントが入ったが、費用が高額すぎて10年でも回収できない。
・費用投資又は賃料を下げてテナントが入ったが、新テナントが他のテナントと合わず、他のテナントが退去をしてしまう。
・賃料を下げてテナントが入ったが、賃料収入が減少して建物維持が難しくなる。


空室が長期化リスク要因は次の3つがあります。

1 賃貸マーケット要因
2 不動産屋要因
3 物件要因

 

空室が長期化するリスクの解決は、その要因に応じて異なります。 だから空室が長期化するリスクの対応を間違えないためには、まず要因を理解し、要因に応じた検討アプローチで対応を見つけます。 また同時に、長期的に赤字負債リスクを高めることがないよう、長期的な効果検証も行います。この2つの準備があってようやく、空室が長期化するリスク対策ができます。

ちなみに賃貸マーケット要因と物件要因は、表裏の関係にあります。賃貸マーケット要因は、常に存在します。 ここでは変則的に、先に不動産屋を変える以外の3対応について、解決とその検証を見ます。それから3つの要因を確認します。賃貸上級者のビル所有者でも退屈しません。

解決2 賃料を下げる

 

募集賃料を下げる方法は、ビル所有者にとっては初期投資リスクなしに出来る手軽な手法です。
賃料を下げるとは、賃貸マーケット内での自物件ポジションの下方移動です。現在の物件がどのポジションでなら競争力が発揮できるかを確かめた上で、競争力が得られる募集賃料ポジションにステップダウンします。
しかし賃料を下げれば賃料収入も減少します。赤字負債へ近づきます。賃料をどこまで下げられるかは限度があるため、検証が必須です


賃料妥当性の検証

次を確認します。

・賃貸マーケットに部屋を探しているテナントがいること
・より少ない下げ幅で可能性がないこと
・不動産屋要因ではないこと
・限界賃料より上であること
・管理及び分散修繕に影響がないこと
・管理及び分散修繕に影響があっても見直しができること
・低賃料テナントと既存テナントとの相性が悪くないこと

留意点は、 賃貸マーケットに部屋を探しているテナントがいることとより少ない下げ幅で可能性がないことは、いずれも賃貸マーケット要因の理解の確認です。また賃料を下げないと無理ですよ、と不動産屋はしばしば言いますが、そもそも不動産屋が適切にPRと営業をしてくれているのかも問題です。 以外に知られていないのが、テナント相性です。安い賃料で入居したテナントが前からのテナントと合わず、前からのテナントが退去したり、減賃交渉をしてくることはしばしばあります。
恒常的な賃料収入減少を避ける方策としては、期間を定めた定期借家契約、段階賃料導入等の方法があります。こうした手法は、それぞれ後々トラブルのリスクもあるため、得意とする不動産屋を選び、トラブルリスク回避します。

解決3 物件価値を上げる

物件価値を上げる方法として一般的なリフォーム・改装は、初期投資を伴うリスクの高い投資です。なにしろ、

・リフォームをしたけれど内容がテナント希望と合わず、選ばれない
・リフォームをしたけれど、そのような部屋を探しているテナントがいないため選ばれない。
・リフォームをしたけれど、内容が足りず選ばれない。
・リフォームをしたけれど、さほど賃料収入が上がらず費用改修ができない。

いずれも冗談では済みません。
つまり正しい改善対象の選択に加えて、本当に希望賃料でテナントが入るかの効果検証及び費用回収ができるかどうかの赤字負債リスク検証の両方が必要です。


解決3-1 一般的な物件要因の改善方法

一般的な物件価値を上げる物件要因の改善は、次の通りです。 

綺麗にする:壁・天井・床のリニューアル、キッチン・トイレのリニューアル
機能を改善する: 電気容量の増加、LED化、鍵の強化他、
使い勝手をよくする:トイレを男女別へ OA床廃止、空調変更、間取りレイアウトの変更他、
共用部を改善する:エントランス、ポスト、テナント名板、館銘板、入り口ファザード、エレベータ、通路、共用設備・施設の追加、非常用備蓄品他、


解決3-2 どの物件要因改善を行うか

物件価値を上げるにあたり、どのように行うかは、物件要因の理解に基づいて決めるものです。つまりビル所有者が手を入れたいところではなく、賃貸マーケットで物件を探しているテナントがここが残念と考えるところです。そしてさらに次を注意して絞り込みます。 


解決3-2 それは本当にテナントがこのビルに求めているものか?

内覧テナントにアンケートを取り指摘があったところを改善しても、そのテナントが必ず入居するとは限りません。テナント洞察はより深く追求しましょう。


解決3-2 それは本当に欠点か?個性ではないのか?

物件要因が実は個性ではないか。この一考は重要です。時に一見欠点もしくは他のビルとは違っているように見える点が、実は他のビルにはない自ビルの個性ということはよくあるのです。テナントに答えを全て教えてもらうのではなく、正しいビル経営で自物件の価値の理解も必要です。


解決3-2 変えられない物件要因ではないか?

物件要因には、変えられる物件要因と変えられない物件要因があります。変えられない要因を考えても仕方がありません。変えられる要因のみを考えましょう。変えられる要因は、トイレを和式から洋式に、室内のリフォーム、空調の更新、セキュリティ強化・・・たくさんあります。 変えられない要因は、建物のフロア面積、建物グレード、基本スペックのほとんどは変えられません。そこに文句を言うテナントは自ビルのテナントではないと考えるべきです。


解決3-2 変えられるが費用が高額すぎないか?

変えられる物件要因でも、費用が高額で費用対効果が得られないことは、これも考えても仕方がありません。この目安として、想定賃料から先に予算目安を逆算しておきます。予算よりはるかに高額な対応は最初から除外できます。


解決3-2 ライバル物件はどうか?

テナントから指摘された物件要因が、確かに問題だけれど他のライバル物件も全て問題がある場合、必ずしもその改善をしなければテナントが決まらないことはないでしょう。もし物件要因が複数あり、一部改善で十分に強みが回復するならば、全てに対応する必要は必ずしもありません。


解決3-2 費用は節約できないか? ?

物件要因の改善費用は、誰がどのようにやるかで異なります。リフォームありきではありません。

 


解決3-3 希望賃料でテナントが入るか効果の検証

本当に効果があるかどうか、不動産屋等なるべく多くの第三者の意見を聞きまくるに限ります。

・ターゲットとする賃貸マーケット及びポジショニングが適正か
・(所有者や業者の独りよがりではなく)テナントニーズにあった内容になっているか
・この改善で、本当に希望賃料でテナントが決まるか
・希望賃料でのライバル物件と比較して、競争力があるか


解決3-4 費用回収ができるかどうかの赤字負債リスク検証証

詳しくは赤字負債リスクのところで述べますが、次の数字を考えます。

a効果期間をどの程度見込めるか

効果期間が短いと、費用改修ができないリスクが高まります。効果期間の見込みは、解約不可の定期借家契約でない限り、テナントはいつでも退去できるため、正確な期間予測は不可能です。ただ物件価値を上げる内容が何年後のテナント募集まで通用するかを検討することは意味があります。

b 投資後どの程度の空室期間に耐えられるか

投資後に耐えられる空室期間が短い場合、確実にニーズに答えて選ばれるべくより慎重に考えるか、そもそも投資内容を見直すべきです。c 投資回収期間は許容範囲か

リフォーム業者等が費用対効果を教えてくれる場合もありますが、それはまず机上の空論です。実際には投資回収期間には実は2種類があります。

d 単純投資回収期間(年)=リフォーム等投資金額/ 投資後賃料*12
e 純投資回収期間(年)=リフォーム等投資金額/((投資後賃料-投資をしない場合の現状での賃料)*12

純投資回収期間(年)は計算の想定が高度なため、一般にはあまり使いません。とはいえ単純投資回収期間(年)は本来のビル管理経費等費用を考慮していません。だから2−3年より長い場合は、よくよく考える必要があります。

e 効果期間 >> i 単純投資回収期間(年)

であれば問題ありません。けれどもなかなか難しいものです。どの程度投資ができるかは、f 投資後どの程度の空室期間に耐えられるか及びh 分散修繕計画で影響がないかによって異なります。厳しければ厳しいほど、より少ない費用でより高い効果を出すために、頭を使って考えることになります。


解決3-5 物件要因対応以外の物件価値を上げる方法

賃貸マーケットでの魅力を高める方法として、物件要因対応以外に、賃貸借契約条件のニーズに応える方法があります。例えば退去時の原状回復免除や室内の一定の改装自由等の手法が知られています。 いずれも初期費用投資なしに効果を出す手法ですが、後のトラブルリスクも高いものです。手法に精通した不動産屋が契約書を作成することが条件です。弁護士確認をすれば大丈夫ではありません。実務を知らない弁護士では、どのようなトラブルを回避すべきか知らないからです。

解決4 マーケットを変える

マーケットを変えるとは、賃貸マーケットが縮小消滅した、もしくはすると予測される場合に、より将来性のある賃貸マーケットに移ることです。

・テナントタイプを変える
・シェアオフィスや貸会議室等オペレーションを導入する
・用途を変える

があります。マーケットの変更は、ほとんどの場合初期投資を伴う上、変更先賃貸マーケットとは初めて付き合うことになるため、高リスクです。隣の芝生は青くみえるからとマーケットを変えたものの、変えた先のマーケットに実はテナントがいなかったり、競争力を持てなければ、完全に赤字負債コースです。 この手法は、ビル経営スキルとして現在及び変更先の賃貸マーケット及びポジショニングを評価できることが必須です。また投資部分の考え方と検証は、物件価値を上げると同じですが、マーケットを変える場合には特に変更先マーケットの将来性を確かめます。


解決3-5 テナントタイプを変更

テナントタイプの変更とは、同じ事務所テナントであっても、例えば今までは士業等の硬いテナントが多かったが、ベンチャーを入れてみる、普通の事務所テナントばかりだったが、来店型店舗事務所も入れてみるといった場合に、ターゲットとするテナント属性を変えることです。テナントタイプを変えると、物件要因も変わります。

テナントタイプを変更する場合は、一室を変えると建物雰囲気が変わり他のテナント退去のリスクがあることの認識です。極端な例では、高い賃料を提示されて反社会勢力の事務所や店舗を入れたら、あっという間に他のテナントが退去をして建物が反社会勢力に乗っ取られるケースがあります。


解決3-5 オペレーションの導入

貸会議室やコワーキングスペース、シェアオフィス等の運営が該当します。 運営は、自ら運営をする場合と運営会社に部屋を貸す場合があります。運営会社に部屋を貸す場合、賃料が運営会社の売り上げと連動になる契約の場合もあります。 オペレーションが長期的にうまくいくかどうかは、マーケット以上にオペレータの運営手腕で決まります。したがって自分で運営をするならば、事業としての真摯な取り組み、運営会社に任せるならばオペレーション実績が確かな運営会社選びが、その後を決めます。


解決3-5 用途変更

用途変更は、例えばオフィスビルから賃貸マンションといった具合に、用途を完全に変更する場合です。手間も費用もかかるため、積極的な選択肢ではありませんが、自ビル用途での賃貸マーケットが消滅してどうやっても将来性が厳しい場合等、やらざるを得ないこともあります。 用途変更の多くでは、建築基準法上の手続きが必要です。消防署と相談が必要な場合もあります。手間と費用がかかります。用途変更の決断は、自ビルの賃貸マーケットと用途変更先の賃貸マーケットの両方の現在から将来の展望を、多方面から考えた結果であるべきです。隣の芝生は青く見えただけだったと用途変更をした後から気がついても、もう戻れません。


解決3-6 リスク検証

マーケットを変える場合のリスク検証は、物件価値を上げる場合のものと同じです。検証では特に移転先の新マーケットを客観的に評価できていることを確認します。移転先の新マーケットに強い不動産屋から、成功例より失敗例を聞くようにする等、情報が偏らない配慮を尽くします。

賃貸悪化リスクの要因

最後に3つの賃貸悪化リスクの要因をそれぞれ確認します。

1 賃貸マーケット要因
2 不動産屋要因、
3 物件要因、

要因1 賃貸マーケット要因

賃貸マーケットとは、物件を探す人の集合です。地域にテナント候補が少なくなると、賃貸マーケットが悪化したと言います。こした状態は、しばしば椅子取り競争です。そして最悪の場合は、マーケットの消滅です。 賃貸マーケット要因は、さらに社会経済要因と地域要因があります。

 


要因1−1賃貸マーケットの社会経済要因

社会経済要因とは、文字通り日本や世界の社会や経済の動きです。そこに連動して街の景気が浮き沈みします。景気が悪いと、賃貸需要が減少してテナントが退去しやすくかつ次のテナントが決まりにくくなります。
特に80年代バブル後やリーマンショック後の景気の冷え込みとそれによる賃貸難は、当時の苦労を覚えている人も多いでしょう。こうした時期には、原因がわからないために極端な賃料下げに走ったり、悲観して売却したりするビルオーナーが続出しました。状況を理解して対策を考えられだけで、そうしたリスクは避けられます。
現在の景気が良いか悪いかを知ることが目的であれば、新聞やニュース等にしばらく接すれば、わかります。例えば「アベノミクス」といった言葉がニュースに飛び交う通りです。
けれどもビル経営として対応を考えるならば、知りたい情報は、「現在の景気状況がいつまで続くか」の予測です。すなわち、現在景気が良いのであれば、この好景気がいつまで続くのか、現在景気が悪いのであれば、いつ景気が回復するのか、の予測です。「いつまで」予測が、短期か、2-3年か、長期かで、そのあとの対応が違うからです。 ただ予測は、継続的に社会経済のニュースに接して社会経済動向を見る目を自分で育てるしかありません。なにしろ景気予測は、著名なエコノミストでも常時意見は分かれるように、正解を前もってわかることは不可能です。賃貸マーケットの見込みは、時に重要判断に関わります。いざ、に備えて、平素から社会経済動向に対する自分の見解を深めておくべきです。


要因1-2賃貸マーケットの地域要因

地域要因悪化の例は、街の人口減少、学校、工場、大企業の転出、他地域の再開発による人の流れの変化、経年による住民や主要産業の変化等です。例えば地域の大きな工場が移転することで、工場は自ビルのテナントではなくとも、関連の会社が移転するのみならず、工場労働者向けの飲食店やこうした飲食店を支えるビジネスも縮小するため、自ビルのテナントが退去し、その後空室が続くリスクが高まります。
こうした地域の変化のニュースは、主に地域コミュニティーによってもたらされます。地域要因に関しても、悪化の兆候をいち早く知ると同時に、その状態が短期か、数年か、より長期となるかの展望を持ち、それぞれについて具体的に対策を考えるしかありません。
地域要因の難しさは、しばしば本当にテナント候補となる「人」がいなくなる恐れがあることです。言うなれば賃貸マーケットの消滅です。地域要因でこれが一時的と見込むか、長期的と見込むかは、大変に重い判断です。特に長期が永続に感じる期間続くと想定される場合は、重大です。

要因2 不動産屋要因

不動産屋要因とは、賃貸仲介をお願いする不動産選びです。お願いをする不動産屋が適切な営業活動をしていないために、相場より賃料が低い、空室が長期化している例は驚くほど多く見かけます。築年数というわかりやすい条件がある築浅ビルと違い、築古ビルでは自ビル物件の魅力をいかに正しく伝えられるかで結果は大きく変わります。

賃貸仲介をお願いする不動産は、物件の広告代理人兼営業代理人です。ところが賃貸仲介は個人スキルです。年月とともに得意とするマーケットが変わる、勉強不足で営業力が弱まる、担当者が辞めたり世代交代したり等で変化することは珍しくありません。従って不動産屋は次の役割力を評価します。

賃貸の元付を依頼する不動産屋に期待する役割:
賃貸マーケットの情報源
募集賃料設定のアドバイザー
自物件の営業代理人
テナント候補との交渉代理人
テナント審査・契約のアドバイザー
です。
その後賃貸管理も依頼するならば、加えて
賃貸トラブルの解決人

賃貸の元付を依頼する不動産屋に期待する知識:
・自物件強みの理解
・選ぶ可能性があるテナントの理解
・営業手法
・賃貸マーケットの情報量


要因2−1不動産屋要因の対応

不動産屋を変える、もしくは増やすことです。 元付けの専属専任契約ではない限り、つきあう不動産屋の数は一人である必要はありません不動産屋ポートフォリオを作りましょう。数が多いと情報管理が大変ですが、強みの異なる不動産屋複数で不動産屋に期待する役割を確保すると同時に、「うちの物件」に強い不動産屋を増やすことができます。ただし次のようなことを言う不動産屋は、根拠を確かめます。他の不動産屋と違うことが問題ではないですが、根拠を説明する義務は不動産屋にあります。

・広告宣伝費が成果報酬ではなく一定の前払いを求める
・専属専任媒介契約を求める
・具体事例根拠なしに極端な募集賃料の提案を勧めてくる
・長期フリーレントや敷礼ゼロ等貸主に負担が大きな提案を勧めてくる
・高額な改装や設備投資を勧めてくる


要因2−2 不動産屋要因の検証

不動産屋は普段から次のような話をして手応えを確かめておきましょう。

・賃貸マーケットでどのような需要・テナントに動きがあるか、
・どのようなテナントであれば、自物件を選ぶ可能性があるか、
・どのようなルートでの問い合わせが多いのか、
・今後の賃貸マーケットの動向はどうなると考えるか

要因3 物件要因

物件要因とは、物件側にマイナス要因がありテナントが決まらない場合の、物件側のマイナス要因です。物件要因は、必ず賃貸マーケットの中でポジショニングとセットです。物件要因は、賃貸マーケットの中でポジショニングによって異なるからです。

入居テナントが退去して空室が出た時に、前と同じ募集賃料を希望することは一般です。けれども経年その他の理由で現在物件のポジショニングが下がっている場合、前と同じ募集賃料で物件を探しているテナントの目からは、マイナスとなる物件要因がある状態です。そのまま募集をしても空室が長期化するだけでしょう。前と同じ賃料でテナントを決めるためには、物件要因を解決して物件価値を元のポジションに戻さなければいけません。何をどの程度行えば効果があるかは、目指すポジションによって異なります。セキュリティーを重視して入館者管理を求めるポジションと、顧客が自由に入りやすいことを求めるポポジションでは、当然に物件要因は異なります。また前と同じ賃料ではなく、少し低い賃料ポジションであれば少ない投資で決められるといった場合もあります。可能性は無限です。


要因3−1 賃貸マーケティングと自物件ポジショニング

ここで物件要因と切ってもきれない自ビルの賃貸マーケット及び自物件ポジショニングを確認します。自ビルの賃貸マーケット及び自物件ポジショニングの理解は、自物件の適正賃料を知り、自物件を選ぶ可能性があるテナントの要望を理解するために欠かせないビル経営の基本スキルです。ここでは物件要因との関係を簡単に説明します。


要因3−1 自物件の賃貸マーケット

地域の賃貸マーケットとは、地域で貸し部屋を必要とするテナントの需要の集まりです。とはいえテナントの探している物件需要は多様です。オフィス賃貸マーケットでも、賃料や床面積、ビルグレード等で異なります。だから自物件を選ぶであろうテナントが比較候補とするような、同様条件の集合が、自物件の賃貸マーケットです。


要因3−1 自物件のポジショニング

自物件のポジショニングとは、文字通り自物件の賃貸マーケットの中での自物件の位置です。この位置のうち最重要が、賃料の上下であることは言うまでもありません。そして自物件の賃貸マーケットで物件を探すテナントの目でみて、物件要因度が低い物件ほど上位に位置し、物件要因が多い物件ほど下位に位置することも言うまでもありません。


要因3−1 自ビルを選ぶテナント理解とライバル物件

賃貸マーケット及び自物件の希望賃料ポジショニングの理解が重要な理由は、2つあります。1つはこれらを通して見えてくるテナント目線が理解できるようになること、もう1つは希望賃料ポジショニングでのライバル物件がわかることです。前者がわかることで、物件要因リスクがわかります。また後者がわかることで、どの程度の対応で十分かがわかり、過剰投資を避けられます。

物件要因リスクは、テナント目線でしか見つけられません。ビル所有者がいくらここを直したらテナントに選ばれるはずだと思っても、テナント目線でのマイナス要因が違っていれば、選ばれることはないのです。このテナント目線は、あらゆるビジネスのマーケティング同様に、簡単そうで難しいものです。例えば内覧をして自物件を選ばなかった内覧者に選ばなかった理由のアンケートを取ると、色々な回答がきますが、その通りに改善をしても、自物件を選んでくれるとは限りません。だから賃貸マーケットとポジショニングの理解を通して、テナント目線の理解も深める必要があるのです。 ところがテナント目線を気にしすぎると、しばしば過剰投資に陥りがちです。ここで重要なのが、ライバル物件の理解です。正直なところ選ばれる時は、条件を全部満たすから選ばれるのではなく、ライバル物件との比較でマシだから選ばれます。だからライバル物件より遥かに上回っていなくても、少し上回っていれば十分なのです。ライバル物件より遥かに上回っていれば、より賃料が上の賃貸マーケットで部屋を探しているテナントが見出してくれるかというと、そこではまた別の物件要因が見つかるかもしれません。投資をして上の賃料に賭けるのも勝手ですが、少ない投資で知っているマーケットを狙う方がはるかに低リスクで手堅く分散修繕には向いています。

補足


需要がなくなった場合

地域に需要がなく、今後も見込めない場合、需要はあるが物件要因を改善する費用に対する効果の見込みがない場合、そしてそのために建物維持費用の捻出がどうしても難しい場合は、最終決断として売却もしくは建物取壊しが検討に上がります。

この判断は、分散修繕計画で十分に検討に検討を重ねた結果であるべきです。 一般的な相談相手とされる不動産屋や税理士、建築士、建設会社、金融機関等は、従来ステレオタイプの考え方で、古い建物には価値がないとし、売却、建物取壊しもしくは建替えを進めがちです。しかし彼らは目先の問題解決を見ています。ビル所有者は、結果とリスクを背負います。だから自分で分散修繕計画であらゆる可能性を考えてから、決断をしてください。


将来展望について

人口が減少すれば不動産需要も減少するのだから、古い建物の賃貸を無理に頑張っても続かないのではと、ご心配でしょうか。その心配を喜憂にすることは、不可能ではありません。

需要が減少して物件が余れば、テナントは部屋を選びたい放題です。その時にテナントは必ず新しいけれど賃料の高い物件から選ぶでしょうか。
賃料下げ競争になれば、築浅ビルより築古ビルの方が有利です。築浅ビルは、高い賃料収入を見込んで建築投資を行っているため、簡単に賃料を下げられないからです。そうして賃料が下がれば、テナントは前と同じ予算でより広いスペースを借りられます。日本はウサギ小屋と呼ばれてきましたが、賃料が下がればより広いスペースを借りられます。そうすれば需要そのものはそれほど減少しません。