築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者のための
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Ⅰ 中小ビルを寿命にしない維持思考の分散修繕
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中小ビル資産の分散修繕は、ビルの使用を継続しながら経済的にビル資産維持に必要な工事を行い、安定利益を守りながらビル資産を生かし続ける方法です。
分散修繕で最も重要な事は、ビル資産所有者が自分で無理のないビル維持に必要な工事予算を決め、自分でその予算配分を決める事です。自分で、ビルの将来に必要な工事と必要ではない工事を判断するのです。
ここでは30年分散修繕計画作成の手順を通して、ビル資産所有者が何をどう考えてビル資産維持に必要な工事を決めるのかを見ていきます。が、その前にもう少し分散修繕でなぜビル資産が維持できるかを、確かめましょう。
中小ビル資産の分散修繕では、自分の予算で経済的にビル資産維持に必要な工事を行います。ビル資産所有者が自分で無理のない工事予算を決めるから、利益を維持できるのです。とはいえ、むやみに工事費用を削減するだけでは、安かろう悪かろうだったり、必要な工事が出来ず、結局ビルがダメになります。相見積もりなどもってのほかです。
中小ビル資産の分散修繕は、そうではなく、ビル資産所有者が自分で自ビルに何の工事がどの程度必要か、を決めます。決めるといっても工事仕様書を作るではなく、ビル資産の将来に大切な事は自分で決めるという事です。その際のルールとして、リスクと予算を分散させるから分散修繕と言います。
ビルの躯体は丈夫です。コンクリートは紫外線や水の侵入で劣化しますが、実際には外壁で保護されていますから、適切に保護を続ければそう劣化しません。
けれども、ビルの躯体を保護している外壁やその防水機能、ビルの使用に欠かせない電気、給排水等建物設備や内装は、確かに経年劣化していきます。そして日本で築古ビルが寿命だと言われる場合、その理由のほとんどは、こうした建物設備や見た目の古臭さが理由です。
日本で古いビルが寿命だと言う場合、それは「古いビルの修繕に多額のお金をかけても無駄だと思う」を意味します。実際建設業者に相談しようものなら、超高額の「リノベーション」工事や、設備改修工事、大規模修繕工事を言われます。それは高額だから、使えるだけ使って必要な工事をする事にしても、やはりいくら費用がかかるかわからないから不安です。何となく工事を先延ばしにしていると、どんどんビルの状態が悪くなります。工事費をかけすぎても、負債化してその後が続きません。そして負のサイクルに陥って、このビルはダメだ。となるのです。
実はビルの工事には2種類があります。まず思い浮かぶのが修繕工事です。でも古いビル維持には、修繕工事とは異なる、ビル資産維持工事が必要になります。
例えばある排水管から漏水事故があった。すると漏水を止める。これが修繕工事です。
これに対して漏水事故が頻発するから、排水管を更新する。これがビル資産維持工事です。
修繕工事は、考えるまでもなく対応が必要です。内容は工事業者にお任せで、相見積もりで安い業者を選びます。けれどもビル資産維持に必要な工事は違います。そもそもその機能がビルの将来に必要なのか、どの程度の機能性能グレードが必要なのか等、今工事すべきかもう少し後にすべきか、ビル資産所有者が決めます。この決め方が分からず業者任せにすると、いくら工事費用がかかるかわからない・・という事態になる訳です。
日本の従来のビル維持が、修繕の考え方しかなかったから、古いビル維持が難しくなった理由は、会計でも説明ができます。
修繕工事は修繕費として費用計上します。つまり修繕はPL(損益計算書)だけの判断です。
つまり、工事費用を目先の支出と考えます。すると、ビルが古くなるとBSの資産価値は減価償却で減っていき、一方でPLの費用が増えるから、このビルはもう寿命だと考えます。実際には、工事費用を節約して必要な工事をしない、業者に言われるまま必要以上に費用をかけて、負債化する。他の工事ができなくなる・・・が積み重なって、負のサイクルに陥ります。工事費用が足りなくても、工事費用をかけすぎても、負のサイクル陥った訳です。
建物設備や内装外壁等の経年劣化は、日本も他国も変わりません。50年前100年前に建てられたビルの本場ヨーロッパや世界の中小ビルの技術と比べて、日本のビルが劣っている訳がありません。
ビルの本場ヨーロッパや世界の中小ビルが築50年どころか築100年築200年それ以上でも存続できている理由は、どうやってビル資産維持に必要な工事に取り組めば、低予算で無理なく工事を行い、安定利益を保つ事ができるかを、知っているだけです。
最初にケチと紹介した通り、ビルの本場ヨーロッパの中小資産所有者はケチです。
中小ビル資産所有者は、広大な土地を所有する貴族や富裕層とは違います。古いビル資産の維持に工事が必要な事はわかっています。だから必要な工事を効率よく、低予算で行い、自分の利益を守るのです。
とはいえ工事予算をケチりすぎて、安かろう悪かろうになったり、ビルが負のサイクルに陥っては意味がありません。ケチといっても単に値切るのではなく、何が必要で何が必要でないか、何の予算を削減するかを、自分で決める事ができるのです。
日本人は工事業者が「いくらかかる」と言えば、専門家が言うのだから仕方がない、とお金を出しますが、ビルの本場ヨーロッパや世界の中小資産所有者は、工事予算を自分で決めます。なにしろ利益が残るように工事ができなければ、ビル資産が維持できなくなるのだから、利益は重要です。
工事予算を自分で決めるとは、値切る事ではなく、自分の予算とビルの将来に合わせて、これは必要、これは必要ない、を自分で考えて判断する事です。
もちろん急に判断はできませんから、工事をどうす取り組むか、何年もかけて考えています。そして何年もかけて予算を準備し、情報を集めてどう工事をするか、自分で考えます。どの業者に相談をするかも、大切です。
自分で考えるから、自分の予算で経済的にビル維持に必要な工事ができる。利益を残せるからビル資産を維持できる。その考え方がこれからご紹介する分散修繕です。
給排水管を更新する。消防設備を更新する。空調を更新する。エレベータを更新する。外壁の防水保護や塗装を行う。内装をリニューアルする。ビル資産の維持工事は、BSのビル資産の寿命を延ばす資本的支出(CAPEX)として減価償却の対象です。
ビル資産の寿命を延ばすす資本的支出(CAPEX)の工事は、ビルの将来を作る投資です。こうした工事を計算して上手に行う事で、損益対照表(PL)の利益を保ちながら、資本的支出(CAPEX)を効果的に行い、ビルの資産価値を保ちます。
BS上では、経年を下て減価償却されたビル資産価値は減っているからもしれませんが、実際には利益を産む限り、そのビルには利益を産む資産価値があります。それも簿価上の資産に対して十分な利益を作り続ける、価値ある資産です。
ビルの本場ヨーロッパや世界の中小ビル資産所有者達は、だから自ビル資産が築50年でも築100年築200年それ以上でも、分散修繕で長く維持しているのです。
そのビルの本場ヨーロッパや世界の中小ビル資産所有者達のビル資産維持工事の取り組み方法が、分散修繕です。とはいえ、皆誰かに教わる訳ではなく、伝統的に確立しているビル資産維持に必要な工事の取り組み方です。だからさほど難しくありません。重要なのが、視点です。
ビル資産維持に必要な工事は、「物」と「数字」の視点で考えます。
「物」としてのビルの分散修繕は、ビルの使用経営を続ける事が目的です。だから酷く悪くなる前に劣化部分のリニューアル工事を計画しなければいけません。
「数字」としてビルの分散修繕は、工事予算をケチに徹して利益を守る事が目的です。だから無理のない低予算で、必要工事に予算を配分しなければいけません。
この「物」と「数字」を同時に考える事を、ビルの本場欧州の中小ビル資産所有者達は、伝統的に古いビルを維持していますから、ごく自然に体得しています。私たち日本人は、そのような伝統はありませんが、30年分散修繕計画を作成する事で、「物」と「数字」を考える力を身に着ける事ができます。
(だから日本でもプロの不動産アセットマネージャは若手でも判断できます。)
ビル資産の維持に必要な工事をケチに行う分散修繕の分散は、リスクと予算の分散です。
というと難しそうですが、分散修繕の基本スタイルは、
のサイクルの継続です。ただそこにリスクと予算を分散を、考えておくのです。
ビル資産所有者が、ビル資産を寿命にしない分散修繕の工事を、リスクと予算を分散できるように判断するには、「物」と「数字」の両面で、次の全てが出来る高い視点が必要です。
1 ビルに必要な工事の全体を把握できる
2 工事の結果の将来のビルを想像できる
3 工事に優先順位を付けられる
30年分散修繕計画を作成でを身に着ける事ができます。
ビル資産所有者が、ビル資産を寿命にしないケチな分散修繕の判断に欠かせない30年分散修繕計画の作成を見ていくにあたり、全体像を確かめます。また、重要な留意点も確かめておきます。
30年分散修繕計画を作成が欠かせない理由は、判断には準備が必要だと言う事です。各工事判断の場面で、即座に「物」と「数字」の全てを考えて判断ができる天才は、そうそういません。各工事判断の場面では、目の前の問題や工事業者の説明を聞く事に、誰でも精一杯です。判断が出来る人は、事前に考えるべき事を考え、決めるべき事を決めています。だから30年分散修繕計画作成を作成が必要なのです。
ビル資産所有者は、工事見積書を読む事は出来ません。どう工事するかは、専門工事業者が決める事です。そこでぼったられる心配があるような業者には、そもそも相談をしない事です。
ビル資産所有者が決めるのは、工事予算の配分です。それを必要に応じて工事業者と相談をして、
見積書を作ってもらう前に決めます。ビル資産所有者が決めるのは、
「そもそもその工事は必要か」
「今すべきか(工事サイクル)」
「どの「範囲」を工事するか」、
「どの程度の機能性能グレード仕上がりを求めるか」
「どの程度のサービス水準の業者に相談をするか」
を判断する事です。
工事実施計画ではないから、工事見積書を用意したりといった準備は必要ありません。一般的な目安金額であれば、ネットで調べたり、管理者等に軽く聞くだけで十分です。
30年分散修繕計画作成の全体像は次の通りです。「考える」と「決める」「分散させる」の3段プロセスがあります。それぞれを見ていきます。
気になりましたら、お気軽にお問合せ下さい。30年安定ビル資産経営計画のサンプルをお送りいたします。また初回オンラインでのお話は無料です。1棟ご所有者から十数棟~資産管理会社経営者まで、欧州中小ビル資産経営者達の例も含めて、HPではご紹介できない事例も多くご紹介できます。高額なコンサルティングをお勧めする事はありません。お気軽にどうぞ。
中小ビル資産を維持する30年分散修繕計画作成の前に、将来のビル使用者と将来のビルを考えます。理由は、分散修繕で老朽化した建物設備や内装外壁等を更新する目的が、ビルを過去の新築状態に戻す事ではないからです。
年月とともに、ビルの使用者も変わります。ビルの使用目的も変わります。また建物に期待される機能性能グレードも違ってきます。例えば欧州の17世紀18世紀に建てられたビルや、日本の古い寺社古民家には、当初は電気も給排水設備も無ありませんでした。後から誰かが判断して、付け足しています。
分散修繕は、時代に寄り添い変化するビルを作るのです。経年を経ても、使用者にとって居心地よい空間を作り続けます。
将来のビルのイメージが出来ると、将来のビル使用者に必要ない工事は、バッサリ削減できるようになります。「ケチ」な判断ができるようになる訳です。
中小ビル資産の分散修繕計画を作成するにあたり、まず次の3つを考えておきましょう。
1つ目は、ビル工事予算の財源
2つ目は、今後誰がどのようにビルを使用するのか
3つ目は、将来の使用者のためにどのようなビルであるべきか
です。
ば沢山考えます。より良い将来を選べるようになります。
今後30年のビル維持工事の財源を考えておきます。何しろ財源が全てです。財源がなければ、どうやっても工事予算を捻出できません。分散修繕では、計画段階では、なるべく借入金を想定しないようにします。
財源の基本は、ビルの使用経営によって得られる「利益」です。収益ビルの場合は賃料収入です。事業用ビルの場合は、事業売上から原価や経費を差し引いた事業収益です。そこから税金等を支払った最終利益の一部から、一定額のビル維持工事の予算を留保して積み立て、必要なタイミングで工事ができるようにします。もちろん既に準備金がある場合はそれも加えますが、長く維持するためには、長期的なビル維持工事予算の財源を考えておく必要がある事は、自明でしょう。
今後誰がどのようにビルを使用するのか、も重要です。
将来のビル使用者に必要か必要でないかが、建物設備機能や内装等の工事やその機能性能グレードの必要/必要ではないの判断基準だからです。
例え現在と同じ・・と言う場合でも、現在と将来のビル使用者によって、ビルに求められる建物設備機能や内装等工事の仕上がりは違ってきます。
例えば女性が多いか、男性が多いか、若年層が多いのか平均年齢が高めか・・、使用は事務所か、店舗か、事務所と一言言っても、来店型か、堅い雰囲気か、自由なスタイルを好むか・・等で、必要とする将来のビルの機能性能や好む内装仕上がりが違います。
検討手法としてマーケティングのペルソナ手法が役に立ちます。インターネットで検索をするとサンプルが多数出てきますから、ぜひ参考にして作ってみてください。
今後のビル使用者が将来どのようにビルを使用するかを考えたら、現在ビルから、今後のビル使用者が納得して使用している自ビルの将来への変化を描きます。
内装や外観の見た目だけではなくて、建物設備機能や、その性能グレードも含めて、ビルの使用体験の全てを描きます。といってもそこは現状がありますから、現状からのプラスマイナスや変更改善を考えます。
もちろんここで既に、「予算」が頭の中に現れるでしょう。財源が潤沢であれば、贅沢なビルを描く事ができます。財源が厳しければ、極力過剰や不要な建物設備機能を省いた、シンプルビルを描きます。想像するだけなら無料だから、色々な可能性を描く事をお勧めします。ケチとして目指すは、「納得」して使用してくれるラインです。
アイデアが湧かなかったら、他のビルも参考にしてみてください。欧州の街の古く趣ある街並みの中小ビルも、低予算で要所は抑えるアイデアに満ちています。ビルオの分散修繕計画作成講座では、ここを丁寧に考えます。
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ビルの将来を考えたら、今後30年での総工事予算とビル維持に必要な工事を仮決めします。次の30年、自分の予算でいつ何の工事にどのくらい予算を配分するかを決めてみるのです。
重要なのは「自分の予算ありき」だという事です。こんな金額じゃ足りなすぎると笑われないかな・・などと気にする事はありません。「ケチ」を楽しみましょう。家計管理と同じで、予算を決めると、支出が引き締まります。
ビル資産所有者が決める工事予算の配分は、すなわち工事予算の削減ポイントです。
工事予算の配分は、次の手順で決めていきます。自分の予算ファーストです。
ここで重要な事が、工事予算の配分とは、単に何の工事をするかしないか、だけではない事です。 電化製品を買うのに、安い製品もあれば高額製品もあるのと同じです。 そこで自分の予算と自ビルの将来を考えて、どの程度の予算でどの程度の機能性能等が最適かを決めて、工事予算を配分します。
以下が、工事の予算削減ポイントです。
「そもそもその工事は必要か」
「今すべきか(工事サイクル)」
「どの「範囲」を工事するか」、
「どの程度の機能性能グレード仕上がりを求めるか」
「どの程度のサービス水準の業者に相談をするか」
これらの過剰や無駄を省く判断をビル資産所有者が行うことで、工事業者も低予算の見積書を作る事ができるのです。
まず、30年総工事予算を仮決めします。既にビル総工事予算の財源を考えました。そこからどの程度を次の30年総工事予算として確保するかを仮決めする訳です。
工事予算の考え方は2つあります。
この場合悩みは財源を考えるところです。総予算は、かき集めた予算が全てです。でも実は削減できる事もあるから、次の可能性も考えます。
通常はここの追求がエンドレスです。最初の予算目安は、収益ビルであれば、賃料収入の5%前後~10%が分散修繕の工事予算準備金の目安です。(収益規模とビルの状態によって異なります。)事業用ビルや自用ビルでも、賃貸を想定して、同様目線で考えます。そこから30年分散修繕計画を作成して、予算の削減に努めます。
準備金がある場合、それを見込んでも構いませんし、保守的に「ないもの」として考えて、予備費に取っておく方法もあります。検討の中で無い物として考えてみる事は、お勧めです。
ちなみに工事予算の見込みは、経験が浅いと、リスク不安で大きく見積もり勝ちです。経験と共に思い切った削減ができるようになります。だから時々作り直して、工事予算を削減していくことをお勧めします。
次に、「2.4.将来の使用者のためにどんなビルであるべきか」で考えた将来のビルに向けて、必要工事を洗い出します。ここで見落としがあると、どんなに30年分散修繕計画を考えても、想定とは違う事だらけで予算が足りない!となってしまいます。
洗い出し対象は、大きく次の2つがあります。1つは現在ビルの建物設備機能等でリニューアルが必要な対象 もう1つは新規追加です。
潜在的には現在のビルの躯体以外の全てが候補ですが、今後必要無いものや、この後でご紹介する工事サイクルが、次の30年では入らず工事対象に入らない工事があります。何を省くか、工事サイクルをどう考えるかを考えるのは、ビル資産所有者の責任です。また竣工時と現在とで工事ソリューションが変わっているものもありますから、最新ソリューションは確認しておきます。例えば屋上高置給水タンク式給水のビルの多くは、現在では水道局から直結増圧式が推奨されています。この場合「屋上高置給水タンク」のリニューアルではなく、給排水管の更新と増圧ポンプ設置が入ります。
時代と共に、セキュリティーを強化したい、省エネやエコ機能を追加したい、耐震補強や災害対策を強化したいといった場合が、ここに入ります。加えた例が次の通りです。
洗い出した候補工事には、優先順位をつけておきます。大まかな絶対必要/なるべく必要/できればやりたい程度の分類で十分です。
また洗い出した工事は、次のカテゴリで整理をしておくと、後で検討がしやすくなります。
30年総工事予算を、優先順位の高い順に割り当てます。
と言うのは一言ですが、誰でもここでひたすら試行錯誤をします。
特に優先順位で少し順位が低い工事を入れるかどうかはもちろんですが、入れる事を決めた工事に対して、予算削減ポイントをどの程度の水準にするかが、問題です。
基準として、現在ビルの水準に対して、同じ/上/下 から始めると良いでしょう。予算を念頭にいれれば、ある程度目途がつきます。そこから調整します。
工事費用の目安は、インターネット検索でわかるものもあれば、管理会社や工事業者にさらりと参考費用を聞くことができれば、参考にできます。分からなければ、ビルオの講習でお教えします。
例えば給排水管更新という場合、ビルの縦横菅全部を一度に更新するのか、必要か所を部分部分更新していくのか、と言った具合です。内装リニューアルや空調リニューアルも、同様です。
日本ではまとめて工事をした方が共通費が節約できてお得という考え方もありますが、そのためまだ使える物まで廃棄して交換するのは、お金と資源の無駄です。施行の対象を半分にすれば、予算も大まかに半減できます。必要最小限の線を決めて、そこまでは予算をごっそり削減できます。ビルオの分散修繕計画作成講座では、専門アドバイスの元、効率良く見つける事ができます。
ここの予算を落とす事ができれば、「ケチ」レベルがぐっと上がります。工事に際し、どのように工事をすべきかは工事業者が決める事ですが、その仕上がりの機能性能グレードをどの程度求めるかは、ビル資産所有者が決める事です。
例えばエレベータ更新を例にみると、「古いエレベータを更新する」「老朽化した内装をリニューアルする」といった場合、見た目現状で構わなければ、エレベータの基盤交換だけで十分です。せっかくだからと、エレベータを最新制御機能付きかつ豪華内装にすれば、相応に倍以上に高額です。また内装リニューアル工事も、建築士がデザインする高級デザイナーズ内装で床は大理石等々の高級内装素材を選べば、費用は天井無しです。自ビルに必要な水準は、ビル資産所有者が決める事です。
ケチの観点から見ると、将来ビル使用者が必要とする各工事の機能性能グレード水準以上のものは全部、「お金の無駄」です。どんなに工事業者の営業に勧められても、「自ビルはこの水準で十分」と言えるようになると、相当予算を抑えられます。日本のビルは設備機能グレード過剰が多いので、ここは予算の削減しどころが沢山あります。
誰も教えてくれないけれど、実は費用インパクトが大きいのが、相談をする業者のサービス水準です。腕の良し悪しと言う話ではありません。サービスやマネジメントが良い工事業者は、その分の費用が嵩んされて当然だという事です。
「サービスやマネジメントの良さ」は、工事の「安心」です。「安心」は高額です。
建設業者に相談をすれば、実績あるプロが工事内容を考え、プロが工事を監督し、手厚い説明とサポートがあり安心です。けれども工事総額の30%の工事監理費その他多くの管理費が発生して超高額です。自分でDIYで工事をすれば材料費だけですが、工事内容を決めて材料を選び施工まで全てが自己責任です。または職人に指示すれば、+人足代で済みます。これは極端な例ですが、その中間のどちら寄りを望むか、サービスやマネジメントの良さ」を選ぶか「費用の安さ」を選ぶかは、ビル資産所有者が決めなければいけません。
知人等の紹介の「工事業者」が今一つだったと言う場合が、ここが合わないのです。よくある「相見積もり」は、この違いを考えないので、良いサービスやマネジメントをする業者に嫌われます。
尚、「サービスやマネジメントの良い」工事業者が多い理由は、それだけ工事トラブルが多いからです。ただ、最近は、youtube 等で工事やセルフリノベーションの技術を学ぶ事もできますから、DIYも十分に選択肢です。
工事サイクルは、次の30年間で工事が必要か/何回必要か、に関わります。これも総工事予算へのインパクトが大きいところです。
各建物設備や内装外壁等のリニューアルは、それぞれ固有の経年劣化時期があります。ビルを100年200年それ以上維持することを考えると、リニューアルは1度ではなく、同じような間隔でまた、リニューアルが必要になります。これを工事サイクルと言います。
この工事サイクルは、建物設備機能等がどの程度の劣化で寿命と判断するかで、決まります。
法定耐用年数で更新する人は少ないとは思いますが、例えば安全第一でエレベータを20年弱で交換するか、事故がないからと50年を過ぎても使用続けるかで、200年の単位でみれば、エレベータ交換回数は、9回と4回と差が出ます。
工事サイクルも、予算とリスクのバランスです。古い建物だから多少のトラブルは仕方がないと考えられれば、工事サイクルは伸ばせます。所有者責任としてトラブルは極力避けたいと考えれば、そう延ばす事はできないでしょう。
実際のところは、建物設備等の劣化スピードは、使用頻度/程度等によっても違います。例えば給排水管は、水使用量が多い飲食店舗テナントばかりのビルでは築30年過ぎから漏水事故が発生しやすくなりますが、水使用量が少ないオフィスビルであれば、100年くらいトラブルがないといった具合です。だからそうした実情も加味して工事サイクルを延ばす事を考えます。
最初に一通り工事を計画してみてると、30年総工事予算が絶望的に足りない・・と頭を抱えるのは、ごく普通です。そこから沢山のバリエーションを考えながら予算を削減していきます。
工事予算削減は、とにかく沢山の工事予算配分バリエーションを作る事です。
「ケチ」のバリエーションとして、絶対に考えたいのが、シンプルビル化です。
引き算思考で、思い切って利便性目的の建物設備機能を削減し、グレードを抑えて、自ビルの将来をシンプルにしてみます。ケチで知られる欧州の中小ビル資産経営者たちは、シンプルビル化の費用削減が徹底しています。
「こだわる」ところだけ「手厚く」費用をかけた、唯一無二の特徴あるビル作りは、実は築古ビル資産所有者の贅沢です。例えば、例えばエントランスだけ費用をかけて、デザイナーズ風にする。雑居ビルで思い切って上層階の給排水を廃止して、下の階だけトイレ・給湯室を綺麗にしたビルもあります。
ビルオの分散修繕計画作成講座は、こうしたシンプルビルや特徴ビルのアイデア出しと検討で多くのアイデアを提供しています。
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30年分散修繕計画の作成で、なんとなくこれかな、という30 年の総工事予算配分案が出来てきたら、最後にもう1つ重要な作業が残っています。
予算とリスクの分散です。分散修繕の名前の由来です。
予算とリスクを分散する事で、負のサイクルに陥るリスクを避けられます。
こうした検討は、昭和の時代は豊富な経験が必要と考えられていましたが、現在ではマイクロソフトエクセル上で30年分散修繕計画表の作成を通して試行錯誤と検討検証を繰り返して、体得する事ができます。良い時代です。
「物」と「数字」の両面で、予算とリスクを分散させます。そうしてビルが負のサイクルに陥るリスクを高めない事で、ビル資産と利益を維持します。
理想的な基本の分散修繕は、先にでご紹介をした通り、
工事を計画する→予算を準備する→工事をする→次の工事を計画する→
というシンプルなサイクルです。ただ机上の数字で計画するのは簡単ですが、「物」のリスクはまた別の話です。
実際ビル使用者にとっては、「物」の状態の方が重要です。例えばある時期にAB両方劣化するのに、サイクルを優先してBを後回しにした結果、重大な事故が起これば、ビル使用者が被害を受けます。だから「物」のリスクを高めないよう、工事の調節が必要になるのです。
・重要な工事を早めに行う
・重要度の低い工事を後ろ倒しにする
・重なる時期の工事予算をもっと削減する
・重なる時期の工事規模を更に分割する。
といった調整を加えます。そうして建物設備等ビルの全ての「物」のリスクも高めないように、工事を分散させて、先の予算のサイクルを維持します。ビルオの分散修繕計画作成講座では、自ビルに必要な調整のテクニックを正しく学ぶ事ができます。
ビルの使用経営を維持して安定利益を維持する分散修繕では、30年の途中でビルが酷く悪くなる状態を作らない事が大原則です。
理想的な分散修繕で維持されているビル資産は、一棟のビルの中に、古い設備や内装外壁と新しい設備や内装外壁とが、混在しています。多少不便なところや経年を感じるところがあっても、最新機能設備は揃っていなくても、ビルの状態は酷く悪くならず、独特の趣と風格があります。必要最小限の機能性能や美観清潔感は維持されていて、居心地は悪くありません。ちょうどみなさんがご想像される、欧州の古いビルの通りです。そして少しづつ30年後の将来のビル像に近づいていきます。
30年分散修繕計画は、マイクロソフトエクセル等表計算ソフトを使用して作成をします。
30年分散修繕計画は、縦軸にビル資産経営者の予算計画及びビル維持に必要な工事を全て並べ、横軸に30年の時間軸を取ります。右端に合計欄を作り、30年分散修繕工事予算の総額と、何の工事にいくら予算配分されているか、一目でわかるようにします。
フォーマットに決まりはありませんが、コツを3つご紹介しておきます。
30年分散修繕計画のコツその1は、適切に計算式を入れ込む事です。入れるべきところに数字を入れると、自動計算で30年間の総工事予算準備の状況が分かるようにしておきます。すると楽にシミュレーションができます。更にバリエーションも簡単に作れます。
ビルオでは、ご相談者様に、計算式入りの使いやすい30年分散修繕計画ひな型をご提供しています。
30年分散修繕計画のコツその2は、バリエーションを沢山作成する事です。こんなひどい事はないだろう・・と思えるケースでも、創ってみてください。そのシミュレーションが経験となります。シミュレーションを沢山行う事で、昭和であれば何十年の経験が必要だったビル資産維持の判断ができるようになるのです。
30年分散修繕計画のコツその3は、1回作って終わりではなく、何度も見直しアップデートをして、時々作り直すことです。
どうせ1年も経てば、状況も考え方も変わります。時に、その時点から30年先までの分散修繕計画を作り直す事で、常に30年後のビルを目標にできます。そうして延長を続けて、気が付いたらビル資産は安定利益を維持しながら、築100年築200年を過ぎているでしょう。
現在のビルは、分散修繕で使用経営を継続して利益を産み続ける資産として、いつまでも存続できます。
さて、30年分散修繕計画を決めたら、毎年、自分で決めた分散修繕予算を留保して工事予算を準備します。
ただ実際の工事判断は、実情ありきです。①計画より早く状態が悪くなることもあれば、②計画外の工事が必要になる事もあります。③時期が来ても問題がなく、まだ使えそうな場合もあります。
いずれにしろ、管理者や工事業者とも相談をして工事の必要性を判断したら、30年分散修繕計画表を取り出します。そして該当工事を見込み工事予算で、工事検討のタイミングに置きます。そして分散修繕のサイクルが維持できるように、他の工事を動かします。
ここで問題なく調整ができれば問題がありませんが、予算が無い、優先順位が高く動かせない工事予定があると言った場合、分散修繕計画の予算削減や調整テクニックを駆使して調整をします。
少し工事時期を後らしたり、規模その他予算を削減したり、最悪借入金を検討する場合もあります。
後はビルの方針を説明して、見積書をもらうだけです。業者のサービス水準はもちろん分散修繕で決めた水準の業者です。こうして自分で決めたケチな予算で、分散修繕でビル資産を維持できるようになります。
分散修繕で、ビルの使用を継続しながら経済的に無理なくビル維持に必要な工事資産が維持できる事がわかるようになると、ビル資産の本質が腑に落ちて理解できるようになるでしょう。
ビルは土地の価値を実現する器です。市街地では土地の上にビルを建て、ビルを使用経営する事で、利益を産みます。ビル建設/建替えは高額ハイリスクな投資です。でも一度ハイリスクな投資をした後は、土地の価値を利益化して安定利益を産み続ける事がビル資産の本質価値です。分散修繕は、例え人口激減や経済縮小の時代でも、低リスクで安定利益を維持して、収益を産むビルの資産価値を守る事ができます。そうして利益を享受しながら、次の投資機会まで何百年でも気長に待ちます。
ビルの本場欧州や世界中の現在文明は、そうやってケチに徹して繁栄の時代に築いた富を資産として守り、利益化続けて存続しています。
日本が、既に人口激増と経済成長の昭和は過去となり、30年後にはGDPが世界10位から転落し、65年後には人口半減が予測されている流れは、まず変わらないでしょう。
けれども無理に投資をしなくても、現在ビル資産を守り利益を維持できる分散修繕という選択肢があります。分散修繕で現在のビル資産と利益を100年200年でも維持する事は、難しい縮小の時代に生きる子供や子孫に安定と価値ある資産を残す最も確かな方法です。そして古いビルが廃墟にならず、古くても適切に維持されて存続する事は、街の存続です。社会の存続です。SDGs時代にビルを安易に産業廃棄物にしない事は、地球の存続です。つまり資源を無駄にして子孫を貧しくさせない選択肢です。
孫やその孫の代に感謝されるためにも、早速分散修繕を学びましょう。
気になりましたら、お気軽にお問合せ下さい。30年安定ビル資産経営計画のサンプルをお送りいたします。また初回オンラインでのお話は無料です。1棟ご所有者から十数棟~資産管理会社経営者まで、欧州中小ビル資産経営者達の例も含めて、HPではご紹介できない事例も多くご紹介できます。高額なコンサルティングをお勧めする事はありません。お気軽にどうぞ。
準備中