築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者のための
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中小ビル資産の低予算低リスク分散修繕

中小ビルは、想像するよりずっと低予算低リスクで簡単に維持できる

サマリー


中小ビルの分散修繕は、 ビルの本場ヨーロッパや世界中の中小ビル資産所有者が実践している普遍的な中小ビル維持に必要な工事取り組みの方法
分散修繕は、ビル資産の将来利益を作るために行うビル資産維持の工事
分散修繕は、低予算低リスクで自分の予算に合わせて自由度が高い
分散修繕は、ビル資産所有者が自分で予算を決め、何の工事に配分するかを決める   
最初は30年分散修繕計画の作成が欠かせない
適正予算は、収益ビルなら毎年賃料収入の5%~10%を留保
ビル資産所有者にはビル資産所有者の工事予算削減ポイントがある
理想的なリスクの分散は、予算を準備して工事をする・・の連続
ただし物のリスクを高めないよう、調整が重要

Ⅰ 中小ビル資産の分散修繕

中小ビルは、低予算低リスクの分散修繕で、無理ない予算で使用利益を守りながら、ビルの経年劣化部分のリニューアル等工事を行い、ビルを利益を産む資産として維持できます。まずは、分散修繕取り組みの考え方を理解しましょう。

1.1 中小ビル維持には工事が必要

ヨーロッパの資産家は「ケチ」と聞いた事があると思います。 中小ビルの分散修繕は、計画的に低予算でビルの経年劣化部分のリニューアル等工事を行い、ビルの使用利益を守りビル資産を守る方法です。ビルの本場ヨーロッパを始め世界中の中小ビル資産所有者が実践して、ビルを価値ある資産として代々引き継いでいる方法です。
1.11 中小ビル資産維持の工事
ビルは躯体に建物設備や内装・外壁・防水保護等、「物」の集合です。それぞれ固有のタイムスケールで経年劣化をしていきます。だから築30年を過ぎたビルを長く使用利益を産む資産として維持するためには、全部は必要ありませんが、時々経年劣化をした建物設備等のリニューアル工事等が必要になります。

問題は、
  • いつ何のビル資産維持工事をするか
  • どのように予算削減をするか
をどう決めるかです。
1.12 築古中小ビルの3つのリスク
ここでどう決めるかが問題なる理由は、築古中小ビルには、リスクが多いからです。

1 物のリスク
ビルは建物設備や内装・外壁・防水保護等、「物」の集合ですが、各「物」が経年劣化すると、機能しなくなったり、停止や事故を起こすリスクが高まります。内装や外壁も放置をすると、美観や清潔感を失います。いずれビルの使用が難しくなります。

2 数字のリスク
ビル資産は、使用経営の利益「数字」があって、初めて資産です。しかしビルの工事に費用をかけすぎると、赤字化して「負債」に転落します。

3 負のサイクルに陥るリスク
物のリスクも数字のリスクも、それが出てきて直ぐにビルが使用できなくなる訳ではありません。ただ負のサイクルに陥ると、長い年月をかけて負のサイクルが進行します。

一度負のサイクルに陥ると、ビルの状態を直すために、余計に費用が必要となるため、余計に対応が難しくなり、負のサイクルが10年20年と進行します。ビルの衛生と安全が低下して使用経営の利益を得られなくなると、ビル管理を放棄して、電気や水道が止まり、スラムビル・廃墟ビルになります。

1.13 目指すべき中小ビルの在り方
もう一つ、どう決めるかが問題なる理由は、目指すべき中小ビルの在り方に関わるからです。

例えば、とにかく経済的で安ければ良いと、工事業者の見積書を叩き、安い業者ばかりを選んでいては、安かろう悪かろうでビルの状態が悪化します。更に悪くなればラムビル化になります。

けれども私達日本人が目指したいのは、アジアのスラム街ではなく、古くても趣あるヨーロッパの古い街並みの古いビルではないでしょうか?そうすると、ただ工事費用を削減するのではなく、ビルを適切な水準に維持するために必要な工事は必要と判断できなければいけません。これをどう「判断」するかが、問題な訳です。

1.2 ビル維持ではなくビル資産維持

1.21 ビル資産維持とは
ビル工事とビル資産維持は違います。ビル工事は、ビルを維持するための工事です。

一方、ビル資産維持とは、ビルの使用経営の利益を維持する事です。なにしろビルは、使用経営の利益があって資産価値があります。ところがビルは経年と共に、部分部分が経年劣化して、放置をすると負のサイクルが悪化していずれ使用経営の利益を失います、資産価値を失うどころか、負債になります。ビル資産維持とは、そうならないよう、時にビルの老朽化部分のリニューアル工事を行って、ビルの使用経営の利益が継続できるようにします。ただここでビルの老朽化部分のリニューアル工事が高額すぎても、利益が無くなります。現実にはビルの老朽化部分のリニューアル工事費用が少なければ少ないほど、多くの利益が残ります。

だからビル資産維持は、単に工事をすればよいのではなく、なるべく少ない予算で、ビルの使用経営の利益が継続できる程度に、ビルの老朽化部分のリニューアル工事を行う事なのです。
1.22 考えるのは、「物」と「数字」、「現在」の問題解決と「将来」の利益 
つまり、ビル資産維持では、「物」と「数字」を考えます。
ビルは「物」ですが、ビル資産は、「利益」という「数字」も必要なのです。実際には、ビル資産には3面性があります。「物」と「数字」に加えて「権利・契約」です。「権利」がなければ利益を得られません。契約で収入と支出は実現します。ただ「権利・契約」は性質が違うので、ここでは扱いません。通常の判断場面では、「物」と「数字」の両面を考えて、いずれもリスクを高めないよう判断をします。

もう一つ重要な事が、ビル資産維持では、「現在」の問題解決と「将来」の利益の両方を考えるという事です。

ビル工事は、現在の問題解決だけを考えます。けれど先に説明をした通り、そこで過剰や不要な投資をして、将来も利益が維持できなければ、ビル資産は維持できない訳です。

ビル資産維持の工事とは、現在の「物」の問題を解決して、「将来」の利益を作る事なのです。
1.23 修繕工事とは違うビル資産維持工事の判断と取り組み
ビル工事とビル資産維持が違うように、いわゆる修繕工事と、ビル資産維持の工事も違います。

例えば排水管で漏水事故があれば、直ぐに修繕工事をします。これは修繕です。エレベータ部品が壊れても、部品交換の修繕工事をします。 一方でそうしたトラブルが増えると、排水管リニューアル、エレベータ・リニューアルをして問題を根本解決します。こうした修繕工事が必要になる問題を根本解決するビルの経年劣化部分のリニューアル等工事が、ビル資産維持の工事です。また今までなかったけれど、途中で必要になった建物設備機能を追加するのも、ビル資産維持の工事です。

1.3 中小ビル資産の分散修繕

分散修繕は、中小ビルを、利益を産むビル資産として、維持続ける方法です。ビルの本場ヨーロッパや世界中の中小ビル資産所有者が実践している普遍的な中小ビル維持に必要な工事取り組みの方法です。どのようなビル資産維持工事取り組みでしょうか?
1.31 分散修繕とは
中小ビル資産の分散修繕は、
ビルの使用を続けて使用経営の利益を保ちながら、(安定利益を維持する)
今後のビル資産維持に必要な工事を (必要/不要の判断)
自分の予算と将来のビル使用に合わせて自分で決め、(優先順位をつける)
リスクを分散して行う事で、(リスクを高めない)
低予算かつ低リスクでビルの寿命を延ばし続け、ビル資産とその利益を維持します。

つまり、
  • 自分の予算
  • 自ビルに合った工事内容
  • 現在も将来も低リスク
なのです。
1.32 ヨーロッパや他国の中小ビル資産所有者は分散修繕で維持している
ビルの本場ヨーロッパや世界中の中小ビル資産所有者は、基本分散修繕でビルを維持しています。建設業者が主導するリノベーション工事や大規模改修工事のような高額投資は、プロが手を出すものと考えています。 分散修繕は、ビルの本場ヨーロッパや世界中の中小ビル資産所有者が伝統的に経験的に発達させた考え方です。特別難しいものではありません。ビル資産としてなるべく安定利益が維持できるように、必要な工事とそうでもない工事とをビル資産所有者が自分で決めて、低予算、低リスク、かつ自分の予算でビルの経年劣化部分のリニューアル工事等を行います。

1.33 自分の予算で利益を守る
実際分散修繕の基本取り組みは、難しくありません。 工事は基本、必要なタイミングで行います。予算を準備して工事する。この繰り返しです。 ただし、利益が残る範囲で予算を確保し、遅すぎないタイミングで過剰を省いて低予算で工事をする。自分の予算で自ビルの現在の利益を守り、且つ将来の利益を作るためにどうするか、考えて決めるのは、ビル資産所有者の仕事です。

1.4 中小ビル資産所有者が、ビル資産維持工事を決めるとは

中小ビルの分散修繕は、ビル資産所有者が、自分で・何のビル資産維持工事をするか ・どのように予算削減をするかを考えて決めます。でも工事の何を決めるのか、正しく分かっていなければ、上手くいきません。そこでここを再確認しておきましょう。
1.41 ビル資産所有者は、ビル資産の将来を決める
専門知識を持たないビル資産所有者が、工事見積の内容を判断したり、工事業者に指示が出来る訳ありません。(簡単な内装工事程度なら出来るかもしれませんが)

ビル資産所有者が決めるのは、ビル資産の将来です。 「現在のビルが、将来どのようなビルとして、ビルの使用利益を産んでいるか」をビル資産所有者が決めるのです。 工事予算が厳しければ、将来のビルは最低限の設備機能だけのシンプルなビルでしょう。それでも使用経営の利益が維持できていれば、問題ない訳です。
1.42 ビル資産維持工事はビルの将来の利益を作る
言い換えると、ビル資産維持工事はビルの将来の利益を作る工事です。

つまりビルの経年劣化部分のリニューアル等工事の結果が、必ずしも元の状態に戻すとは限らないのです。ここが、工事業者が作成する長期修繕計画のとの違いです。そした例え長期修繕計画があっても、別に分散修繕を考える理由です。

ビル資産維持工事はビルの将来の利益を作る工事だから、将来のビル所有者のビル使用に重要ではない、建物設備機能や内装グレードを削減する事ができます。一方で新しく必要になる建物設備機能等もあります。年月とともにビルも変化します。そうして変化する事で、ビルは100年200年使用できるようになるのです。そしてビル資産の将来と利益を決めるのはビル資産所有者だから、ビル資産所有者は、そこで工事の必要不要を判断する訳です。

1.43 工事業者が決める事・ビル資産所有者が決める事は違う
ビル資産維持工事に際して、工事業者が決める事と、ビル資産所有者が決める事は、次の通りに違います。

1.5 分散修繕の取り組み

リスクを高めず将来の利益を守る、低予算低リスクの分散修繕は、どのように考えて取り組めば良いのでしょうか?
1.51 中小ビル資産所有者の分散修繕に取り組むために必要なこと
ビル資産所有者が、ビル資産維持工事を自分で判断するためには、専門知識は必要ありませんが、次の3つの分散修繕力が必要です。
  1. 自ビルに必要な工事の全体を把握できる
  2. 工事判断の結果の将来のビルを想像できる
  3. 工事に優先順位を付けられる
1.52 最初は30年分散修繕計画の作成が必要
3つの分散修繕力がわかれば苦労しない、と思われた方はご心配ありません。確かに伝統的にビルを維持してきているヨーロッパの中小ビル資産所有者達は、自然に分散修繕力が備わっています。私達日本人にはそれがありません。昔はこうした力を得るためには、長い経験と勘を養う必要がありました。

けれども現在は、マイクロソフトのエクセル等表計算ソフトを使用して30年分散修繕計画を作成する事で、分散修繕力を手に入れる事ができます。

30年という期間に決まりはありませんが、通常途中で何かあってもある程度の予算を確保して、大きな工事も入る期間として、30年が使用されます。
1.53 質問や相談相手も必要
最初はやはり、必要と考える工事対象に見落としが無い事、各工事時期の見積もりや各工事予算の見込みについて、相談相手が必要でしょう。

ビルマネジメントが入っている場合は、ビルマネジメントと相談ができます。自分でビル資産の計画を立てると言って、助言をもらいます。 ビルマネジメントが入っていない場合や、相談できる関係ではない場合は、各専門工事の業者に軽く相談をします。相性が良い各専門工事業者を探す練習になります。相談をするときは、見積書は貰いません。今すぐ工事をしないけれど、時期に合わせて予算を準備する準備をしていると言えば、専門アドバイスをくれます。そこで良い業者だと感じれば、実際の工事の際にお願いをすればよいのです。

もちろんビルオは、30年分散修繕計画作成の総合的なご相談相手になります。

1.6 30年分散修繕計画の作成

30年分散修繕計画は、マイクロソフトエクセル等表計算ソフトで作ります。一度作って終わりではなく、作成を通して試行錯誤を繰り返し、作成後も見直しては何度もブラッシュアップや再作成をする事に意味があります。
1.61 作るのは30年総工事予算の配分計画だが物の想像が重要
パソコンの表計算ソフトで作る30年分散修繕計画は、数字の羅列です。数字の計画として、30年総工事予算を決めて、30年総工事予算をいつ頃の何の工事にいくら配分するかを決める「数字」の計画です。

ただもちろん机上の数字合わせでは全く意味がありません。30年分散修繕計画の「数字」をみて、「物」のビルの状態を想像し、「物」のビルの状態を確かめる事が欠かせません。これは少し訓練をすれば、すぐに出来るようになります。
1.62 目指すのは、将来のビル所有者が使用する将来のビル像る
30年分散修繕計画作成で意識するのは、ただ経年劣化部分をリニューアルするという考えではなく、現在のビルを、ビルの維持に必要な工事を通して、30年後の将来のビル使用者が使用する将来のビル像へと近づけていくことです。作成を試行錯誤しているうちに、より低予算でより望ましい、30年後の将来のビル使用者が使用する将来のビル像が見つかるかもしれません。

それにより必要な工事と優先順位の低い工事を区別する事ができるようになります。どこに予算をかけて、どの予算を削減できるか、考えられるようになります。低予算で無駄なのない分散修繕を実現できるようになるのです。
1.63 追求するのは低予算低リスク
30年分散修繕計画作成で意識するのは、単なる低予算ではなく、低予算低リスクです。そもそも低予算の水準自体、ビルによって違います。しかも低リスクのリスクには、「物」のリスク、「数字」のリスク、「負」のサイクルに陥るリスク、の3つがあります。

単に目先の工事費用を節約する事だけを目指すのではなく、なるべく低予算で低リスクを維持できる自ビルのバランスを見つけるのです。
1.64 30年分散修繕計画作成の流れ
30年分散修繕計画の作成は、即エクセルに取り掛かるのではなく、
  1. 準備として考える事を考える
  2. 総工事予算と何の工事に予算を配分するかを決める
  3. リスクを分散させる
の3ステップがあります。これから1つ1つ順を追って見ていきます。

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Ⅱ 30年分散修繕計画の作成は、まず考える

実際の分散修繕計画を作成する前に、まず考えるべき事をよく考えておきます。        無理のない予算で、工事の必要と過剰・不要を判断できるようになります。

2.1. ビル資産所有者が考える事

分散修繕計画を作成する前にビル資産所有者が考える事は次の3つがあります。

1つは、今後のビルを寿命にしないために必要な工事の財源
1つは、今後誰がどのようにビルを使うか?
そしてもう1つ、30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子

2.11 ビル維持工事予算の財源を考える
今後30年のビル維持工事の財源を考えます。財源がなければ、どうやっても工事ができません。借入は最終手段です。

望ましいのは、安定財源です。 修繕資金の準備や、臨時財源の予定がある場合でも、毎年定額で確保できる安定財源を考えます。収益ビルの場合はビルの賃料収入です。事業用ビルの場合は、事業売上から原価や経費を差し引いた事業収益です。現在だけではなく、30年後まで現実的に見込みます。
2.12.今後誰がどのようにビルを使用するのかを考える
今後誰がどのようにビルを使用するのか、は時間をかけて具体的に考えます。それによって将来のビルに求められる物が違ってくるからです。ここを考える事は、何より予算削減に欠かせません。

例え現在と同じ・・と言う場合でも、例えば女性が多いか、男性が多いか、若年層が多いのか平均年齢が高めか・・、使用は事務所か、店舗か、事務所と一言言っても、来店型か、堅い雰囲気か、自由なスタイルを好むか・・等で、必要とする将来のビルの機能性能や好む内装仕上がりが違います。

検討手法としてマーケティングのペルソナ手法が役に立ちます。インターネットで検索をするとサンプルが多数出てきますから、ぜひ参考にして作ってみてください。
2.13.30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子
30年後そのビル使用者がどんな状態の自ビルを使用しているか、具体的に想像します。これが、分散修繕で何の工事をすべきかの判断基準になります。

大抵の場合、必用な工事は、ビルの経年劣化部分のリニューアル工事だけではありません。例えば現状維持と一言で言っても、内装はリニューアルするでしょう。(しない場合は、しないビルを想像します。)新規で追加したい建物設備機能や逆に必要なくなるものもあるかもしれません。もちろんここで既に、「予算」の2文字が頭に現れますが、考えるだけであれば、費用もかからないから自由に考えましょう。

内装や見た目、建物設備機能や使い勝手等、ビルの使用体験の全てを考えます。将来どんなビルでありたいかは、一度考えたら終わりではなく、常に念頭においておいて、他のビルの事例を見たり、良いアイデアが浮かんだりする度に、アップデートしましょう。

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Ⅲ 何の工事が必要か?どう経済的に工事をするか?

ここが分散修繕のメインです。自ビルの工事予算と将来のビル使用に合わせて、これから30年で、
  • 何の工事をするか?
  • どう経済的に工事をするか?
の組み合わせを試行錯誤してベストを見つけます。

3.1 工事計画の全体像と30年総工事予算を決める

30年分散修繕計画の作成で、・何の工事をするか?・どう経済的に工事をするか?を決めてみるにあたり、先に留意点を確かめます。
3.11 問題は何の工事にどの程度予算を配分するか
30年分散修繕計画は、30年総工事予算の配分計画です。 自分で決めた無理のない30年総工事予算を、
  • 何の工事をするか
  • 各工事にどの程度予算を配分するか(予算を削減するか)
検討します。これが簡単ではないのは、同じ総工事予算でも、各工事にどの程度予算を配分するかで、どれだけの工事ができるかも違い、30年後のビルも違ってくるからです。

3.12 どうやって工事費用目安を調べるのか
ところで、各工事の費用目安は、どう見つければよいのか?

見積書は不要です。正確な数字は必要ありません。どうせ変わってきます。

大まかな目安は、現在ではインターネット検索が第一手段で、かなりの情報は手に入ります。例えばキュービクル、更新とサーチすれば目線は出てきます。ただわかりにくい分野は、管理者や工事業者に意見を聞きます。

意見を聞く時の注意は、繰り返しになりますが、見積書を貰わない事です。あくまでもざっくり聞く事です。なるべく相手に負担をかけないようにします。
3.13 なるべく保守的に考えておく
30年後の工事予算を考えても、実際は予測できません。インフレが進行しているかもしれません。 将来の不確かな数字は保守的に考えます。 保守的とは、自分が確保する総工事予算は抑え目に、支払う事になる各工事予算は少し多めに見積もるという事です。

多少の変動は吸収できます。そして実際に余裕があれば、想定より利益が増えてラッキーです。

3.2 30年総工事予算を決める

まず、30年総工事予算を決めます。後から増減できますから、まずは仮で決めて、計画を立ててみてください。
3.21 理想的な30年総工事予算
理想的な30年総工事予算は、毎年一定金額を確保します。

目安は、財源のの範囲で、収益ビルであれば賃料収入の5%前後~10%です。(当然、収益規模とビルの状態によって異なります。)事業用ビルや自用ビルでも、賃貸を想定して、同様に考えます。

財源の予算が厳しい場合は、毎年確保可能な金額を見積ます。予算が厳しくともどうにかなります。心配いりません。
3.22 30年総工事予算のバリエーション
既に留保してある工事準備金がある場合や、今後まとまった予算確保の予定がある場合は、それも加えます。将来の予算は、本当に実現するまで、実現できないリスクもありますから、なるべく毎年一定額確保をベースに、ボーナスと考えましょう。

また、大きな工事が集中する時期は、毎年の確保する予算を多く、落ち着いたら、毎年の確保する予算を下げるといった、応用テクニックもあります。
3.23 30年総工事予算も削減を追求する
30年分散修繕計画は、30年総工事予算の配分計画として、
  • 何の工事をするか?
  • どう経済的に工事をするか?
を検討しますが、もちろん「30年総工事予算」の削減も考えます。何度も見直して、30年総工事予算も削減し、利益を高めます。

3.3 何の工事をするかを決める

次に30年で何の工事をするかを、洗い出し、優先順位をつけます。どの程度工事ができるかは、この後の各工事予算をどの程度見込むか(削減するか)でも違ってきますから、最終的には全体を検討しながら決まります。
3.31 ②今後30年で必要と思われる工事を洗い出す
自ビルに、躯体以外にどのような建物設備機能や外壁、内装等の潜在的な工事対象があるは、ビル資産所有者であれば把握をしておくべきです。そこから、今後必要ない建物設備機能はリニューアル工事対象から外します。また次の30年ではリニューアル工事が必要ない建物設備機能も対象から除外します。(この区分けはこの先の3.23工事サイクルで見ます。 また「2.13.30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子」に向けて新規で加えたい建物設備機能があれば、それを加えます。




業者が作成した長期修繕計画があれば、それをベースにできます。細かい内訳は必要なく、項目ベースで把握をすれば十分です。
3.32 工事におおまかな優先順位をつける
洗い出した工事対象をカテゴリー分けして、優先順位をつけておきましょう。後で特に工事予算削減の判断がやりやすくなります。


3.33 ③工事サイクルを決める
工事サイクルは、分散修繕で非常に重要な考えです。ビルを数百年使用する事を考えれば、ビルの各建物設備機能リニューアル工事は、1回で終わりではなく、繰り返し必要になります。つまりサイクルです。

工事サイクルが短いとは、トラブルリスクを高めないよう、早めに工事を行う事です。安心ですが100年200年の単位で考えると総工事費が膨らみます。工事サイクルを長くすると、総工事費は抑えられますが、相応にトラブルリスクが増加します。例えばエレベータ更新を例に取れば、次の通りです。


30年分散修繕計画作成でも、工事サイクルを短くとると、必要工事が多くなります。工事の先延ばして、対象の分類を「工事が必要」から「工事が必要ない」分類に入れる事は、工事予算削減の手っ取り早い手法ですが、どこまで延ばすかは、実際の自ビルの状態と品格を考えなければいけません。

3.4 各工事の予算を削減する(取り組み方針)

各工事予算をいくら見積もるか?は同時にどの程度工事予算を削減するか?です。 一般的な工事費用案に対して、次の工事予算削減ポイントで水準を決める事で、工事費用を削減(場合によっては増額もあります)します。(いくつかの水準を決めて、工事予算目線のアドバイスをもらうと、費用削減効果が分かります。)
④工事業者のサービス水準
⑤機能性能グレード
⑥素材等(耐久性等)
⑦工事範囲
3.41 ③ 工事業者のサービス水準
誰も教えてくれないけれど、工事費用インパクトが大きいのが、相談をする業者のサービス水準です。腕の良し悪しと言う話ではありません。サービスやマネジメントが良い工事業者は、その分費用が嵩んで当然だという事です。

「サービスやマネジメントの良さ」=工事の「安心」 「安心」は高額なのです。

建設業者に相談をすれば、実績あるプロが工事内容を考え、プロが工事を監督し、手厚い説明とサポートがあり安心だけれど、工事総額の30%の工事監理費その他多くの管理費が発生して超高額です。自分でDIYで工事をすれば材料費だけ、または職人に指示すれば、+人足代で済みます・ただ 工事内容を決めて材料を選び施工まで全てが自己責任です。費用水準が低い業者に、過剰サービスを求めては、トラブルが発生します。わからない設備工事で無理にDIYしても、更なるトラブルを引き起こすリスクが高まります。これらは極端な例ですが、その中間で、サービスやマネジメントの良さ」を選ぶか「費用の安さ」を選ぶかは、ビル資産所有者が決める事です。


3.42 ⑤機能性能グレードを決める
ここも予算への影響が大きいところです。この削減は「ケチ」の腕の見せ所です。

工事に際し、どのように工事をすべきかは工事業者が決める事ですが、その仕上がりの機能性能グレードをどの程度求めるかは、ビル資産所有者が決め事です。例えばエレベータ更新でも、せっかくだからと内装のグレードアップや、震災時制御やらテレビモニターやらを付けると、相応に金額が嵩みます。空調にしろ消防設備にしろ、付加価値を付ければ費用が嵩みます。内装工事も、高級やデザインを追求すれば、費用は天井無しです。


もちろん、将来のビル使用者が必要とする機能性能グレードは維持しなければいけない訳ですが、日本のビルは設備機能グレード過剰が多いので、ここは予算の削減しどころが沢山あります。
3.43 ⑥素材等(耐久性等)を決める
素材、時に工法についても、同様です。「どうせ工事をするなら長く使えるものを・・」は合理的ですが、大抵の工事は、安全や信頼性、長持ちを優先させると比例して高額です。その費用が高すぎていつまでも工事ができなかったり、他の工事が出来なくなれば元も子もない訳です。 例えば。屋上防水工事も、保障期間が5年、10年、20年で比例して費用が増額します。
3.44 ⑦工事範囲を決める
工事範囲も、費用インパクトが大きいところです。

日本では、「どうせ工事をするならまとめて行った方が、共通費が節約できる」と言われがちですが、実はそうとは限りません。 例えば1フロアで漏水事故が頻発するから排水管を更新する時に、ついでだから全フロアを更新するのは、合理的に聞こえますが、他フロアは漏水事故もなく後100年使用できるかもしれません。工事規模が大きくなると、不随する中間費も増額します。

3.5 主要ビル資産の維持工事の取り組みヒント

    ここで主要ビル資産の維持工事取組を勘がる際のヒントを大まかにご紹介します。実際の判断は個別の事情できまります。あくまでもご参考です。
3.51 電気設備・幹線
  キュービクルあるビルでは、電気主任技術者の助言を聞きます。ただキュービルのリニューアルといって、中の設備の必要部分だけを交換する場合と、箱ごとリニューアルする場合があります。もちろん後者の方が費用がかかります。近年電気使用量が増えているので、その対応が必要な場合もあります。

電気幹線は、これも電気技術主任者の助言があった場合ですが、増えた電気使用量に合わせて電気幹線も交換する場合もあります。

部屋の照明器具やコンセントは内装リニューアルの際に、変えていると思いますが、あまり古いままの箇所があれば、どこかで交換します。

忘れやすいのが、収益ビルの子メータですが、法律上は、10年に1回交換です
3.52 給排水管・設備
  排水管漏水はよくあるトラブルです。ただ昔の鋳鉄管の場合や、ジョイント部分に鋳鉄管が使われている場合、錆リスクがあります。ただ水使用量が多い住居・飲食ビルに比べて、水使用量が少ないオフィスビルは、そうそうありません。そう酷くない場合は、ライニング工事で対応ができます。

給水管は通常交換する必要はありませんが、給水が屋上高置タンク式の場合、現在は直結増圧式が推奨されていますから、タンク老朽化と共に、タンクを撤去して、直結増圧式に変更する例は多くあります。この時に給水菅の耐圧に心配があると、給水管を更新する事になります。 パイプスペースのアクセスが悪かったり、フロアごとにコンクリートで遮断されている場合は、新規パイプを建物の外側に設置します。よくある話です。
3.53 外壁
  外壁は、1に剥落事故リスクの防止 2に防水効果のリニューアルです。 マンションも含めて外壁修繕工事業者は多数ありますが、マンションに強い系は過剰サービスで高額工事を売る傾向がありますから、要注意です。防水工事は、保障がありますから、これもチェックします。

外壁タイルが古く補修タイルが手に入らず、全交換の予算もない場合は、タイルの上から塗装する手法もあります。 建物の印象を決めますから、塗装塗料の種類と色は、必ずサンプルを多数見て、じっくりと選ぶ事です。(なんとなく業者にお任せして、満足ではない・・という話は少なくありません。) また古いビルで外壁塗装をする場合、足場をかけたついでに、サッシ、鉄部、看板支柱等外回りの対応も必要に応じて行います。

屋上の防水塗装は、より短い頻度で行っている事でしょう。近年防水工法によって、10年や15年20年等がありますから、予算と相談をして選びます。防水工事は必ず保証があります。保証内容をしっかり確かめます。
3.54 エレベータ
  エレベータは、エレベータ保守会社が交換の助言をします。だいたい築30年を過ぎると交換を言われますが、50年以上使用しているエレベータも少なくありません。40年程度で保守部品保管期限が過ぎたという手紙をもらう事がありますが、部品はあるものです。(他の交換エレベータから取った部品が保管されています。) 古いエレベータでは、基準不適格が指摘される場合がありますが、これは違法ではありません。

エレベータ交換は、基盤交換か、かごも含めた全交換か、メーカー系エレベータ会社か、独立系エレベータ会社かで、費用が大きく変わります。またその後の保守費用も、POGかフルメンかで違います。 更に、付加価値設備をどの程度つけるかでも、費用が大きく変わります。バリアフリー対応や、地震時に近い階で自動停止といった機能、かご内モニターをつけると、当然に費用が嵩みます。どれを選択するかは、分散修繕として自分の頭で考える事です。

3.6 全体を見直し、全体で工事予算を削減する

最初に必要な分散修繕工事と必要予算を積み上げると、総工事予算が膨らんでいて焦るのが、普通です。そこから全体を見て、バランス良く工事予算を削減していきます。
3.61 30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子になっているか
  必要な分散修繕工事と必要予算を積み上げると、まず確認すべきが、工事の結果の30年後の自ビルのイメージです。それが、自ビルが工事の結果30年後の自ビル使用者が使用している自ビルのイメージに近いものになっているか、より改良できるところはないか、確かめます。
3.62 シンプルビル化や個性ビル化等バリエーションを考える 
  また、目指すべき「30年後の自ビル使用者が使用している自ビル」像についても、より低予算で実現できるあり方のバリエーションを考えます。 必ずお薦めしたいのは、思い切ったシンプルビル化と、個性ビル化です。

シンプルビル化
とにかく建物設備機能を必要最小限にします。古いビルに必ずしも最新の利便性は求められません。ただしスラムビルにならないよう、外壁と内装の小ぎれいさを保つ事には留意します。

個性ビル化
思い切った一部機能削減や、思い切った色使い等、個性化ビルは築古ビルならではのビルの在り方です。自分の個性をビルに反映する、これは築古中小ビル所有者ならではの醍醐味です。
3.63 繰り返し見直し、工事予算を削減する
  分散修繕の工事計画1回2回で「これだ!」と決まりません。何度も見直し、時々作り替え、ブラッシュアップを続けます。理由は大きく2つあります。

1つは、どうせ変化する事です。10年先のビルの正確な状態はわかりません。トレンドや予算も違ってきます。アイデアも沸きます。 もう1つは、経験を積むにつれ、思い切った予算削減が出来るようになることです。ビル維持の経験が少ないと、つい工事予算を大きく見積もりがちです。経験を積むにつれ、「この程度で大丈夫」がわかってきます。そうしてより低予算でビル資産を維持できるようになります。



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Ⅳ リスクは分散で抑える

ある程度何の工事をするか決まってきたら、リスクの分散を確かめます。リスクを確かめ、リスクを高めないように、工事を分散させて、低予算低リスクを実現します。

4.1 分散させるリスクとリスクの分散

築古ビルのリスクは、「数字」と「物」と「負のサイクル」に陥るリスクです。「物」と「数字」のリスクを分散させて、「負のサイクル」に陥るリスクを避けます。
「数字」のリスクは、必要な時に工事予算がないこと、更にペイが不可能な負債です。
「物」の最悪リスクは、事故や設備停止、見た目の酷い老朽化です。

30年の間では、時に一部が悪化する事はありえます。ただこれが続いて重なると、負のサイクルに堕ちります。負のサイクルに陥る事は避けなければいけません。負のサイクルに陥らないように、「物」と「数字」のリスクを分散させます。
4.11 4.11「数字」のリスクを分散させる
30年分散修繕計画は、数字の計画です。「数字」のリスクの分散は、難しくありません。 工事を計画する→予算を準備する→工事をする→次の工事を計画する→ 

で赤字を作りません。ただ「物」のリスクはまた別の話です。
4.12「物」のリスクを高めないために
ところが「物」のリスクはまた別です。特に築40年前後でさほど工事をしてきていないと、外壁やキュービクル更新やエレベータ更新等重要工事の必要性が集中しがちです。ここで数字を優先して工事ができず事故が起これば、元も子もありません。

そうした場合には「物」のリスクも分散させます。例えば、
  • 重要な工事を早めに行う
  • 重要度の低い工事を少し後ろ倒しにする
  • 重なる時期の工事規模を更に分割する
  • 重なる時期の工事予算をもっと削減する
といった調整をします。
4.13 理想的なリスクの分散
理想的にリスクが分散されて維持されているビル資産は、次のような状態です。

一棟のビルの中に、古い設備や内装外壁と新しい設備や内装外壁とが、混在しています。多少不便なところや経年を感じるところがあっても、最新機能設備は揃っていなくても、酷く悪い状態はなく、必要最小限の機能性能や美観清潔感はあって、見た目も居心地もそう悪くありません。

そうしてビルの使用を続けながら、次のビル資産維持工事を計画しては、予算を準備して、予算が準備できたら工事を行います。気が付いたらビルは100を過ぎているでしょう。

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Ⅴ 30年分散修繕計画の作成

ⅢとⅣは実際には30年分散修繕計画を作成しながら検討をします。

5.1 30年分散修繕計画の作成

30年分散修繕計画は、マイクロソフトエクセル等表計算ソフトを使用して作成をします。
5.11 30分散修繕計画の作成
基本は、縦に各建物設備を並べます。 横は、1年から30年後まで、毎年の留保予算とその累計、工事使用金額と使用後の残額累計が分かるようにします。

5.12 30分散修繕計画作成のコツは計算式の入れ込み
30年分散修繕計画作成では、計算式の入れ込みがコツになります。例えは一つ工事予定の数字を入れると、関係する全ての数字に反映されなければいけません。

適切な計算式の入れ込みがある事で、30年分散修繕計画は、単なる計画ではなく、検討と比較のツールとなります。30年の様々な分散修繕工事の計画を検討し、比較をしてより低予算低リスクの分散修繕工事を選ぶ事ができます。

5.13 いずれ計画なしでも自然に分散修繕ができるようになる
30年分散修繕計画の作成を通して、自ビルの分散修繕予算目線と、維持すべき建物水準がわかるようになれば、もうエクセルで計画を作成せずとも、自然にビルの将来と全体を考え、優先順位をつけて、必要な工事は必要と判断をして、予算を準備できるようになります。「当たり前」として現在ビルは築100年以上すぎても、適切に維持され、古くても趣あるヨーロッパの古い街並みの古いビルのような趣あるビルとして、存続しているでしょう。

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Ⅵ 分散修繕工事の実践ヒント

30年分散修繕計画を実際の工事判断では、どう使うのでしょうか?簡単にご紹介します。

6.1 実際の分散修繕工事の判断

実際の場面では、実情ありきです。ただ30年分散修繕計画を作成してあることで、低予算低リスクを考える事ができます。  
6.11 工事時期の判断
30年分散修繕計画は、工事の実施計画ではありません。 現実には、時期が到来してもまだ問題がなさそうな場合もあれば、予定より早く問題が増える場合もあります。実際の工事の必要性判断は、専門家や専門工事業者が行います。

工事の時期は違っても、分散修繕として、を準備してから工事」のサイクルは極力守ります。

どうしようもなくなってから緊急工事の事態は避けるべきです。分散修繕の工事対象については、早めに専門家や専門業者と話をして、「そろそろ」の見込みを立てておきます。
6.12 工事時期の判断
実際にビル資産維持工事の時期を決めるにあたっては、30年分散修繕計画を見て、
  1. 自ビルに必要な工事の全体を把握し
  2. 工事判断の結果の将来のビルを想像し
  3. 工事の優先順位を確かめる
必用があります。

工事費用が、想定よりふくらむ場合もあるでしょう。(特に現在は、工事費が高騰しています。)その時に該当工事を行う事で、他の工事予算が足りなくなって他の必要工事ができなくなれば意味がありません。 30年分散修繕計画表で確認をして、時には他の工事を調整したり、もしくは該当工事を調整する事もあるでしょう。調整とは、少し早めに行ったり、少し後ろ倒しにしたり、工事の規模等を小さくして工事予算を抑える事です。
6.13 実際の工事取り組みは専門業者とのチームワーク
分散修繕での工事取り組みでは、工事業者は工事プロジェクトのチームパートナーです。ビル資産所有者は、チームリーダーです。 工事業者は、チームの一員として、30年分散修繕計画で検討したビルとしての該当ビル資産維持工事の方針を、共有します。そして方針に沿った仕事を考えてくれます。 ビル資産所有者は、30年分散修繕計画の作成で、ある程度予算目線や工事費用削減を考えていますが、実際にはビル資産所有者側の希望通りの予算や内容では難しい場合もあるでしょう。チームで一緒に知恵を絞ってブラッシュアップし、双方にとってWinWinな工事計画を一緒に作り上げます。これができれば、低予算でもしっかりとしたビル維持に必要な工事ができるようになります。

6.2 相見積りは厳禁

分散修繕は、経済的に建物設備機能等リニューアル工事に取り組みますが、経済的に工事を行うなら、相見積もりは厳禁です。相見積もりをしていては、分散修繕は実現できません。
6.21 相見積りの問題
近年「相見積り」という言葉が流行して独り歩きをして、むやみに安い見積書を選ぼうとする動きが流行っていますが、本来の官公庁の「相見積もり」は、工事仕様書を役所が決めています。

けれども専門知識を持たない一般の中小ビル資産所有者は、どう工事が出来るか、全て工事業者に考えてもらわなければいけません。

内容が分からないまま、安い見積書を選べば、安かろう悪かろうになるのは当然です。

更に一番やってはいけないのが、Aの工事業者に相談をして色々考えてもらった後に、そのアイデアをBの工事業者に持ち込んで、「これもっと安く工事できないでしょうかね~」と持ち掛けるケースです。これはアイデアの窃盗行為です。
6.22 相見積もりをしていては、考えてもらえない
より根本的な相見積りの問題は、相見積りには、そこに
「ぼったくられるのではないか不振」
「相手を損させても自分だけは損したくない」
という、業者不信の考えがある事です。 自分が、「損させられるのではないか」と警戒しては相手も分かります。そうした信頼関係が築けない相手に対して、業者も「相見積もり」されるのではと警戒します。自ビルの工事をどうやったら「経済的」出来るかを考えてもらえる訳がありません。先の例でも、Aの業者も二度とあなたの仕事をしなくなります。Bの業者も、「そういう人」として、通りいっぺんの仕事しかしてくれなくなります。
6.23 「考えてくれる」業者との関係を作りには「敬意」が欠かせない
低予算低リスク分散修繕でビル資産のベストな安定利益を維持する最大の秘訣は、「考えてくれる」業者との関係が作れる事です。これは知り合いの業者にお任せ、とは違います。ビル資産所有者側の予算の事情や工事予算削減の考えも聞いてもらった上で、それらを踏まえた低予算でのベストを「考えてもらう」関係作りが必要なのです。「お金には糸目をつけない」「言われた金額を支払う」お大尽姿勢では、実現できません。

こうした関係作りで欠かせないのが、相互「敬意」「リスペクト」です。 低予算の工事とは、それだけ工事業者の利益も少ない事です。低予算で良い工事を行う事には、専門業者の最大のノウハウが詰っています。利益が減るにも関わらず考えてもらう事は、相手の「時間」を取ります。まずここに最大の「敬意」「リスペクト」を払わなければ、発揮してくれなくても文句は言えません。

ビル資産所有者は、消費者ではありません。

低予算で分散修繕の工事を実現するためには、専門工事業者から「低予算で良い工事」を引き出すのは、ビル資産所有者の仕事です。 現在ビル資産の利益を維持して、その利益を享受したいのは、ビル資産所有者です。だから相見積りではなく、「敬意」をもって「考えてくれる」業者との関係を作る事は、ビル資産所有者にとって長い目で見て「利益」です。

6.3 山場を過ぎれば、分散修繕の頻度は減ってビル資産維持はもっと低予算になる

ビルが築40年過ぎは、外壁や内装、建物設備の経年劣化が重なり勝ちで、そうした調整が必要な場面が多々あります。 ただその時期を超すと、後はそう頻繁にはありません。例えば現在鋳鉄管の排水管を一度買う感すると、そうとう長い間使用できます。分散修繕の準備予算も下げられます。ぼちぼちと、予算を準備しては必要な工事を行いビルの使用を続けていると、安定利益を享受しながら気が付くけば100年年以上経過しているでしょう。


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