築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者のための
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中小ビル100年超を実現する分散修繕とは

中小ビルの分散修繕は、築古中小ビルを、建物寿命を延ばすために必要な資本的支出工事を、自分の予算かつ低予算低リスクで取り組む方法です。ヨーロッパをはじめ世界中で100年200年それ以上生き続けている実績ある、普遍的な古い建物の生かし方です。

中小ビル資産の分散修繕


中小ビルを100年200年使用経営続ける事は、何ら難しくありません。ビルの本場ヨーロッパをはじめ世界中の中小ビル資産所有者たちは、築50年はおろか築100年築200年を過ぎても、無理なく中小ビルを綺麗に維持できています。それは自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕で無理なく資本的支出工事を行っているからです。何より、中小ビルは長く使用経営の利益を積み上げる事が最もお得な資産だと知っているからです。

日本では建物が築50年ともなると「老朽化建替」と言われてきましたが、そうした贅沢ができる時代はとっくに過ぎています。日本の人口はあと60年もすれば激減します。私たち日本人は、そろそろ良い時代に建てた建物資産を大切に維持して、価値ある資産としてその使用経営利益を子孫に残す方法を学ばなければいけません。これを実現する分散修繕を、ここでご紹介します。

Ⅰ 建物の寿命を延ばす工事とは

建物を長く使用続けるためには、経年劣化部分のリニューアル等建物の寿命を延ばす工事が時々必要です。そのためには次の2つの理解が重要です。まず建物は、使用経営の利益を生む「資産」として維持しなければ維持できない事。次にそのための「資本的支出工事」は、「修繕工事」とは取り組み方が全く違う事です。その資本的支出工事は、資産所有者が決めなければいけません。
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1.1 日本の従来築古ビル工事取り組みの問題

築古ビル維持の歴史がない日本では、築40年築50年中小ビルに対して、主に次の2つ工事取り組みが取られてきています。

リノベーションや大規模改修工事は超高額すぎて手を出せません。一方で壊れたら工事式は、一見「低予算」に見えます。ただ自己流でなんとなく工事をしていては、必要な工事はできておらず、重要ではない工事ばかりにお金をかけている可能性があります。後者の方が営業が盛んだからです。ボロビルになったり、工事をしていても冴えないビルになります。

どちらも問題は、ビルの寿命を延ばす工事の考え方が根本的にわかっていないからです。
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1.2 ビル維持ではなくビル資産維持が必要

最初に理解すべきは、ビルは使用経営の利益を生む資産でなければ、持ち続けられない事です。そのためには、ビルは使用経営の利益を生む資産であり続けるように、負債化しない予算の中で、ビルの寿命を延ばす工事を行わなければいけないのです。
1.21 ビルは物だけれど資産でもある
ビルは「物」です。建物設備機能等物の集合です。物は経年劣化します。物はリニューアルできます。ただリノベーションや大規模改修工事のように高額すぎては、手が出せません。

ビルは「資産」でもあります。ビルは、土地の資産価値を実現する器です。ビルという「物」は、使用経営の利益という「数字」を産む事で、その資産価値があります。逆の状態は、負債です。これでは趣味でもない限り誰も長く持ち続けられません。ビル「資産」は、「物」と「数字」の両方の性質があるのです。(ちなみに他に「権利」もありますが、それはここでは扱いません。)

「物」のビルを維持するためには、一定の工事支出が必要ですが、ビルが「資産」であり続けられるためには、「利益」が残る予算で行うよう「数字」も考えなければいけないのです。
1.22 怖いのは負のサイクルに陥る事
つまりビル資産には「物」として経年劣化があります。そしてこれを放置しても「物」の事故・機能停止リスクが高まります。「物」リスクを解消するための工事支出が過大でも、こんどは負債化という「数字」リスクが高まります。

ただビルは、「物」や「数字」リスクが1つ2つでアウトになるほど、脆くはありません。例えば「物」のビルで、排水管が経年劣化してしばしば漏水事故を起こす。外壁塗装が剥がれてかけている。それだけであれば、ビルは使用続けられます。「数字」のビルが、高額工事で負債化してしまった。ある程度の期間は持ちこたえられます。

とはいえこれが長く続くと、問題が悪化の一途をたどります。ビルの経年劣化箇所も増え、「物」と「数字」のリスクが積みあがり、負のサイクルに陥ります。お金がないから工事ができない。工事をしないから建物状態が酷く悪化し、対応によりお金を必要とするようになる。

怖いのは一つ一つの「物」リスク「数字」リスクを、このくらいならと見過ごしているうちに、長期に積み重なり、負のサイクルに陥る事です。そうならないよう、どこかで対応を考えなければいけないのです。

1.3 修繕工事とは違う資本的支出工事とは?

もう一つ重要な事は、ビルを資産として維持するための工事・・つまり経年劣化部分のリニューアル工事や機能不足部分の追加工事は、ビルの寿命を延ばすための資本的支出工事だという事です。これは修繕工事とは取り組みの考え方が全く違う事です。
1.31 分散修繕は資本的支出工事のためのもの
経年劣化部分のリニューアル工事や機能不足部分の追加工事は、資本的支出工事です。資本的支出とは、会計上次のように説明されます。
建物の資本的支出とは、修理・改良したことによって使用可能期間が延長し、資産価値が高まるものをいいます。 資本的支出は、耐用年数の延長や価値の増加が認められるものについては「資産の追加取得」と考えて、固定資産として取り扱い、減価償却をして少しずつ経費としていくものです。つまり効果が長期に及ぶとして減価償却の対象になる工事です。
PLの修繕工事と違い、資本的支出工事はBSです。

1.32 具体的にどのような工事が資本的支出工事当たるのか
経年劣化した建物設備機能内装等のリニューアルや新規建物設備機能等の設置が、資本的支出工事です。

1.33 修繕工事とは違う資本的支出工事
PLの修繕工事とBSの資本的支出工事は、工事に対する考え方も取り組み方も違います。 修繕工事は、基本、今やらなければいけない工事です。またどの工事業者に依頼しても結果は同じです。(余計な工事を売りつけられた場合は別ですが。)一方資本的支出工事は、所有者の考えで決まります。資産の事は、資産所有者が自分で考えて決めなければいけないのです。

やらない(どうせ建替えるから/古い建物にお金をかけても無駄だから)、今お金がないからもう少し後で・・逆に使用者に迷惑をかけたくないから即やる・・、といった所有者の 考えで決まります。資産の事は、資産所有者が自分で考えて決めなければいけないのです。そしてその判断がビルの将来を決めます。

1.4 資本的支出工事では何を決めるのか?

ではビル資産所有者は、資本的支出工事を判断するときに、何を考えて工事の何を決めるのか?

工事をどうすべきかは、専門工事業者が決めます。そこに口を出したら嫌われます。ビル資産所有者は、工事業者の意見や提案に対して、
  • そもそも工事をするかしないか
  • 今するかもう少し後で良いか
  • どの程度の機能性能グレード範囲等をするか
  • 更にいえばどの専門工事業者と相談をするか
を決めます。

1.5 資本的支出工事では何を考えて決めるのか?

上記を決める基準は、もちろん建物が負債化せずに、将来も使用経営の利益を生む「資産」であり続けるるために必要な工事かどうか、です。もう少し分解すると、

ビルが将来、使用経営利益を得るために必須か
将来への過程で負のサイクルに陥るリスクが高めないか

資本的支出は、現在ビルの将来の使用経営の利益を作るための工事だから、そこに貢献しない工事は(趣味)でしかありません。また同時に、その過程で負のサイクルに陥っては元も子もありませんから、過程も重要です。これを具体的に考えるのが、この後ご紹介する分散修繕です。

1.6 決めるとはどういうことか?

もう一つ、工事を「決める」とはどういうことかの理解も重要です。
将来の事は全て仮定です。正解はありません。また確実なリスクフリーもありません。出来るのは、考えうる物と数字のリスク、現在のリスクと将来のリスクを検証して、バランスを取る事です。

決めるとは選択です。その選択肢に偏りがあっては、判断を間違います。間違わないためには、自分で良い選択肢を準備することが、重要なのです。
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Ⅱ 分散修繕とは

中小ビルの分散修繕は、中小ビルが、使用経営の利益を生む「資産」であり続けるように、「資本的支出工事」に取り組む方法です。一見「壊れたら工事」系ですが、自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕で無理なく資本的支出工事に取り組めるように、リスクを高めない事を考えています。その方法が、分散修繕の名前の由来である「分散」というわけです。
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2.1  中小ビルの分散修繕とは

中小ビルの分散修繕は、自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕で無理なく資本的支出工事に取り組む方法です。 ここには3つのキーワードがあります。 「自分の予算」「低予算」「低リスク」です。

中小ビルの分散修繕は、資本的支出工事の取り組みです。ゴールは、建物を負債化させず、使用経営の利益を生み続ける資産として、維持する事です。これを実現する「自分の予算」「低予算」「低リスク」とはどういうことか、もう少し詳しく見てみましょう。
2.11 「自分の予算」とはどういうことか
自分の予算で資本的支出工事を行うとは、つまり建物を「負債化させない」という事です。

別の言い方をすれば、建物の事はわからないから専門工事業者の言う通りに工事をする・・・ではなく、所有者が自分で建物が負債化しない総工事予算を決めて、その中で工事をやりくりするという事です。

ここには自分の懐に余裕があっても、必要以上の工事費用は削減して節約する・・も含まれています。そしてヨーロッパの資産家たちは、これが得意なのです。
2.12「低予算」とはどういうことか
低予算で工事をするとは、もちろん相見積で安い業者を見つける事でも、業者の見積書を叩く事でもありません。それでは安かろう悪かろうになることは、誰でも知っています。

資本的支出工事を低予算で行うとは、工何の工事は行う/何の工事はやらない、行う工事ついて、どの程度の機能性能グレードを求めるか・・・を自分で決める事です。その境目を決めるのは、工事業者ではなく、資産所有者側なのです。
2.13「低リスク」とはどういうことか
低リスクとは、特定リスクをひどく高めないという事です。特定リスクを高める事が、その先に負のサイクルに陥るリスクを高めるからです。 既にご説明をした通り、古い建物維持にノーリスクはありえません。物リスクと数字リスク、現在リスクと将来リスクは、いずれも相反します。ただいずれかのリスクが極端に高まらないよう、バランスの取れた状態が、負のサイクルに陥るリスクが低い「低リスク」です。 これも結局数字やビルの将来は、建物資産所有者が考える事です。

2.2 分散修繕は問題が悪化したら対応式

分散修繕は基本、問題が悪化したら対応式です。壊れてから慌てて工事・・は極力避けます。 分散修繕の基本取り組みは、予算を準備してから工事です。これで数字の負債化リスクを防げます。ただそこで必要工事ができず物のリスク将来リスクを高めないためには、考える事があるわけです。

2.3 分散修繕は計画が必要

つまり分散修繕には、
  • ・ビル使用維持に必用な工事の全体が把握できている
  • ・将来の結果とその過程のリスクを想像できる
  • ・必要工事に優先順位を付けられる
の3つが必要です。 これができるようになるには、最初は計画が必要です。将来仮に30年(30年は長期修繕計画表でも採用される、一般的な建物の「長期」の期間です。)として30年分散修繕計画の作成です。

ちなみに「最初は」という意味は、慣れてかつ自ビルの予算目安がわかるようになれば、そのうち計画がなくても自然に出来るようになります。だからビルの本場ヨーロッパや世界中の中小ビル資産所有者達は、自然に出来ている訳です。

2.4 30年分散修繕計画の作成

30年分散修繕計画の作成の目的は、ToDoを決める事ではなく、自分の総工事予算で、いつ頃何の工事をどの程度の「低予算」で行えば、低リスクでビルの将来の使用利益を守り続ける事ができるか、イメージを持つ事です。

現実は計画通りではなくとも、ある程度イメージを持つ事で、専門工事業者と必要な話し合いができるようになります。

30年分散修繕計画は、実際にはエクセル等で簡単に作成できます。ただ単なる計算表ではなく、試行錯誤のツールとして使うには、適切な計算式の入れ込みが必要です。ビルオでは、ご相談者様に計算式入りのフォームをご提供しています。

2.51 30年分散修繕計画の作成方法
30年分散修繕計画は、次の手順で作成をします。次章で順番に見ていきます。


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現在の建物は、自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕で資本的支出工事を行い、負債化させずに100年200年使用収益利益価値ある資産として維持できます。収益ビルは、地域賃貸マーケティングで高効果も実現し、安定経営を維持できます。管理、工事、賃貸、税対策、共有等所有問題・・問題は資産維持の観点から解決ができます。お気になる事がある方は、お気軽にお問合せ下さい。まず無料オンライン相談でお話をしましょう。

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Ⅲ 30年分散修繕計画

30年分散修繕計画の作成を通して、具体的にどう「低予算」「低リスク」で「負債化させない」を実現できるのかを、見ていきます。

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3.1 まず考える

分散修繕計画を考える前に、ビル資産所有者としては次の3つは常に考えておきます。

ビル維持工事予算の財源を考える
原則、安定財源を考えます。つまり収益ビルなら賃料収入、企業なら事業売上、個人であれば個人手雲集です。既に修繕資金の準備や、臨時財源の予定がある場合は、ボーナスとしておきましょう。

将来のビル使用者を想像する
今後30年のビル使用者を、具体的に想像します。例えばビル使用者は女性が多いか、男性が多いか、若年層が多いのか平均年齢が高めか・・、使用は事務所か、店舗か、事務所と一言言っても、来店型か、堅い雰囲気か、自由なスタイルを好むか・・手法としてマーケティングのペルソナ手法が役に立ちます。

30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子
すると現実的な」予算で、将来おビル使用者が使用している自ビルはどんな様子でしょうか?

具体的に想像をします。将来の自ビルの在り方に解はあ解りませんから、普段から自由に考えておきます。当然に何の工事をするか?の結果ですから、次の検討の過程でも何度も見直します。

3.2 準備:必要工事を洗い出す

実際に30年分散修繕計画の作成に入る前に、もう一つ準備があります。それは、ビルの使用維持に必用な工事を洗い出して、優先順位をつける事です。また過去の修繕履歴も調べておきます。 場合によっては、資料を探したり、管理者等に聞いてみたり、設備工事業者に意見を聞いてみたり、少し時間がかかる事があります。ただし工事業者の調査や見積書は必要ありません。ここで見落としがっては話になりませんから、必要な時間をかけて確認をします。
3.21 自ビルの建物設備機能を全て洗い出す
潜在的な工事対象は、すべて洗い出しておきましょう。

業者が作成した長期修繕計画表がある場合には、その項目を見ます(キュービクル、給排水管等、概項目で十分です。細かい項目は工事業者の考える領域です。)竣工図は細かすぎます。長期修繕計画表がなければ、ビル管理会社/管理人に洗い出してもらうか、目視で点検確認をします。
3.22 洗い出した自ビル建物設備機能の方針を分類する
洗い出した工事候補対象を、まず次の工事方針で分類します。2.13 30年後の自ビル使用者が使用している自ビル像実現を目指します。最初はなんとなく、経年で推察して分類で構いません。どうせ後で見直します。

3.23 工事対象候補に優先順位を付ける
分類した工事対象候補に、優先順位を付けます。といっても3分類(絶対必要/なるべく必用/できれば)に分ける程度で構いません。もし同一カテゴリ内でどれを入れるか・・となったその時に、相互の優先順位を考えれば十分です。ついでに4分野に分類をしておきましょう。後で色々考えやすくなります。

3.24 リニューアル/新規追加工事対象について、具体工事名を挙げる
30年内にリニューアル/新規追加工事に分類した対象建物設備機能等について、実際に必要となる具体工事を調べます。中には技術が変わって単純リニューアルではない対象もある事には留意します。例えば屋上高置給水タンクは、現在では直結増圧式が水道局で推奨されています。
3.25 優先順位が高い工事の予算目線も調べておく
各工事予算の目線も調べておきます。現在であればインターネット検索でかなり調べられます。わからなければ、ビル管理者や工事業者にさらりと聞いてみます。調査や見積書作成は提案を受けても断りましょう。

各工事予算目安には、幅があります。だから各工事予算は、例えば200万円~400万円といった費用幅として把握しておきます。
3.26 過去の対象工事履歴の整理もしておく
また、先に過去の建物設備機能のリニューアル等工事の履歴を確かめておきましょう。ビルの状態理解や工事サイクル検討の重要情報です。

いつ頃どこをどうする工事をしたか、だいたいわかれば十分です。正確な年月や金額は必要ありません。

過去の工事履歴情報があれば一番ですが、無い場合過去の確定申告書を見ましょう。税理士が固定資産一覧表を作成管理している場合には、それが参考になります。ただ本来資本的支出対象工事を修繕費計上している場合もあるから、要注意です。記録がなければ、人の記憶や目視で工事の後をみつけて、なんとなく推測しておきます。どのみち築25年前は、それほど大きな工事はしていません。

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3.3 分散修繕計画作成の考え方

まず、「自分の予算」「低予算」「物」の大まかな低リスクを考えます。 数字と物のバランス、現在の将来のバランスをを取る「低リスク」は、この後に考えるので、ひとまず置いておきます。
3.31 30年分散修繕計画の考え方
30年分散修繕計画は、自分の30年総工事予算を決めて、そこにいつ頃何の工事にどの程度の予算を配分するか、の計画です。

同じ30年総工事予算でも、何の工事を必要と考えるか?どの程度の予算を割り当てるか?いつ頃必要と考えるか?で、ビルの様子は大きく変わってきます。だから色々試行錯誤をして、一番「低予算」「低リスク」で納得ができる「30年後のビル像」像が実現できる組み合わせを検討したいわけです。

更になるべく工事予算の無駄をなくすために、30年総工事予算の箱そのものも、もっと縮小できないか?も問題になります。

可能性は無限にあります。経験豊富なビルオの助言を受けると、効率よく見つけられます。そこで考え理解する事が経験が、「勘」となって、実際の工事判断の場面で生きます。
3.32 30年総工事予算を仮決めする
まず、30年総工事予算を仮決めします。 原則は、毎年一定金額確保です。
理想は、自用ビルであれば賃貸を想定して3%‐5%
収益ビルで財源である賃料収入の5%-10% 財源確保が厳しければ、可能な限りで十分です。例え年間100万円でも30年で3000万円分工事ができます。
3.33 必要工事に工事予算を配分してみる
30年総工事予算の箱を仮決めしたら、既に確かめた工事優先順位に従って、予定工事を入れていきます各工事予算は、この後の「各工事予算削減」でもっと考えますから、最初は調べた工事幅から、任意で選んでおきます。

最初は、全然予算が足りない!と絶望的に感じる事は普通です。
3.34 必要工事を調整する
工事予算のやりくり手法として
  • 工事時期を先延ばしにする
  • 工事対象を減らす
  • 各工事予算を削減する
があります。もちろんいずれも数字操作ではできません。
3.35 工事時期を先延ばしするとは
工事を先延ばしにするというのは、「壊れたら工事」式でもよくやる手法です。

ただこれはやりすぎると、現在の数字リスクを高めない一方、その過程の「物」リスクと将来の「物と数字」リスクを高めます。 ビルを長く使う場合、各必要工事は、工事サイクルとして考えます。これはこの後ご紹介しますが、自ビルの適正工事サイクルは自分で決めます。そして自ビルの適正工事サイクルからどの程度先延ばしにしてよいかは、工事対象にもよりますから、個別に検討をして、決めます。
3.36 工事対象を減らすとは
工事対象を減らすとは、優先順位の低い工事対象を、30年の「工事対象」から、「次の30年では工事しない」もしくは「廃止」に再分類をする事です。
  1. 工事時期を先延ばしにして、次の30年では工事対象に入れない
  2. 工事対象の建物設備機能を、使えるだけ使った後は廃止にする
先延ばしはすでにご説明しましたが、廃止も含めて、その結果で、30年の自ビルの在り方は変わります。だから工事対象を減らす場合は、「30年の自ビルの在り方」をよく考えて検討をします。
3.37 各工事予算を削減するとは
工事予算の削減とは、もちろん見積書の単価や総額を叩く事ではありません。見積書の中身は、各工事業者が考える事です。素人の口出しや、また意見をもらおうと見積書を他社に見せるような事は厳禁です。そこで「ぼったくられているかも」と感じるような信頼できない専門業者に、相談をしている事に問題があります。

資産所有者の目で見ると、ビルの工事費用には、性格的に次の分類ができます。

中身は次の2.4 各工事予算の削減で見ます。 それぞれ専門工事業者の考えもあり、必ずしも実際の工事でその通りに出来るとは限りませんが、資産所有者として適正水準を考えてある事で、実際の工事の場面でそれぞれを話し合い、工事内容を煮詰める事ができるようになります。
3.38 工事予算削減とは、将来のビル像の見直し
こうした工事予算の削減とは、つまり将来ビル像の見直しです。最初はたいてい、贅沢に想像しているものです。大まかな方針としては、

シンプルビル化(すべてにわたって、必須以外の機能性能グレードを削ぎ落とす)

個性ビル化(費用投下にメリハリをつける)
は、是非考えておく事をお勧めします。またもちろん30年総工事予算そのものの削減にも取り組みます。

工事予算削減は、工事予算削減案を色々考えては、比較検討をして取捨選択をしていきます。経験とともにより思い切った削減ができるようになります。何度も計画を見直し、より低自分の予算かつ低予算低リスクで、よりよい使用経営利益を生み続ける自ビルを追求します。

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3.4 各工事予算の削減

ここでは各予算削減の重要なポイントをまとめて確かめます。工事サイクルは、工事予算そのものの削減ではありませんが、長い目で見て各工事の総工事予算を削減します。
■ 工事時期の考え方(工事サイクル)
各建物設備機能や内装等のリニューアル工事は「サイクル」です。1度で終わりでありません。このサイクル概念が非常に重要な理由は、ここをどう考えるかで100年200年といった長期での工事総額が大きく変わるからです。エレベータの例は次の通りです。

完全に機能停止すれば別ですが、その前の「経年劣化状態」の判断は人によって違います。その時間的幅は大変広いのです。ただリニューアル工事を早め早めに行えば「物」の事故のリスクは高まりません。けれども長期間で総額が相当に高額になります。一方でリニューアル工事を引き延ばせば、工事費用は節約できますが、「物」の事故リスクは高まります。だからどの程度にするか、「物リスク」と「数字リスク」を天秤にかけて自分で決めなければいけません

尚、素材や工法の進歩でサイクルが劇的に伸びるものもあります。(例えば給排水管が鋳鉄管から塩ビへ移行)そもそも終了するものもあります。(多くの地域で屋上高置給水タンクが推奨されなくなった)

■ ソリューションの選択
1つの問題対応にソリューションはいくつもあります。高額なもの、安価なもの、築古ビルとしてどの程度が必要か、適切なソリューションの検討も、工事予算削減には欠かせません。過剰なほど営業熱心な傾向があるだけに、自分でよく考えなければいけません。



■ 工事業者のサービス水準
誰も教えてくれないけれど、工事費用インパクトが大きいのが、相談をする業者のサービス水準です。腕の良し悪しの話ではありません。

高レベルのサービスやマネジメントには、その分費用を請求されて当然だという事です。サービスやマネジメントの良さは、工事の「安心」です。「安心」はお高いのです。費用水準が低い業者に、高サービスを求める事は、「業者いじめ」と言います。

建設業者に相談をすれば、実績あるプロが工事内容を考え、プロが工事を監督し、手厚い説明とサポートで安心です。ただ工事総額の30%の工事監理費その他多くの管理費が発生して超高額です。自分でDIYで工事をすれば材料費だけ、または職人に指示すれば、+人足代で済み激安です。YoutubeビデオでDIY を学べる時代です。ただ工事内容を決めて材料を選び施工まで全てが自己責任です。どの程度が自分には望ましいか、決めるのは自分しかいません。

■ 機能性能グレードを決める
ここも予算への影響が大きく、「ケチ」の腕の見せ所です。 工事に際し、どのように工事をすべきかは工事業者が決める事ですが、その仕上がりの機能性能グレードをどの程度必要と考えるかは、工事発注側の判断です。例えばエレベータ更新でも、せっかくだからと内装のグレードアップや、震災時制御やらテレビモニターやらを付けると、相応に金額が嵩みます。空調にしろ消防設備にしろ、付加価値を付ければ費用が嵩みます。内装工事も、高級やデザインを追求すれば、費用は天井無しです。

機能性能グレードは工事業者に利益になる事と、後から足りないと文句を言われないために、余裕を持った提案になりがちです。この程度で十分。はビル所有者側が言うべき事です。日本の建物は設備機能グレード過剰が多いので、ここは予算の削減しどころが沢山あります。

■ 素材等(耐久性等)を決める
素材、時に工法についても、予算と相談をして決めます。「どうせ工事をするなら長く使えるものを・・」は合理的に聞こえますが、 それだけの「高額費用」をそのタイミングで出す事が合理的か、も問題です。例えば屋上防水工事も、保証期間が5年、10年、20年と伸びると、相応に費用が増額します。

■ 工事範囲
工事範囲も、予算削減の重要ポイントです。日本では「どうせ工事をするならまとめて行った方が、共通費が節約できる」と考えられがちですが、実は違います。中間費が増え、また使える部分もスクラップにする無駄があります。

例えば1フロアで漏水事故が頻発するから排水管を更新する際に、ついでだから全フロアを更新するのは、合理的に聞こえますが、他フロアは漏水事故もなく後100年使用できるかもしれません。工事規模が大きくなると、中間費も増額します。隠れ費用も増えます。建物使用者への影響が大きくなります。

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3.5 リスクの分散

先に述べた通り、最後に数字と物のバランス、現在の将来のバランスをを取る「低リスク」を確かめ、必要があれば調節します。「低リスク」とはリスクの分散です。まず「数字のリスク分散」次に「物のリスク分散」の順番で見ていきます。
3.51 リスクのコントロールと分散
先にすでに確かめていますが、古いビル資産でリスクゼロはありえません。ただ「物」リスクと「数字」リスク、「現在リスク」と「将来リスク」のバランス取る事で、特定リスクを高めず、負のサイクルに陥るリスクを低減できます。その方法が、リスクの分散です。

3.52 まず数字のリスク分散
30年分散修繕計画の作成では、まず数字のリスク分散から取り組みます。工事の判断は、現在の物のリスク対応です。それを基本、先に考えた30総工事予算の箱の中で、予算計画に合わせて予算を準備してから工事をする事で、赤字負債を作らず、数字のリスクを高めません。

3.53 現在から将来に至る物リスクを確かめる
とはいえ、例えば重要工事の工事サイクル時期が重なっていた場合、単に数字操作で後回しにしては、工事サイクルには余裕があるとはいえ、一部の物のリスクが高まります。

30年分散修繕計画で、30年に渡る各年の各建物設備機能の状態とビル全体の状態を、想像して確かめます。将来の物リスクの高まりは、その後に対応のための数字リスクの高まりを意味します。
3.54 必要に応じて将来に至る物リスクを調整する
工事予定時期には幅があるとはいえ、どうしても重要工事時期が重なって前後の調整が難しい時期がある場合があります。特に築50年前後であまり必要工事をしてきていない場合、最初の10年で重要工事が重なります。 そうした場合には、次のような手法で更に調整をします。 より重要な工事を早めに行う(サイクルは変えずに) 重要度の低い工事を少し後ろ倒しにする(サイクルは変えずに) 重なる時期の工事規模を更に分割して予算を下げる 重なる時期の工事予算を更に削減して予算を下げる 臨時予算増額
3.55 30年分散修繕計画は沢山作る
リスクの分散を確かめると、1つの30年分散修繕計画の出来上がりです。

ただ1つ作成で終わりではなく、沢山作成します。エクセルのシート及びファイルをコピーして、思いつく色々な可能性やリスク検討のバージョンを作ります。

最初に述べた通りに、決めるとは選択です。どうせ将来はわからないからこそ、多くの可能性をシミュレーションをする事で、多くの選択肢を作ります。「少し考えれば避ける事ができた」判断ミスを避けて、負のサイクルに陥るリスクを遠ざけます。
3.56 いずれ計画なしでも自然に分散修繕ができるようになる
分散修繕が出来ている築古中小ビルは、古くても建物設備機能や見た目が酷く悪化する事はありません。築40年-築50年前後は大きな工事が重なるかもしれませんが、山場を越えれば、後は自然に工事サイクルが分散されます。

自ビル維持のために毎年準備しておく分散修繕の工事予算も、予算感を掴めば、後は計画なしでも、自然に準備ができるようになります。

そうして時々、「低予算」「低リスク」で「負債化させない」ようにビルの経年劣化部分のリニューアル等工事を行い、気が付いたら現在ビルは、築100年築200年を過ぎているでしょう


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現在の建物は、自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕で資本的支出工事を行い、負債化させずに100年200年使用収益利益価値ある資産として維持できます。収益ビルは、地域賃貸マーケティングで高効果も実現し、安定経営を維持できます。管理、工事、賃貸、税対策、共有等所有問題・・問題は資産維持の観点から解決ができます。お気になる事がある方は、お気軽にお問合せ下さい。まず無料オンライン相談でお話をしましょう。

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Ⅳ 分散修繕工事の工事リテラシー

管理会社の担当者や建設業者の営業担当者にお任せで全て采配をしてくれる高額リノベーション工事や大規模改修工事と違って、建物設備機能設備リニューアル工事を経済的に行い成功させるためには、一定の工事リテラシーが欠かせません。ストレスなく工事を成功させるための 、マナーのようなものです。ざっと確かめておきましょう。
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4.1 実際のビル資産維持工事検討の流れ
実際のビル資産維持工事のような重要工事検討の流れは、次の通りです。

ビル資産所有者は、工事の必要性を認識すると、30年分散修繕計画をもとに、必要に応じて他の工事も調節して、工事予算を確保し、工事の検討を始めます。
4.11 リニューアル等工事の必要性を認識する
分散修繕対象工事の認識は、トラブルが増えたり、見た目が劣化したり、ビル管理者がいい加減に工事が必要と言うトーンが強くなってきたり、色々あります。 30年分散修繕計画表を睨み、他の工事予定が当分ない事を確認して、まず予算準備を始めます。
4.12 相談する専門業者を探す
基本は、2.41 工事業者のサービス水準で決めたサービス水準の業者を、管理会社や人の伝手、HP検索を通して探します。まず話をします。

誰かの紹介だから、で決めるのではなく、まずなるべく多くの業者と話をしてみる事をお勧めします。 業者が良いかどうか分からないという場合、まずお話する数が足りていません。

最初から見積や現地調査は断りましょう。まず同様事例の話や費用目線等を軽く聞きます。最初のゴールは、より具体的な相談に進む業者を決める事です。業者選びは人間的相性もあるので、一概にどうおあるべきとは言えませんが、経験が少ないと、営業トークが上手なところが話しやすく感じ勝ちになることに留意をしておきます。

緊急ではない限りここは妥協せず、1年2年3年かけてでも、じっくり納得できる専門業者を探し求めましょう。望ましくは早くから専門業者サーチをしておく事です。
4.13 見込んだ専門業者と事前相談をする
具体的に話を進める業者を決めると、より具体的な工事の相談をします。現地調査が入る場合もあります。ここでもまだ見積書は貰いません。

「専門の事はわからないから業者様にお任せします」姿勢ではない事を伝えるためにも、分散修繕計画作成で考えていた、
工事方針
機能性能グレードの目線
耐用年数及び工事個所の考え
予算目線

を伝えます。将来のビル使用者や他の工事計画等も話をしておくと、専門業者さんもより具体的に考えやすくなります。全体の流れは次の通りです。

最初の提案で完璧な案が出てくる事はまずありません。最初の提案が出てきたら、お互いに意見を出し合ってブラッシュアップをしていきます。専門工事業者は専門見地から無理だと言うかもしれません。その場合でも、理由を丁寧に説明してくれるか、なるべくビルの方針に沿った代替え案を出してくれるか、が重要です。そうした話合いを通して、相手の専門業者とどうも相性が悪いと感じた場合には、なるべく早めに断りましょう。現地調査が入っている場合、調査費用だけお支払いする場合もあります。
4.14 工事見積書作成及び最終ブラッシュアップ
ある程度工事案が固まり、またこの専門工事業者さんで任せられると思ったら、工事見積書の作成に進みます。通常工事見積書には有効期限がある通り、見積書はほぼ発注の意思が固まってから作ってもらうものです。

もちろん見積書が出てきたら、中身についても詳しい説明をしてもらいます。そこから細かな修正を容れる場合もあります。費用削減や負けて交渉は、ケースバイケースと言っておきます。
■ 相見積もりは厳禁
軽微な修繕工事と違って、分散修繕対象のビル資産維持工事で素人の相見積もりは厳禁です。目のまえの工事予算を節約したように見えて、将来損する行為です。

相見積もりは、公共工事のように役所が工事仕様書を作成して、後はその通りに工事をするために極力安い業者を選ぶための手法です。時に工事仕様書を作成するコンサルタントを雇っています。

けれども一般の私達は、工事仕様書など作成できません。ただ中小ビルの建物設備機能や内装リニューアル程度の工事なら、高額なコンサルタントを雇わなくても、工事業者と相談をしながら決める事ができます。

ただしそれは、本来なら高額なコンサルタントを雇って考えてもらうべき事を、専門工事業者に「サービス」として考えてもらっているのです。 ビル資産を守るビルの使用維持に必用な工事について、お金に糸目をかけなければ簡単です。特にそれを低予算で行いかつ将来のリスクも増やさないためには、低予算で上手に問題を解決してかつ将来の問題も予防するために、専門工事業者により多くの事を考えてもらわなければいけないのです。 私達は、そこに敬意を払わなければいけません。

例えばそこでAという工事業者に一生けん命アイデアを考えてもらっても、相見積りと称してその見積書をB社に見せれば、B社はアイデアを考える手間時間も必要ないのだから、より安い見積書を出す事ができます。ただそれはそれはA社のアイデアとノウハウを盗んでB社に売る事と同じです。そんなモラルがない人の仕事を、誰がまともに考えて取り組むでしょうか。そうして周囲の信頼を失ない続ければ、ビルの維持が難しくなるのは、当然です。

更に言えば、相見積もりの背景には、「ぼったくられるのではないか不振」「相手を損させても自分だけは損したくない」という、業者不信の考え方があります。それでは、工事業者と良い関係を築き、低予算でかつ良い仕事をしてもらう事は難しいでしょう。

「相見積もり」は厳禁は、良い工事業者に経済的に良い仕事をしてもらう方法なのです。
4.15 工事請負契約の内容と補償・保証もよく理解しておく
工事請負契約締結に際しては金額及び支払時期、工事内容及び工事期間の確認はもちろんのことですが、発注側の重要権利として、
請負工事としての補償(賠償)対象及びその期間
工事の保証内容及びその期間

は必ず確かめておきましょう。また追加費用発生する恐れがあるのか、ある場合にはどのようなケースなのかも、事前に説明を受けておきましょう。

賃貸借契約書同様に、工事請負契約書も、トラブル解決マニュアルです。
4.16 工事は共同プロジェクトだが工事業者がリーダー
資本的支出対象の工事は、基本ビル資産所有者と工事業者の共同プロジェクトです。検討の段階では、ビル資産所有者がプロジェクトリーダーですが、工事請負工事契約を手帰結すると、その後は工事終了まで、工事業者がリーダーになります。

工事業者は工事請負として、工事期間中は自らリスクを請け負って工事をしてくれるのです。工事業者の工事取り組みに協力し、素人口出しで邪魔をしないようにします。
4.17 工事終了後
工事が終了したら、工事完了検査は必ず立ち会いましょう。 工事仕上がりについて気になった事は、遠慮せずにここで言っておきます。 図面、工事仕様書、説明書、保証の類の書面は必ず受け取ります。

■工事保証期間の終了前
大きな工事でかつ工事保証期間がある場合には、その終了の直前に、工事保証終了前点検をしてもらいます。(空調や消防設備といった「物」系はあまりやりませんが、屋上や外壁の防水等工事では、必ず見てもらいます。)
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