築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者のための

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低予算低リスクで建物の延命ができてう分散修繕

リノベーションなら数億円。分散修繕なら30 年でリノベーションより一桁少ない低予算でかつ将来リスクも高めず高満足度で建物を資産として延命続けられる

建物を負債化させずに100念超使用続けるための分散修繕


分散修繕は、建物を安定資産として長く使用するための建物延命の方法です。毎年賃料収入(相当)の5%前後の資金を留保して、借金を作らずに無理なく建物を価値ある資産として、100年超優に使用できるようになります。分散修繕は、ビルの本場ヨーロッパをはじめ世界中で実践されている、鉄筋コンクリート造等ビル・マンションをはじめ戸建て住宅等あらゆる建物を長く使用続けるために、「当たり前」に実践されている建物資産維持の方法です。 日本の中小ビルやマンション・戸建て住宅も、もちろん分散修繕なら、リノベーションや大規模改修工事のような高額投資無しに、無理なく建物をまだ100年以上使用が継続できます。 分散修繕の本質は、建物を負債にしない事です。そこが従来のリノベーションや壊れたら工事式とは違う点です。 分散修繕が出来るようになると、人口激減の難しい時代でも、現在建物はまだ100年超使用利益を産む資産として、子供に孫にその先の代にと引き継ぐ事ができます。ここではビルを説明しますが、日本の鉄筋コンクリート造等ビル・マンションをはじめ戸建て住宅等あらゆる建物に通用します。さあ学びましょう。


コンテンツ

Ⅰ 分散修繕とは
Ⅱ 30年分散修繕計画作成の準備
Ⅲ 30年分散修繕計画の作成
Ⅳ 自ビル長寿化計画
■ 相見積もりは厳禁
Ⅴ 主要建物設備機能の要点

Ⅰ分散修繕とは

分散修繕は、建物の延命に必要な工事取り組みの方法「考え方」の1つです。リノベーションや大規模改修工事は、一度に問題を解決できますが、あまりに高額です。壊れたら工事式では、先行きがわかりません。分散修繕は、一見「こわれたら工事式」ですが、その裏で低予算になるように必要工事とその内容を厳選しています。また将来リスクを高めないよう、工事の時期や予算配分を考えている準備があります。だからこの準備の考え方を学ばなければいけません。 分散修繕は、建物アセットマネジメントとして資本的支出工事を低予算で効果的に行い、将来リスクも高めません。これは建物資産所有者の判断です。だから建物資産所有者は、最初に建物寿命とはどういう事か、建物延命とはどういうことか、建物資産とはどういう事か、を正確に理解するところから、分散修繕は始まります。

1.1 建物寿命とは何か

最初に、建物寿命とは何か?建物を延命するとは、どういう事か?を、正しく理解します。

1.11 建物寿命とは何か
建物躯体は丈夫です。ただ建物が築40年築50年となると、一部の建物設備機能や外壁内装が経年劣化します。多くの場合、こうした建物設備機能の一部の経年劣化をビルの老朽化と言っています。
例えば建物の鉄筋コンクリートは、タイル/塗装で保護されており、保護機能をリニューアルを繰り返して長く使用ができます。

1.12 建物の延命とはどういう事か
建物は、経年劣化した建物設備機能をリニューアルする事でいくらでも延命ができます。人間でいえば、時々劣化した皮膚や内臓血管を交換して生き続ける事ができるのです。 ただし経年劣化をするのは、実際には建物を構成する建物設備機能の各々です。だから経年劣化をした部分だけ、リニューアルをすれば、十分に建物は延命できます。リノベーションや大規模改修工事等で一度に全てのリニューアル工事を行う必要はないのです。

1.13 日本の建物も、延命できている
日本にも、多くの江戸時代以前建築の町屋や豪農の家、寺社、城があります。白川郷の茅葺屋根の集落があります。明治時代の洋風建築も存続しています。ビルやマンションも、リノベーション工事や大規模改修工事で延命が出来ています。

1.14 旧耐震基準建築である事は、建物寿命とは関係がない
日本では、旧耐震基準建築のビルや建物は全て建替えなければいけないという思い込みも強くありますが、旧耐震基準建築のビルや建物の全てに耐震性がない訳ではありません。耐震補強工事もあります。またそもそも数百年に一度、千年に一度の巨大震災の激震地にあたる可能性がある地域は、限られています。旧耐震基準建築である事は、建物寿命とは全く関係ありません。

1.15 日本のビル・建物は経済的寿命
日本人も、リノベーションや大規模改修工事で使用できる事を知っています。ただ日本人は建物はいずれ寿命があると考えます。そして、「古い建物にお金をかけても仕方がない」として、必要な工事を行わず、ビルを寿命にしてしまいます。つまり日本のビル・建物の寿命は、適切な費用をかけない事による、経済的寿命なのです。

1.2 問題は、建物はモノだが資産としてでなければ維持できないこと

建物は、延命工事を続ければいくらでも長く延命ができるにも関わらず、どうして日本のビルや建物が経済的寿命になるのか?理由は、日本人は建物をモノと見るからです。けれども建物は資産としてでなければ、維持できません。この理解が、分散修繕への第一歩です。

1.21 建物はモノであるが、所有者にとっては「資産」
建物は「モノ」です。けれども経済的寿命の例からわかるように、所有者は、建物を延命するかどうかを考える時、そのお金をかける価値があるかどうかを考えます。つまり所有者にとっては、建物は「資産」なのです。建物資産とは、「モノ」だけではなく、「権利」と「数字」も問題になります。


1.22 所有者にとって、建物は「資産」でなければ維持ができない
モノと資産との違いは何か。それは「延命」をどうするかの考えに現れます。モノの建物の事は、建設業者、工事業者、建築士が考え決めます。けれど建物資産としては、その建物延命工事が高額すぎては、手を出せません。建物が負債になるからです。つまり、建物資産所有者にとって、建物は「資産」でなければ維持ができないのです。

1.23 建物「資産」の会計的理解
この建物資産の「数字」部分は、会計的に理解できます。 建物はBSの「資産」です。モノの建物は年々経年劣化が、数字の建物も年々減価償却で減っていきます。この経年劣化に対して、建物の寿命を延ばす工事を資本的支出工事といいます。資本的支出工事は後でご説明します。

1.24 建物が資産でなくなるとは負債になること
建物の所有者は、固定資産税や最低限の維持費がかかります。使用利益がなければ負債です。更に解体費まで発生します。 一方で、建物の収入(自用や自宅の場合は、賃貸の場合の賃料を支払わずに済んでいいる事を、収入と見做します。)に対して、資本的支出工事が高額すぎても、その投資回収に30年かかるとしたら、それは回収が出来ません。(回収前に次の工事が必要になります。)BSの右側に負債が消えない/外部から資金を入れ続けなければいけない、状態は、これも建物が「負債」と言います。

1.25 建物を長く使うためには、建物を負債にしない「建物資産」延命が必要
現在でも、建物を延命する技術は十分にあります。けれども技術が素晴らしくても、高額すぎて建物が負債になるようでは、手を出せません。 ただ実際には、技術は1つではなく、各建物設備機能ごとに、様々な技術、工事方法、素材、グレード、工事範囲や工事タイミングの考え方があります。だから問題は、技術や建物といった外部のせい、ではなく、建物資産所有者が、自ビル資産に合った建物資産延命の方法を、選ぶ事ができるか、なのです。分散修繕は、その答えですが、専門知識を持たないビル資産所有 者が、自分でそうした工事を選べるためには、もう少し基礎を理解しておきましょう。

1.26 「建物資産」延命の全体像

1.3 問題は、建物資産のリスクとどう付き合うか

ただ建物がモノだろうと資産だろうと、建物資産延命に欠かせない、経年劣化した建物設備機能等のリニューアル工事を決める事は簡単ではない事には変わりません。それは、そうした工事は、リスクを解決する事だからです。ところが、リスクにはAのリスクを解決すると、Bのリスクが高まるといった、相対関係があります。それも現在リスクと将来リスクという時間軸で関係します。だからリスク解決は、それが他のリスクを高めない事も考えなければ、決められないのです。

1.31 壊れたら工事式では難しい理由
ある程度経験あるビル所有者であれば、高額のリノベーションや大規模改修工事ではなくとも、壊れたら工事式で必要に応じてリニューアル工事をすれば、一度に高額の支出を避けられる事は知っています。でもそれでは、やはり建物を適切に長く維持する事が難しいのが、実情です。 壊れたら工事式では、古い建物の建物設備が立て続けに寿命と言われるようになると、やはり立て続けに工事が必要となります。たいてい工事内容は業者任せだから、必要ない工事もやっていたり、必要以上に高額になっているかもしれません。また営業が熱心な付加価値工事にばかりお金をかけて、肝心の建物インフラ工事が出来ていない古いビルも多くあります。いずれにしろ、気が付いたら建物が負債になっている・・恐れが排除できません。つまり、リスクがコントロールできないのです。

1.32 建物資産にリスクはつきもの 
日本は恐怖商法が発達していて、「(大きな事故に)なるかもしれない」といった、リスクで工事営業がされがちですが、ただリスクを恐れるだけでは、迷信と変わりません。建物資産にはリスクはつきものです。時代が人口激減の難しい時代は、なおさらです。ですが巨大地震のような予測が難しいリスクもありますが、通常のリスクはある程度予測ができます。各リスクの実現度や重大度には、大きな幅があります。リスクを知り、その対応の考え方を知れば、恐れる事はありません。 古い建物資産のリスクには、「モノ」のリスクと「数字」のリスクのペアがあります。両者は相反しています。またもう一つ、「現在」のリスクと「将来」のリスクがあります。これも両者は相反しています。それぞれ見てみます。
物としての建物には、常に物のトラブル・劣化リスクがあります。排水管の漏水や屋上外壁の雨漏り、給水ポンプ、エレベータ、空調等の不具合や機能停止をはじめ、時には看板や外壁の落下、漏電火災等、非常に重大な被害を及ぼす事故リスクもあります。

1.33 建物資産の物リスク
物のリスク理解で重要な事は、2つあります。1つは、程度に幅がある事です。例えば法定寿命と実際にトラブルが多発して寿命になるまでには、長い期間があります。その間に徐々にリスクが高まります。もう1つは、「建物」は、多くのモノリスクの集合だと言う事です。建物という「物」はありません。建物は、多くの建物機能性能といった物「物」の集合体です。経年劣化の進行は、それぞれの「物」で違い、リスクの程度も違います。だから1つの建物設備機能のリスク=建物全体のリスクではありませんが、個々のリスクの集合として、建物一体でもリスクは評価されます。

1.34 建物資産の数字リスク
数字としての建物資産には、負債という数字リスクがあります。 BSの右側の負債が膨らむ事には、いくつもの原因があります。建築時の負債を解消できない、リノベーション等で大きな負債を作った。または「賃料収入(想定を含む)ー建物維持費用(修繕費、管理費、火災保険、公租公課等)」が既にマイナスになり、毎年赤字負債を作る。といった具合です。この負債が膨らむと、単に所有しているだけでお金が出ていく状態になるだけではありません。物リスクを解消するための工事予算もなくなり、結局建物が維持できなくなります。

1.35 建物資産の現在リスクと将来リスク
建物資産の物リスク及び数字リスクには、現在リスクと将来リスクの関係があります。

つまり現在の物リスクを対応するために、工事費用を出し過ぎると、将来の(数字)負債化リスクを高める。これは、リノベーションといった1回で高額工事の場合だけではなく、次から次へと各建物設備機能工事を必要以上に高額に行い続ける事も含みます。モノリスクは1つ解消すれば終わりではなく、建物が存在続ける限り、次から次へと出てくるものなのです。だから今回のモノリスクは対応できた。でも次のモノリスクは対応できず、将来の数字リスクを高めた。では意味がない訳です。



1.36 リスクが増えると負のサイクルに陥り、やがて建物は寿命になる
リスクには、現在と将来という時間軸の概念があります。 ビルは多少問題が増えても、すぐに使用できなくなるほど「やわ」ではありません。ただ、10年20年と問題が積み重なると、より解消に費用がかかるようになります。モノリスクを対応しなかった場合、又は対応の結果数字リスクを高めてしまってそれ以降のモノリスクを高めてしまった場合、時間と共に更に積みあがり、モノリスクが増大する事で数字リスクも増大し、数字リスクが解消できないため、モノリスクが更に増大する負のサイクルに陥ります。そしてビルは寿命になります。



1.37 リスクは、高めない事でコントロールができる
リスクの対応を間違えれば、建物は負債になるどころか、時に大事故を起こします。けれども1.32 建物資産にリスクはつきもので確かめた通り、リスクは、、程度や重要度を適切に評価し、将来のリスクもよく考えて対応を決める事で、コントロールが出来ます。相反するモノと数字、現在と将来のリスクは、両者を見て、相反する両者のリスクのバランスを取る事で、いずれかを高めない事ができます。
この具体的な方法が、これから確かめる分散修繕です。

1.38 目指すは、建物資産リスクのバランスが取れている状態を保つ事
ちなみに建物資産リスクのバランスが取れている状態とは、「安定」です。安定した建物使用の十分な利益を続く事です。また、「安定」は「安心」です。築古建物の所有者はこの、安定と安心を目指します。これを考えるのが、建物アセットマネジメントです。より具体的な内容は、この先建物アセットマネジメントの自立した建物資産価値の維持で改めてみてみます。

1.39 耐震問題もリスクの問題
ちなみに、耐震問題も、リスクの問題として考える事ができます。

  • 数100年1000年に一度の激震地にあたるリスク
  • 建物倒壊を招きやすい地盤のリスク
  • 建物倒壊を招きやすい建物の形状のリスク
このリスクは1棟1棟で異なります。これらを冷静に考えて、問題を対応します。

1.4 建物の資産価値を延命する資本的支出工事

さて、この各建物設備機能のリスクの高まりを解消して、建物の寿命を延ばす工事を、資本的支出工事といいます。資本的支出工事は、経年劣化で減少する建物の資産価値を、工事該当部分で復活させ、建物資産価値を延命します。いわゆる普通の修繕工事とは、考え方も取り組み方も異なります。

1.41 日本の建物が経済的寿命に陥る理由は修繕工事の考え方しかなかったから
建物資産観のなかった日本では、建物工事として修繕工事の考え方しかありませんでした。資本的支出工事は、せいぜい節税対策程度の認識です。だから私達日本人は、多くの建物をすぐに経済的寿命にしてしまってきました。

1.42 建物の寿命を延ばす工事は資本的支出工事
資本的支出工事は、会計用語です。建物の使用可能期間(建物の寿命)が延長し、(工事をしない場合と比べて)資産価値を高める工事を資本的支出工事といいます。つまり建物資産お寿命を延ばす工事です。 資本的支出工事は、経年劣化をした建物設備機能のリニューアル工事や新しく必要になった建物設備機能の新設工事が主に該当します。例えば古い排水管には、漏水リスクがあります。排水管の漏水事故が起こると、漏水を止める修繕工事を行いますが、これではリスクはそのままです。何度も漏水事故が起こり、とうとう漏水事故を起こす排水管をリニューアルする事にしました。これが資本的支出工事です。

1.43資本的支出工事の会計的意味
資本的支出工事は、会計上、「資産の追加取得」と考えます。つまり資産の部に入り、固定資産になります。そして効果が長期に及ぶとして減価償却の対象となり、減価償却で少しづつ費用計上をします。



1.44 修繕工事と資本的支出工事の違い
だから資本的支出工事と、修繕工事の違いは明白です。修繕工事はPLです。資本的支出工事はBSです。修繕工事は、今目の前の問題を解消します。これに対して資本的支出工事は、建物の「将来」の資産価値を作ります。つまり、時間軸があります。そして、将来のリスクを高めない事も、

該当の建物設備機能の問題を解決してその機能性能を維持する工事です。けれど修繕工事だけでは、根本的な経年劣化に対応ができないのです。


1.45 修繕工事と資本的支出工事は取り組み方も違う
PLの修繕とBSの資本的支出工事では、工事の取り組み方も違います。


1.46 資本的支出工事は、将来リスクを考えて決めなければいけない
別の言い方をすれば、資本的支出工事は、建物設備機能の経年劣化に対して、現在のモノのリスクの一部を解消する事です。ただし、しばしば安くない費用が生じ、数字のリスクを高めます。もし将来の数字リスクを高めると、モノのリスクも高まり、負のサイクルに陥ります。このビル資産の将来リスクを考えるのは、ビル資産所有者です。工事業者の責任でも管理者の責任でもありません。(逆にそこまで考えてもらうなら、相当の費用支払いをしなければいけません。)

1.47 資本的支出工事は資産所有者が決める工事
資産に関わる資本的支出工事は、資産所有者が決める工事です。 といっても、具体的な工事内容をどうすべきか、専門判断は、専門工事業者の仕事です。建物資産所有者は、そうした工事業者の意見を参考にして、各リスクのバランスを考慮して、

  • 工事をする/しない
  • 今/もう少し後
  • 予算目線
  • どの工事業者に相談をするか
を決めます。

1.5 建物アセットマネジメントとプロパティマネジメント(管理)

この資本的支出工事を決めるための考え方が、「分散修繕」ですが、この分散修繕のように建物資産の利益を考える事を、「建物アセットマネジメント」といいます。アセットマネジメントの解釈は色々ありますが、その1つは、リスクのコントロールです。日本で従来、ビル経営と呼ばれるものの実態は、プロパティマネジメント(管理)です。だから今まで古い建物維持が難しいと考えられてきました。分散修繕の具体的な考え方を見る前に、建物アセットマネジメントについて、軽く理解をしておきましょう。

1.51 建物のプロパティマネジメント(管理)とアセットマネジメント
建物のプロパティマネジメント(管理)は、年間収益の最大化を目指します。それに対して建物アセットマネジメントは、建物というBSの資産が、将来も使用利益を産む建物資産であり続けるようにする事です。建物アセットマネジメントには、将来という時間軸があります。そして資産価値を継続させるとは、現在のモノのリスクを高めないようにしながら、かつ将来のリスクも高めない事です。


1.52 建物のプロパティマネジメント(管理)とアセットマネジメントの会計解釈
会計的にいえば、建物のプロパティマネジメント(管理)は、PLだけを見ます。つまり単年度のベストな利益を考えます。これに対して、建物のアセットマネジメントは、BSの資産を、PLの利益を産む状態に保つ事が目的です。つまりBSとPLを両方見ます。これには時間の流れとして、①PLの利益から予算を準備し、②モノのリスクを解決するための資本的支出工事を、③将来のリスクも高めないように行い、その結果④建物資産が使用利益を産む状態で維持され、⑤それが使用されてPLの利益を産むというプロセスがあります。

1.53 自立した建物資産価値の維持
建物アセットマネジメントが目指すのは、自立した建物資産価値の維持です。「自立」とは、外部資本を入れずに、自ら産む使用利益から資本的支出工事を行い、建物の将来を作り続ける事です。ちなみに自用の建物の場合は、賃貸使用の場合の賃料を、払わなくてよい分「賃料収入」と考えます。

具体的には、PLの利益の一部を、利益剰余金としてBSの右側に留保し、左側の資産として現金を準備します。そしてこの現金から資本的支出工事を支払い、建物が使用でき、PLの利益を産む状態を維持します。このサイクルが続く限り、建物自立して、寿命になりません。

1.54 建物アセットマネジメントはリスクとの付き合い
この自立した建物資産の維持のサイクルは、安定利益を確保しつつ、リスクが高まった部分のリスクは解決し、かつ将来のリスクを高めない事で実現ができます。 建物が築浅の間は、資産側の建物に問題が少ないので、問題になりません。だからプロパティマネジメント(管理)で十分でした。けれども建物が築古になると、モノのリスクが高まります。プロパティマネジメント(管理)だけでは将来のリスクをコントロールできません。建物資産を維持するためには、どうしてもリスクとの付き合いと対応が必要になります。これが、建物アセットマネジメントです。その具体的な考え方として、これから分散修繕を見ていきます。古いビルでは、建物アセットマネジメントでリスクをコントロール出来ている事で、プロパティマネジメントも機能するのです。

1.55 広義の建物アセットマネジメント
ところで、アセットマネジメントそのものは、建物維持だけではありません。建物アセットマネジメントの意義は、建物資産を使用して利益を得る事です。 広義の建物アセットマネジメントには、キャピタルゲイン型(売買)と、インカムゲイン型(維持)があります。前者はEXITを考える投資です。ただ、インカムゲインは、ハイリスク・ハイリターン投資です。社会経済環境に依存し、いつでも誰でも成功するものではありません。大資本若しくは不動産投資家の手法です。一方、インカムゲイン型(維持)の特徴は、ローリスク・長期安定リターンです。社会経済の変動の影響も抑えられます。建物資産所有者は、最初にリスクを取って建物を新築/取得すると、後はローリスク・安定リターンのインカムゲイン型として、100年超でも世代を超えて、子供の代、孫の代、その先の代へと、長くその利益を引き継ぐ事ができます。これが建物資産の本当の魅力です。そしてこれを実現するのが、建物アセットマネジメントです。

1.6 低予算かつ将来リスクを高めない分散修繕

ようやく分散修繕です。分散修繕は、一般のビルや建物資産所有者が、建物アセットマネジメントとして資本的支出工事を、低予算かつ建物全体で将来リスクを高めないように、自分で決める取り組み方法です。ただし特別な専門知識は必要ありません。それでいて結果、建物は負債化しません。だから、ビルの本場ヨーロッパや世界の中小ビル資産所有者達は、古い建物資産の価値を子供へ孫へと世代を超えて、享受しています。

1.61 分散修繕の基本姿勢
分散修繕の基本姿勢は、現在の建物の延命を続けて、資産として長く維持しその使用利益を得続ける事です。建物寿命は考えません。現在建物がどのような状態であれ、資産として長く生かす事を考えます。すると当然に、建物延命に必要な資本的支出工事の予算をなるべく抑えて、利益を確保したいのです。ただ予算をけちりすぎて将来のリスクを高めたくもないので、そのバランスを考えます。 分散修繕では、建物延命に必要な資本的支出工事は、工事業者が言うから、で決めるのではなく、専門業者の意見に対して、建物アセットマネジメントの観点で検討して、建物の方針を決めます。

1.62 分散修繕の基本スタイル
分散修繕での資本的支出工事取り組みの基本スタイルは、工事予算を準備して工事を行う。というシンプルなものです。


1.63 分散修繕は壊れたら修繕式とは違う
分散修繕の基本は、「必要なタイミングで工事をする」ですが、壊れたら工事式とは違います。基本スタイルの通り、必要なタイミングに合わせて予算の準備が出来ています。利益を確保するために、なるべく無駄のない低予算を目指しますが、無暗に予算をケチるのではなく、「将来のリスクを高めない」事を同時に考えています。そこで分散修繕の低予算、将来のリスクを高めないとは、及び分散修繕は何が「分散」なのか、について、丁寧に理解をします。

1.64 分散修繕は低予算
分散修繕の低予算は、見積書叩きとは違います。見積書叩きは低予算に見えますが、そもそも該当工事が必要ない工事/叩きを見越した高額見積りかもしれません。 分散修繕の低予算は、ビル資産所有者が、必要な工事(内容)と無駄や過剰を区別し、後者を削減する事で、実現します。資本的支出工事の無駄や過剰の水準は人それぞれ違いますから、これは自分で決めます。実際、

  • 工事対象を減らす
  • 各工事予算を削減する
  • 工事時期を後ろ倒しにする
事で相当の低予算が実現します。

1.65 分散修繕は将来リスクを高めない
「分散修繕は将来リスクを高めない」とは、建物全体で将来のモノと数字の結果を考えて、現在の資本的支出工事を判断する事です。 モノの工事を行い将来の数字リスクが高まる場合、それは建物全体でどれだけ工事が必要か、見えていないからです。必要なモノの工事を判断できない場合、それは長期時間軸で、何の工事をいつ頃行う事が効率が良いのか、考えていないからです。建物全体で将来のモノリスクも高めないとは、時間軸上で上手に工事を配置する事です。そのためには、
  • 建物全体を把握する
  • 将来の結果を考える
  • 工事の優先順位を考える
の全てが必要です。分散修繕では、これらを考えます。

1.66 分散修繕の分散とはリスクの分散
つまり分散修繕の分散とは、時間軸上での、工事の分散であり、またリスクの分散です。リノベーションや大規模改修工事のように一度に高額投資をして、将来の数字のリスクを高めるのでもなく、また壊れたら工事式のように、将来のリスクを考えないのでもなく、分散修繕は、長期的な自分の予算を考えて低予算の水準を決め、必要なタイミングで必要な工事ができるように、予定を組み立てる下準備があります。

1.7 30年分散修繕計画の作成と建物長寿化プラン

分散修繕は、準備が必要です。長期的な自分の予算観を持ち、何の工事にいつ頃どの程度の予算を配分する事で、将来もリスクが高まらないかを、描けている必要があるのです。これが出来るようになる手段が、30年分散修繕計画の作成です。これは、経験を積めば、必要なくなります。その際には、より長い建物長寿化プランを考えておきます。

1.71 30年分散修繕計画とは
30年分散修繕計画は、いつ何の工事をするかを決めるTodo計画とは違います。

  • 建物全体を把握する
  • 将来の結果を予測する
  • 資本的支出工事に優先順位をつける
を身に着けるツールです。30年分散修繕計画の検討を通して、なるべく少ない30年総工事予算で、何の工事にいつ頃どの程度の予算を配分するかを、試行錯誤します。 ちなみに30年という期間に決まりはありませんが、一般の長期修繕計画期間が30年である通り、いくつかの重要工事が入る期間として、長すぎず短すぎない手ごろな期間です。

1.72 30年分散修繕計画の作成の意義
日本人の中小ビル資産所有者に、30年分散修繕計画の作成の意義は、その途中の試行錯誤にあります。試行錯誤で探し求めるのは、どう工事をすれば、より低予算でより将来リスクも低く、より使用者が納得できるビルであり続けるのか、です。こうした方針には、答えがありません。なるべく試行錯誤で選択肢を増やして、より好ましい案を取捨選択していかなければいけません。 そうして試行錯誤を重ねる事で、リスクに対する直観や、バランス感覚が身に付きます。そうすればもう、しめたものです。

ちなみに、ビルの本場ヨーロッパや世界の中小ビル資産所有者達は、長年分散修繕を続けているから、わざわざ計画を立てずとも、30年分散修繕計画の作成で考える事を自然に考えています。私達日本人はその経験がありませんから、最初は計画として作成する必要があります。けれども慣れれば、必要がなくなるでしょう。

1.73 建物長寿化プランとは
分散修繕は、工事予算削減と将来リスクの検討ツールと言えます。ある程度納得ができる30年分散修繕計画が出来たら、「建物長寿化プラン」も作成をしておくことをお勧めします。 こちらは、今後100年くらいに渡って、「低予算でかつ将来のリスクも高めず将来使用者も納得できるビル資産であり続ける」目途を着けておきたいのです。

10年単位程度で、必要工事とそのトリガー等の上記情報をまとめたのが、建物長寿化プランです。


1.74 30 年分散修繕計画はエクセルで簡単に作成ができる
30年分散修繕計画は、実際にはエクセル等で簡単に作成できます。ただし、単なる計算表ではなく、試行錯誤のツールとして使うには、適切な計算式の入れ込みが必要です。ビルオでは、ご相談者様に計算式入りのフォームをご提供しています。


1.75 30年分散修繕計画作成の手順

30年分散修繕計画の作成では、準備として30年後の将来にわたる建物使用者及び将来の建物使用者が使用している将来のビル像を考えます。もちろん今後の資本的支出工事予算の財源もよく考えます。また同時に、過去の工事履歴を確かめ、現在の建物にある建物設備機能を全て洗い出します。 そして、30年後の将来の建物使用者が使用しているビル実現のために、30年の総工事予算を、工事予算を準備して工事を行う分散修繕の基本スタイルになるように、どう配分するかを試行錯誤して検討します。


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Ⅱ30年分散修繕計画作成の準備

日本人が最初に分散修繕に取り組むために欠かせない30年分散修繕計画の作成ですが、まずエクセルに向かう前に、いくつかの準備が必要です。将来のビルを考える事と、過去の工事履歴を確かめる事です。建物の延命を考えるとは、建物の過去に基づき、未来の建物に向かう事だからです。

2.1 準備1 将来のビルの在り方を考える

自ビルの長寿化マスタープランは、将来のビル資産の実現プランです。 だから「将来のビル使用者が使用する将来のビルはどうあるべきか」を見つけるために、次の3つをまず考えます。

2.11 ビル維持工事予算の財源を考える
原則、安定財源を考えます。つまり収益ビルなら賃料収入、企業なら事業売上、個人であれば個人手雲集です。既に修繕資金の準備や、臨時財源の予定がある場合は、ボーナスとしておきましょう。

2.12 将来のビル使用者を想像する
今後30年のビル使用者を、具体的に想像します。例えばビル使用者は女性が多いか、男性が多いか、若年層が多いのか平均年齢が高めか・・、使用は事務所か、店舗か、事務所と一言言っても、来店型か、堅い雰囲気か、自由なスタイルを好むか・・手法としてマーケティングのペルソナ手法が役に立ちます。

2.13 自ビルの個性・良いところ・価値を認識する
大切に残したい自ビルの個性・良いところ・価値を認識しておきます。使用者の目線や、他の人の意見を聞いてみることをお勧めします。 自ビルの個性・良いところ・価値を認識しておくことで、ただ「経済的」を求めるのではなく、残すべき個性・良さ・価値を残す事で、経年と共により建物の趣が増していくのです。

2.14 30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子
「現実的な予算」で、将来の自ビル使用者が使用している将来の自ビルがどんな様子か、想像をします。

具体的に想像をします。例えば現在と変わらない、という場合でも、現在から経年劣化を放置するのか?本当に細部も含めて変えないのか?で色々変わります。1つである必要もないので、色々考えておく事をお勧めします。

2.2 準備2 現在の建物にある建物設備機能とその状態を洗い出す

一方で現在のビルにある建物設備機能や内装・外壁等、資本的支出工事の対象を洗い出し、状態を確認します。ここは建物管理者や専門工事業者とも話し合う事をお勧めします。建物の将来について話し合うきっかけになります。また急がず必要なだけ時間をかけます。

2.21 自ビルの建物設備機能を全て洗い出す
潜在的な工事対象は、すべて洗い出しておきましょう。

業者が作成した長期修繕計画表がある場合には、その項目を見ます(キュービクル、給排水管等、概項目で十分です。細かい項目は工事業者の考える領域です。)竣工図は細かすぎます。長期修繕計画表がなければ、ビル管理会社/管理人に洗い出してもらうか、目視で点検確認をします。

2.22 過去の対象工事履歴の整理もしておく
必須ではありませんが、先に過去の建物設備機能のリニューアル等工事の履歴も確かめておきます。ビルの状態理解や工事サイクル検討の重要情報になります。

いつ頃どこをどう工事をしたか、だいたいわかれば十分です。正確な年月や金額は必要ありません。過去の工事履歴情報があれば一番ですが、無い場合過去の確定申告書も参考資料になります。税理士が固定資産一覧表を作成して、そこに資本的支出工事も入れている場合は、それも参考になります。記録がなければ、人の記憶や目視で工事の後をみつけて、なんとなく推測しておきます。どのみち築25年より前は、大きな工事はほぼありません。

2.23 洗い出した自ビル建物設備機能を状態で色分けする
洗い出した建物設備機能や内装外壁等について、一般的な実耐用年数を基に、過去の工事履歴も参考にして、現時点の状態で色分けします。例えば
無色:実耐用年数内
黄色:実耐用年数を過ぎている
赤:明らかな問題がわかっている対象
青:旧耐震基準建築建物等で耐震問題がある場合


2.24 今後30年で赤になる可能性がある建物設備機能をオレンジにする
次に今後30年の状態変化を考えて、30年内に赤になる対象を、30年分散修繕工事対象候補としてオレンジにします。ほとんどの主要建物設備はオレンジになるかもしれません。また耐用年数の短いものは複数回必要になります。例えば屋上防水工事です。 特別な調査は必要ありません。ここは予算も考えず、なんとなくで構いません。


2.25 今後30年で新しく追加したい建物設備機能をリストする
ここは遠慮なく、普段欲しいなーと思っている建物設備機能を全て追加します。どうせ後で優先順位をつけて検討しますから、気になるものは全てリストをしておきましょう。


2.26 洗い出した自ビル建物設備機能の方針を分類する
次に洗い出した自ビル建物設備機能(3.23)と新しく追加したい建物設備機能(3.24)を、次の方針に分類します。
この先工事検討の対象となるのが、赤、オレンジ、新しく追加したい建物設備機能候補です。せん。分類基準は2.13 30年後の自ビル使用者が使用している自ビル像実現です。ここもまた後で何度も見直しますから、最初はなんとなくで構いません。

2.27 工事対象候補に優先順位をつける
分類した工事対象候補に、優先順位を付けます。といっても3分類(絶対必要/なるべく必用/できれば)に分ける程度で構いません。これは現在の色ではなく、将来ビルの必要性で分類します。ついでに4タイプにも分類をしておきましょう。後で色々考えやすくなります。

2.28 リニューアル/新規追加工事対象について、具体工事名を挙げる
30年内にリニューアル/新規追加工事に分類した対象建物設備機能等について、実際に必要となる具体工事を調べます。中には技術が変わって単純リニューアルではない対象もある事に留意します。例えば屋上高置給水タンクは、現在では直結増圧式が水道局で推奨されています。またまとめて工事をする場合もあるでしょう。
ここでは、建物管理者や専門工事業者に意見を求める事もあるでしょう。(見積書は不要です。)

2.29 優先順位が高い工事の予算目線も調べておく
各工事予算の目線も調べておきます。現在であればインターネット検索でかなり調べられます。わからなければ、ビル管理者や工事業者にさらりと聞いてみます。調査や見積書作成は提案を受けても断りましょう。
各工事予算目安は、幅があります。だから各工事予算は、例えば200万円~400万円といった費用幅として把握します。


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Ⅲ 30年分散修繕計画の作成

ここからエクセルで30年分散修繕計画を検討します。検討の要点は、1に工事予算の削減、2に工事時期の検討(リスクのコントロール)です。目的は試行錯誤とその結果の比較検討ですから、思いつく限り数多く作成します。その検討が実際の場工事面で「経験」として生きます。

3.1 30年分散修繕計画作成の意義の再確認

30年分散修繕計画の作成の意義は、その途中の試行錯誤です。試行錯誤で探し求めるのは、どう工事をすれば、より低予算でより将来リスクも低く、より使用者が納得できるビルであり続けるのか、です。

3.1130年分散修繕計画作成で身につける事
30年分散修繕計画の作成の目的として、試行錯誤を繰り返す事で、自ビルの建物資産を守る建物アセットマネジメントの視点:

  • 建物全体を考え
  • 将来の建物と数字を考え
  • 工事の優先順位をつけられる
ができるようになる事を目指します。

3.12 30年分散修繕計画作成のイメージ
30年分散修繕計画の作成イメージは、自分で決めた30年総工事予算の配分を検討する事です。


①まず、30年総工事予算を仮決めします。
②何の工事にいつ頃どの程度工事予算を配分するか、試行錯誤する。

3.13 決めるとは選ぶ事。比較検討のために何パターンも作成する
こうした工事計画は、正解がありません。だから何パターンも作成をして、比較検討をして選ぶ事になります。選ぶ基準は、想像した将来のビル使用者が使用する将来のビル像の実現です。

3.14 インフレをどう考慮するか
ところで近年建設系工事費の高騰とインフレが無視できません。(IT化による費用削減の可能性も期待ができますが、ここでは想定をしません。)将来の事はわかりませんが、インフレを考慮する場合は、将来に向かって、毎年留保する予算額及び工事予算を一定率で引き上げます。つまり例えば、現在で200万円とみると、10年後には230万円 20年後には260万円 30年後には300万円といった具合です。

3.2 総工事予算を決める

まず30年総工事予算を仮に決めます。その後検討を通して、増減、または更なる削減を追求します。

3.11 30年総工事予算を仮決めする
まず、30年総工事予算を仮決めします。 原則は、毎年一定金額確保です。
理想は、自用ビルであれば賃貸を想定して3%‐7%
収益ビルで財源である賃料収入の5%-10% 既に修繕資金の準備がある場合や、今後一時的な修繕資金確保の予定がある場合は、それはボーナスとして、工事用予備資金として留保しておきます。工事用予備資金があってもなくても、ベースは毎年定額工事資金確保であるべきです。長い間には、常に工事用予備資金があるとは限りません。財源確保が厳しければ、可能な限りで十分です。例え年間100万円でも30年で3000万円分工事ができます。

3.12 30年総工事予算も、どんどん削減する
この後予算配分で、足りなければ増額、予算を圧縮できれば30年総工事予算も削減します。どちらにしろ一通り作成が出来たら、その後はより総工事予算を削減を目指します。

3.3 工事予算の配分

仮決めした30年総工事予算に対し、何の工事にいつ頃どの程度予算を配分するか。この試行錯誤が30年分散修繕計画作成の目玉です。同じビルで同じ30年総工事予算でも、この予算配分次第で将来ビルのあり方は大きく違います。逆に同じ将来ビルの使用利益、ビル使用満足度でも、工事の取り組み方次第で30年総工事予算は大きく変わります。

3.31 必要工事に工事予算を配分してみる
とりあえず、既に確かめた工事優先順位に従って、30 年内の予定工事を入れていきましょう。。最初は時期は考えずアバウトで構いません。工事金額も、最初は調べた工事幅から、任意で選んでかまいません。 最初は、全然予算が足りない!と絶望的に感じる事は普通です。そこから工事予算を削減します。分散修繕は足し算ではなく、引き算です。

3.32 資本的支出工事予算削減の3つの方法
そこで建物の資本的支出工事予算を削減する方法は、次の3つがあります。

①各工事予算を削減する
②各工事サイクルを引き延ばす →リスクコントロール
③工事対象を減らす  →将来ビル像の見直し

この3つを使い分けて、工事予算を削減するわけです。それぞれを見ていきます。

3.33 ①各工事予算を削減する
外壁、キュービクル、給排水等各建物設備機能のリニューアル等工事予算の削減は、見積書を叩くのではありません。建物資産所有者が、合理的に機能性能グレードや工事業者のサービス水準等の必要程度の過剰を削減する事で、実現します。工事予算の削減ポイントは、「3.5 各工事予算の削減」でより詳しく見ていきます。日本のビルは過剰機能性能グレード水準が多いので、思い切って削減をしても大丈夫です。

3.34 ②各工事サイクルを引き延ばす
工事の先延ばしは、壊れたら修繕式でもよく見られる、手っ取り早い工事予算削減法です。ただ当然に、将来のモノと数字のリスクを高めます。だからどの程度工事サイクルを引き延ばせるかは、将来のリスク許容度で決まります。リニューアルのような資本的支出工事をいつ行うかは、建物長寿を前提にすると、工事サイクルとして考えます。この工事サイクルをどう考えるかは、長期的な総工事費用と将来リスクのコントロールです。「3.4 工事をいつ頃予定するか(工事サイクル)」でより詳しく見ていきます

3.35 ③工事対象を削減する
工事対象の削減とは、実際には2つの考え方があります。
1工事を30年後より先に先延ばしにする
2「2.34 洗い出した自ビル建物設備機能の方針の分類」を廃止に変更する

1の工事先延ばしは、基本工事サイクルで考えます。2の「2.34 洗い出した自ビル建物設備機能の方針の分類」を廃止に変更する事は、30年後のビル像を変える事です。だから30年後のビル使用者にとって、容認できるものかどうかの観点で、検討します。ただ容認できると考えるかどうかも主観なので、何度も見直していると最初は無理と思ったのが、廃止出来る事もままあります。

3.36 一つの30年部さん修繕計画例を作ってみる
例えば小さ目中規模ビルでキュービクル・エレベータ有 予算は厳しく年間120万円確保し、30年で3600万円tとしても、色々な工事計画があり得ます。


3.37 沢山の例を作ってみる
他にも色々なパターンを検討してみます。例えば多工事低予算か、少数工事高額予算か、どの程度の中間か、といった具合に沢山バリエーションを考えます。
机上で試行錯誤する分にはリスクがありませんから、思い切った削減をしてみて、どんなビルになるか想像しても面白いと思います。思いもよらなかった可能性が見つかるでしょう。

3.38 よくある予算削減の典型
ちなみに、低予算の将来ビル像として、一般的な例は次の2つです。

■シンプルビル
シンプルビル化は、
1各建物設備機能の機能性能グレードを削減する
3工事対象を削減する 
を限界まで追求します。欧州はシンプルな築古ビルが多いです。シンプルならではの趣があります。


■個性化ビル
これは、
1各建物設備機能の機能性能グレードを削減する
3工事対象を削減する 
といった極端なメリハリを作る事です。築古ならではの個性が明確になります。

3.4 工事をいつ頃予定するか(工事サイクル)

工事をいつ行うかは、工事サイクルの問題です。工事サイクルをどう考えるかは、非常に重要なリスク管理の問題です。

3.41 工事の時期を決めるとはどういう意味か
工事がいつ必要か?決めるのは専門知識を持つ建物管理者や専門工事業者と思っている方が少なくありませんが、工事の時期を決める事は、所有者のリスクのコントロールです。 今このタイミングでモノのリスクを解消する事で、将来の数字のリスクを高め負のサイクルに陥る事はないか 数字のリスクを優先させて工事を後回しにし、将来のモノのリスクを高め負の負のサイクルに陥る事がないか 工事の時期を決めるとは、その両者のバランスを取る事です。

3.42 工事サイクルとは
各建物設備機能や内装等のリニューアル工事は「サイクル」です。1度で終わりでありません。そしてこのサイクルをどう考えるかで100年200年といった長期での工事総額が大きく変わるからです。エレベータの例は次の通りです。

尚、工事サイクルは、同一各建物設備機能でも、素材や工法でサイクルが変わります。素材や工法の進歩で、サイクルが劇的に伸びるものもあります。(例えば給排水管が鋳鉄管から塩ビへ移行)

3.43 工事サイクルは、長期的な工事予算へ影響する
工事サイクルは、30年より長期の総工事予算に影響します。例えば上記の例でも、100年超で比較をすると相当の費用差が生まれます。これはエレベータだけですが、外壁塗装、屋上防水、キュービクル、消防設備、内装等全ての建物設備機能の更新のサイクルも同様に考えれば、100年超での差は、倍どころでは無くなります。だから工事サイクルは、
  • 建物全体を把握する
  • 将来の結果を考える
  • 工事の優先順位を考える
の上で、よく比較検討をして、考える必要があります。

3.44 工事サイクルとは、具体的にどのような状態か?
とはいえ工事サイクルは、数字だけでは決められません。現実にはそれは、どの程度の「経年劣化状態」を、リニューアルが必要な状態と判断するかです。例えば工事サイクルが短い順に次の通りです。
  1. 法定寿命
  2. 実寿命
  3. トラブルが1回発生したら
  4. トラブルが数回発生したら
  5. トラブルが頻発するようになったら
  6. トラブルの規模が重大になったら
  7. もうこれ以上は限界と言われるようになったら
  8. もうこれ以上は限界と何度も言われるようになったら
  9. 深刻なトラブルが頻発するようになったら

それぞれで、工事サイクル期間を割り当てる事になります。そこは建物管理者や専門の工事業者と相談をする所です。ビル資産所有者がこうした話をすると、それは建物長寿化を真剣に考えている証拠ですから、管理者や専門工事業者は喜ぶでしょう。

3.44各工事サイクルを引き延ばす検討とは
例えば自分でこの程度と思う「経年劣化状態」で30年分散修繕計画を組み立て、工事費用の削減も検討してみたけれど、どうしても工事予算が足りない。と言う場合、工事サイクルの引き延ばしも検討する事になります。その場合は、
  • どの建物設備機能の工事サイクルを引き延ばすか
  • どの程度の「モノ」のリスクは許容できると考えるか
  • 将来のリスクが高まりすぎないか
を丁寧に検討をします。

3.45 31年目に工事が集中しないように
工事の先延ばし、特に30年以降への先延ばしは、実際の場面では、一番手っ取り早い工事予算の削減方法です。けれど、工事が31年目に集中しては意味がありません。だから、工事を30年の分散修繕対象外に先延ばしをする場合には、該当建物設備機能状態のリスクももちろんですが、建物全体について、30年より少し先までよく検討をしなければいけません。

3.5 各工事予算の削減

電気、給排水、外壁塗装、エレベータ、消防設備、内装等、各建物設備機能リニューアル工事には、固有の検討ポイントがあります。そちらは後でご紹介します。 ここでは、建物資産所有者目線で、資本的支出工事で検討すべき、共通の予算削減ポイントをご紹介します。


3.51 ソリューションの選択
1つの問題対応にソリューションはいくつもあります。高額なもの、安価なもの、築古ビルとしてどの程度が必要か、適切なソリューションの検討も、工事予算削減には欠かせません。過剰なほど営業熱心な傾向があるだけに、自分でよく考えなければいけません。


3.52 工事業者のサービス水準
誰も教えてくれないけれど、工事費用インパクトが大きいのが、相談をする業者のサービス水準です。腕の良し悪しの話ではありません。

高レベルのサービスやマネジメントには、その分費用を請求されて当然だという事です。サービスやマネジメントの良さは、工事の「安心」です。「安心」はお高いのです。費用水準が低い業者に、高サービスを求める事は、「業者いじめ」と言います。

建設業者に相談をすれば、実績あるプロが工事内容を考え、プロが工事を監督し、手厚い説明とサポートで安心です。ただ工事総額の30%の工事監理費その他多くの管理費が発生して超高額です。自分でDIYで工事をすれば材料費だけ、または職人に指示すれば、+人足代で済み激安です。YoutubeビデオでDIY を学べる時代です。ただ工事内容を決めて材料を選び施工まで全てが自己責任です。どの程度が自分には望ましいか、決めるのは自分しかいません。

3.53 機能性能グレードを決める
ここも予算への影響が大きく、「ケチ」の腕の見せ所です。工事に際し、どのように工事をすべきかは工事業者が決める事ですが、その仕上がりの機能性能グレードをどの程度必要と考えるかは、工事発注側の判断です。例えばエレベータ更新でも、せっかくだからと内装のグレードアップや、震災時制御やらテレビモニターやらを付けると、相応に金額が嵩みます。空調にしろ消防設備にしろ、付加価値を付ければ費用が嵩みます。内装工事も、高級やデザインを追求すれば、費用は天井無しです。

機能性能グレードは工事業者に利益になる事と、後から足りないと文句を言われないために、余裕を持った提案になりがちです。この程度で十分。はビル所有者側が言うべき事です。日本の建物は設備機能グレード過剰が多いので、ここは予算の削減しどころが沢山あります。

3.54 素材等(耐久性等)を決める
素材、時に工法についても、予算と相談をして決まります。「どうせ工事をするなら長く使えるものを・・」は合理的に聞こえますが、 それだけの「高額費用」をそのタイミングで出す事が合理的か、も問題です。例えば屋上防水工事も、保証期間が5年、10年、20年と伸びると、相応に費用が増額します。

3.55 工事範囲
工事範囲も、予算削減の重要ポイントです。日本では「どうせ工事をするならまとめて行った方が、共通費が節約できる」と考えられがちですが、実は違います。中間費が増え、また使える部分もスクラップにする無駄があります。

例えば1フロアで漏水事故が頻発するから排水管を更新する際に、ついでだから全フロアを更新するのは、合理的に聞こえますが、他フロアは漏水事故もなく後100年使用できるかもしれません。工事規模が大きくなると、中間費も増額します。隠れ費用も増えます。建物使用者への影響が大きくなります。

3.56 耐震対策について
最後に耐震対策について、簡潔にコメントをしておきます。旧耐震基準建築建物の全てに「耐震性がない」ではありません。数百年に一度の大震災の激震地に当たり、地盤が悪ければ新耐震基準ビルでも倒壊します。 震災倒壊リスクは、地域と立地と地盤で大きく異なります。そしてもし耐震性に不安がある場合でも、通常揺れの方向及び不安箇所は限られています。だから多くの場合は、最低限の支柱追加等で足ります。現実的に判断をします。

3.6 リスクの分散:リスクのバランス感覚をつかむ

ある程度自分の予算で工事が収まると、そこで終わりではなく、最後にリスクの分散の確認と調整を行います。ここが「分散修繕」の名前の由来です。だから重要なのです。

3.61 分散修繕の基本形に並べる
数字のリスクを下げる分散修繕の基本形「工事予算を準備してから工事」に並べてみます。


3.62 物のリスクを徹底検証する
30年の各年度を縦に見て、想定工事サイクル時期に工事ができず、「物」リスクが高まるものがないかを、確かめます。

3.63 建物設備機能状態の色分けを活用する
ここでは、建物設備機能状態の色分けが役に立ちます。赤を各建物設備機能のリニューアルトリガー時期を想定して、次の通りに色分けします。
無色:実耐用年数内
黄色:実耐用年数を過ぎて自分の決めたリニューアルトリガー状態まで
赤:リニューアルトリガー状態を超えている
もちろん赤は想定だから、この想定も心配性の方と気楽な方とでは、違ってくるでしょう。

3.64 重要工事の集中時期をやり過ごす
特にビルが築40年~築50年で今まで重要工事をしてきていない場合、重要工事が集中する事があります。この場合、

  • 重要な工事は少し早めに行っておく
  • 少し先に延ばせる工事は、工事サイクルの特例で先に延ばす
  • 工事規模を更に小さくして、より短い予算準備期間で工事ができるようにする
といった調整を行います。

3.65 30年分散修繕工事計画例の出来上がり 
そうしてまとまれば、30年分散修繕工事計画例の出来上がりです。 もちろん作成して終わりではなく、何度も見直して、ブラッシュアップを重ねていきます。
計画には、いくらバリエーションがあっても多すぎる事はありません。例えば将来の工事予算を、厳しい場合も見込んで、松竹梅の計画を作成しておく事はお勧めします。

3.66 築40年~50年代で最初の山が過ぎたら後は自然にリスクは分散される
ちなみに、30年分散修繕計画で苦労をしても、その先については、さほど悲観する事はありません。山場時期を過ぎると、各重要工事サイクルが自然に分散されて余裕ができます。そうしたらもう計画なしに、様子を見て工事トリガーの時機到来を見込んだら、予算を準備し、工事内容も準備して工事を行う、分散が、自然にできるようになります。こうなれば、築古ビル長寿化は何ら難しくありません。

3.67 現実の工事に向けて
30年分散修繕計画を作成したら、早速その年から工事予算の準備(留保)を始めましょう。 また5年以内くらいに資本的支出工事が想定される対象、計画上5年以内に予定されている建物設備機能や、状態がトリガーに近いもの)については、余裕をもって建物管理者と相談をし、専門工事業者探しを始めます。 30年分散修繕計画で考えた、工事予算や建物設備機能グレード、工事範囲等は、ビル資産所有者の希望ですが、工事業者が違う意見を持っている事はよくある事です。冷静に話し合いをして、より所有者の考えを理解してくれる専門工事業者を探すか、妥協点を見つけるか、時間に余裕があればある程、丁寧に検討ができます。

3.68 実際の工事取り組みでの留意
実際の工事取り組みでは、ビル資産所有者は、自らの持つ権利に留意をしましょう。 通常の請負工事では、請負工事契約書に書かれている瑕疵担保の内容を理解します。 また工事によっては、特に防水工事は、法定の補償期間があります。業者独自のアフターサービス補償がある場合もあります。こうした補償は、工事依頼者の権利です。最初から、補償期間終了前に、点検をしてもらう事を約束しておくことをお勧めします。


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Ⅳ 建物長寿化プランを作る

30年分散修繕計画の作成が出来たら、これを元に自ビルの分散修繕による建物長寿化プランを作成します。基本方針は既に決めてあるので、さほど手間もかかりません。

4.1 建物使用者及び将来建物像は30年後の自ビルの延長を考える

30年分散修繕計画が出来たら、それを元に建物長寿化プランつまり、今後100年で、
  • 毎年どの程度の資本的支出工事予算を留保しておくべきか
  • いつ頃何の工事を見込んでおけばよいのか?
  • 各工事のトリガーや機能性能グレード・相談する業者のサービス水準をどう考えればよいのか?
の見込み表を作ります。正確な時期は必要なく、10年程度でまとめます。

4.2 建物使用者及び将来建物像は30年後の自ビルの延長を考える
30年後も十分先ですが、今から50年後100年後の 建物使用者及びどう自ビルを使用するか、そこで何が求められるか、具体的に想像する事は不可能なので、30年後のビルをそのまま延長する事を考えます。

4.3 30年分散修繕計画の工事対象分類を確かめる
30年後の自ビル使用者が使用している自ビル像実現計画として、「2.26 洗い出した自ビル建物設備機能の方針を分類する」で確かめた、工事分類に戻ります。もちろん30年分散修繕計画確定版のものです


4.4 対象外だった工事対象を組み入れる
ここで「30年では工事しない(使用継続)」分類した対象について、(絶対必要/なるべく必用/できれば)の工事優先順位を付けます。ついでに4タイプにも分類をしておきます。

4.5 工事サイクル(トリガー)を割り当てる
優先順位が高い工事対象を決めます。そしてその工事サイクル(トリガー)を決めます。 相当期間使用ができるものは、仮として工事サイクルを110年にしておきます。 例えば排水管を鋳鉄管から塩ビに更新したら、やはりその先は110年でしょう。

4.6 優先順位が高い対象で、工事費用を仮決めする
工事費用も参考までに、仮決めしておきます。30年分散修繕工事対象での各工事費水準を参考に、多め/少なめを決めておきます。

4.7 30年分散修繕工事対象と合わせる
元の30年は工事しない(使用継続)分類の中で優先順位が高いに分類した建物設備機能と、 既に30年分散修繕工事で決めている工事対象とを合わせます。

4.8 100年内に繰り返す工事の繰り返しも追加する
30年分散修繕工事対象だけれど、工事範囲を小さく分散している対象は、残りもどこかに加えます。(配管更新や、空調やトイレ・キッチン等内装工事がしばしばこれに該当します。) 30年分散修繕工事で決めている工事対象及び既に工事済で30年分散修繕工事に含まれなかった建物設備機能は、工事サイクルに合わせて、100年の期間では、2回3回それ以上に工事が必要となります。これも計画をします。

4.9 10年単位の工事目安時期に分類をする
各建物設備機能工事対象を、工事サイクルに従って 10年単位の工事目安時期に分類をします。

4.10 偏りがあれば、調節をする
長い目で見ても、一時期に工事が集中するといった偏りがあれば、工事サイクルを確かめながら調整をします。調整方法は、分散修繕と同じです。

4.11 自ビルの分散修繕による建物長寿化プラン完成


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一棟築古中小ビル(一棟所有マンションも含む)資産所有者・経営者・後継者の方、現在ビル資産の長寿化は、まずビルオにご相談ください。管理会社や建設業者とは違う、自分の土地と建物資産を守る建物アセットマネジメントの視点で、低予算かつ将来リスクも高めない分散修繕の工事取り組みによる100年長寿化プラン作成、更に高効果で賃貸も継続する安定ビル資産経営、その他建物アセットマネジメント観点での賃貸、管理、建物、所有の問題解決、ビル資産管理会社の経営の助言等を、リーズナブルな費用で行っています。まず無料オンライン相談でお話をしましょう。ご要請に応じてご相談前に守秘義務誓約書を差し入れします。

お気軽にフォームお問合せ又は30分無料オンライン面談をご予約下さい

注意:資本的支出工事で相見積もりは厳禁

分散修繕対象のビル資産を維持するための資本的支出工事では、相見積りは厳禁です。現在費用節約を狙って現在のリスクを避けて、将来のリスクを上げる行為です。

ちなみに公共工事では相見積りを行いますが、役所が工事仕様書を作成します。時に工事仕様書を作成するコンサルタントを雇っています。そして安い業者に依頼したことを議会で説明するために行いますが、談合等問題が多い事はご存じの通りです。

けれども一般の私達は、工事仕様書など作成できません。そして「低予算」=必要以上の工事(内容)を省いて工事予算を削減するには、専門工事業者に考えてもらう事が沢山あります。ただその「考えてもらう」は無料ではありません。相手に考える時間、手間、そして何より貴重な知恵をサービスしてもらっています。これは相見積りをするなら、本来コンサルタントにお金を払って考えてもらう事が含まれています。

ところが、相手が手間と時間と知恵を費やして作成した見積書を、安易に相見積りと称して他の専門工事業者に見せたり、内容を話したりする中小ビル所有者が後を絶ちません。これが非常に問題になっています。

例えばそこでAという工事業者が考えた見積書を、相見積りと称してBの工事業者に見せれば、それはA社のアイデアをB社に流出させる窃盗行為です。B社はA社のアイデアをいただいた上で、アイデアを考える手間もなく、より安い見積書の作成ができます。ただB社もそんな人のために、良い仕事はしません。A社もB社も、将来にわたってそのような人は信頼しません。

相見積もりの背景にあるのは、「ぼったくられるのではないか不振」「相手を損させても自分だけは損したくない」という、業者不信です。それでは、工事業者と良い関係を築き、低予算でかつ良い仕事をしてもらう事は難しいでしょう。

本当に工事業者に、低予算で良い仕事をしてもらうためには、相見積は絶対に厳禁です。


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Ⅴ 主要工事の取り組みヒント

ここでは、主要工事取り組みのヒントをご紹介します。

5.1 電気設備・幹線

キュービクルある建物では、電気主任技術者と相談をします。キュービルのリニューアルが必要な場合でも、中の設備の必要部分だけを交換する、箱ごと総リニューアル等いろいろなやり方があります。もちろん後者が高額です。

近年電気使用量が増えて、増えた電気使用量に合わせて電気幹線も交換する場合もあります。

部屋の照明器具やコンセントは、内装リニューアルの際にリニューアルし、LED化もされていると思いますが、古いコンセントは火災リスクがあります。また蛍光灯は廃棄費用が高額になりつつありますから、あればどこかで更新をします。 忘れがちが収益ビルの子メータですが、法律上は、10年に1回交換です。

5.2 給排水管・設備

排水管漏水はよくあるトラブルです。昔の鋳鉄管や、ジョイント部分に鋳鉄管が使われているタイプでは、更に錆リスクがあります。 水使用量が多い居住用マンション・飲食ビルは、漏水事故が起こりやすいですが、水使用量が少ないオフィスビルは、さほど漏水事故は起こりません。

よほど酷くならない限り、ライニング工法(管更生)工事で対応ができます。ただ漏水事故が頻発する箇所では、該当横菅を更新します。

ビル・マンション等の給水は、昔は高置給水タンクが一般的でしたが、現在は多くの地域で、10階建てくらいまでは、直結増圧式が水道局に推奨されています。(時々対象外がありますが、給排水菅工事の業者に聞けばわかります。)高置給水タンクから直結増圧式にリニューアルをすると、建物内水質が良くなる上に、毎年の高置給水タンク清掃・保守・修繕費が発生しなくなります。ただ一方で、単純リニューアルとはならず、給水縦管を増圧に耐えられるものにリニューアル、ついでに排水縦管もリニューアル。また必要なくなった屋上高置給水タンクを地上に降ろす、その後を防水処理する・・等工事が不随して総額が高額になりがちです。やるにしろ、予算確保とタイミングは30年分散修繕計画で計画をします。

給水ポンプや排水ポンプは、定期的に壊れますから、その都度修繕費で交換します。

5.3 外壁・屋上

外壁は、マンションも含めて大規模修繕工事業者は数多くありますが、高額になりがちな一方で、サービスや考え方が千差万別で、業者を選ぶのも工事内容を決めるのも、大変難しい領域です。

外壁修繕工事には、雨漏り止める、美観を回復する、防水保護をする、の3つの目的があります。同時に鉄部やサッシ工事等を行う場合もあります。それぞれ何が必要か、どうすべきか、丁寧に話し合います。 市街地の防火地域の耐火建物で隣建物と隣接している場合建物は、前面だけで手入れで済む場合がほとんどです。(雨漏りがない限り)外壁タイルが古く、補修タイルが手に入らない場合、タイルの上から塗装する手法もあります。このあたりはアメリカでは既に3Dプリンタで安価に補修タイル作成ができていますから、3Dプリンタ修繕の導入を待ちましょう。

屋上の防水塗装は、既に行っていると思います。近年防水工法によって、10年や15年20年等がありますから、予算と相談をして選びます。防水工事は必ず保証があります。保証内容をしっかり確かめます。

5.4 エレベータ

エレベータのリニューアルは、やり方で費用インパクトが多いところです。だから慎重に考えましょう。

エレベータリニューアルの判断そのものの相談相手は、現在のエレベータ保守会社です。だいたい築30年を過ぎると交換を言われます。40年程度で保守部品保管期限が過ぎたという手紙をもらう事がありますが、部品はあるものです。(他の交換エレベータから取った部品が保管されています。)既存不適格を指摘される場合がありますが、これは違法ではありません。

ただしリニューアルに際しては、リニューアル費用+30年の保守費用の総額で考えます。

■会社を選ぶ
エレベータ会社には、メーカー系と独立系があります。前者は、三菱・日立・東芝・日本オーチス・フジテックの5大メーカー三菱や東芝といった大手メーカーです。独立系は、多くは保守会社ですが、自社でエレベータ開発をしている会社や外資もあります。両社を比較すると、メーカー系は高額で独立系はかなり経済的です。

■工事内容を選ぶ
エレベータのリニューアル工事は主に2つのやり方があります。基盤交換と籠ごと交換です。前者は、経年劣化するのはエレベータを制御する基盤だから、その基盤だけを交換します。ただ数十年たつとエレベータ内部も汚れてきます。新しい地震制御や緊急通話等の追加もしたい。すると籠ごとすべて全交換することになります。もちろん後者の方がはるかに高額です。

■その後の保守メニューを選ぶ
エレベータ保守には、フルメン契約(フルメンテナンス)とPOG契約があります。フルメン契約では、故障の際の対応や(軽微な)交換部品がすべて込みです。POG契約は、故障の際の対応を都度修繕工事費として支払います。ただしフルメン契約は、毎月のエレベータ保守費がPOG契約と比べて、はるかに高額です。エレベータリニューアルの際は、その後の保守について、両方の費用を聞いて、それぞれの30年総額を比べて、どちらにするか選びます。例えば30年総額で、フルメン契約の方が1千万円よりはるかに高い場合、それでもう1回エレベータリニューアルが出来る訳です。

5.5 内装工事

日本では内装工事もすぐに、内装工事業者にお任せですが、本場ヨーロッパや他国の一般のビルやマンション、戸建て住宅所有者は、内装工事のかなりを自分でやります。建物内部のリフォームを、必要なところだけ職人さんを雇って、住みながらすべて自分で工事をする人も少なくありません。現在では、工事のやり方を教えるyoutubeプログラムも沢山あります。

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→ 低予算で将来リスクも高めず日本の建物長寿化を実現する分散修繕
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→ 築古ビル資産問題解決に欠かせない2つの視点

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