築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者のための
.

中小ビル100年超を実現する分散修繕とは

中小ビルを利益を生む資産として100年200年生かし続けるために必要な資本的支出工事について、何の工事をどう低予算で行い、何の工事は必要ないと判断をするか、の世界的に実績ある方法をご紹介します。

中小ビル資産の分散修繕


中小ビルをどうすれば長く使えるのか?どうすれば、経済的に工事ができるのか?それが分れば苦労しない、と思われるかもしれません。ただビルの本場ヨーロッパを始め世界中では、築50年どこか築100年築200年それ以上の中小ビルは珍しくありません。理由は、分散修繕で経済的に工事をして負債にしないからです。日本以外の世界には既に、ノウハウと実績があります。地震国は日本だけではありません。そこで、ビルの本場ヨーロッパを始め世界中で実践されている築古中小ビルの分散修繕を、日本で初めてご紹介します。

Ⅰ 分散修繕とは

中小ビルをどうすれば長く使えるのか?どうすれば、経済的に工事ができるのか?の答えが分散修繕ですが、分散修繕は、資本的支出工事の取り組み方法です。そこでまずこの資本的支出工事が従来の修繕工事と何が違うのか、理解しましょう。
TOPに戻る

1.1  中小ビルの分散修繕とは

中小ビルの分散修繕は、資本的支出工事の取り組みです。それも次の2つを実現します。1つは、自分の総工事予算でビルを維持する。もう1つは、「低予算」「低リスク」で「負債化させない」ビルの経年劣化部分のリニューアル等工事に取り組む。

「低予算」「低リスク」とは、単に工事費や安ければ良いという事ではありません。「低リスク」の範囲での「低予算」だという事です。

「負債化させない」とは、ビルは使用経営の利益ある資産でなければ、維持出来ないという事です。だから、負債化させないよう自分で無理のない総工事予算でビルを維持に必要な工事を行わなければいけないという事です。

それぞれを理解する前に、先に今までの日本のビル工事取り組みでは、何が難しかったのかを見ておきましょう。
TOPに戻る

1.2 日本の従来築古ビル工事取り組みの問題

築古ビル維持の歴史がない日本では、築40年築50年中小ビルに対して、主に次の2つ工事取り組みが取られてきています。

リノベーションや大規模改修工事は超高額です。そもそもこれらは、高額投資高リスク高リターンの、大資本の手法です。中小ビルでは、「負債化させない」が守れません。 一方で壊れたら工事式は、一見「低予算」に見えます。ただ相当分かっている人でなければ「低リスク」が実現できません。何が必要で何は重要ではないかの判断が出来なければ、必要な工事ができずボロビルになったり、工事をしていても冴えないビルになります。

なぜ日本ではそうなるのか? それはビルを資産として維持するという概念が抜け落ちているからです。
TOPに戻る

1.3 ビル維持ではなくビル資産維持が必要

ビルは、物だけれど資産でもあります。そしてビルは使用経営の利益を産む資産でなければ維持できません。資産ではないとは、負債です。支出超過では長く持てないのは当然です。私達日本人はこの理解が欠け落ちていたのが、問題だったのです。
1.31 ビルは物だけれど資産でもある
ビルは「物」です。建物設備機能等物の集合です。物は経年劣化します。ただ物はリニューアルできます。そして物としてのビルを維持するだけならば、リノベーションや大規模改修工事でよい訳です。けれども、それでは高額すぎて負債化してしまう。

ビルは「資産」でもあります。ビルは、土地の資産価値を実現する器です。ビルという「物」は、使用経営の利益という「数字」を産む事で、その資産価値があります。逆の状態は、負債です。これでは趣味でもない限り誰も長く持ち続けられません。ビル「資産」は、「物」と「数字」の両方の性質があるのです。(ちなみに他に「権利」もありますが、それはここでは扱いません。)

「物」のビルを維持するためには、一定の工事支出が必要ですが、ビルが「資産」であり続けられる予算で行わなければいけないのです。

ビルは「資産」でもあります。ビルは、土地の資産価値を実現する器です。ビルという「物」は、使用経営の利益という「数字」を産む事で、その資産価値があります。つまりビル「資産」は、「物」と「数字」の性質の両方を満たさなければいけないのです。

1.32 怖いのは負のサイクルに陥る事
つまりビル資産には「物」として経年劣化リスクがあります。そして「物」リスクを放置しても、「物」リスクを解決するための工事支出が過大でも、こんどは負債化という「数字」リスクがあります。

ただビルは、「物」や「数字」リスクが1つ2つでアウトになるほど、脆くはありません。例えば「物」のビルで、排水管が経年劣化してしばしば漏水事故を起こす。外壁塗装が剥がれてかけている。それだけであれば、ビルは使用続けられます。「数字」のビルが、高額工事で負債化してしまった。ある程度の期間は持ちこたえられます。

とはいえこれが長く続くと、問題が悪化します。ビルの経年劣化箇所も増えます。「物」と「数字」のリスクが積みあがり、負のサイクルに陥ります。お金がないから工事ができない。工事をしないから建物状態が酷く悪化する。対応によりお金を必要とする。。このサイクルが進行すると、手の打ちようがなくビルは負債化します。

怖いのは一つ一つの「物」リスク「数字」リスクを、このくらいならと見過ごしているうちに、長期に積み重なり、負のサイクルに陥る事なのです。
TOPに戻る

1.4 修繕工事とは違う資本的支出工事とは?

分散修繕は、この負のサイクルに陥らずにビルを資産として維持するための工事取り組みの方法です。そこでもう一つ重要な事が、ビルを資産として維持するための工事・・つまり経年劣化部分のリニューアル工事や機能不足部分の追加工事とは、何かと言う事です。これらは資本的支出工事です。通常の修繕工事とは取り組みの考え方が違います。
1.41 分散修繕は資本的支出工事のためのもの
結論からいうと、経年劣化部分のリニューアル工事や機能不足部分の追加工事は、資本的支出工事です。そして分散修繕は、この資本的支出工事のための工事取り組みの考え方です。資本的支出とは、会計上の概念です。

建物の資本的支出とは、修理・改良したことによって使用可能期間が延長し、資産価値が高まるものをいいます。 資本的支出は、耐用年数の延長や価値の増加が認められるものについては「資産の追加取得」と考えて、固定資産として取り扱い、減価償却をして少しずつ経費としていくものです。つまり効果が長期に及ぶとして減価償却の対象になる工事です。

1.42 修繕工事とは違う資本的支出工事
図から分かるように、いわゆる修繕工事はPLですが、資本的支出工事はBSです。 そして修繕工事と資本的支出工事では、工事に対する考え方、工事の取り組み方が全く違います。修繕工事は、今やらなければいけない工事です。けれども資本的支出工事は、どうせ建替えるから/古い建物にお金をかけても無駄だからやらない、今お金がないからもう少し後・・逆に使用者に迷惑をかけたくないから即やる、といった所有者の考えで決まります。資産の事は、資産所有者が自分で考えて決めなければいけないのです。

TOPに戻る

1.5 資本的支出工事では何を考えて何を決めるのか?

ではビル資産所有者は、資本的支出工事を判断するときに、何を考えて工事の何を決めるのか?

工事をどうすべきかは、専門工事業者が決めます。そこに口を出したら嫌われます。でもビル資産所有者は、
そもそも工事をするかしないか、
今するかもう少し後で良いか、
どの程度の機能性能グレード範囲等をするか、
更にいえばどの専門工事業者と相談をするか

を決めます。その決める基準は、
ビルが将来、使用経営利益を得るために必須か
将来への過程で負のサイクルに陥るリスクが高めないか

です。ただ将来の事は全て仮定です。正解はありません。出来るのは、考えうる物と数字のリスク、現在のリスクと将来のリスクを検討してバランスを取り、負のサイクルに陥るリスクを極力避ける事です。いくつもの可能性を比較検討して、より「低予算」「低リスク」で「負債化させない」かつ実現性が高い案を選ぶ事になります。

TOPに戻る

1.6 中小ビル分散修繕の取り組み方

分散修繕の基本は、「壊れたら工事」系です。ただ行き当たりばったりではなく、自分の予算で「低予算」「低リスク」で「負債化させない」を実現できるよう、所有者自分が上記のようなことを考えて、上記を決めます。
1.61 中小ビル分散修繕の工事取り組みの基本
分散修繕の工事取り組みは、一見単純です。 ビルの経年劣化部分のリニューアル等資本的支出工事について、基本は予算を準備してから工事をする。の繰り返しです。これで負債化リスクを回避できます。

ただ自分の予算の中で、「物」リスクを現在から将来に渡って高めないでいられるかは、また別の話です。そこで「物」リスクを高めず、結果「負のサイクル」に陥るリスクを高めないために、考える事があるのです。
1.62 「低予算」とはどういうことか?
低予算で工事をするとは、どういうことでしょうか?相見積で安い業者を見つける事でしょうか?業者の見積書を叩く事でしょうか?それでは安かろう悪かろうになることは、誰でも知っています。

資本的支出工事を低予算で行うとは、工事が必要か必要ではないか、工事内容の機能性能グレード等がどの程度必要か、自分で決めて過剰や無駄を省く事です。といっても、すべての工事は、何等かの理由で必要とも言えます。だから自分で順位をつけて、どこまでやる、を選ぶ事です。
1.63「低予算」「低リスク」で「負債化させない」
「低予算」「低リスク」で「負債化させない」の3つを両立するために、分散収修繕では、ビルの経年劣化部分のリニューアル等工事取り組みに際して、次の3つのルールがあります。  

1つ目は、まず自分の予算ありき だという事です。このビルの工事にいくらかかるか教えて欲しい、ではなく、自分はいくら出せるか?出すのが適当だと思うか、が重要なのです。 2つ目は、低予算低リスクの水準は、自分で決める 事です。同じビルの同じ工事でも、潤沢な予算があるか予算が非常に厳しいか、今後のビル使用者がどの程度の水準を求めるか、で「低」の程度が違ってくるからです。 3つ目は、ビルをひどく悪化させない 事です。ビル維持で一番怖いリスクは、「事故」「負債化」ですが、その前にそうしたリスクを高める「負のサイクルに陥るリスク」を高めない事が重要なのです。つまり「物」のビルの状態をひどく悪くしないことです。ついわかりやすい「数字」のリスクが優先されがちになりますが、「物」のビルをひどく悪い状態にしない事が重要です。分散修繕ではそのために分散をします。
1.64 分散修繕は計画が必要
つまり建物設備機能等のリニューアル工事や機能不足部分の追加工事を考えるにあたって、分散修繕で取り組むには、
  • ビル使用維持に必用な工事の全体が把握できている
  • 将来の結果とその過程のリスクを想像できる
  • 必要工事に優先順位を付けられる
の3つが必要です。 これができるようになるには、最初は計画が必要です。将来仮に30年(30年は長期修繕計画表でも採用される、一般的な建物の「長期」の期間です。)として30年分散修繕計画の作成です。

ちなみに「最初は」という意味は、慣れてかつ自ビルの予算目安がわかるようになれば、そのうち計画がなくても自然に出来るようになります。だからビルの本場ヨーロッパや世界中の中小ビル資産所有者達は、自然に出来ている訳です。
1.65 30年分散修繕計画の作成
30年分散修繕計画の作成の目的は、ToDoを決める事ではなく、自ビルの30年の総工事予算感を持ち、何の工事をいつ頃どうするか、「低予算」「低リスク」で「負債化させない」実現のイメージを持っておく事です。

大まかでもイメージを持っていると、実際の「現在の物のリスク」対応場面で、工事をどう対応するか、「低予算」「低リスク」で自ビルを「負債化させない」観点で、考える事ができます。そして工事の事はわからないから専門業者任せではなく、所有者として主体的かつ合理的に、自ビルの方針を説明し、一緒に考える事ができるようになります。

30年分散修繕計画は、実際にはエクセル等で簡単に作成できます。ただ単なる計算表ではなく、試行錯誤のツールとして使うには、適切な計算式の入れ込みが必要です。ビルオでは、ご相談者様に計算式入りのフォームをご提供しています。

1.66 30年分散修繕計画の作成方法
30年分散修繕計画は、次の手順で作成をします。次章で順番に見ていきます。

TOPに戻る

築30年以上中小ビル資産所有者・経営者・後継者の方の築古ビル維持と経営の問題、お困りごと、今後の見通し、将来の不安、賃貸、管理、工事、耐震、税対策、共有問題、承継etc 具体問題がまとまっていなくても構いません。現在ビル資産維持のための、問題対応と今後の見通しについて、 誰かと話をしてみたいとお考えの事をお話しましょう。秘密厳守。ご要望がありましたら、守秘義務誓約書を差し入れます。

お気軽にフォームお問合せ又は30分無料オンライン面談をご予約下さい

Ⅱ 30年分散修繕計画

30年分散修繕計画の作成を通して、具体的にどう「低予算」「低リスク」で「負債化させない」を実現できるのかを、見ていきます。 30年分散修繕計画の作成では、まず準備が2つあります。(2.1)考える事を考え、(2.2)自ビルの潜在工事対象を洗い出し、優先順位付けをします。あと過去の工事履歴も確かめます。 それから30年分散修繕計画を作成しますが、2段構成で、まず(2.4)「低予算」「負債化させない」ように自分の工事予算を決めて、何の工事に予算をどの程度配分するかを検討します。
TOPに戻る

2.1. まず考える

1.24 修繕工事ではなく資本的支出工事で確かめた通り、資本的支出であるビルの経年劣化部分のリニューアル等工事は、ビルの将来の利益を作るための工事です。だから先に将来の自分の財源やビルの将来の使用者を考えておきます。そして将来の自ビルの使用者が使用している将来の自ビルの将来像についても、準備としてイメージを持っておきます。
2.11 ビル維持工事予算の財源を考える
今後30年のビル維持工事の財源を考えます。財源がなければ、どうやっても工事ができません。借入金は最終手段です。 原則、安定財源を考えます。つまり収益ビルなら賃料収入、企業なら事業売上、個人であれば個人手雲集です。既に修繕資金の準備や、臨時財源の予定がある場合は、ボーナスとしておきましょう。
2.12 今後のビル使用者を想像する
次に、今後30年のビル使用者を、具体的に想像します。これは、工事予算削減に欠かせません。

例えばビル使用者は女性が多いか、男性が多いか、若年層が多いのか平均年齢が高めか・・、使用は事務所か、店舗か、事務所と一言言っても、来店型か、堅い雰囲気か、自由なスタイルを好むか・・手法としてマーケティングのペルソナ手法が役に立ちます。インターネットで検索をするとサンプルが多数出てきますから、ぜひ参考にして作ってみてください。
2.13.30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子
もう一つ、今後のビル使用者が使用したい、将来の自ビルの様子を、想像しておきます。

細部まで必要はありませんが、現状維持と一言で言っても、そのまま経年劣化か、現状水準状態を維持するのか、違います。見た目の改善や、使い勝手の改善、建物設備の新設/廃止も考えてみます。

将来の自ビルの在り方に解はあ解りませんから、自由にあれこれ考える事です。当然予算が関係してきますから、次の検討の過程でも何度も見直します。

TOPに戻る

2.2 必要工事を洗い出す

実際に30年分散修繕計画の作成に入る前に、もう一つ準備があります。それは、ビルの使用維持に必用な工事を洗い出して、優先順位をつける事です。また過去の修繕履歴も調べておきます。 場合によっては、資料を探したり、管理者等に聞いてみたり、設備工事業者に意見を聞いてみたり、少し時間がかかる事があります。ここで見落としがっては話になりませんから、丁寧に時間をかけて確認をしましょう。
2.21 自ビルの建物設備機能を全て洗い出す
ビルは、躯体以外は全て経年劣化リスクがあります。(鉄筋もコンクリートも経年劣化がありますが、通常のビルは外壁や内装に保護されて、そうそうには経年劣化が進行しません。)躯体も部分的に耐震補強が必要な場合があります。一応全てを把握しておきましょう。 業者が作成した長期修繕計画表がある場合には、その項目を見ます(キュービクル、給排水管等、概項目で十分です。細かい項目は工事業者の考える領域です。)竣工図は細かすぎます。長期修繕計画表がなければ、ビル管理会社/管理人に洗い出してもらうか、目視で点検確認をします。

2.22 洗い出した自ビル建物設備機能の方針を分類してみる
洗い出した工事候補対象を、まず次の工事方針で分類します。

ビルの使用に欠かせない機能設備内装等のうち、30年は使用ができるものと、経年劣化等理由でリニューアルが必要になるものを分けます。また必要なくなるものがあれば、それは将来廃止に分類します。時代の要請に合わせて新しい設備機能追加を考える場合、それは新規工事です。

ここで工事業者の調査は必要ありません。経年から状態を推察して、経年劣化トラブルの不安がある対象を、工事対象に含めておきます。最初はなんとなくで分類して構いません。どうせ後で見直します。但し、最終的に2.13 30年後の自ビル使用者が使用している自ビル像である事は最低条件です。
2.23 リニューアル/新規追加工事対象について、具体工事名を挙げる
30年内にリニューアル/新規追加工事に分類した対象建物設備機能等について、実際に必要となる具体工事名を挙げます。現在はインターネットでも調べられます。また管理者や工事業者に軽く聞いてみてもよいでしょう。ついでに4分野に分類をしておきましょう。後で色々考えやすくなります。

中には技術が変わって単純リニューアルにならないものもある事には留意します。例えば屋上高置給水タンクは、現在では直結増圧式が水道局で推奨されています。
2.24 工事対象候補に優先順位を付ける
分類した工事対象候補に、優先順位を付けます。といっても3分類(絶対必要/なるべく必用/できれば)に分ける程度で構いません。もし同一カテゴリ内でどれを入れるか・・となったその時に、相互の優先順位を考えれば十分です。

2.25 優先順位が高い工事の予算目線も調べておく
絶対必要工事及びなるべく必要等工事については、工事予算の目線も調べておきましょう。 現在であればインターネット検索でかなり調べられます。わからなければ、ビル管理者や工事業者にさらりと聞いてみます。調査や見積書作成は提案を受けても断りましょう。

この後各工事予算削減でまた触れますが、各工事予算目安には、幅があります。だから各工事予算は、例えば200万円~400万円といった費用幅として把握しておきます。
2.26 過去の対象工事履歴の整理もしておく
また、先に過去の建物設備機能のリニューアル等工事の履歴を確かめておきましょう。ビルの状態理解や工事サイクル検討の重要情報です。

いつ頃どこをどうする工事をしたか、だいたいわかれば十分です。正確な年月や金額は必要ありません。

過去の工事履歴情報があれば一番ですが、無い場合過去の確定申告書を見ましょう。税理士が資産内訳を作成管理している場合には、それが参考になります。ただ本来資本的支出対象工事を修繕費計上している場合もあるので、大きな工事支出がないか、全て確かめる事をお勧めします。10年以上古い確定申告書控えが残っておらず、税理士のところにもない場合は、それはそれで構いません。人の記憶や目視で工事の後をみつけて、なんとなく推測しておきます。どのみち築20年前は、それほど大きな工事はしていないでしょう。

TOPに戻る

2.3 分散修繕計画作成の考え方

分散修繕は、中小ビルを、自分の予算かつ「低予算」「低リスク」で「負債化させない」ように、ビルの使用維持に必要工な事を行い、現在ビルを100年以上使用経営を実現するビル維持工事取り組みの方法です。そのコアが、何の工事を予定するか?です。この考え方をここで見ます。
2.31 分散修繕計画作成の考え方
分散修繕は、まず自分の予算ありきです。だからイメージは、自分の総工事予算の箱を用意して、30年総工事予算の箱に、いつ頃何の工事を入れるか?です。各工事ブロックの大きさは、各工事予算に比例します。
何の工事を行うか?(箱に入れるか)
何時頃行うか?(順番をどうするか)
各工事にどの程度予算を見込むか?(ブロックの大きさは?)


更になるべく工事予算の無駄をなくすために、30年総工事予算の箱そのものも、もっと縮小できないか?も問題になります。目指すは、2.13.30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子ですがこれも検討をするにつれ色々考えられます。

これを30年分散修繕計画作成で、数字として試行錯誤して考えるわけです。それぞれに無限の可能性はあります。そこで勘があるのが経験者と言えます。ご自身で30年分散修繕計画を作成を通して比較検討をすることで、それが経験の「勘」となって、実際の工事判断の場面で生きます。ビルオではより効率よく勘を養うための助言をいします。ここからそのプロセスを見ていきます。
2.32 ①30年総工事予算を仮決めする
まず、30年総工事予算を仮決めします。 理想的な30年総工事予算は、毎年一定金額確保です。
理想は、自用ビルであれば賃貸を想定して3%‐7%
収益ビルで財源である賃料収入の5%-10%
財源確保が厳しければ、可能な限りで十分です。例え年間100万円でも30年で3000万円分工事ができます。30年総工事予算も後から見直しますが、最初から多め、基本、少なめの3パターンで検証してもよいでしょう。
2.33 ②必要工事に工事予算を配分してみる
30年総工事予算の箱を仮決めしたら、既に確かめた工事優先順位に従って、予定工事を入れていきます。時期はこの後「低リスク」でも考えますから、アバウトで大丈夫です。各工事予算も仮置きです。この後の「各工事予算削減」でもっと考えますから、最初は調べた工事幅から、中間くらいを選んでおきます。 とにかく沢山のパターンを作成してみる事です。

最初は、全然予算が足りない!と絶望的に感じる事は普通です。この後2.4の工事予算削減テクニックで各工事費用を削減したり、優先順位が低い工事対象を落としたりして、極力やりくりを考えます。総工事予算増額は、最後の手段です。
2.34 工事対象に入れないとはどういう事か?
先に検討の結果工事対象から落とす事は、2.22 洗い出した自ビル建物設備機能の方針を分類してみるの図の分類で「工事対象」から、「次の30年では工事しない」もしくは「廃止」に再分類をする事です。 つまり、
  1. 工事時期を先延ばしにして、次の30年では工事対象に入れない。
  2. 工事対象の建物設備機能を、使えるだけ使った後は廃止にする。
です。1の先延ばしは、実はお馴染みの手法です。「壊れたら工事式」でもやります。一番手っ取り早いのですが、「物」の悪化リスクを高めます。だから負のサイクルに陥らないよう、限度を慎重に考えなければいけません。どう考えるかは、この先2.36③工事時期の考え方(工事サイクル)で見ます。 2も、結果は30年後のビル像に影響します。またビルの使用価値に影響する場合もあります。だから1も2も、30年分散修繕計画で、30年後の自ビル像と照らし合わせて、落とす判断をします。数字操作はダメです。
2.35 各工事費用の考え方
各工事費用は、費用幅を.25 優先順位が高い工事の予算目線も調べておくで調べた通り、所詮は目安ですが、それで構いません。費用幅から松竹梅を選び、それで作成をすれば十分です。気になるところがあれば、そこは補正をしておきます。実際の工事でいくらかかるかは、その時にならなければ分かりませんが、この先4 各工事予算の削減で予算削減を学べば、その時々で費用削減も出来るようになります。

実際の工事でいくらかかるかは、その時にならなければ分かりませんが、ただあまり大きく違っては実際の場面で困るので、4 各工事予算の削減で考える水準での予算感について、管理会社や工事業者にさらりと意見を聞いてみる事はお勧めします。今後はインフレが想定されるため、将来予定工事ほど、多めに見込みます。
2.36 ③―⑥各工事予算を削減するとは
工事予算の削減とは、もちろん見積書の単価や総額を叩く事ではありません。見積書の中身は、各工事業者が考える事です。素人の口出しや、また意見をもらおうと見積書を他社に見せるような事は厳禁です。そこで「ぼったくられているかも」と感じるような信頼できない専門業者に、相談をしている事に問題があります。

資産所有者の目で見ると、ビルの工事費用には、次の分類ができます。

それぞれ合理的に自ビルと自分の総工事予算にとって適切な水準を決める事が、工事費用削減です。各工事予算削減ポイントは、次の2.4 各工事予算の削減で見て見ます。
2.37 ②工事時期の考え方(工事サイクル)
先に2.23で工事時期の先延ばしについて、留意をしましたが、この工事時期を考える非常に重要な概念が、工事サイクルです。

各建物設備機能や内装等のリニューアル工事は「サイクル」です。1度で終わりではないのです。このサイクル概念が非常に重要な理由は、ここをどう考えるかで100年200年といった長期での工事総額が大きく変わるからです。エレベータの例は次の通りです。

完全に機能停止すれば別ですが、その前の「経年劣化状態」の判断は人によって違います。その時間的幅は大変広いのです。ただリニューアル工事を早め早めに行えば「物」の事故のリスクは高まりません。けれども長期間で総額が相当に高額になります。一方でリニューアル工事を引き延ばせば、工事費用は節約できますが、「物」の事故リスクは高まります。だからどの程度にするか、「物リスク」と「数字リスク」を天秤にかけて自分で決めなければいけません

ちなみに、素材や工法の進歩でサイクルが劇的に伸びるものもあります。(例えば給排水管が鋳鉄管から塩ビへ移行)そもそも終了するものもあります。(多くの地域で屋上高置給水タンクが推奨されなくなった)
2.38 ⑦将来のビル像も見直し工事予算を削減する
こうして30年総工事予算の箱に入れる工事の予算削減を検討していると、当然に、将来のビル像も見直す事になります。最初はたいてい、贅沢に想像しているものです。

将来のビル像からどこを削減してくかは、将来のビル使用者とビル使用によって違いますが、大まかな方針としては、
  • シンプルビル化(すべてにわたって、必須以外の機能性能グレードを削ぎ落とす)
  • 個性ビル化(費用投下にメリハリをつける)
    • は、是非考えておく事をお勧めします。

      2.39 更に⑧30年総工事予算の削減に取り組む
      ある程度イメージが出ててきたら、30年総工事予算の削減も、取り組みます。 懐の余裕具合に関係なく、ヨーロッパの中小ビル資産所有者達は、ケチと言われる通り、これが趣味の人は少なくありません。

      工事予算削減は、経験とともに見えてくる事も多くあります。30年分散修繕計画は、一度作成したら終わりではなく、繰り返し繰り返し30年総工事予算の削減を検討して、「低予算」を追求しましょう。

      TOPに戻る

      2.4 各工事予算の削減

      2.36 工事サイクルを引き延ばす以外の、各工事予算を削減するとはの通り、各工事予算には工事を発注するビル所有者が決めるべき事があります。これを決める事が、工事予算削減です。それぞれ具体的に見て生きましょう。
      2.36 各工事予算を削減するとは


2.41 ③工事業者のサービス水準
誰も教えてくれないけれど、工事費用インパクトが大きいのが、相談をする業者のサービス水準です。腕の良し悪しの話ではありません。 高レベルのサービスやマネジメントには、その分費用を請求されて当然だという事です。サービスやマネジメントの良さは、工事の「安心」です。「安心」はお高いのです。

建設業者に相談をすれば、実績あるプロが工事内容を考え、プロが工事を監督し、手厚い説明とサポートで安心です。ただ工事総額の30%の工事監理費その他多くの管理費が発生して超高額です。自分でDIYで工事をすれば材料費だけ、または職人に指示すれば、+人足代で済み激安です。YoutubeビデオでDIY を学べる時代です。けれども工事内容を決めて材料を選び施工まで全てが自己責任です。費用水準が低い業者に、高サービスを求める事は、「業者いじめ」と言います。それぞれ一人ひとり、時間の制約もあれば得意不得意があります。

だからどの程度を業者に依頼するか、決めるのは自分です業者のサービス水準は、工事業者のHPを見たり実際に話を聞いて、自分で確かめます。
2.42 ④機能性能グレードを決める
ここも予算への影響が大きく、「ケチ」の腕の見せ所です。

工事に際し、どのように工事をすべきかは工事業者が決める事ですが、その仕上がりの機能性能グレードをどの程度必要と考えるかは、工事発注側の判断です。例えばエレベータ更新でも、せっかくだからと内装のグレードアップや、震災時制御やらテレビモニターやらを付けると、相応に金額が嵩みます。空調にしろ消防設備にしろ、付加価値を付ければ費用が嵩みます。内装工事も、高級やデザインを追求すれば、費用は天井無しです。

機能性能グレードについては、本当に必要か、自分でも考え工事業者とも話し合い、じっくり吟味します。

機能性能グレードは工事業者に利益になる事と、後から足りないと文句を言われないために、過剰に提案されがちです。日本のビルは設備機能グレード過剰が多いので、ここは予算の削減しどころが沢山あります
2.43 ⑤素材等(耐久性等)を決める
素材、時に工法についても、同様です。「どうせ工事をするなら長く使えるものを・・」は合理的に聞こえますが、 今それだけの「高額費用」を出してよいか、も問題です。例えば屋上防水工事も、保証期間が5年、10年、20年と伸びると、相応に費用が増額します。

そこだけ長持ちしても他の建物設備トラブルが対応できなくなれば意味がありません。総額として30年分散修繕計画で予算配分ができるかどうか、で決まります。
2.44 ⑥工事範囲を決める
工事範囲も、日本では「どうせ工事をするならまとめて行った方が、共通費が節約できる」と考えられがちですが、実は違います。中間費が増え、また使える部分もスクラップにする無駄があります。

例えば1フロアで漏水事故が頻発するから排水管を更新する際に、ついでだから全フロアを更新するのは、合理的に聞こえますが、他フロアは漏水事故もなく後100年使用できるかもしれません。工事規模が大きくなると、中間費も増額します。隠れ費用も増えます。建物使用者への影響が大きくなります。

工事範囲も、必要性と工事総額とで相談をする事になります。また工事範囲対象を狭める事は、実際の工事の場面でも、工事予算を抑える手札です。

TOPに戻る

2.5 リスクの分散

30年総工事予算の箱に、必要工事が納得できる予算配分で収まればそれで終わり、ではありません。「リスクの分散」の仕上げが残っています。そしてこの「リスクの分散」が、分散修繕の名前の理由である通り、非常に重要なのです。「リスクの分散」は、まず「数字のリスク分散」次に「物のリスク分散」の順番で見ていきます。ただその前にそもそもなぜ分散なのかをもう少し確かめましょう。
2.51 リスクの性質
改めて確認をします。ビル資産には物のリスク数字のリスクがあります。また現在のリスク将来のリスク(負のサイクルに陥る)があります。

何でもそうですが、リスクがゼロという状態はあり得ません。ただいずれかのリスクが極端に高まると、将来負のサイクルに陥ります。私たちにできるのは、この「負のサイクルに陥る」事態を避ける事、負のサイクルに陥いっても、深く進行する前に救い出す事です。
2.52リスクは 分散してバランスをとる
物と数字、現在と将来のリスクも、どちらかのリスクを高めないようにすると、他方のリスクを高める性質があります。だから両方を低リスクな状態にバランスよく保つ方法が、「分散」です。

分散修繕は、ビルオが名付けた名前です。なぜならば歴史的な経験があるビルの本場ヨーロッパや世界の中小ビル資産所有者たちは、文化として自然にこのバランス感覚が身についているからです。日本人はその文化がありませんが、30年分散修繕計画を作成することで、身に着ける事ができるようになります。
2.53 まず数字のリスク分散
30年分散修繕計画の作成では、まず数字のリスク分散から取り組みます。工事の判断は、現在の物のリスク対応です。それを基本、先に考えた30総工事予算の箱の中で、予算計画に合わせて予算を準備してから工事をする事で、赤字負債を作らず、数字のリスクを高めません。 。

2.54 将来に至る物リスクを確かめる
とはいえ、例えば重要工事の工事サイクル時期が重なっていた場合、単に数字操作で後回しにしては、物のリスクを高めるかもしれないリスクが残っています。工事サイクルは幅の余裕がありますが、あまり大きく外れると、方針が変わってしまいます。

30年分散修繕計画の30年に渡る各建物設備機能の状態とビル全体の状態を、数字を追いながら想像をします。そして物リスクを高めていないかどうか、必ず確かめます。

2.55 必要に応じて将来に至る物リスクを調整する
工事予定時期には幅があるとはいえ、どうしても重要工事時期が重なって前後の調整が難しい場合があります。特に築50年前後であまり必要工事をしてきていない場合など、どうしても最初の10年で必要工事が重なります。 そうした場合には、次のような手法で更に調整をします。
  • 重要な工事を早めに行う
  • 重要度の低い工事を少し後ろ倒しにする
  • 重なる時期の工事規模を更に分割して予算を下げる
  • 重なる時期の工事予算を更に削減して予算を下げる
2.56 30年分散修繕計画は沢山作ってみる
リスクの分散を確かめると、1つの30年分散修繕計画の出来上がりです。

ただ既に検討の段階でも強調していますが、30年分散修繕計画は、1つ作って満足しては意味がありません。エクセルのシート及びファイルをコピーして、沢思いつく色々な可能性やリスク対応を山ほど検討しましょう。

どうせ将来はわからないからこそ、多くの可能性をシミュレーションをする事で、「少し考えれば避ける事ができた」判断ミスを避けて、負のサイクルに陥るリスクを遠ざけておく事ができるようになるのです。
2.57 いずれ計画なしでも自然に分散修繕ができるようになる
分散修繕が出来ている築古中小ビルは、古くても建物設備機能や見た目が酷く悪化する事はありません。築40年-築50年前後は大きな工事が重なるかもしれませんが、山場を越えれば、後は自然に工事サイクルが分散されます。

自ビル維持のために毎年準備しておく分散修繕の工事予算も、予算感を掴めば、後は計画なしでも、自然に準備ができるようになります。

そうして時々、「低予算」「低リスク」で「負債化させない」ようにビルの経年劣化部分のリニューアル等工事を行い、気が付いたら現在ビルは、築100年を過ぎているでしょう


TOPに戻る

築30年以上中小ビル資産所有者・経営者・後継者の方の築古ビル維持と経営の問題、お困りごと、今後の見通し、将来の不安、賃貸、管理、工事、耐震、税対策、共有問題、承継etc 具体問題がまとまっていなくても構いません。現在ビル資産維持のための、問題対応と今後の見通しについて、 誰かと話をしてみたいとお考えの事をお話しましょう。秘密厳守。ご要望がありましたら、守秘義務誓約書を差し入れます。

お気軽にフォームお問合せ又は30分無料オンライン面談をご予約下さい

Ⅲ 分散修繕工事の工事リテラシー

管理会社の担当者や建設業者の営業担当者にお任せで全て采配をしてくれる高額リノベーション工事や大規模改修工事と違って、建物設備機能設備リニューアル工事を経済的に行い成功させるためには、一定の工事リテラシーが欠かせません。ストレスなく工事を成功させるための 、マナーのようなものです。ざっと確かめておきましょう。
TOPに戻る
3.1 実際のビル資産維持工事検討の流れ
実際のビル資産維持工事のような重要工事検討の流れは、次の通りです。

ビル資産所有者は、工事の必要性を認識すると、30年分散修繕計画をもとに、必要に応じて他の工事も調節して、工事予算を確保し、工事の検討を始めます。
3.11 リニューアル等工事の必要性を認識する
分散修繕対象工事の認識は、トラブルが増えたり、見た目が劣化したり、ビル管理者がいい加減に工事が必要と言うトーンが強くなってきたり、色々あります。 30年分散修繕計画表を睨み、他の工事予定が当分ない事を確認して、まず予算準備を始めます。
3.12 相談する専門業者を選ぶ
基本は、2.41 工事業者のサービス水準で決めたサービス水準の業者を、管理会社や人の伝手、HP検索を通して探します。まず話をします。

誰かの紹介だから、で決めるのではなく、まずなるべく多くの業者と話をしてみる事をお勧めします。 業者が良いかどうか分からないという場合、まずお話する数が足りていません。

最初から見積や現地調査は断りましょう。まず同様事例の話や費用目線等を軽く聞きます。最初のゴールは、より具体的な相談に進む業者を決める事です。業者選びは人間的相性もあるので、一概にどうおあるべきとは言えませんが、経験が少ないと、営業トークが上手なところが話しやすく感じ勝ちになることに留意をしておきます。

緊急ではない限りここは妥協せず、1年2年3年かけてでも、じっくり納得できる専門業者を探し求めましょう。望ましくは早くから専門業者サーチをしておく事です。
3.13 専門業者と事前相談をする
具体的に話を進める業者を決めると、より具体的な工事の相談をします。現地調査が入る場合もあります。ここでもまだ見積書は貰いません。

「専門の事はわからないから業者様にお任せします」姿勢ではない事を伝えるためにも、分散修繕計画作成で考えていた、
工事方針
機能性能グレードの目線
耐用年数及び工事個所の考え
予算目線

を伝えます。将来のビル使用者や他の工事計画等も話をしておくと、専門業者さんもより具体的に考えやすくなります。全体の流れは次の通りです。

最初の提案で完璧な案が出てくる事はまずありません。最初の提案が出てきたら、お互いに意見を出し合ってブラッシュアップをしていきます。専門工事業者は専門見地から無理だと言うかもしれません。その場合でも、理由を丁寧に説明してくれるか、なるべくビルの方針に沿った代替え案を出してくれるか、が重要です。そうした話合いを通して、相手の専門業者とどうも相性が悪いと感じた場合には、なるべく早めに断りましょう。現地調査が入っている場合、調査費用だけお支払いする場合もあります。
3.14 工事見積書作成及び最終ブラッシュアップ
ある程度工事案が固まり、またこの専門工事業者さんで任せられると思ったら、工事見積書の作成に進みます。通常工事見積書には有効期限がある通り、見積書はほぼ発注の意思が固まってから作ってもらうものです。

もちろん見積書が出てきたら、中身についても詳しい説明をしてもらいます。そこから細かな修正を容れる場合もあります。費用削減や負けて交渉は、ケースバイケースと言っておきます。
■ 相見積もりは厳禁
軽微な修繕工事と違って、分散修繕対象のビル資産維持工事で素人の相見積もりは厳禁です。目のまえの工事予算を節約したように見えて、将来損する行為です。

相見積もりは、公共工事のように役所が工事仕様書を作成して、後はその通りに工事をするために極力安い業者を選ぶための手法です。時に工事仕様書を作成するコンサルタントを雇っています。

けれども一般の私達は、工事仕様書など作成できません。ただ中小ビルの建物設備機能や内装リニューアル程度の工事なら、高額なコンサルタントを雇わなくても、工事業者と相談をしながら決める事ができます。

ただしそれは、本来なら高額なコンサルタントを雇って考えてもらうべき事を、専門工事業者に「サービス」として考えてもらっているのです。 ビル資産を守るビルの使用維持に必用な工事について、お金に糸目をかけなければ簡単です。特にそれを低予算で行いかつ将来のリスクも増やさないためには、低予算で上手に問題を解決してかつ将来の問題も予防するために、専門工事業者により多くの事を考えてもらわなければいけないのです。 私達は、そこに敬意を払わなければいけません。

例えばそこでAという工事業者に一生けん命アイデアを考えてもらっても、相見積りと称してその見積書をB社に見せれば、B社はアイデアを考える手間時間も必要ないのだから、より安い見積書を出す事ができます。ただそれはそれはA社のアイデアとノウハウを盗んでB社に売る事と同じです。そんなモラルがない人の仕事を、誰がまともに考えて取り組むでしょうか。そうして周囲の信頼を失ない続ければ、ビルの維持が難しくなるのは、当然です。

更に言えば、相見積もりの背景には、「ぼったくられるのではないか不振」「相手を損させても自分だけは損したくない」という、業者不信の考え方があります。それでは、工事業者と良い関係を築き、低予算でかつ良い仕事をしてもらう事は難しいでしょう。

「相見積もり」は厳禁は、良い工事業者に経済的に良い仕事をしてもらう方法なのです。
3.15 工事請負契約の内容と補償・保証もよく理解しておく
工事請負契約締結に際しては金額及び支払時期、工事内容及び工事期間の確認はもちろんのことですが、発注側の重要権利として、
請負工事としての補償(賠償)対象及びその期間
工事の保証内容及びその期間

は必ず確かめておきましょう。また追加費用発生する恐れがあるのか、ある場合にはどのようなケースなのかも、事前に説明を受けておきましょう。

賃貸借契約書同様に、工事請負契約書も、トラブル解決マニュアルです。
3.16 工事は共同プロジェクトだが工事業者がリーダー
資本的支出対象の工事は、基本ビル資産所有者と工事業者の共同プロジェクトです。検討の段階では、ビル資産所有者がプロジェクトリーダーですが、工事請負工事契約を手帰結すると、その後は工事終了まで、工事業者がリーダーになります。

工事業者は工事請負として、工事期間中は自らリスクを請け負って工事をしてくれるのです。工事業者の工事取り組みに協力し、素人口出しで邪魔をしないようにします。
3.17 工事終了後
工事が終了したら、工事完了検査は必ず立ち会いましょう。 工事仕上がりについて気になった事は、遠慮せずにここで言っておきます。 図面、工事仕様書、説明書、保証の類の書面は必ず受け取ります。

■工事保証期間の終了前
大きな工事でかつ工事保証期間がある場合には、その終了の直前に、工事保証終了前点検をしてもらいます。(空調や消防設備といった「物」系はあまりやりませんが、屋上や外壁の防水等工事では、必ず見てもらいます。)
TOPに戻る

築30年以上中小ビル資産所有者・経営者・後継者の方の築古ビル維持と経営の問題、お困りごと、今後の見通し、将来の不安、賃貸、管理、工事、耐震、税対策、共有問題、承継etc 具体問題がまとまっていなくても構いません。現在ビル資産維持のための、問題対応と今後の見通しについて、 誰かと話をしてみたいとお考えの事をお話しましょう。秘密厳守。ご要望がありましたら、守秘義務誓約書を差し入れます。

お気軽にフォームお問合せ又は30分無料オンライン面談をご予約下さい