築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者のための
建物アセットマネジメントというと、売買や投資を思い浮かべる人が少なくありませんが、それは建物アセットマネジメントのごく一部です。築古ビルの寿命を延ばし、資産価値を失わないようにすること、つまり将来もビルの使用利益を得られるようにする事も、建物アセットマネジメントの一部です。そして築古ビル資産所有者にとっては、これが非常に意味があるのです。
建物アセットマネジメントを理解するには、まず日本の従来のビル経営・管理が、管理(プロパティマネジメント)であり、ビルが築古になると管理(プロパティマネジメント)だけでは限界がある事。それに対して建物アセットマネジメントはどのような意義で、どのように働くのかを一つ一つ理解する必要があります。
1.11 日本の従来ビル経営は、管理(プロパティマネジメント)
日本の従来のビル経営と呼ばれるものは、管理(プロパティマネジメント)です。
管理(プロパティマネジメント)の目的は、建物使用による年間収益の最大化です。(自宅・自用の場合は、賃貸した場合の賃料収入分が収入と考えます。)
そのために建物管理や収益ビルでは賃貸管理を行います。管理は、建物設備のどこかで故障が発生した/空室が出た、といった場合に、素早く工事業者/不動産屋(賃貸仲介業者)を手配して問題/空室を解消し、ベストな年間収益を守ります。
1.12 ビルが古くなると、管理(プロパティマネジメント)だけでは足りない
建物が築浅の間は、建物の問題が少ないので管理(プロパティマネジメント)だけで、構いませんでした。けれども建物が築30年を超すと、建物の問題が増えてきます。例えば、排水管から漏水事故が起これば、修繕工事で直します。この漏水事故が頻発するようになると、漏水事故を起こす排水管そのもののリニューアルが言われます。そちらは床をはがして復旧したりと、高額です。また該当フロアの横菅1本だけ交換するのか、全て交換するのか、の問題も出てきます。こうなると、管理(プロパティマネジメント)の考え方だけでは、高額工事は、年間収益が悪化するからやらない、又はよくわからないから「えいや」で工事業者の言いなり工事をしてしまうのです。
築古は、賃貸も難しくなります。募集賃料を下げないとテナントが入らないといわれ、さもなければ高額のリフォーム工事が必要と言われます。これも同じく、管理(プロパティマネジメント)の考え方だけでは、何もしないか、とりあえず賃料収入を守る事だけを考えて高額リフォーム工事を行うか、の両極端になりがちです。
1.13 建物の寿命を延ばす・資産価値を下げない工事は資本的支出
漏水事故を起こす排水管のリニューアルは、建物の寿命を延ばす工事です。建物の寿命を延ばす工事は資本的支出工事です。これはPLの修繕ではなく、BSの資産の部に入り、減価償却の対象です。だから金額が大きくても、単純に費用支出とは考えません。ただ、それが本当にビルの将来にとって必要な工事か(つまり費用対効果を産むものか)、今工事すべきかもう少し後でよいか、どの程度工事をすべきか(部分か全体か)といった事は、合理的に所有者が検討をして決めなければいけません。収益ビル賃貸のためのリフォーム工事についても、同じです。
こうした建物の寿命を延ばす・資産価値を下げないための資本的支出工事は、該当工事だけではなく、例えば建物全体で建物の寿命を延ばす工事にどの程度予算をかけられるか、が関わってきます。こうした事は、管理(プロパティマネジメント)では、考え方がわからないのです。
1.14 建物アセットマネジメントとは
こうした資本的支出工事を考えるのは、建物アセットマネジメントです。建物アセットマネジメントの目的は、建物の使用収益を継続させ、建物の資産価値を失わないようにする事です。建物は年々経年劣化をしていきます。建物の資産価値も年々減価償却で減少していきます。けれども建物使用利益の一部で、建物の寿命を延ばすための資本的支出工事を行い、その資本的支出工事が資産に加わり、レバレッジをかけて使用利益を産む事で、建物の資産価値を失わない事が可能です。建物アセットマネジメントは、このサイクルが上手くいくように、回します。
1.15 建物アセットマネジメントとプロパティマネジメント(管理)との関係
この建物アセットマネジメントとプロパティマネジメント(管理)の関係は、次の通りです。
1.16 築古ビルの管理・賃貸・所有問題解決は全て、建物アセットマネジメントが必要
別の言い方をすれば、建物アセットマネジメントは、次にご紹介するビル資産の3面性・収益ビル資産の4面性の全てを統括する事です。管理は各面の問題について、専門家/業者に相談をして、解決をします。建物資産所有者・経営者は、建物アセットマネジメントの観点で全ての面を見て、必要に応じて問題解決をコーディネイトします。
ビル資産には3面性、ビル資産経営には4面性があります。それぞれ担当する専門家/専門業者が違います。建物資産にかかる全ての問題は、この3面性・4面性が関わります。 建物が築浅で問題が少ないうちは、それぞれ個別に相談をして解決ができました。建物が築古になり問題が複雑化すると、ビル資産の3面性、ビル資産経営の4面性の全面を考慮した問題解決アプローチが必須です。
建物資産には「物」「数字」「権利」の3面性があります。しばしばお互いに関係します。いずれかに問題があると、建物資産を長く持ち続ける事が難しくなります。
2.11 ビル等建物資産の「物」面
「物」としての建物は、建物資産の主体です。
ビル等建物は「物」です。ただ実際は、躯体を中心に多くの建物設備機能や内装等「物」の集合体です。建物躯体は適切に保護されていれば長寿ですが、建物保護機能(塗装やタイル)を含めて建物設備機能や内装等の多くは、数十年で経年劣化していきます。
建物という「物」は、建物設備機能等の経年劣化に適切に対応をしなければ、やがて機能を失い、建物は廃墟になります。ただし経年劣化した建物設備機能はリニューアルが出来ます。人間で言えば、病気になった血管や内臓を交換しながら、永遠にでも生きるように、建物も存続続ける事ができます。
2.12ビル等建物資産の「数字」面
「数字」としての建物は、資産存続の条件です。
建物は使用経営の利益(数字)を産むから「資産」です。赤字(数字)が続ければ「負債」になります。土地も建物も持ち続けられなくなります。
建物が負債になる原因は2つあります1つは、経年劣化した建物設備機能等のリニューアル工事を適切に行わず、建物の使用ができなくなる状態です。それでも固定資産税や最低限の管理費が発生します。もう一つは、建物設備機能等のリニューアル工事にお金をかけすぎて、長期負債を作る事です。するともはや次の工事も出来なくなります。
2.13 ビル等建物資産の「権利」面
「権利」としての建物は、建物使用の利益を得るために欠かせないおのです。
「権利」としての建物の主体は、所有権です。付随して「契約で生じる権利義務」も含まれます。所有の権利に問題がない場合は問題ありませんが、issueがある場合は、早期解決が望まれます。
■ 所有の権利
ビル等建物の使用経営の利益を得られる理由は、所有の権利を持つからです。完全所有権であれば問題ありませんが、共有、区分所有権、借地または借家等の場合、それぞれ固有の問題が生じます。例えば古い建物延命に欠かせない資本的支出工事を行うにも、
関係者の合意が必要です。しばしば関係者の意見相違が感情問題に発展しがちです。特に共有はトラブルの元と言われます。解消をお勧めします。
■「契約で生じる権利義務」
「契約」は「数字」を守るために欠かせない権利義務です。
ビル維持に必用な管理や点検、工事等で第三者に仕事をしてもらう場合には、全て管理委託契約書や工事請負契約書等を締結します。単に支払金額を決めるだけではなく、契約書はトラブルの際の対応マニュアルにもなります。契約は口約束でも成立しますが、適切な契約書を作成する事で、トラブルによる損失を防ぐ事ができます。賃貸の場合は、賃貸借契約書に基づき賃料収入という「数字」が生まれます。こちらも賃貸借契約書を適切に作成する事で、賃貸トラブルによる損失を防ぐ事ができます。
いずれも弁護士丸投げではなく、自分自身の「権利・契約」として、主体的に取り組むべきものです。
収益ビル等収益を建物維持の原資とする建物資産は、上記建物資産の3面性に加えて、「営業」面が加わります。「営業」面とは、自分が賃貸リーシング営業をするという意味ではなく、自ビルの賃料収入をつくるために必要な全てを指します。
2.21 収益建物資産の「営業」面
賃貸は、「営業」です。通常自分では営業を行わず、不動産屋や賃貸管理会社、賃貸注記業者に営業代理をしてもらい、決まるとお礼に仲介手数料を支払います。
テナントとの関係は、賃貸借契約書で決まりますが、定価の存在しない賃貸マーケットでは、より良い賃料より相性がよいテナントを見つけるのは、全て営業手腕です。
収益ビル等建物の経営者は、商品(自物件)を、地域賃貸マーケットの中で物件を探しているテナント候補に選ばれるように準備(時に賃貸効果目的工事等を加える)し、選ばれ価格(賃料)をつけて、力のある営業代理人(不動産屋・賃貸リーシング業者等)に効果的に営業(賃貸リーシング活動)を行ってもらう事で、売れる(テナントが決まる)のです。
建物が新しい間は、営業代理人(不動産屋・賃貸リーシング業者等)にお任せでも良い値段(賃料)で売れ(テナントが決まり)ますが、経年と共に建物は築古となり、地域の賃貸マーケット環境も変わります。すると経営として、建物の「数字」面を考えて(どの程度の費用を投下するか)、「物」面に手を加えて(賃貸効果目的の工事)、目指す値段(賃料)で売れる(テナントが決まる)建物にしなければいけません。ここで無駄な工事をしないためには、何が効果があるか、営業目線で地域賃貸マーケット理解が重要になります。
築古ビルの問題はすべて、建物資産の3面性・収益ビル等資産の4面性の全面が関わると考えて、全ての面の問題対応を考えます。
問題対応アプローチは、同時にアプローチをする場合もあれば、時間差で順次アプローチをする場合もあります。
2.31建物資産の3面性問題解決アプローチの例
2.32 収益ビル資産4面性問題解決アプローチの例
→ はじめに:日本もストックの時代:時代が、建物資産を守り引き継ぐ時代に反転した
→ 日本の建物長寿化を実現する:自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕
→ 建物を延命し賃貸も継続する安定ビル資産経営
→ 築古ビル資産問題解決に欠かせない2つの視点
一棟築古中小ビル(一棟所有マンションも含む)資産所有者・経営者・後継者の方、現在ビル資産の長寿化は、まずビルオにご相談ください。管理会社や建設業者とは違う、自分の土地と建物資産を守る建物アセットマネジメントの視点で、低予算かつ将来リスクも高めない分散修繕の工事取り組みによる100年長寿化プラン作成、更に高効果で賃貸も継続する安定ビル資産経営、その他建物アセットマネジメント観点での賃貸、管理、建物、所有の問題解決、ビル資産管理会社の経営の助言等を、リーズナブルな費用で行っています。まず無料オンライン相談でお話をしましょう。ご要請に応じてご相談前に守秘義務誓約書を差し入れします。