中小ビルが無理なく100年存続するための

分散修繕とは

中小ビルを赤字を作らず安定して築50年を壁を壁を越えて長く持ち続ける世界標準の方法




目次
1.なぜ今分散修繕か
2.なぜ日本のビルは築40年弱で老朽化が言われるのか?
2.1.平成日本人の3つの間違い
2.2.長期修繕計画表では何が足りないのか?
2.3.リノベーション・大規模修繕・改修は何が違うのか
3.ビルが築40年をすぎると、本当のところ何が問題なのか?
3.1.建物設備機能の工事が多数必要になる問題
3.2.賃料収入が減少する問題
3.3.負のスパイラルに陥る問題
3.4.安定が保てなくなる問題
3.5.ビル所有者としての責任が果たせなくなる問題
4.分散修繕
4.1築古はシンプルビルに向かう
4.2責任の程度を決める 4.3安定というビル資産の価値が大切
4.4築古賃貸とシンプル工事のメソッドも重要 4.5分散修繕の背景を多角的に見る
補足:しかし日本は地震国だからビル維持は難しいのではないか?


1.分散修繕とは

ビルは本来長寿です。鉄筋コンクリート造ビルは、丈夫な躯体を生かして、建物設備機能や内装を時代に合わせて入れ替えながら、長く使用収益できることに価値がある建物です。

だから欧州や世界では、中小ビルでも築50年築100年は十分に現役です。築200年でも問題ありません。  

一方で日本では従来ビルやマンションが築40年も過ぎると建て替えが言われてきました。近年リノベーションが言われるようになりましたが、高額すぎて中小ビルには非現実的です。しかしコロナ禍は、突然賃貸需要に混乱をもたらしたのみならず、コロナ後の社会を考えざるを得ない結果となりました。働き方改革は進み、日本の人口減少による不動産需要減少及び一方で続く再開発ラッシュによる供給過剰は無視できません。先行きはあまりに不透明でもはや個人でビルを建替えることはあまりにもリスクが高い時代です。

日本はビル・マンションが築40年で老朽化建替えと言われてきましたが、それは人口と経済成長期だからできた贅沢です。しかし日本はすでに人口急減少と経済先行き不透明な時代に変わっており、もはや中小ビルの建替えは無謀です。



2.なぜ日本のビルは築40年弱で老朽化が言われるのか?

 
欧米や世界の中小ビルは築100年でも十分に現役です。なぜ欧米や世界の中小ビルは築100年でも現役なのに日本のビルやマンションは築40年で寿命と言われる理由は何なのでしょうか?


日本は地震国だからと言われますが、地震国という環境とビル寿命とは別です。多くの地域は大震災には被災しません。(この問題はまた後で触れます。)どのみに大地震国は日本だけではありません。

日本の建築基準法は厳しく、日本の建築技術は優秀なはずです。資産所有に対する税金が高いことは世界共通の悩みです。賃料収水準も日本は高めです。にも関わらずなぜ日本ではビル・マンションが築40年で老朽化建替えと言われてしまうのでしょうか?


2.1.平成日本人の3つの間違い

日本でビル・マンションが築40年弱で老朽化が言われる理由は、次の3つの間違いがあります。

  • 1に建物寿命と建物設備寿命の混同です
  • 2に投資手法と資産維持手法の混同です
  • 3に古き良き時代の考え方で思考が止まっている問題です


日本でビル・マンションの老朽化建替えが言われる場合、その多くは給排水管等の老朽化に対する建物設備改修費が高額であるといった理由です。平成時代は、古いビルに高額の改修費を投下するくらいならば、壊して新しく建替えた方が「お得だ」という理論で建替えが選択されてしまいます。確かに人口と経済が増大して不動産需要が拡大の一途だった時期には、より大きな建物に建替えることが合理的でした。
現在は人口と経済が縮小して不動産需要も縮小の時代に環境が変化しています。にも関わらず、壊して新しく建替えた方が「お得だ」で思考停止しています。建替えをしても本当にペイできるかどうかの見直しがありません。
給排水管等は交換できます。ところが建物設備の寿命と躯体の寿命とは別だという区別が育っておらず、一部の建物設備機能の老朽化に対して安易にビル・マンションが老朽化と言われてしまいます。
また例え老朽化した建物設備機能のリニューアルを考えても、 投資と資産維持の違いがわからず、社会的に建物設備機能リニューアルの経験とノウハウがないため、後述する高額なリノベーションや大規模修繕と大規模設備改修を検討してしまいます。そして古いビルにこのような「高額」の投資はできないと考えてしまいます。


そうして築50年の壁を超すことが難しいのです。



2.2.リノベーション・大規模修繕・改修は何が違うのか

一般に老朽化した建物設備機能を個別にリニューアルする計画として、多くのビル・マンションは建設業者等が作成した長期修繕計画表があります。ただその通りに工事をするビル所有者は少ないでしょう。一方で分譲マンションでは長期修繕計画表の通りに工事をしても、築40年前後で老朽化建替えと言われます。
ビルの長期修繕計画表には、次の章で述べる通り赤字にしないこと、家族への責任といったビルを維持する上で重要な点が考慮されていません。だから劣化した建物設備機能の更新の時期や、更新時どのように工事するか、更新後どの程度の機能性能スペックグレードにするかといった、実際の工事費用に大きく影響を与える重要判断の参考にはならないのです。 そこを補うのが、分散修繕です。



2.3.リノベーション・大規模修繕・改修は何が違うのか

日本では、従来古いビルの対応手法として、リノベーションや大規模改修・改修が言われています。これは何が問題なのでしょうか?

一度に問題を直すリノベーション・大規模修繕・改修は、中小ビルにはあまりに高額です工事のためにビルを「空」にすることも無理です。


実は「リノベーション・大規模修繕・改修」といった手法は、大きな資金を投資してバリューアップ(賃料アップ)を目指す不動産投資の手法です。投資はリスクを取れる人が投資機会がある時に行うものです。一般には大資本が行う手法です。欧米や他国でも、投資による資産拡大意欲がある人は別にして、普通の資産所有者がそのような手法は安易に使いません。


平成日本で経済的な建物設備更新のノウハウが育たなかった理由は、大資本の投資手法と一般の資産所有向け手法との区別がつかず、また欧米や世界のビル所有者とコミュニケーションができないため、一般の中小ビル所有者の手法が学べていません。そこでご紹介をするのが、分散修繕です。




3.ビルが築40年をすぎると、本当のところ何が問題なのか?

 

鉄筋コンクリート造ビルが40年をすぎると本当のところ何が問題なのでしょうか?

  1. 建物設備機能の工事が多数必要になる問題
  2. 賃料収入が減少する問題
  3. 負のスパイラルに陥る問題
  4. 安定が保てなくなる問題
  5. ビル所有者としての責任が果たせなくなる問題

3.1.建物設備機能の工事が多数必要になる問題

多くの中小ビルでは、築40年まででも屋上防水工事や給水ポンプの交換、消防設備や空調設備の交換工事は何らか経験をしてきているでしょう。築40年を過ぎると、(ビルによっては遅い早いがありますが)
特に

  • エレベータ更新
  • 給排水管の更新 (時に給水方式の変更を含む)
  • 電気幹線の更新 (時にキュービクルの交換を含む)
  • 外壁補修及び防水工事(時に看板、サッシ他を含む)

等、高額または難度が高い工事が目白押しになります。こうしたビルの基本インフラは、ビルの使用に欠かせないのみならず、劣化が時に重大事故を引き起こすため、経年劣化を放置することはできません。

同時に賃貸も築古と扱われて難しくなれば、時代の要求に合わせた建物設備機能の追加や、内装の改装工事が必要になります。

分類 対象例 性質
基本インフラ
給排水・電気・外壁補修等

•多くは40年~に一度
•完全所有者責任
•高額・難度高い

保守対象
消防設備・エレベータ・キュービクル・機械式駐車場等

•点検で問題指摘はうけられる
•抱え込み業界
•更新は見直し機会

付加価値
空調・セキュリティー・災害対策等

•営業が盛ん
•10-20年で劣化
•最新の変化が早い

内装等
室内内装、トイレ給湯室、エントランス改装等

•格安:DIYでもできる。
•安い:内装業者に指示すれば人足材料費
•高い: 建築士等のデザインが加わると高額になる


3.2.賃料収入が減少する問題

一般的に新築信仰があるといわれる日本では、築40年を過ぎたら築古と言われて賃貸が難しくなると言われます。単純に古いから選ばれないことはありませんが競争力が下がるため、成約賃料は新築よりかなり下がります。経年による汚らしさ、清潔感の低下、時代の要求に対する機能不足が出てくるため、これらをどのように対応するかによっても成約賃料は違います。ビルの賃貸マーケットでのポジションは経年とともにゆっくり下がりますが、ビルの方は満室の間は元の賃料が続くため影響を受けず、10年ぶり20年ぶりに退去があると、その後の成約賃料がガタンと大きく下がって驚くことになります。


3.3.負のスパイラルに陥る問題

賃料収入が減少すれば、賃料収入減少の不安があれば、建物設備機能等の工事ができません。工事ができなければ更に賃料収入が減少します。ビルのトラブルが増えれば更に賃貸が難しくなります。そうしてゆっくりとビルの資産価値が下がっていく負のスパイラルに陥ります


3.4.安定が保てなくなる問題

「安定」はビル資産価値の本質です。ビル資産の本質的な魅力は、最初に大きな「投資」を行えばその後は100年でも200年でも社会経済情勢や環境・条件に関わらず責任を持って「安定」収益資産として収益を維持できることです。更にはその時々の社会経済情勢や環境・条件に応じて「投資」と「安定」を使い分けられることです。

ビルが古くなると、この3つの安定を保つことが難しくなります。するとビルを維持することが難しく感じるようになります。


3.5.ビル所有者としての責任が果たせなくなる問題

ビル所有者には3つの責任があります。

なぜ建物設備が老朽化したら、更新工事が必要なのか?なぜ排水管の漏水が続くと放置ができないのか?なぜ外壁が経年劣化で剥離しそうになったら放置できないのか?それはテナントに迷惑をかけるわけにはいかないからです。ビルが事故を起こすわけにはいかないからです。家族に対して価値ある収益資産の収益資産価値を維持して、受け継ぐ責任もあります。赤字を垂れ流す負債化するわけにはいきません。 ビル所有者はこの3つの責任を保つために、安全の4ルールを全て常に守る必要があります。

いずれが無理になっても、ビル所有を続けるのが難しいことは、自明です。




4.分散修繕

こうした築古ビルの問題に分散修繕はどのように解決するのでしょうか?


分散修繕は、経年劣化した建物設備機能の更新や賃貸維持のための改装工事等ビルの使用と賃貸の継続に欠かせない工事を、一つ一つ分散して行う方法です。中小ビルが分散修繕を行うためには、画と賃貸力、工事力が必須です。


リノベーションや大規模修繕等が、多額の資金を投下して全ての問題を解決し、新築同様にバリューアップする投資手法であるのに対して、分散修繕は、比べて少しずつ資金を投下し問題をひとつずつ解決し、ゆっくりと築古賃料水準に見合ったシンプルビルへと向かう安定収益資産所有の方法です。分散修繕は、リノベーションと真逆です。

問題を一つづつ解決する分散修繕の取り組み方は、一見今までの問題が出たら修繕をする修繕対応と違いがないように見えます。けれどもそれでは負のスパイラルに陥るリスクを逃れることができません。責任を保つことが難しくなります。

そこで分散修繕に欠かせないのが計画です。計画といっても、いつ何の工事をするとToDoを決めることとは違います。建設業者の作成する長期修繕計画でもありません。ビル所有者が心の中で思っている計画とも違います。


分散修繕の計画とは、将来のシンプルビルの姿をイメージしておくためのものです。そこに向かう途中に何の工事にいつ頃いくらの予算が見込まれるか、事前に認識するためのものです。  

リノベーションや大規模修繕・大規模設備改修といった大きな建設プロジェクトでは建築士が仕上がりをバランスよく設計してから工事に取り掛かります。極力費用を抑える分散修繕では、将来のイメージをビル所有者が描きます。と言ってもゼロから設計するわけではないので、難しくありません。計画を通して次の4つを考えます。

    
分散修繕計画の作成
  1. 築古はシンプルビルに向かう
  2. 責任の程度を考える
  3. 安定というビル資産の価値を大切にする
  4. 築古賃貸とシンプル工事のメソッドを持つ


4.1築古はシンプルビルに向かう

分散修繕の重要なルールが、


分散修繕では、ビルの今後の賃料収入に合った工事を行う。


です。つまり築浅時と比べて賃料水準が下がる築古ビルは、下がる築古賃料水準に合わせてシンブルビルにして工事費も減らします。これはリノベーションや大規模修繕及び大規模設備改修が、多額の投資をして新築同様のハイスペックを回復してバリューアップを狙うのとは真逆の発送です。

賃料が安い築古ビルに、誰が新築Aクラスと同じ水準の設備機能や豪華さを求めるでしょうか?ビルが築40年をすぎると建物設備機能の工事が多数必要になることはすでに述べた通りですが、シンプルビルに向かうにあたり分散修繕では、

  • 新築時にはあったけれどシンプルビルには必要のない設備機能は廃止する
  • 経年劣化した設備等更新で、従来より機能スペックグレード等を下げたものに更新する
  • DIYでできることはDIY等で済ます

等断捨離を行います。  

もちろんシンプルすぎてテナントが入居しなくなれば論外ですから、何を断捨離すべきかは、今後の賃貸方針によって決まります。また賃貸を続ける上で時代の要請として新しく加える機能設備も一方であり得ます。例えば近年では電気容量の増加や防犯防災対策への意識が高まっています。


4.2責任の程度を決める

ビル所有者の3つの責任のうち、建物に対する責任及びテナントに対する責任は第三者に対する責任です。だから、特に気を付けたいのは当然です。とはいえ現実的な予算の中でできることには限界があります。大震災が怖いとはいえどの程度の大震災でも100%事故リスクを排除することは、新築ビルでも不可能です。またセキュリティが大切だからといって、全館認証システムを古い中小ビルに導入することも非現実的です。

ビルが築40年を過ぎて築古になると、築古ビルとして安全、衛生の水準の責任範囲をどの程度とするかは、ビル所有者が考えなければいけません。この水準が次の判断を決めます。

  • 建物設備機能の経年劣化に対していつ頃更新を判断するか
  • 内装や共用部の劣化に対していつ頃改装を判断するか
  • ビルの安全・衛生維持のための建物設備機能スペックグレード等にどの程度お金をかけるか

例えばエレベータを更新すると一言言っても、安全を考えれば早ければ早いほど安心ですが、長期的には20年毎に更新するのと50年で更新とでは、費用に何倍も差がでます。また法定のデフォルト機能に加えて地震やトラブル時の付加機能等やバリアフリー 機能をつければもちろん安心ですが、一回の更新費用でしばしば倍以上の差ができます。

安全・衛生は「気持ち」でやるもではなく「安定」と「バランス」が重要です。安全・衛生は、一部は安全・衛生レベル10だけれど別のところは2。ある時は10だけれどある時は2。ではトータルで結局2になります。2を作るより、6なら6で安定維持できる水準を決めて維持することが、本当の責任です。


4.3安定というビル資産の価値が大切

分散修繕の最大のメリットは、賃貸の安定、建物設備機能状態の安定、経営の安定を全て維持できることです。これはリノベーションや大規模修繕・大規模設備改修ではあり得ません。また計画のないビル維持でも困難です。分散修繕では、賃貸の安定、建物設備機能状態の安定、経営の安定を全て維持できますが、それは、賃貸の安定、建物設備機能状態の安定、経営の安定を全て維持ができるように計画をして分散をするから、安定を維持できます。  


責任でも述べた通り安定は信頼です。

分散修繕は、基本的にテナントがビル使用を継続したまま給排水管や電気幹線といったインフラ設備も含めて必要があれば更新をします。ただ100年のライフサイクルで1回あるかないかですから、しっかり段取りを組めていれば、それほど大きな迷惑はかけません。


4.4築古賃貸とシンプル工事のメソッドも重要

分散修繕では、築古賃貸とシンプル工事のメソッドを持つことも重要です。

「分散修繕では、ビルの今後の賃料収入に合った工事を行う。」と言っても、古いビルに賃貸は無理だと考えれば、何もできません。ビルが古くなり将来的にどの程度の賃料収入となると考えるか、実際にどの程度の賃料収入になるかは、その間のビル所有者の賃貸方針と実際の賃貸力で決まります。計画時にはどれだけビルにポテンシャルあがっても、不動産屋の言うままに賃料を下げたり空室を長期化させたりしてしまえば、マイナスのスパイラルに陥ってしまいます。
また工事に際しても、実際の工事にかかる費用はビル所有者の工事力によって異なります。いくらビル所有者がシンプル工事と考えても、それを業者に伝えることができず安全やサービス水準が高い高コスト工事になってしまったり、問題解決のための適切な業者を選ぶことができず何度も何度も問題が再発して都度工事をしていては、予算もなにもあったものではありません。

    
築年数に依存しないマーケティング賃貸

    
分散修繕のシンプル工事メソッド


4.5分散修繕の背景を多角的に見る

分散修繕で、赤字にならないように「事故を起こさない、建物設備機能を維持する、賃貸を維持する」を安定して保つことができます。その理由のうちの3つを見てみます。

分散修繕は自立した分散修繕の輪を作る

分散修繕は、自立した分散修繕の輪を作ります。自立したとは、外部から資本を入れないことです。上手な分散修繕は、ビルがあちこち問題だらけの状態にはしません。1つの建物維持機能の劣化に対して、他も劣化して対応工事が必要になる前に、対応をします。だからビル全体では、一定水準で安定を維持できます。別の言い方をすれば、ビルの資産価値の減少がわずかのうちに投資にレバレッジをかけて元の安定した輪に戻します。一定の回転速度があるコマが安定して回り続けるように、ビルが安定維持を維持続ける間は、賃貸を継続して賃料収入も継続します。

資本的支出として減価償却ができる

ビルの建物使用寿命を伸ばす工事や賃貸寿命を伸ばす工事は、会計上資本的支出として扱われ、減価償却の対象となります。だから分散修繕対象の工事を行っても、会計上修繕費として収支を大きく変化させることなく、安定経営を維持できます。また常に一定の減価償却ができるため、資金に余裕ができます。

ビル所有者が自分で決めることができる

分散修繕の特徴は、何の工事をするか、どのように工事をするか、ビル所有者が決められることです。もちろんこれは好き勝手にしてよいという意味ではなく、ビル所有者が経営できる自ビルの未来を描き、その実現を専門業者と相談ができるということです。リノベーションや大規模な設備改修といった大きな工事では、複雑すぎてビル所有者が工事の内容を確認することはほぼ不可能です。分散修繕では工事が単独で小さくなるため、ビル所有者も工事の内容を、確認することができるようになります。


補足:しかし日本は地震国だからビル維持は難しいのではないか?

欧米と違い日本は地震国だからビルの寿命が短いのでは、という声をしばしば聞きます。しかし地震国であることとビル寿命は別の問題です。またビルの駆体倒壊リスクと内装・外装・建物設備の劣化もしくは地震対策不足で事故が起きることは別の問題です。  

ビルの駆体倒壊リスクに関しては、 環境リスクとして地域の大震災被災確率、立地の激震地確率、立地の土壌が弱い確率の3つがあります。
ビルのリスクは、建物躯体の耐震性及び外壁落下や火災等2次的事故の確率です。

建物躯体の耐震性に関しては、旧耐震基準建築イコール耐震性がないわけではありません。地震国である日本では、ビル・マンション建築時に建築物の設計段階で、地震に対する建築物の耐久構造が一定規模の大地震でも倒壊せずにいられることを確認します。この確認基準が、旧耐震基準では震度5強程度でしたが、昭和56年(1981年)以降の新耐震基準では、震度6以上になりました。 しかし旧耐震基準では震度5程度の地震で倒壊せずにいられることを確認しているだけで、震度6以上でも倒壊しないように設計されている建物も少なくありません。昔のビルの方が、建築士がよく考えて設計されている例も少なくないのです。

旧耐震基準建築物であっても、耐震診断を受けて新耐震基準と同等の耐震性があることが証明できれば問題ありませんが、現在のところ耐震調査は信頼性が低い問題があります。昔のビルの構造設計書など残っていないか、残っていても手書きで読めない場合が多いのだから仕方がありません。理由がない限りお勧めしません。

一般に耐震性で重視したいのがビルの形状です。まず正方形に近い形ほど揺れが少なく、変形がある場合は揺れの方向により弱点があります。フロア構造が下駄履き建物と言われる、1Fに中柱のない広い駐車場スペースがある場合や下層階に中柱のない広いオフィススペースがある場合は支柱を入れることをお勧めします。あとは過去の大きな地震での被害の有無も参考になります。東京であれば震度5弱の地震は何度か発生しているため、耐震性が低いビルはすでに亀裂等トラブルが見られるはずです。

ビルの倒壊以外の事故リスクは、分散修繕の対象です。ビルの安全水準に合わせて対応します。例えば:外壁等落下や天井落下、外階段剥離、とじこめ、火災等です。



赤字を作らず100年維持する中小ビルの分散修繕