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はじめに:人口激減時代日本の持続可能な古い建物維持と持続させる街づくり

日本は今まで人口増加基調でした。建替え・開発は「利益」でした。けれども人口激減時代に突入した今、一人一人の個人にとって現在建物と街の維持こそが、持続可能であり「利益」です。まずこれを認識しましょう。

1どうして日本人は建物が古くなるとすぐに諦めるのか?

日本では、ビルやマンションや戸建て住宅が築40年過ぎと聞くと、老朽化だ、もう寿命だと考えます。そして自分で建替えるか、建替え用に売却をするか、それができなければ、負動産だといった嘆きます。 もちろんリノベーションや大規模改修工事等ソリューションはありますが、あまりに高額すぎます。どのみに古い建物にお金をかける価値がないと考えては、何の工事もしません。どうしてそうなるのか、少し歴史を紐解きましょう。

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1.1 日本人の土地神話:有史以来日本の人口は増加基調だった

日本人といえば土地神話。土地があれば、いずれ開発されて利益を得られるという考え方です。日本人は有史以来、人口増加基調です。(江戸時代は停滞気味でしたが。)人が増えれば、より多くの農作面積や住居が必要になりました。だから歴史的に、「開拓、開墾、町の拡大」が基本の流れでした。そしてそれは、価値がなかった荒地・森林・湿地が農地や街として使用価値を産むようになる。」富の創造を意味してきました。

出展:日本の長期人口推移と予測(国土交通省「国土の長期展望」)

1.2 日本で大型宅地開発やビル・マンション等建設やが一般化したのは、高度経済成長期以降

現在の日本の街のほとんどは、昭和後半の高度経済成長期に形作られています。多くの宅地が開発され、また街では鉄筋コンクリート造のビル・マンションが建てられるのが当たり前になりました。その流れは80年代バブルで加速をしました。つまり数十年~70年の歴史しかないのです。

出展:オフィスピラミッド2024東京23区(ザイマックス不動産総合研究所)

1.3 昭和後半の日本は人口急増・経済急成長・生活水準向上の3歯車で街の再開発と宅地開発が激増

この時代に日本の街の風景がガラリと変わった理由は、昭和後半の日本は人口急増・経済急成長・生活水準向上の3歯車で良質な建物需要が激増したからです。単に人口が増えただけではなく、農村部から都市部への人口流入、経済成長に伴う生活水準の向上による木造建造物から良質な鉄筋コンクリート造等建物への流入もあり、未曾有の(従来木造建造物より居住性が遥かに向上した)鉄筋コンクリート造ビル・マンションや新素材建築住宅への需要増大があったのです。

1.4 4者WINだった都市再開発法の再開発モデル

この急激に高まる鉄筋コンクリート造ビル・マンションや新素材建築住宅への需要に応えたのが、昭和43年制定の都市計画法及び昭和44年制定の都市再開発法です。特に都市部や主要駅駅前は、戦後急いで建てられた狭小木造建物が密集して、火災や震災リスクも高い状態でした。だから確かに再開発の必要性はあったのです。

都市再開発法の再開発モデルは、4者WINです。土地をまとめて大きな建物を建てる事で、増えた保留床を処分する事で建物建設費を賄い、地権者は経済負担無しに資産価値が増加します。行政も街問題が解決します。デベロッパーも儲かります。駅前等がきれいになる事で人を引き寄せ近隣の需要も増加し近隣地価も上がるります。バラ色のWIN-WIN-WIN-WIN法です。(地権者-デベロッパー ‐行政-街)こんな美味しい話はありません。

ただしこれは需要が激増する経済成長期にだけに通用するビジネスモデルです。

1.5 日本人が狂った80年代不動産ファンドバブル時代

この都市再開発法モデルが暴走したのが、80年代不動産ファンドバブルでした。この時代は、大きな再開発用地を求めて、札束が飛び交いました。多くの宅地が造成され、都市部では、土地にビルを建てるだけで、不労所得の賃料収入で左うちわと言われました。

80年代バブルが崩壊した後、日本は失われた30年が更に延長しています。考え方を変える事ができず、現在に至っています。

1.6 定着してしまった「古い建物には価値がない」「街づくりとは再開発」観

このように昭和の人口激増需要激増時代に、都市部では建物の建替えや再開発が促進され、また郊外ではデベロッパーと行政による街づくりが推進された結果、再開発を推進したかった政府やデベロッパー行政のプロパガンダもあり、日本人は、
「古い建物には価値がない」→建替えや再開発が必要
そして「街づくり=再開発」という価値観が定着してしまいました。

1.7 どうして日本人は建物が古くなるとすぐに諦めるのか?

つまり日本人では、昭和戦後の人口激増と経済成長時代の「建物は古くなると修繕をするよりスクラップアンドビルドがお得」価値観が定着してしまったのです。

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2 時代が反転して、もはや成長モデルは通用しなくなった

\ ところが日本の人口は既に激減基調に反転をしました。昭和の激増時代と同じペースで人口が減少していき、更に少子高齢化が進行して特に労働人口の減少が顕著になります。後60年もすれば日本の人口は半減します。その後も減少を続け江戸時代人口水準に戻ります。

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2.1 時代は人口激減に反転をした。経済も縮小する

人口が激減をすれば経済も縮小します。世界には人口が少ない経済大国がいくつもありますが、日本はそうした経済体質ではありません。また近年のハイテクビジネスでは、完全にアメリカどころか中国、インドの遅れを取っています。2075年にはGDP10位から落ちる事が予測されています。

2.2 歴史上初めて、不動産需要が激減する時代になった

人口激減と経済縮小が意味する事は、日本が、有史上はじめて、将来に向かって、土地や建物の需要が減少していく時代になったと言う事です。 今までは、「開拓、開墾、町の拡大、再開発」が富の象徴でした。けれども、それらが難しいどころか、既に「開拓、開墾、町の拡大、再開発」されて現在ある土地や街が、需要がなくなくなり縮小され、土地の価値が失われていく時代なのです。

2.3 建設費の高騰と金利の上昇

また現在、昭和の感覚で建物の建替えを考える際に無視できない要素に、建設費の高騰と金利の上昇があります。つまり、建替え費用を回収する期間が、非常に延びているのです。個人レベルで建替えは現実的な選択しではなくなりつつあります。

2.4 このような時代に、日本全国多くの建物が築40年前後またはそれ以上になりつつある

この需要面でも費用面でも建替えが現実的ではなくなりつつある時代に、現在日本では高度経済成長期に建てられた建物が築50年を超えるようになり、一番ぼりゅーぷが多い80年代バブル時代に建てられた建物も10年もすればみな築40年を超すようになります。 従来の考えでは、建物築40年築50年というと、寿命建替えでした。けれどももう建替えが成り立たない時代です。

2.5 無理に建替え投資をするとどうなるか?

建替えは投資です。この人口激減時代に無理に建替え投資をすると、どうなるでしょうか?収益ビルで考えてみましょう。 新築時こそは、新築プレミアムでテナントも入るでしょう。ただし賃料相場はその時の相場の波次第です。そして、10年20年と先にいくほど需要が減ります。入居テナントがいるかどうかは、より立地やプロパティマネジメント手腕が重要になるでしょう。しかしまだ建替え費用回収も終わっておらず、借入金返済も終わっていません。経営は厳しく、持ちこたえられなければ銀行に召し上げられます。

2.6 にも関わらず国は昭和の延長でひたすら再開発を推進する

ところが日本の政府は、、岩盤規制を打ち砕くと称して2011年に特区法を制定し、より高層ビル・高層マンション再開発がしやすいようにしました。結果、東京をはじめ日本全国の都市で、高層ビル・高層マンション再開発が盛んです。そのほかマンションの建替えや街づくりと称する再開発が行いやすいように、既存法令を改定したり、地域の法令を作っています。 しかしこれらはいずれも、単に建物修繕費の先送りです。それも人口半減の60年後世代に、数倍大きな高層ビルの修繕費を押し付けるのです。 高層ビル使用者がおらず維持ができなければ、街を捨てるしかありません。

2.7 完全に無策な日本全国の街々

更に日本の政府の問題は、都市部高層ビル再開発地区以外の街の残り、地域、市区町村地域以外の地域に対して、完全に無策な事です。 建物維持の概念が希薄な日本では、古い市街地や住宅街で、手入れされない老朽化建物が増えつつあります。既に売れなくなった親の家を称して、負動産という言葉さえ、一般になりつつあります。過疎地では、町じまいや、スモールシティー化が言われます。日本人は、資産を失う事を従順に受け入れています。

2.8 100年もすれば廃墟の街か?土地の価値がなくなるのか?

人口が半減どころか更に激減する100年後、街はどうなっているのでしょうか?日本全国どこもかしこも廃墟の街だらけになるのでしょうか?そしてその土地の価値もなくなってしまうのでしょうか? 100年後など、自分は関係ないと思われるかもしれません。けれどもそれは自分の孫やひ孫が直面する事です。土地や街の事は、100年単位で考えるべきものなのです。

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3 どうしてヨーロッパや世界の街では、古い建物を未だに使用続けられているのか?

ヨーロッパの街の話をすると、日本人は日本とは違うと考えがちです。もちろん文化背景も気候や土地も違います。ただ「土地の上に建つ建物」「街を構成する建物」は、洋の東西を問わず変わりません。そこには全世界共通な普遍的価値観があります。

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3.1 建物の経年劣化に対して必要な工事をしているから古い建物を長く使えている

ビルの本場ヨーロッパをはじめ、日本以外の世界中の国々では、中小ビル・マンション・住宅は築50年はおろか100年200年を過ぎても普通に使用されています。どうして古い建物を使えるのか?その理由は簡単です。経年劣化に対して必要な工事を行っているからです。

3.2 建物の寿命という概念がない

そもそも、ビルの本場ヨーロッパや世界では、建物に寿命という概念がありません。建物の躯体は丈夫です。建物設備や見た目は経年劣化しますが、経年劣化した建物設備のリニューアルを繰り返し、内装や外壁を綺麗にし続ける事で、建物はいくらでも長く使用を続けられます。だから寿命という概念がありません。 日本でも、古い寺社や町屋、江戸時代の豪邸等、時々工事を行いながら現在も使用を続けている建物は沢山あります。それが、普通なのです。

3.3 建物は「物」ではなく「資産」と考える

ビルの本場ヨーロッパや世界の建物所有者達が、どうして建物の寿命を考えず修繕等工事を繰り返しながら建物を長く使用を続けるかといえば、建物をいずれ朽ちる物ではなく、土地の価値を実現して使用の利益を産む「資産」と考えるからです。 建物は使用の利益を産む「資産」と考えるから、「資産価値」を守るために、適度に建物の寿命を延ばすための工事(資本的支出工事)投資を行うのです。そうして建物資産を守り、使用を続けているのです。

3.4 大資本とは異なる一般の建物所有者の考え方

もちろんヨーロッパにもリノベーションや建替え、街の再開発はあります。ただそれは都市部等で大資本がやる事です。大資本は機を見てハイリスクな高額投資でハイリターンを狙います。 これに対して街の建物資産所有者の考え方は違います。ハイリスクで資産を失っては元も子もありません。だから極力低リスクで土地と建物資産を守る事を第一に考えます。社会経済には波があります。良い時代もあれば悪い時代もあります。この悪い時代に資産を失わず、守りぬく事が重要なのです。投資がしたければ、建物が生む利益を元手に、その時々で機を見て機会がある投資をすればよいだけです。 日本人のように、50年毎に建替え投資をしていては、誰も建物資産を長く持ち続ける事はできないのです。

3.5 建物長く使う理由は、その方が「利益」だから

結局建物を長く使う理由は、それが「利益」だから、に他なりません。 一度大金とリスクを投じて建てた建物です。例え新築時よりは利益が減り、時に修繕等の工事費用もかかれども、さほどのリスク無しに安定した使用利益を得続けられるのです。

長い目で見れば、最初の建築投資に対する積み上げリターンは莫大です。建物は長く使う方が「お得」。だから建物を長く使うのです。

3.6 工事はケチに、でも必要な事は適切に行う

ヨーロッパ(に限らずですが)の資産家はケチという言葉がある通り、ヨーロッパの建物所有者達は、建物工事費用の削減に非常に熱心です。家のDIYに熱心な人は大勢います。ほとんどの建物工事や内装工事を自分でやり、どうしても必要な工事だけ職人さんを雇います。業者に仕事を依頼する場合でも、業者の選定や工事内容の詰めに、遠慮なく時間と手間をかけて検討をします。 伝統的に、建物には時に工事が必要な事を知っています。だから後はいかに工事費用を抑えるか、そのノウハウが伝統として定着しているのです。

3.7 街に調和させる理由も、その方が「利益」だから

またヨーロッパの街の古い建物は、街に調和する外観を維持します。住宅街では、どの家も庭も玄関も常に綺麗に手入れされています。 自物件を含めて各建物の集合が街であること。街の魅力が人を惹きつける事。それによって自分の土地と建物/自宅の資産価値が生まれる事。を住民の一人一人が理解をしているからです。だから建物の外観にも気を配り、街に調和するように建物外観を維持します。そして街も、街の美観を守るための様々なルールを作っています。街の魅力は街の一人一人の取り組みの成果なのです。

3.8 大量の産業廃棄物を排出する建替えは、環境破壊

また安易に建替えを行わない事は、環境保護でもあります。もし石造建築文化のヨーロッパの街で、建物を日本のように40年50年単位で建替えをしていたなら、今頃既にヨーロッパは資源は枯渇して産業廃棄物の山になっていたでしょう。 いずれ朽ちる木造建造物と違い、鉄筋コンクリートは石造建造物の流れです。建物躯体も建物設備も、破壊をしても産業廃棄物として永遠に残り地球を汚します。だから、よほどの事情が無い限り、建替えを安易に考えたりはしないのです。

3.9 建物は長く使用利益を産む価値ある資産、ただ実現するのは所有者の責任

建物は、躯体と建物設備機能の集合です。躯体が丈夫でも建物設備機能は確かに、築40年前後で相当に経年劣化します。ただ建物は、人間でいえば劣化した血管や皮膚を何度でも取り換える事で、長く生き続ける事ができます。 問題は、その工事取り組みの方法です。日本のように建設業界・建築士に依存をした高額のリノベーションや大規模改修工事投資では、やはり負債化してしまいます。 一般の建物資産所有者は、低予算低リスクな分散修繕が一般的です。 長く使用利益を産む価値ある資産である建物を、負債化させずに利益ある資産として維持できる予算で必要な工事を行い、長く使用利益を産む価値ある資産としてその価値を実現するのは、所有者の自己責任なのです。

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4 私達日本人も、建物も資産として長く維持すべき時代

私達日本も、人口激増経済高成長で自然に需要が激増し、ほっておいても地価が右肩上がりで上がる時代はとっくに終焉しています。もう反転して、需要は激減し、多くの地域でほっておけば地価が右肩下がりに失われてゆく時代です。

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4.1 需要減少で負動産になる事は、仕方がない事ではない。

日本人は、これを仕方がないと諦めがちです。既に都市部で再開発ができないからと、手入れの行き届かない築古ビル・マンションが増え、寂れた中心街や商店街が放置されている地域が多くあります。また、住宅街で売れなくなった親の家が負動産とまで、言われるようになっています。

これは仕方がない事ではありません。私達日本人も、まだ建物を資産として考える事で、ヨーロッパや他国のように、建物が古くなっても負債にならない、街が廃墟にならない、選択肢があるのです。

4.2 建物の資産価値は、「自分」で守る事ができる

建物が建つ土地の価値は、実は「自分」である程度守る事ができます。

地域の需要で決まります。その土地を使いたい購入希望者が多ければ多いほど、地価は上がります。だから地域に需要が無くなれば、地価が下落するのは当然です。ところが世の中はそう単純ではないのです。土地の上の建物は、土地の価値を実現する資産です。そして土地の上の建物に使用経営の利益がある限り、その土地と建物は資産価値を失いません。それは、現在の不動産鑑定評価額が、収益還元法(DC法)で評価される事からもわかる通りです。土地の上の建物が生き続ける限り、その土地も生き続けるのです。

4.3 需要減少時代に、土地と建物の資産価値は、「自分」で守るもの

日本は、需要激増で地価右肩上がりの時代が続いたため、今まで建物の資産価値を「自分」で守る事ができようができまいが、特別考える必要はありませんでした。 けれども需要が減少して土地の価値が失われていく時代に向けては、そんな事は言ってられません。これからの時代、せっかく投資をして建てた現在の建物を資産として維持し、資産として後世に引き継ぐか、廃墟として負動産、建替え負債を後世に押し付け後世が負債の始末と自分の家をゼロから確保する負担とで貧しくなるか、その2択しかないのです。

4.4 現在建物を諦める事と100年超使用利益を得る事と、どちらが利益かは自分で考える事

日本の社会には、昭和時代にどんどん建物を建て、再開発や宅地造成で潤ってきた業界が沢山あります。建設業界はもとより、不動産業界や金融機関、そこと通じている税理士等やそれで、街作りができた市町村区も含めてです。営利目的営業プロパガンダとして、当然のように「不動産の事は不動産屋へ」「建物は築40年過ぎて寿命」「旧耐震基準建築は建替え」「リノベーション」等々古い建物は建替えをしなければいけない刷り込みがあります。 でも私達は、自分の頭で時代背景と街の将来を考えて、現在の建物を諦める事と、古くても適切に手入れをしてヨーロッパや他国のように現在の建物を100年超使用続ける事と、どちらが自分にとって利益か、自分の頭で考えなければいけないのです。

4.5 需要減少時代に、土地と建物の資産価値は、「自分」で守るために何が必要か?

もちろん個人で出来る事には限度がありますが、土地と建物の資産価値は、所有者が守る事ができます。街との関係については、次の5でお話しますが、まず建物所有者として、自分の土地と建物を負債にさせないためには、所有者として次を変わる必要があります。

4.6 建物は資産と認識する

建物は物ではない。建物は資産。と認識する事です。 建物は土地と一体で土地の価値を実現する資産です。家が古くなると土地ごと売却の話がでるように、建物資産を維持できなければ、土地資産も失うのです。

4.7 建物資産は、BSの資産

資産とは、BSの資産です。日本人は資産認識がないため、PLだけを考えて、建物工事や相続税といった資産維持に必要な費用をすべて支出と考えてしまいます。そして支出を減らすために、色々考えだします。

けれども建物は、使用経営の利益を産むBSの資産です。これはBSの資産は、(建物資産の寿命を延ばすための工事である)資本的支出工事で資産価値を維持できます。資本的支出工事は、PLの費用ではなく、BSの資産として計上され減価償却の対象です。またBSを考えると、負債とのバランスも重要です。

4.8 古い建物資産を負債・産業廃棄物にするか資産価値を守るかは自分次第

建物は、躯体と建物使用に必要な多くの建物設備機能の集合体です。箱ものとも言われますが、箱では使用できません。建物の躯体は丈夫ですが、多くの建物設備機能は、順次経年劣化していきます。そこで何もしなければ、廃墟となって負債化し、遅かれ早かれ産業廃棄物です。

けれども、経年劣化した建物設備機能を適切にリニューアル続ける事で、建物は資産として使用を続ける事ができます。人間でいえば、血管や皮膚を交換しながら、永遠にでも生き続けられるのです。

4.9 必要なのはリノベーションではなく、最低限の工事知識とリテラシー

ここで「経年劣化した建物設備機能を適切にリニューアル」というと、日本人はすぐに建設業界ソリューションである、リノベーション工事やリフォーム工事を思い浮かべますが、それは違います。リノベーション工事やリフォーム工事は高額です。古い建物資産維持に、高額工事が必要であれば、それでは結局高額工事費用が負債化して、建物そのものが負債化します。

建物を資産として維持するには、私達日本人は、「建物工事=リノベーション/リフォーム工事」 という建設業界の営業プロパガンダに刷り込まれ発想を捨てなければいけません。リノベーション/リフォームといった集合工事は、間に中間費が多数含まれているからです。

けれども、建物を資産として維持するのに必要な工事は、実際には、管工事、電気工事、内装工事、外壁塗装工事、屋上防水工事等々、それぞれ専門工事に分かれています。必要な工事だけを、必要なタイミングで行えば、はるかに費用を抑えられます。そのために必要なのは、工事業者と同レベルの専門知識を持つ事ではなく、最低限の基礎知識と工事リテラシーで十分です。現在では最低限の基礎知識はインターネットで得られる時代です。だからこれらを学ぶ事は全く難しくありません。なにしろ世界中の建物所有者が出来ているのです。日本人だけができない理由はありません。

4.10 信頼できる工事業者に任せれば大丈夫ではなく、所有者が「資産を守る」考えが必要

日本は長年、業界優位で不動産の事は不動産屋へ、建物の事は建設業者/建築士/建物管理会社へ、と業界に依存をすることを当然とする考えが優位でした。自分で考える人は、「特別な人」扱いです。でもそれは、人口激増で自然に土地の価値が上がった時代の贅沢です。人口激減で自然に土地の価値が失われる時代に、その土地の資産価値を守るために欠かせない建物資産維持を、 業界の利益構造依存では、資産を守れる訳がありません。

   要なのは、所有者が「自分の資産を守る」ために必要な判断が出来る事です。ある工事をするか/しないか、今するか/もう少し後回しにするか、するならどの程度工事するか、決めるのは所有者です。その時に決める基準は、「信頼できる工事業者が言うから」ではなく、自分の予算や建物の将来を考えて、「建物資産を守る事ができるかどうか」です。

判断の軸を自分にしなければいけないのです。そのための考え方が、
→ 分散修繕の考え方
→ 安定ビル資産経営の考え方 
→ 30年分散修繕計画作成及び30年安定ビル資産経営計画作成、その他の問題解決性

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5 昭和のスクラップアンドビルド思考お卒業して「持続する街づくり」に変わ事は、私達の責務

建物を資産と考えると、実は街あっての資産価値であり、街が非常に重要な事がわかります。そして自分の建物の資産価値を維持する事は、街を持続させる事であり、また街が古くとも魅力ある街として持続する事で、自分の建物の資産価値も下がらないのです。

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5.1「持続する街づくり」に変わ事が、私達の責務です

もはやスクラップアンドビルドの時代ではない事は、誰もが知っています。「持続可能な街作り」が言われるようになりました。でもではどうすればよいか?が日本ではまだまだ考えが深まっていません。 そもそも人口激増から人口激減へと時代背景が反転した以上、私達日本人は、今までの考え方を手放して、全く逆転した時代背景にあった考え方に変わらなければいけないのです。それは、「持続可能な街作り」から更に一歩踏み込んで、「持続する街作り」です。

5.2 街作り= スクラップアンドビルド思考を手放さなければいけない

昭和後半の、「街作り」=宅地再開発/市街地再開発事業 しか記憶にない私達日本人は、未だ「街作り」=宅地再開発/市街地再開発事業 発想から抜け出せません。 いつまでもスクラップアンドビルド時代ではない、と誰もが言いますが、「街作り」=宅地再開発/市街地再開発事業があまりに当然すぎて、それがスクラップアンドビルドだとは、結びつける事ができないのです。だから「持続可能な街作り」も、しばしば新しく「持続可能な」街を開発する事を意味されがちです。 けれど、既に街が存在する現在において、新しい宅地再開発/市街地再開発事業は、スクラップアンドビルド以外の何物でもありません。これを手放さなければいけません。

5.3 スクラップアンドビルド型街作りの最大の欠点

スクラップアンドビルド型街作りを手放さなければいけない理由は、街が個人の資産の集合で出来ているという概念の欠落しているからです。  

例えば人口激減時代に駅前の1区画に街作りと称して再開発高層ビル・高層マンションを建てる。その街に愛着ある人達の気持ちが切り捨てられる。更に人口激減に加えて周辺に人が出なくなれば、周辺地域が廃れ、資産価値が失われますその再開発高層ビル・高層マンションも、将来需要がなくなれば、高額の維持修繕費を支払えなくなります。

また、人口激減地域に対して、コンパクトシティ化、町仕舞いと言った言葉が平然と言われます。しかし切り捨てられる土地は資産価値を失います。またその土地、その街に愛着を持つ人たちの気持ちも切り捨てられます。

「集団の目的のために個が我慢するのは当然」と言われれば、第二次世界大戦中や昭和時代の古い考えだと誰もが思います。けれども街作りに関しては、日本人はいまだそれを当然だと思います。それが通用したのは昭和のスクラップアンドビルドで豊になれた時代だけです。けれど現在は、もはや感情的な問題ではなく、スクラップアンドビルド街作りで豊になれない時代なのです。だから、スクラップアンドビルド型街作りは、慎重にならなければいけないのです。

5.4 持続可能な街作りではなく持続する街作りを

最近持続可能な街作りという言葉もありますが、多くの場合、これから「持続ができる街を作る」というスクラップアンドビルドの延長を含有しています。

ではなく、今日本に必要なのは、現在ある建物資産の集合である街が持続するための、街作りです。現在街に建つ建物は、1棟1棟1軒1軒、すべてが誰かの建物資産です。人口が増えないどころか減少する時代に、今ある街の建物資産所有者が全員、自分の土地と建物を捨てて、新しく街作りによって作られた新しい街の土地と建物を購入する。という事は、現実的に不可能です。

だから、現在の建物を生かし、現在の街を持続させる事が、最も無駄がなく誰にとっても効率が良い街作りなのです。

5.5 街とは、街の建物所有者の意識の集合

スクラップアンドビルドの街作りは、建築家・デベロッパー・役所の仕事です。けれど現在既に存在する街では、街に建つ建物をどうするかは、建物所有者の意識次第です。外部の建築家や専門家や行政ががなんと言おうと、所有者が価値がないとして建物を放置をすれば、建物は老朽化し、街も美観や衛生、安全が低下し、衰退します。けれども、一棟一棟一軒一軒の建物所有者が古い建物でも価値を認めて綺麗に手入れを続ければ、古いなりに綺麗な街として、存続する事ができます。

5.6 ①古い建物とはゆとりの象徴

人口が減少したら、街が縮小をするのは当たり前。古い建物を維持しても無駄だと思われるでしょうか?それはやはり昭和の考えです。 新築と違い、適切に取り組めば低予算で維持ができる古い建物は、自用であれ賃貸であれ、広い面積を使用する事ができます。だからゆとりある生活ができるのです。 今まで5人が住んでいた家、5人が使用したオフィスを、2人で使用する事ができます。空間にゆとりが生まれます。もしくはセカンドハウス、サテライトオフィスを気軽に持つ事ができます。公共施設や公共空間も同様です。古い建物は、ゆとりの象徴です。実際だから、ヨーロッパの古い街は、ゆとりがあります。人を惹きつける古い建物の趣には、ゆったりとした空間のゆったりとした空気感もあるのです。私たち日本人も、ようやくウサギ小屋発想から脱却できます。

5.7 ②子供へ孫へ資産と記憶と伝統を引き継ぐ

家は家族の象徴です。家はその家が建てられてきてからの家族の歴史をすべて物語る存在です。 家を子供へ孫へと引き継ぐ事は、単に資産を引き継ぐだけであはりません。家という建物の存続は、文字通り家の存続です。家族の記憶、様々な場面とその思い、伝統と歴史が失われずに、引き継がれる事です。それは江戸時代から続く寺社、豪農や豪邸、町屋だけの特別な事ではありません。民主主義社会に生きる誰もが、資産と家族の記憶、様々な場面とその思い、伝統と歴史を引き継ぐ権利を持つのです。それはあなたの人生同様に、引き継がれるべき価値がある事なのです。古い物は捨て去る、ではないのです。物は古くなると価値がでます。短絡的に価値を決めつけない事です。

また街も、その土地の記憶と歴史と伝統を引き継ぐ存在です。街の記憶と歴史と伝統は、その街が生き続ける事で、子供世代へ孫世代へと引き継がれます。だから私達は、歴史ある街に特別の尊敬を持ちます。訪れた街で、昔の城下町だった、歴史的に知られる〇〇の出身地だった、教科書に出てくる戦の地だった、縄文土器が出土する、恐竜の化石が出てきた、と言った話で印象付けられる事はあるでしょう。それは、歴史の教科書に出てくる過去の話だけではないのです。現在の私達の生活も、将来世代から見れば歴史です。身近に感じられる歴史は街の誇りです。再開発をして、案内板や街の歴史書に書き記されるだけでは、それはもう死んだ歴史になってしまうのです。

5.8 ③街を産業廃棄物にする事は環境破壊以外の何物でもない

街を廃れさせる。街を再開発する。いずれも、現在の建物及び建物設備内装等の全てを、産業廃棄物にすることです。 木造建造物と違い、現在の鉄筋コンクリート造等建築や新素材住宅は、土には還りません。廃墟として永遠に存続します。その土地は永遠に使用価値がなくなります。例え撤去をしても、産業廃棄物として廃棄され、どこかの土地でそこの自然環境を破壊します。

既に鉄筋コンクリート造等建築や新素材住宅が建つ街を廃れさせる。街を再開発する。は、環境破壊以外の何物でもありません。その負債は積み上がり、後世代を苦しめるだけです。

5.9 日本人はスクラップアンドビルドを卒業して、初めて現在と将来に向き合える

現在の日本は問題だらけである事は誰もが認める通りです。失われた30年は確実に延長し、成長ができない日本は、成長国にどんどん追い抜かれて日本の世界GDPランキングも下落の一途です。

少子高齢化は、現在避けられない流れです。悪化の一途をたどる出生率が多少改善しても、人口増加までは至りません。日本が60年もすれば遅かれ早かれ人口半減する事は、避けられない事実です。しかし現在の日本社会は、将来の都合の悪い事実は見ないふりして、なんとか昭和の延長続ける事に必死です。しかしもう限界です。

昭和の延長を続ける事は、現在世代が過去と現在、自分の事だけしか考えていないからです。しかし、そのために将来に負債ばかりを残してよいのか?否でしょう。

現在の人口激減の事実を認め、もやはスクラップアンドビルドの時代ではない事を認め、歴史的に日本人が得意としてきた通り、世界中からお手本を求めれば、実は古い建物で人口が少ない街の大先輩は、ヨーロッパをはじめ、世界中に沢山あります。

今まで西欧建築技術は学んだけれど、個人所有者の建物維持は学んでいなかった。今必要な時代になったから、学ぶ。それだけです。そして今までの「高度経済成長を成し遂げた特別な国日本」ではなく、これからの世代は、「既にある建物資産と街の遺産で、一人一人がゆとりを持って自分らしく生きられる日本社会」に向かおうではないですか。

それは、一人一人の建物所有者が、街の存続を考え、話し合い、現在ある建物を、低予算で適切に維持する事で実現できるのです。

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はじめに
建物を長寿化とは、建物を負債にしない事
→ 建物を負債化させずに長く使用するための分散修繕
→ 地域賃貸マーケティングで賃貸も継続する安定ビル資産経営 
→ 建物資産のアセットマネジメントと多面性

自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕で、現在の建物はまだ100年超長寿化できます。建替えや高額リノベーションは不要です。築30年以上中小ビル資産・一棟所有中小マンション資産のご相談はまずビルオへ。長寿化プラン、安定ビル資産経営、その他問題解決の助言・指導・支援。また古い建物が持続できる街作りに対する助言も行っています。

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