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縮小時代に豊かさを作る住宅,マンション,中小ビル,社会的インフラストラクチャー等永久資産化

住宅、マンション、中小ビル、社会的インフラストラクチャー等全ての建物・建造物は、どのように長く使用利益を産み豊かさを作る永久資産となるか


日本人は、住宅を、マンションを、ビルを、社会的インフラストラクチャー等を、築40年築50年ともなると、老朽化だ寿命だ建替えだと言う。ところが近年は、人口激減で需要が無くなり、建替え投資ができず、空き家やシャッター街、ビルやマンションの老朽化、公共施設や社会的インフラストストラクチャーの老朽化が、社会問題になって久しい。しかし本当の問題は、「たったの築40年築50年で寿命」という強い思い込みにある。 英欧米や他国では、住宅もマンションもビルも、道路、交通機関、上下水道、等の社会的インフラストラクチャーも、50年100年どころか数百年でも問題なく使用している。日本にも、古民家や寺社古い町屋、明治時代築ビルも存続している。本来は、建物を大切に長く使い続ける事が、普遍的な価値観なのだ。昭和の人口激増と経済成長時代日本が、特別の時代だった。そこでここでは改めて、日本でも建物を長く使う価値、その経済的合理性、建物を長く使用するための価値観及び考え方を、日本で初めてご紹介する。


コンテンツ

1 建物は築40年築50年で寿命と言われてきた日本が直面している問題
2 古い建物をどうするかを考えるのは不動産アセットマネジメント
3 建物の寿命と延命とはどういう事か
4 建物・建造物は物だが、資産でもある
5 資本的支出工事とは
6 建物アセットマネジメントの資本的支出工事
7 建物資産のリスク
8 建物を永久資産にする分散修繕
9 分散修繕の準備計画と実践

1 建物は築40年築50年で寿命と言われてきたが

1建物は築40年築50年で寿命と言われてきた日本が直面している問題 日本人は、戸建て住宅やビルやマンションといった建物、道路、交通機関、上下水道、電力・ガス等社会的インフラストラクチャーと言われる建造物が、築40年築50年ともなると、老朽化だ寿命だという。そして、
  • 建替える
  • 再開発する
できなければ、空き家廃墟やむなしだ。最近ようやくリフォーム・リノベーション・再生も言われるようになったが、非常に高額だ。高額ソリューションに手を出せなければ、他の案が何もない。それでいて、空き家廃墟になると、責任を取れと近年うるさい。まずこの問題の背景を考える。

1.1 開発と建替えで豊になった昭和の人口激増時代
昭和後半の日本は、人口激増、経済高度成長、生活水準の向上に伴う良質住宅・ビルへの移動のトリプルアクセルにより、未曾有の新築戸建て住宅、マンション、ビル需要が生じた。沸いて出来る需要に応えるべく、戦後焼け野原に建てられた木造狭小建物の街と農村だった日本が、
都市部では、市街地再開発法による再開発、ビル・マンションへの建替え、
郊外では、宅地造成・開発、デベロッパーによる団地及びマンション建築 が急ピッチで進めらた。第二次世界大戦後の高度経済成長後、地価は右肩上がりにあがり、市街地再開発、宅地造成、ビル・マンションへの建替えを通して、一億総中流で欧米先進国の豊かな中流生活を手に入れた。

1.2 需要激増時代は古い建物は建替えが合理的だった
需要激増時代は、市街地であれば、建物が古くなったら、より新しく大きな建物に建て替える事で、土地が産む使用利益を増やし、資産価値を高める事ができた。その最たる手段が、市街地再開発法ビジネスモデルである。木造狭小建物の街で、土地をまとめて大きなビルやマンションを建てる事で、保留床で建築費を賄い、かつ公共施設も設置するこの手法は、地権者は資産が増え、良質物件需要者には需要が現れ、地域は街がきれいになり、市区町村は公共施設を無料で設置でき、デベロッパーは利益になる。5者WINの完璧な錬金術法だった。

1.3 人口激増時代から人口激減時代へと転換した
しかし日本は2008年をピークに人口が減少に転じた。平成の頃はまだ繁栄の余韻が続いたが、令和も深まり近年、人口激減が本格化し、少子高齢化がもたらす社会の歪みが各所で見えるようになった。

また都市計画法(昭和43年)都市再開発法(昭和44年)施行から50年以上が建ち、早期に建てられた住宅、マンション、中小ビル、その他社会的インフラストラクチャーが築50年前後に到達するようになった。 ところが私達日本人の、築古建物に対する方針は、昭和時代から変わらない。特に(大資本や公共機関ではない)個人所有の住宅、マンション、中小ビルは、築40年~築50年ともなると、当たり前に、
  • 建替える
  • リノベーションする
  • 再開発する
  • 売却する
が言われる。しかしこれらは全て建設業界、不動産業界が利益を得るためにソリューションだ。


1.4 建替困難な人口激減時代が意味する事
建替え投資を選択するための最低3条件は、
  • 将来も需要が続く事、
  • 従前より多くの使用収益が得られる事、
  • なるべく早く建替え投資費用を回収出来る事
である。リノベーションや再開発も同じであり、売却の場合も買主は同じ事を考える。

需要激増時代に木造狭小建物からの建替えや、ゼロからの宅地開発では、これらは可能だった。しかし需要が尻つぼみ時代に、建設費高騰及び金利上昇で、高額投資回収期間が20年30年それ以上では、回収すら不可能リスクが高い。30年もたてば使用収益は減る一方でまた建物修繕費が増える。借入金が返済できなくなれば、せっかくの資産を金融機関に取り上げられて失う。再開発も供給過剰で限界に近づき、各地で遅延や中止が出てきている。売却は、誰もが考える程簡単ではなく利益も少ない。 つまり、所有者側に「おいしい」選択がない。とはいえ消極的に「朽ちるまで使う」は問題の先送りでしかない。朽ちるまで使った後の廃屋・廃家に使用利益は無く、固定資産税他維持管理費の支払いだけが発生し、次世代が解体費を負担しなければいけないかもしれない。なにより近隣迷惑である。

1.5 住宅ローンに追われ貧しくなるしかない日本人
つまり、現在の日本人の考え方では、日本の住宅、マンション、中小ビル、社会的インフラストラクチャー等、全ての建物・建造物は全て築40年築50年で寿命となる。つまり、1世代使用で終わりだ。そして現在は既に人口減少寿命激減時代であり、この潮流は今後更に悪化して60年後には人口が半減する。このような時代に、建替えられない住宅、マンション、中小ビル、社会的インフラストラクチャー等の全ては、負債となる。次世代はこの負債をかかえながら、経済成長しない時代に、またゼロから、恐らく多額の住宅ローンや借入金を背負って、住宅、マンション、中小ビル、社会的インフラストラクチャー等新築の費用を負担しなければいけない。つまり各世代は、収入の少なくない金額を、住宅ローンもしくは家賃支払いに費やし、結果として何も残らない。またその次の世代も、ゼロからやり直し。これでは誰かが何か上手くいかなければ、あっという間に中流から転落し、貧しい生活となる。 社会的にも、街の公共施設や社会的インフラストラクチャ―の老朽化、AKIYA・廃墟増加による地域環境の悪化、それらの解体費用負担等のマイナスの社会負担ばかりが増える。そうして建設業界、不動産業界、金融業界は豊かなまま、前は中流と呼ばれた一般の日本人はだんだん貧しくなっていく。日本人は、て建設業界、不動産業界、金融業界ありきの考え方に慣れ過ぎていて、ここに誰も疑問を感じない。

1.6 他の先進国は建物を長く使い、中流階級の豊かさを維持している
一方英欧米に目を転じれば、英欧米社会では、国によって経済状態は様々だが、中流階級はそれなりに豊かな生活を維持している。階級社会だから貧富差はあるが、二極化ではなく、一定の中流階級が存在する。貴族が建てた高級建築とは別に、普通の住宅、マンション、中小ビルが建ち並ぶ。大卒会社勤めの中流階級であれば、しばしば日本より広い住宅に住み、年に1回は休暇で海外旅行を楽しむ。英欧米と一言で言っても、経済水準は異なり、それぞれに社会経済の波は激しい。しかしその中で共通して、中流階級は生き延びている。 中流階級個人が、生活水準維持に大きく寄与しているのが、日本と違い住宅やマンション、ビルが一代限りで寿命にならない事実だ。いずれの国も、第二次世界大戦後の復興及びベビーブームで1950年代殻1970年代にかけて、日本と同じようなビル・マンション・戸建て住宅が数多く建てられた。しかし誰も、寿命だ建替えだとは悩まない。だから親が経済的に成功したり住宅ローンそ支払ったりしてビル・マンション・戸建住宅等を手に入れれば、子供や孫はそれを価値ある資産として相続する事ができる。子供は自分で済んでも良し、自分で気に入る自宅を手に入れて、相続した親の家は、別宅にしてもよし、賃貸に出して家計の足しにしても良し。親の家の賃料で、自分の好きな家を賃貸しても良し。いずれにしろ自分の給料から住宅ローンに追われる負担が軽くなるか、亡くなるかして経済的ゆとりを得る事ができる。孫の代になれば、更に相続する資産が増えて、豊になる。

1.7違いは、建物延命の考え方と工事取り組みにある
古い建物には価値が無いと考えて負債にしてしまい、貧しくなる日本人。古い建物の価値を生かし続け、その使用利益を蓄積して豊かになる英欧米や他国の中流階級たち。 なぜこのような違いが生ずるのか?と問われると日本人は、まず、日本は地震国だから、日本は木造建造物文化だから、と環境のせいにしようとする。建築の質を問題にする人もいる。 しかし、中流階級が建物を長く使用して豊かさを維持しているのは、英欧米だけではなく、世界中共通だ。地震国も木造建造物文化国も、日本だけではないが、他の地震国も木造建造物文化国の中流階級は、建物を長く使用し、豊かさを維持している。例えばメキシコ市は、50年に一度大震災があるが、それで倒壊せずに100年建っている建物を、誰も寿命だとは言わない。木造建造物文化や建物が問題ではない事も言うまでもない。例えば英欧米の数百年前の建物が、現在建築より「良い」訳がない。欧州でも古いビルは、木造梁だ。 そうした(ほとんどは古い西洋VS日本での)言い訳じみた屁理屈を置いておくと、住宅、マンション、中小ビルといった建物を資産として長く使用し豊かになる英欧米や世界中の中流階級と、日本との違いは、実は「建物延命の考え方」、「建物延命工事の取り組み方」しかない。つまり所有者側の問題なのだ。

1.8 問題は、日本人の誰もが、建物の価値と維持の方法を教わっていない事
建物が木造建造物文化であった事は問題ない。問題は、日本人の多くは、特に大資本ではない一般人が、自分の所有する住宅、マンション、中小ビル等を長く使う価値や、その方法を誰からも教わっていない事だ。 伝統的長く使われてきた寺社や古民家、城等質の高い建築物は、一般ではない。現在の戸建て住宅やマンション、中小ビルには、西洋建築による長く使う資産価値ある建物だが、日本が西洋建築技術は学んでも、建物所有者が建物資産を長く使う価値観と方法を学んでいなかった。

昭和戦後高度経済成長期には政策的に、建替えや開発再開発によって、日本の住居や街の水準を近代レベルにするために、とにかく建てる事、建替える事を優先された。一般の建物所有者も、デベロッパー、建設業者、不動産業者の仕事のお陰で、良質な住宅、マンション、ビルを手に入れ資産価値が増えた。そのため、建物の事は、デベロッパー、建設業者、不動産業者に上手に甘えれば、美味しい思いができるという甘えが身に付いた。あまりに良い時代に恵まれたため、せっかく高額な買い物である、住宅、マンション、ビル等の価値、そして自分でその価値を守るという自己責任の考え方が全く育たなかった。

そして時代が反転したにも関わらず、一つには国土交通省がこの構造を支えている事もあり、建物所有者の意識が変わらない。しかし国や業者に甘えて安泰な時代はとっくに過ぎた。私達日本人は、誰も縮小の難しい時代に建物の価値と維持の方法を教わっていない事に、気が付かなければいけない時に来ているのだ。

1.9 「自分の建物資産は自分で守る」自己責任の考え方と取り組み方を学ぶ
実は、難しい時代に建物の価値と維持する事は、英欧米をはじめ世界的には、何ら特別な事ではなく、それが当たり前だ。なにしろ昭和後半から平成日本のように恵まれた国は、世界でもほとんどない。他の国々では、厳しい時代に建物を守り、サバイバルする事こそが「当たり前」なのだ。日本が違ったのは、地震国だからでも木造建造物文化だからでもなく、単に昭和後半から平成の社会経済環境が特別で、考える必要がなかっただけの事だ。

そこでここで、英欧米や他国の中流階級が当然に実践している、「自分の建物資産は自分で守る」自己責任として、建物を長く使うための考え方と取り組み方をここで紹介する。実は日本人がこれを理解するためには、いくつかのステップが必用だ。
建物の寿命と延命を正しく理解した上で、
建物維持ではなく、建物資産維持
修繕工事とは違う  資本的支出工事
管理(プロパティマネジメント)とは違う 建物アセットマネジメント

を一つ一つ理解していく。そして具体方法として、建物を永久資産にする分散修繕の考え方を学ぶ。が、その前にまず古い建物をどうするか考える、不動産アセットマネジメントから改めて考えよう。

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2 古い建物をどうするかを考えるのは不動産アセットマネジメント

先に、従来の古い建物の選択肢と、人口激減時代には難しくなった事を考え、既に住宅、マンション、中小ビルは建替えの時代ではない、と述べたが、もちろん日本全国の建物が一律にそう考える訳ではない。古い建物をどうしようか考えるのは、不動産アセットマネジメントという。まずこのアセットマネジメントの考え方を、考えてみよう。そうした考えが好き嫌いに関係なく、所有する住宅、マンション、中小ビル他建物建造物はことごとく、不動産「アセット」だからだ。

2.1 アセットマネジメントとは
アセットマネジメントは、基本は「新築/取得した資産(アセット)で、どうすればベスト な利益総額を得られるか?」という、誰でも当然に考える事の考えと実践だ。(新築/取得の投資であれば、その見込みで投資を判断する。) 一般にアセットマネジメントは、不動産、債券、資本(株式等)の3種類について、それらに投資し、ベストなリターンを得る事を言う。それぞれ特徴があり、その中の不動産アセットマネジメントも、様々な「不動産」タイプややり方がある。不動産アセットマネジメントは、広義では、ショッピングモールやスキー場開発、高層ビル高層マンション再開発も含まれるが、ここではそうした大資本の手法は扱わない。

2.2 アセットマネジメントは機会とリスクのマネジメント
アセットマネジメントは、

  • これから資産を取得する投資判断
  • 所有資産を今後どうしてベストな利益を得るか
  • 所有資産をEXITするか(そして次の投資に資金を投下するか)
というフェーズでも、それぞれ考える事が違う。ただし共通するのは、現在から将来に向かって「どうすればベストな利益総額を得られるか?」を考える事だ。 つまりアセットマネジメントの検討では、
  • 将来の利益機会 と同時に
  • 実現できないリスク
を考える事が、重要になる。将来の利益機会だけを考えるのは、高利回り投資詐欺に飛びつくのと変わらない。かといってリスクを極度に恐れては機会を逃す。だからいかに現実的に機会とリスクを考える事ができるかが、その本質だ。

2.3 不動産アセットマネジメントにはキャピタルゲインとインカムゲインがある
住宅、マンション、中小ビルを含む不動産を対象とする不動産アセットマネジメントには、キャピタルゲイン型とインカムゲイン型がある。キャピタルゲイン型は、高値売却利益を狙い、インカムゲイン型は、建物使用利益(インカムゲイン)を積み上げる方法だ。一般のキャピタルゲイン狙い手法は、問題ある物件を安く購入し、問題を解決して高く売却するバリューアップだ。個人でも例えばAKIYAを安く手に入れ、セルフリノベで価値を上げて、高値で賃貸したり売却する手法は、世界中で広く実践されている。 ただ、バリューアップで高く売れる理由も、相応の使用収益(インカムゲイン)を産むからである。不動産の価値は、安定した建物使用利益(インカムゲイン)の継続性にある。もし安定した建物使用利益(インカムゲイン)が続くならば、売却をせずとも、長く長く建物使用利益(インカムゲイン)を積み上げる方が利益だ。これが住宅、マンション、中小ビル等を世代を超えて長く持ち続ける人が見る利益だ。この両者の利益の考え方について、もう少し具体的に考えよう。

2.4 築35年超建物の不動産アセットマネジメント
築35年超建物の不動産アセットマネジメント 所有する建物について、具体的に建物アセットマネジメントを考える必要が出てくるのは、建物が築年数を重ね建物設備機能のトラブルが目立つようになり、使用利益が減少するタイミングだ。ここで不動産アセットマネジメントとしては、次の将来選択から、最も利益になる選択肢を選ぶ事になる。(ここでは1棟だけの問題を考える。)
2.5再開発
2.5 建替え
2.6 売却
2.7朽ちるまで使う
2.8 建物延命(一度に建物を全てリニューアル)
2.9 建物延命(建物の使用を継続しながら、必要な個所を都度リニューアル)
これらを比較検討で重要な事は、
30年くらいの長期の利益(長期収入ー長期費用) 及び
実現できないリスクも同じくらい真剣に考える

2.5 建替え・再開発の利益と問題
まず再開発は特定地区に限られるから該当地権者以外は関係ない。例え地域に再開発話があっても、土地を売却すればその土地との縁を次世代に残せない。わずかな区分権利を得ても、維持管理に口を出せず、上手くいかなくなった将来に問題を作る。そもそももはや東京都心でさえ高層ビル・高層マンション需要がさほど無い。 個人としての建替えは、この建築費高騰時代かつ人口激減で将来需要激減も明らかな時代に、手を出す事は狂気の沙汰としか言いようがない。

アセットマネジメントとしては、建替え準備から建替え期間は、使用利益が無いどころかマイナス、更に、建物解体及び高騰している建設費が先に発生する。それから使用利益を見込むが、新築時こそは新築プレミアム賃料が見込めるとしても、需要激減供給過剰時代に、10年後20年後の賃料がどのくらい下がるかは、相当保守的に弱く見込まなければいけない。30年ともなればまた修繕費が増える事を考えれば、20年弱でペイできなければ、手を出すべきではないが、ペイできる条件に恵まれている物件は、相当限られている。

2.6 売却の事実
売却は、不動産屋を用いて、EXITでキャピタルゲインを得る方法だ。しかし現在の日本は、高く売れる地域と売れない地域の二極化が進んでいる。 都市部で高く売れた場合でも、譲渡所得税と仲介手数料がかかる。つまり不動産アセットマネジメントとしては、 売却時点までの使用利益+売却価格 ー 譲渡所得税 ー その他(印紙代・登記費用等 ー 仲介手数料 もし買替特例を使用するならば、買い替え不動産購入費用、購入側の仲介手数料及び印紙代・登記費用等をまた見込む事になる。しかも買い替えた先の土地と建物は、前より良くない可能性が高い。いずれにしろ売却は、土地を手放す事だ。しかも売却は、同じ物件でも、上手に不動産屋に高値で売却してもらえる人と、上手な買主に安く買いたたかれる人と、大きく結果が違う。 最初からキャピタルゲイン狙いで高値売却し、その後の投資も見込めるならば、投資として売却EXITは美味しいが、そうではない場合は、他の選択肢とよくよく比較検討をすべきプランだ。

そしてそもそも良い値で売却困難な地域であれば、選択肢として難しい。例えば400万円リフォームして売値が400万円であれば、他の選択肢と比較検討をしたいだろう。

2.7 朽ちるまで使うは次世代に迷惑
どのソリューションも選べない場合は、建物を使い続けるしか選択肢がない。すると、 建物延命=延命工事を行う 朽ちるまで使う=延命工事を行わない の選択となるが、先に後者を考える。というのも日本では前者の考え方が無いため、後者が選択されがちだ。朽ちるまで使うとは、現在の使用利益は教授するが、将来の使用利益を作る延命工事にお金を出さず、使用利益の先細りを容認し、いずれ廃墟にする事だ。これは、建物延命=高額の建設業界ソリューションと考えられがちな、この日本では、仕方がない選択に思われている。

しかし朽ちるまで使うは、廃墟になって終わりではない。全く使用利益を得ていない次世代に空き家維持費や解体費といった費用負担だけを先送りし、かつ近隣の価値も下げてしまう。自分だけ良ければ、他人に迷惑をかけて良いという考えの現れでしかない。従って、極力容認すべきではない。

2.8 建物延命も、リフォームリノベーション等は高額投資
すると選択肢として残るのは、「建物延命」だが、従来日本で言われるフルリフォーム、リノベーション、大規模改修工事、再生工事等建設業界ソリューションは、いずれもバリューアップ投資の手法だ。更に言えば、大資本や富裕層の贅沢手法だ。

こうした一度建物の使用を止めて空にし、全リニューアルする手法は、まず建物を一定期間空でになる機会がある場合に限られる。例えば何か用途での使用が終わったり、売買された場合だ。かつバリューアップ投資後に見合う利益が期待される場合だけに、適用される。その条件は、建替えモデルと同じだ。

しかし多くの住宅、マンション、中小ビル等は、現在使用利益があるものを止める事は現実的ではない。多くの地域では、アップサイドの余地もさほど無い。古い建物を安く購入した場合にはバリューアップは効果的だが、現在使用している建物には、フルリフォーム、リノベーション、大規模改修工事、再生工事等建設業界ソリューションは、向いていない。実際英欧米や世界中の普通の人達は、そのような高額手法は、一生縁が無い。

2.9 実際英欧米や世界中の普通の建物所有者達は、はるかに低予算の分散修繕で延命続ける
では、英欧米や世界中の中流階級はどのよう延命をしているのか?それは、 建物の使用を継続しながら、必要な個所を都度リニューアルする建物延命だ。これを分散修繕と呼ぶ。 バリューアップ投資のフルリフォーム、リノベーション、大規模改修工事、再生工事等と比べて、長期でもはるかに少ない予算で、かつ低リスクで建物延命工事を行うやり方だ。

この分散修繕は、日本人が考えがちな「壊れたら工事」式ではない。それでは将来の利益もリスクもコントロールできない。重要ではない工事にお金をかけ、重要工事が必用なタイミングで予算が無くなるのが関の山だ。分散修繕がどのように利益とリスクをコントロールするかは、これから見ていくが、ここでは不動産アセットマネジメントとしての分散修繕が、選ばれる理由を確かめよう。

建物の使用を継続しながら、使用利益が残るように建物延命工事を行う分散修繕は、20年でも30年でも、使用利益を積み上げ続ける。年間の利益は建替え選択の場合の建替え直後の新築プレミアム付き利益と比べると、はるかに見劣りがするかもしれない。けれども分散修繕の延命ならば、一時期ゼロのリスクもなく、新築後の利益低下の心配もいらない。借入金返済の心配もない。低リスクだ。売却のように土地を手放す必要もなく、朽ちるまで使うのように後で負債にして迷惑をかける事もない。 そして素晴らしい事に、他の手法と違って、条件がわずかで、特別な専門知識も必要とせず、誰でもできる。

そこでこの分散修繕を知るために、必要な価値観を一つ一つ理解していく。

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3 建物の寿命と建物の延命とはどういう事か

最初に、建物の寿命とはどういう事か、建物の延命とはどういう事か、具体的に理解しよう。例えば日本の建物や建造物は、築40年築50年で老朽化だ寿命だと言われる。それはなぜどのような状態をいうのか?また建物の延命と言う場合、それは何をする事なのか?言葉のイメージではなく、具体的に考えてみよう。全ての議論はそこから始まる。

3.1 建物とは建物は建物躯体と多くの建物設備機能の集合体
建物という「物」は、1軒、1棟、といった単位で扱われる。けれど実態の建物は、建物躯体と多くの建物設備機能群の集合体だ。建物設備機能群には、外壁保護の塗装・タイルから、給排水管、設備、電気設備、空調、エレベータ、外壁断熱等から、耐震性能も含まれる。  

つまり人が使用する建物は箱ではなく、多くの建物設備機能群が機能して、人が生活したり仕事をする空間を作る。ちょうど一人の人間が、多数の臓器や血管、皮膚等が機能して、生きているのと同じだ。

3.2 建物老朽化とはどういう状態か
日本では、建物や建造物が築40年築50年で老朽化と言われる。そして老朽化だから寿命だと言われる。この老朽化とは、建物を構成する建物設備機能群の少なくない数で経年劣化が進行して、建物の安全や衛生感が失われた状態や、建物設備機能が停止した状態を指す。電気や水道がなければ、現代水準の使用ができない。ボロボロで今にも崩れ落ちそうな建物では、安全に使えない。

なぜそうなるかといえば、建物の躯体寿命は長いが、建物の使用に欠かせない外壁保護機能、建物設備機能群、内装等のほとんどは、ライフサイクルが短いためだ。築40年50年すればいくつも建物設備機能が経年劣化し、それが増えると、建物自体が老朽化と呼ばれるようになる。 とはいえある日突然、建物の建物設備機能の全てが機能しなくなったり、建物が倒壊する訳ではない。軍艦島の廃墟マンションは1916年築で放置されたまま築100年を経過しているが、まだ倒壊していない。

3.3 建物延命とはどういう事か
では建物の延命とはどういう事か。建物延命とは、建物の中の経年劣化した建物設備機能を新規リニューアルし、機能性能を回復して存続する事を言う。 建物が築40年50年すると、多くのライフサイクルが短い建物の使用に欠かせない外壁保護機能、建物設備機能群、内装等のほとんどが、経年劣化していくが、これらは新しいものに交換して、リニューアルする事ができる。 建物は人間と違い、劣化した臓器内臓や皮膚や血管を交換する事で、生き続けられるのだ。この交換は何度でも可能であり、アップデートも可能だ。リニューアルを繰り返す限り、築100年築200年でもそれ以上でも、建物は延命ができる。

3.4 旧耐震基準建築である事や地震国である事は、建物寿命とは関係ない
ところで日本では、旧耐震基準建築建物は、建替えなければいけない。日本は地震国だから建物短命は仕方がないと言われる。しかし、これも耐震補強等工事で、対応ができる問題でしかない。 そもそも整理をしよう。旧耐震基準建築である事や地震国である事は、建物寿命とは関係ない。世界中で地震国は日本だけではなく、環太平洋地域や大陸内陸部の特徴である。日本全国一律に数百年に一度の巨大地震のごくわずかな激震地に見舞われるリスクがあるのではなく、また該当地域でも、被害程度は地盤が関係する。新耐震基準建築でも地盤が悪ければ倒壊し、旧耐震基準建築建物でも、耐震性がある建物は多く、耐震補強技術もある。結局耐震性は、個別に判断されるべきものである。なんでもみんな一緒一律に判断したがるのは、日本人の悪い癖だ。

3.5 建物寿命とは、延命が選択されない事
つまり、建物寿命とは、「延命が選択されない」事でしかない。建物の建物設備機能群は経年劣化するが、どのような建物でもリニューアルすれば、延命する事ができるのだ。


3.6 日本の建物・建造物の多くは、経済的寿命
現在の日本で建物が選択されない理由は、「1.5 延命・長寿化の利益とデメリットは何か」で考えた通り、延命・長寿化に利益があると思われていないからである。つまり経済的寿命だ。 昭和の建替え適格時代は、
・建替えや再開発投資をした方が、より大きな利益を得られる
だったから、日本では「延命・長寿化の利益」を考える考え方が育たなかっただけでしかない。 更に再開発や建替え主導だった日本では、建設業界依存が当たり前になりすぎてしまって、建物を延命するにも、建設業界から与えられる高額リフォーム・リノベーション、大規模改修工事、再生工事の費用を見て、そのまま
建物延命で得られると期待できる収益<延命工事の費用
と考えしまって、どうすれば、
建物延命で得られると期待できる収益>>延命工事の費用
で建物延命が出来るかを、考えてこなかっただけである。それをこれから学ぶ。

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4 建物・建造物は物だが、資産でもある

日本の住宅、マンション、中小ビル他建物は、経済的理由で寿命になる。つまり、建物は「物」だが、所有者にとっては、使用利益を産む「資産」なのだ。そして建物が資産ではないとは、負債だ。だから、建物が将来も資産として使用利益を産むと考えれば、延命におかねをかける。将来負債になると思えば、誰もお金をかける訳がない。だから建物資産所有者にとって、建物の延命とは、実際には建物資産の延命でなければいけない。

4.1 建物・建造物は物だが、所有者にとっては資産
建物・建造物は、物だが、所有者にとって、資産である。 建物が資産とは、建物の使用利益がある状態を言う。

4.2建物資産は、土地と一体の資産
この建物資産は、土地と一体で土地の価値を実現する資産という性質を持つ。日本人は土地こそ資産と考えるが、土地はそれだけでは利益も生まない。現在では市街地の土地の価格も、土地の上の建物の収益価値で評価される(収益還元法)通り、建物の使用価値は土地の価値をも決める。そして建物が負債になると、土地も手放す事になる。

4.3 建物使用利益はどう評価するのか
建物の資産価値は、建物使用の利益で決まる。(建物築年数とは関係ない。) この建物使用の利益は、賃貸であれば、賃料収入から諸費用(管理費、修繕費、公租公課、火災保険、借入金返済等)を差し引いた残りとなる。 自宅や自用の建物の場合は、賃貸した場合に支払うべき賃料を、賃料収入と見做し、同様に計算をする。これは、その物件を賃貸した時に支払う賃料を支払わずに済んでいる事が賃料収入と仮定する。では、この賃料収入は、一般には地域賃貸マーケット水準で決まる。これは 30年安定ビル資産経営計画の作成で考える。 ただし地域水準に関係なく、所有者が使用利益を産みだす/使用利益を感じる使い方をしたら、それはそれで独自の使用利益を考える事ができる。例えば山の中の一軒家や山の中の一軒ホテル・旅館・レストランは、周辺地価に関係なく、それを求める人にとって価値があり、使用利益を産んでいる。


4.4 建物が資産ではなくなるとは、負債になる事
建物資産観が重要な理由は、建物が資産ではない、とは負債になる事を指す。 土地と建物の使用による収入がゼロか僅かでも、建物と土地を所有していれば固定資産税は毎年払う事になり、多少の管理費用も発生する。また収入がそこそこあっても、新築時/取得時や高額フルリフォーム、リノベーション、大規模改修工事、再生工事等で大きな借入金返済負担があっても、建物は負債になる。 建物が負債になれば、土地も価値を産み出せない。誰も長く持ち続けられなくなる。


4.5 所有者にとっては建物は資産でなければ延命ができない
だから住宅、マンション、中小ビル所有者にとっては、建物の延命とは、建物資産の延命でなければいけない。つまり、
建物延命で得られると期待できる収益>>延命工事の費用
  となるように、建物延命に必要な工事を行う事が、建物延命の条件なのだ。英欧米や世界の他国の建物所有者は、建物を資産として延命するから、建物を経済的寿命にしない。そしてその使用利益を積み重ね続ける。そこで問題になるのがこの「延命工事」の考え方だ。

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5 資本的支出工事とは

建物の工事には2種類ある。建物設備機能のトラブルを直す修繕工事と、建物資産の寿命を延ばすための「資本的支出工事」だ。「資本的支出工事」は、会計用語だが、会計知識は必要ない。が、重要なのはこれは「修繕工事」とは考え方が違うという事だ。ここでは修繕工事とは違う「資本的支出工事」の意義を理解し、「資本的支出工事」の基本的な留意点を考える。

5.1 建物の資本的支出工事とは
  建物の寿命を延ばす工事を、会計用語で、資本的支出工事と言う。具体的には、 資本的支出工事とは、建物の使用可能期間(建物の寿命)が延長し、(工事をしない場合と比べて)資産価値を高める工事と定義される。 資本的支出工事が適切に行われなければ、建物はやがて寿命になる。つまり建物の将来の資産価値は、この資本的支出工事をどうするかで、決まる。

5.2 資本的支出工事の会計的特徴
  資本的支出工事は、会計的に「資産の追加取得」と考え、次の図の通りの特徴がある。

  • PLの費用ではなく、BSの資産(固定資産)に入る
  • 減価償却で、減価償却期間の年数をかけて費用計上される
(ちなみにこの図の賃料収入は、既にご説明をしている通り、賃貸物件の場合はその賃料収入、自宅や自用の建物の場合は、そこがもし賃貸だったら払ったであろう家賃が、払わずに済んでいるので賃料収入と想定する。)

5.3 工事内容(物の)資本的支出工事と修繕工事の違い
  資本的支出工事と修繕工事は、具体的に工事内容が違う。

例えば漏水対応や故障対応は、いわゆる修繕工事に該当し、該当の建物設備機能を延命させる。ただ経年劣化の進行は止められない。 そうしてトラブルが頻発・重大化するようになると、漏水する給排水管や、故障するエレベータそのものを交換して新規リニューアルする。これが資本的支出工事という。資本的支出工事には、他にも新規に建物使用に必要な機能性能を加える場合も含まれる。

5.4 会計的な(数字の)資本的支出工事と修繕工事の違い
  この両者を会計的に考えると、より違いが際立つ。 修繕工事は、建物の経年劣化を食い止める訳ではなく、建物資産に効果がないから、その年に全額が費用化される。つまり金額が高い修繕工事を行うと、比例してその年の利益が減る。 これに対して、資本的支出工事は、該当建物設備機能の経年劣化を食い止めて資産価値を高め(少なくとも下落を改善し)建物寿命を延ばす。だからBSの資産に入る。資本的支出工事は例え高額でも、その効果が長いから減価償却され、単年度の費用インパクトは、減価償却分だけになる。だから工事金額の大きさと利益の減少が比例しない。

5.5 資本的支出工事の特徴1:将来利益を作るための投資
  集合体としての建物を延命する資本的支出工事は、建物資産の観点では、建物の将来利益を作るための「投資」だ。 だから建物を資産として延命する資本的支出工事は、投資として
  • 費用対効果が高い
  • リスクを高めない
事が必須となる。

5.6 資本的支出工事の特徴2:効果は建物全体で出来る
  資本的支出工事は、建物の将来利益を作り資産価値を上げる(少なくとも下落を改善する)投資だが、1つの資本的支出工事で効果が出来る訳ではない。会計図で見ての通り、資本的支出工事は資産の中に入り、建物全体(資産)として効果を作る。 つまり資本的支出工事の費用対効果の効果とは、建物全体が産む効果が、(費用投下後ー費用投下前)として考えられる。

5.7資本的支出工事の特徴3:費用と効果を長期で考える
  資本的支出工事の費用対効果は長期で考えなければいけない。なにしろ投資だから費用が先で効果は後である。そしてその費用も、単年度では費用計上されず、一旦資産の部に入ってから、長期にわたり毎年減価償却される。実際の効果はもっと先まで続くかもしれない。長期でこの期間をすべてみなければ、費用対効果はわからない。 留意すべきは、1つの資本的支出工事の減価償却費は大きくなくとも、いくつもの資本的支出工事が重なれば、財源が問題となり、その減価償却費も重なれば無視できなくなってくる。減価償却費は節税効果という考えもあるが、そのために借入金をして金利を払っていれば、意味がない。

5.8 資本的支出工事の特徴4:建物資産所有者が決める
  資本的支出工事は、投資だと述べた。つまり資本的支出工事は、建物資産所有者が決める工事だ。これも修繕費と違う点だ。例えば漏水対応といったPLの修繕工事であれば、管理者が判断し、工事をどうするかは専門工事業者に任せて構わない。けれども、漏水事故が頻発する排水管を交換するか、いつ交換するかといった建物資産関わる資本的支出工事は、建物資産所有者が決める。例えばもし所有者が朽ちるまで使って終わりと考えると、工事はしない。 これは言い換えれば、建物資産の将来は、建物資産所有者が自分で決めて掴みとるという事だ。

5.9資本的支出工事は、建物資産所有者と専門工事業者との共同プロジェクト
  ちなみに、資本的支出工事を建物資産所有者が決めるといっても、好き勝手に決められる訳ではない事に留意をしておきたい。実際には、管理者や専門工事業者との相談をしながら、所有者として決めるべき事を決める役割を果たす。

通常資本的支出工事のような建物設備機能等のリニューアル工事を検討する場合、まず該当建物設備機能の問題について、建物管理者もしくは専門工事業者から指摘が何度も繰り返される。それに対して、建物資産所有者は、そろそろだったり、もう少し様子見だったり、やらないだったり、決める事になる。工事をする場合は、更にどの程度の機能性能グレードにするか、範囲はどうするか、どの工事業者に工事をしてもらうか、その他様々な事を決める。費用はその結果だ。 建物資産所有者がこうした方針を決める事で、専門工事業者は建物資産の将来を作る仕事ができるようになる。ここで建物資産所有者がどう決めるのかが、建物アセットマネジメントだ。

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6 建物アセットマネジメントの資本的支出工事

建物アセットマネジメントは、「新築/取得した資産(アセット)で、どうすればベスト な利益総額を得られるか?」を考える不動産アセットマネジメントの中でも、現在の建物延命ありきで考える考え方だ。現在までの使用利益は確定しているから、現在から将来に向けて、「どうすれば建物を資産として延命し、かつベストな使用利益総額を得られるか?」を考える。鍵となるのが、「資本的支出工事」の取り組み方だ。これを考える。

6.1 建物延命のための建物アセットマネジメント
  建物は使用利益を産む資産だが、建物はほっておくと建物設備機能群がそれぞれ経年劣化してやがて使用ができなくなる。どこかで経年劣化した建物設備機能群のリニューアルや、時代の変化に伴って必要とされる新規建物設備機能の追加の資本的支出工事を行い、建物が使用利益を産む状態に維持しなければいけない。 建物を資産として延命するためには、長期期間で、
建物延命で得られると期待できる収益>>延命工事の費用
  が成り立ち、かつその差額
建物延命で得られると期待できる収益ー延命工事の費用=建物延命の利益
がベストを目指す。

6.2 建物延命のための建物アセットマネジメントの会計モデル
  従って、建物アセットマネジメントとは、この資本的工事による建物延命サイクルを継続させる事に他ならない。

使用利益の一部を留保して資本的支出工事を行い、資産価値を上げて(すくなくとも下落を軽減して)将来も使用利益が続くようにする。このサイクルだ。単年だけでは意味がなく、これを継続させる事が、重要なのだ。ただし長期で考える建物アセットマネジメントでは、例え一時的に赤字になる事があっても、長期的に回復して使用利益を産む見込みが高いのであれば(つまりリスクが低ければ)、十分に選択しになりうる。

6.3 建物アセットマネジメントと管理(プロパティマネジメント)の違い
  建物アセットマネジメントの建物延命の利益は、長期で考える。ここに建物アセットマネジメントと管理(プロパティマネジメント)との違いがある。そしてこれが、管理(プロパティマネジメント)だけでは建物延命が難しい理由だ。

会計的に言えば、プロパティマネジメントはPLだけを考え、建物アセットマネジメントは、 BSとPLの両方を考える。
実務でも、プロパティマネジメントは、1年間の利益のベスト実現を目指す。賃貸物件であれば、リーシングを成功させ、建物問題を解決し、費用削減に取り組む。これに対して建物アセットマネジメントが考えるのは、もっと長い時間軸での将来利益の継続だ。経年と共に使用利益が低下していく古い建物に対して、いつどのように資本的支出工事投資を投下すれば、長期利益をベストな最大化に出来るのか?を考える。

6.4 バリューアップ型か安定型か
  建物アセットマネジメントには、2つの方針がある。バリューアップ型と安定型だ。例え建物を空にするリノベーションのような大型ではなくとも、建物の使用を続けながらでも、少しお金をかけてリフォームして多少のバリューアップさせるのがバリューアップ型だ。一方で極力お金をかけず、最低限必要な資本的支出工事だけを行い、安定した使用利益維持に専念するのが、安定型だ。 バリューアップ工事は、やはり投資だ。使用収益は一時増え、またすぐ下がる。安定せず想定通りにいかないリスクも高い。変動はリスクだ。投資の世界ではボラティリティと呼ばれて警戒される。一方安定型は、低リスクだ。費用対効果が高く、リスクを高めない資本的支出工事を、最低限必要なだけ低予算で行い、極力現在利益の安定を目指す。例え単年度の使用利益は少なく見えても、低リスクで着実に使用利益を長く延ばす事で、長期の積み上げ総額を高める。

バリューアップ型は、機会と実現の才覚あれば手を出せばよいが、いつでも誰でもは出来ない。これに対して、世界中でいつでも誰でも取り組める基本型が、安定型だ。これからご紹介する分散修繕は、この安定型の取り組みだ。

6.5 建物アセットマネジメントでの資本的支出工事
  建物アセットマネジメントの資本的支出工事は、長期的に
建物延命で得られると期待できる収益>>延命工事の費用 
に収まる予算ありきだ。

  • の予算内で、建物の資産価値を上げ(少なくとも下落を軽減し)るよう、 必要な建物設備機能等を厳選し
  • 適切なタイミングで
  • 費用対効果が高い
  • リスクを高めない
ように資本的支出工事を行わなければいけない。

6.6 現実場面での建物アセットマネジメント判断
  実場面では、建物の建物設備機能のトラブルが気になるようになった/管理者や専門工事業者に工事を勧められた等で資本的支出工事を検討する場面で、
  • 工事をするかしないか
  • 工事を今するか後でするか
  • どの程度の内容で費用対効果がベストか
  • どの程度の費用を投下するか
といった判断となる。 単に「えいや」「専門家が言うから」ではなく、建物アセットマネジメントとしてよくよく考えなければいけない。

6.7 建物アセットマネジメントの資本的支出工事で考えるべき事
  費用対効果の効果は、将来の建物使用者が納得して建物を使用するために必要かどうかで決まる。だから建物アセットマネジメントでは、モノと数字に加えて、将来の建物使用者を考えなければいけない。

その上で、資本的支出工事の特徴である
資本的支出工事の特徴2:効果は建物全体で出来る
資本的支出工事の特徴3:費用と効果を長期で考える

ことはもとより、費用対効果を高めるためには、
工事の優先順位を付けられる 事が必須だ。これらを考えるのが、分散修繕だが、その前に等しく重要なリスクの考え方を考えよう。

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7建物資産のリスク

資本的支出工事を考える際に欠かせない「リスク」を考える。ここでは建物アセットマネジメントとして、築古の住宅、マンション、中小ビル等建物資産維持のリスクのみを考える。つまり、売買や建替え等不動産アセットマネジメントのリスクは扱わない。また実際の工事でのトラブルも考えない。 建物資産維持のリスクには、物と数字のリスク及び現在と将来のリスクの2つのリスクペアがある。それをここで考える。

7.1 建物延命の2つのリスクペア
  建物資産には、2つのリスクペアがある。だから建物の将来を考える差には、この2つのリスクペアを両方考えなければいけない。



7.2 物のリスクと数字のリスク
  まず建物資産の物の面と数字の面に対応する、物のリスクと数字のリスクだ。
物のリスクとは、物の建物が経年劣化で事故を起こしたり機能しなくなる事を指し、
数字のリスクとは、使用収益が減少したり、工事が高額で、建物が負債化する事である。

この物のリスクと建物のリスクはペアで、片方に対応すると、反対側が高まる性質がある。例えば、経年劣化した建物設備機能に対して、物のリスクを考えて高額工事をすると、数字リスクが高まる。数字リスクを考えて工事をしなければ、物の事故リスクが高まる。といった具合だ。

7.3 現在のリスクと将来のリスク
  次に、物のリスクと数字のリスクのペアは、すぐには反対側のリスクの結果が出ない。。必ず時間差があり、数年後の場合もあれば十数年後のバイもある。つまり、現在リスクと将来リスクのリスクペアもある。怖いのがこの将来リスクだ。

7.4 最悪は、負のサイクルに陥る事
  将来リスクが怖い理由は、これが高まると負のサイクルに陥り、建物負債化に一直線だからだ。 建物は多少問題が増え「物」リスクが高まったところで、すぐに使用できなくなるほど「やわ」ではない、けれども10年20年と問題が積み重なると、より解消に費用がかかるようになり、数字リスクが高まる。すると余計に「物」リスク解消に費用がかかり、対応できず、「物」リスクが高まるか、「数字」リスクを高めて対応するか、いずれにしろ、この悪化が繰り返される負のサイクルに陥り、やがて建物は寿命と呼ばれる使用ができない状態になる。

建物アセットマネジメントが避けるべき最悪リスクは、この負のサイクルに陥る事だ。

7.5 全てのトラブル可能性は、物と数字のリスクととして考える
  建物アセットマネジメントでは、全てのトラブルは、物と数字、現在と将来のリスクとして考慮される。 例えば個別工事失敗のリスクは、本来は管理(プロパティマネジメント)の問題だが、それは将来物のトラブルが治らない/増えるリスクと、その対応の費用が発生する数字のリスクとで、考慮される。また、巨大地震や自然災害リスクは、個人ではコントロールできないが、その予防については、現在の物の予防の費用と、将来被災時の損害という将来と数字リスクで考慮される。地域が衰退して使用収益が減少するリスクは、将来の利益の数字低下のリスクとして考慮される。

7.6 現在は救済がない時代だから低リスクが必須
  リスクとの付き合いは、人それぞれだが、建物アセットマネジメントでも、変動はリスクであり、安定が望ましい事を述べた。理由は、現在から将来がリスクのリカバリが困難な時代だからだ。 昭和高度経済成長期以降から平成にかけての需要激増投資適格時代であれば、リスク悪化は次の使用利益を産む投資機会となり、救済があった。例えば、再開発、建替え、バリューアップリノベーション(例えば安く買い取って、価値を上げて高く売却する)が選択できた。しかし需要激減時代には、ほとんどの住宅、マンション、中小ビルでは、リスク悪化の救済がない。従って、多くの建物で、リスクを悪化させない事が、資産を守る条件だ。ちなみに、英欧米をはじめ日本以外の世界の国々では、日本の戦後昭和平成時代のような投資適格時代は、そうそうなかった。だからリスクを警戒する事は、当たり前すぎる程当たり前の事だ。

7.7 リスクを悪化させるのは、リスクペアの反対側考慮が足りない判断の積み重ね
リスクの悪化の原因は、リスク見落としもあるが、それ以上に多いのが、問題対応の場面でリスクペアの反対側の考慮が足りず、反対側を悪化させる事だ。例えば物だけ考えて予算を考えずに言われるままに高額工事をすれば、後で数字のリスクが高まる。工事費用を節約して工事をしなければ、後で物のリスクが高まる。

7.8 古い建物にリスクフリーは無いが、リスクのバランスを取る事で低リスクに出来る
つまりリスクを悪化させないためには、物と数字、現在と将来のペアのリスクのバランスを取る事だ。バランスがとれていると特定のリスクを高めない。そしてリスクバランスが取れている状態を低リスクと言う。

世の中に完全に「リスクフリー」などあり得ない。リスクが無いが存在するのは、投資詐欺の営業文句だけだと留意しておきたい。

7.9 建物アセットマネジメントでは、許容リスク程度を自分で決める
とはいえどの程度のリスクでバランスを取るかの問題がある。例えば、漏水事故1回で、新しい管に交換すべきという考えもあれば、古い建物だから仕方がないと、数回発生しても様子を見る考えもある。 この「許容リスクの程度」は、建物資産所有者が決めなければいけない。バランスの片側である数字リスクは、資産の問題だからだ。どの程度資本的支出工事予算を準備できるかで、違ってくる事は言うまでもない。つまり、決められた費用に足りなければ無理、という考えではなく、予算が厳しければ厳しいなりに、許容リスクを決めればよいだけ、という話だ。

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8 建物を永久資産にする分散修繕

さて、ようやく、一番最初の命題である、英欧米や世界の他国の一般の建物所有者が、建物アセットマネジメントとして資本的支出工事を実践している方法である「分散修繕」を考える準備が出来た。分散修繕は、どのような建物であっても、所有者が延命の意思を持ち建物アセットマネジメントとして考える事で、価値ある資産として延命を可能にする。だから全世界で実践されている非常に強力な方法だ。尚、分散修繕の名称は、彼らが実践している方法を、日本で名付けたものである。

8.1 分散修繕とは
分散修繕は、英欧米や世界の他国の(大資本や不動産業者ではない)個人の建物所有者が実践している、住宅、マンション、中小ビルの使用利益を長く延命して、価値ある資産として「新築/取得した資産(アセット)から得られる利益総額を永遠にでも増やし続ける」建物アセットマネジメントとしての資本的支出工事の取り組み方法だ。工事とリスクを分散させるから分散修繕と名付ける。

8.2 分散修繕の目標は永久資産化
分散修繕は、建物の寿命を考えない。 建物アセットマネジメントとして、永久にでも長く使用利益を積み上げ続ける事で、分散修繕は、建物の使用を続けながら、延命に必要な「資本的支出工事」を、新築/取得した資産(アセット)から得られる利益総額を最大化する。例え管理(プロパティマネジメント)として見る年間収益は、新築や築浅に比べてはるかに少なくとも、継続は力。安定は低リスク。世代を超えて積みあがる利益はバカにならない。

8.3 分散修繕の会計モデル
建物資産を永久資産にする分散修繕の目標は、次の会計モデルの継続だ。

建物の利益も資本的支出工事の費用も長期で考えるから、時に崩れる事があっても構わないが、そこからこのモデルに戻せるかどうかが問題となる。

8.4 分散修繕は、自分の予算ありき
建物アセットマネジメントでも確かめているが、まず重要な要点は、建物アセットマネジメントの分散修繕は、自分の予算ありきで行う。 なにしろ、所詮建物使用の収益が限られている古い建物で、 建物延命で得られると期待できる収益>>延命工事の費用  どうやったって資本的支出工事総額には上限がある。分散修繕は、そこで業者の積算見積りの金額が出せないから無理と考えるのではなく、では資産として自分の使用利益が確保できるように「低予算」で必要工事をしよう、と考える。それも単に低予算だけではなく、「リスク」も高めないようにしなければいけない。

8.5 分散修繕の基本系
実は分散修繕には、基本系がある。

工事予算を準備してから、資本的支出工事を極力低予算で行う。終わると次の工事予算を準備し、工事予算が準備できてから、次の資本的支出工事を極力低予算で行う。この繰り返しで、リスクとリスク対応の工事が分散され、負債を作る数字リスクが高まらない。このように工事を分散するから、分散修繕という。 基本系は、数字のリスクを高めないが、物のリスクは別だ。とはいえ分散修繕の基本系を意識すると、リスクバランスのうち数字のリスクは高まらないから、後は物のリスクを高めない事に注力ができる。

8.6 分散修繕でもののリスクを高めないとは
モノのリスクを高めないとは、必要な資本的支出工事が必用なタイミングで出来る事だ。限られた低予算でこれを実現しようとすると、必然的に対象工事(とその内容)を厳選しなければいけない。 つまり建物の延命に必要と考えられる工事に、優先順位をつけて、本当に必要かつ費用対効果が高い工事を行わなければいけない。 それだけではなく、将来リスクを高めずに分散修繕の基本系に収めるためには、工事予定の時期も重要だ。 特に必須工事が集中する時期には、特別な調整を考えなければいけない。

8.7 分散修繕は、準備が必用
つまり、費用と効果を考えて、長期単位で

  • 費用対効果が高い工事(内容)を厳選する
  • リスクを高めない工事タイミングを考える
といった事が必用だが、こうした事は、工事の都度考える事はまず不可能だ。分散修繕では、こうした長期での方針を、事前に考えていなければいけない。逆に言えば、事前に考える事を考えていると、実際の工事検討の場面で、必要な工事内容の検討と予算削減に集中できる。

8.8 分散修繕では何を準備しておくのか
分散修繕では、建物の将来を長期的に考えて、低リスクでベストな安定した利益総額をいつ源するために、先に次の分散修繕の基本方針
1自分の総工事予算
2自分の低予算水準
3自分のリスク許容度
4何の工事が効果があるのか
5将来どのよう建物であるか
を決めておかなければいめない。具体的にどのように考えて決めるかは、次の分散修繕の準備計画と実践で考えるが、先に分散修繕の効果を改めて確かめておく。

8.9 分散修繕「分散」の効果
分散修繕の「分散」の効果は、多い。

■低予算
  • 各工事を丁寧に取り組む余裕が生まれ、専門知識がなくとも内容を精査して、工事予算削減を実現できる
  • より細かく優先順位をつけて、不要工事過剰工事を排除する事ができる
■現在の物リスクを高めない
  • 工事予算規模が大きくないため、早く予算を準備し、タイムリーに工事して物のリスクを高めすぎない
■将来リスクを高めない
  • 借入金を作らない事で、将来のリスクも高めない
  • 分散修繕の基本系で数字のリスクを高めない
  • 同時に物の費用対効果を上げる事に専念ができる
  • 長期タイムスパンで分散する事で、将来リスクも高めない
■実現性
  • 工事規模も金額規模も大きくしすぎないから、現実に合わせた調整がしやすい
  • 自分の予算と将来の使用に合わせて工事をする事で、建物の個性と趣ができる
  • 工事準備金を準備する事で、安定した利益を保て、安定感があり不安になりにくい

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9 分散修繕の準備計画と実践

分散修繕は、準備が必用だ。そこでここではその準備と実践の概要を確かめる。この役割は、管理者や不動産屋や建設業者や工事業者や税理士、金融機関等に任せる事はできない。建物資産所有者が自分で考えなければいけない。 昔は、こうした事を考える力を身に着けるためには勘と経験が必用と言われたが、現在であれば、机上の計画作成を通して、自分で考えて自分で見つける事ができるから、心配ない。

9.1 分散修繕の対象建物
分散修繕の対象は、潤沢な工事予算には恵まれず、リフォーム・リノベーション・大規模改修工事・再生工事等超高額投資はできないが、極力長く使用利益を得たい大切な資産である建物・建造物の全てだ。

  • 戸建て住宅
  • 中小ビル、一棟マンション
  • 公共施設
  • 社会的インフラストラクチャー:道路、交通機関、上下水道・電力・ガス施設
の全てで、分散修繕は通用する。

9.2 分散修繕の取り組み開始時期
分散修繕の取り組み開始時期に決まりはない。建物設備機能について、一般に言われる法定寿命や実寿命は、あくまでも一般的な目安だから、これに従う必要もない。ただ、多くの建物は、通常築35年前後くらいから、どこかしら建物設備機能の経年劣化が気になるようになる。 そのくらいの時期から、分散修繕を考えだすと、楽に建物を良い状態で延命できる。ただもちろん築40年築50年からでも、問題はない。10年20年かけて、建物を良い状態に持って行こう。

9.3 分散修繕の準備
分散修繕では、建物の将来を長期的に考えて、低リスクでベストな安定した利益総額をいつ源するために、先に次の分散修繕の基本方針
1自分の総工事予算
2自分の低予算水準
3自分のリスク許容度
4何の工事が効果があるのか
5将来どのよう建物であるか
を決め、また実際の工事検討の場面で、
  • 建物の全体を考え
  •   将来の結果を考え (リスクを高めない)
  • 工事に優先順位をつけ
られるようになっていなければいけない。

9.4 30年分散修繕計画/30年安定ビル資産経営計画の作成
これらは、 30年分散修繕計画/30年安定ビル資産経営計画の作成を通して身に着ける事ができる。 30年分散修繕計画/30年安定ビル資産経営計画の作成は、マイクロソフトエクセル等表計算ソフトを用いて作成できる。ただし目的は計画の作成ではなく、作成を通して将来をシミュレーションし、試行錯誤をして将来の可能性をいくつも検討する事だ。そのためには適切な式が入っている事が欠かせない。

30年という期間に決まりはないが、大きな工事が含まれ、平準化できる期間として、一般の長期修繕計画でも採用されている期間だ。 具体的な作成方法は、

30年分散修繕計画の作成

収益物件では、地域賃貸マーケティングに基づく

30年安定ビル資産経営計画の作成 

で考える。 面倒に思われるかもしれないが、こうした計画作成に必要なのは、最初だけである。一度方針を見つければ、通常の住宅、マンション、中小ビルでは、後はさほど苦労しない。計画を立ててみれば、いかに難しくないかが実感できる。そして現在の建物は永久資産になるのだ。

9.5 資本的支出工事の実践
30年分散修繕計画は、工事の実行計画ではない。現実には、想定外のトラブルが発生し、想定をはるかに超えても長く問題なく使える建物設備機能がある。だからもちろん現実に即して工事を判断する。

そこで30年分散修繕計画/30年安定ビル資産経営計画が出来ていると、

  • 建物の全体を考え 
  • 将来の結果を考え (リスクを高めない)
  • 工事に優先順位をつけ
る事ができる。他の工事予定を考えて、工事予算を考える事ができる。なにより試行錯誤しているから、考慮が足りず将来リスクを高める判断をするリスクが低減する。

30年分散修繕計画は、一度作成をして、自分なりの分散修繕の基本方針を掴めば、後は特に計画を作成せずとも、自然に分散修繕の資本的支出工事判断ができる。分散修繕が当たり前なビルの本場英欧米や他国の一般の住宅、マンション、中小ビル等所有者達は、当たり前に考えていて計画を必要としないのと同じだ。状況が大きく変わった時は、その時点で30年分散修繕計画を作成しなおせばよい。

9.6 資本的支出工事では相見積もりは厳禁
分散修繕の資本的支出工事では、相見積りは厳禁だ。目先の費用をケチって、良い仕事をしてもらえないリスクを高める。

公共工事の相見積もりは、役所が工事仕様書を作成し、一番安い業者を選んだ事を議会で説明するために行うが、談合等問題が多い事はご存じの通り。しかし一般に流通している相見積もりでは、建物所有者側は工事仕様書を考えない。誰がやっても結果は同じの金額が小さな小修繕工事であれば、安い業者を選んでよいが、資本的支出工事のように、一緒に考える工事で、相見積もりをして値段で選べば、安かろう悪かろうは当然。業者も相見積もりをするような発注主の工事に、必要以上に頭を使って考えたりしない。特に最悪が、A社の提案と見積をB社に見せて、もっと安くできないかと聞くケースだ。これはA社ノウハウの盗難漏洩以外の何物でもない。

専門家に考えてもらう事は無料ではない。相手の手間、時間、貴重な知恵は、無料ではない。事を肝に銘じなければ、長く良い仕事をしてもらう事はできない。分散修繕では、一緒に合理的な工事予算削減を考えてもらう必要があるから、なおさら適正利益分は支払わなければフェアではない。

相見積もりの背景にあるのは、「ぼったくられるのではないか」という業者不信だが、それはコミュニケーションで解消しなければいけない。そのためにも30年分散修繕計画を考えて、自分の方針を持つ事が重要なのだ。ともかく資本的支出工事で相見積は絶対に厳禁と心すべし。

9.7 資本的支出工事取り組みの全体像



9.8 永続資産が産む利益
分散修繕で、住宅、マンション、中小ビル等建物には寿命が無くなる。築古は築浅よりは見劣りするかもしれないが、初期投資を回収した後は、わずかな分散修繕のための工事予算留保だけで、建物は資産として使用を続けられる状態であり続ける。分散修繕で常に予算を準備して工事をする、を繰り返していれば、気が付いたら子供の代、孫の代へと引き継がれて、築100年を超えているだろう。

例えば建築時/取得時に、利回りが10%だっとすれば、単純計算で、10年で初期投資をペイできる。その後も安定したインカムゲインが続けば、純粋に利益が続く。経年と共に賃料収入は減少するが長期ではインフレもある。例えその後が新築時賃料収入の半分(計算しやすいように)になったとしても、その後20年で、初期投資の倍、築50年で初期投資の3倍、築100年で初期投資の4.5倍、築200年で9.5倍の利益が、低リスクで積み重なる。子供や孫の代は、もはや初期投資のリスクは必要ない。積みあがる利益から相続税を支払えば、また利益を積み上げ続ける事ができる。こんなに美味しい話が他にあるだろうか?子孫に才覚があれば、もちろん建替え投資もできる。ただ「建替え投資」は、現在の日本人が縛られているどんなに社会経済環境が悪くてもやらなければいけない必須ではなく、純粋に、投資機会がありリスクのマネジメントができる条件が整った時の選択の1つになる。そうしてどのような時代であろうと、建物資産を守り、持てる資産を足掛かりに発展続ける事ができるようになる。早速分散修繕に取り組もう。

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