築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者のための

建物資産のアセットマネジメントと多面性

古い建物を負債化させずに長く使用経営するために欠かせない概念である、建物資産のアセットマネジメントと建物資産の多面性をご紹介します


コンテンツ

1.建物資産のアセットマネジメント
2. ビル等建物資産の3面性・収益ビル等建物資産の4面性
 

1.建物資産のアセットマネジメント

ほとんどの一般の日本人は、不動産アセットマネジメントという言葉を聞くと、不動産ファンドやJ-REITのプロが大きなビルを売買する事と考えます。けれども本来の不動産アセットマネジメントの中では、それはほんの一部でしかありません。

1.1 不動産アセットマネジメントの本質は、建物資産のアセットマネジメント

不動産アセットマネジメントの本質は、建物資産のアセットマネジメントです。これは建物がベストな利益を産むようにすることです。 なぜ都市部の地価は、郊外より高いのか?それは都市部の方が高い家賃を得てより多くの利益を産むからです。なぜ一般の人たちがJ-REITの株を購入するのか、それは安定した高い利回りの配当が期待できるからです。この配当の原資は、保有ビル・マンション等が稼ぐ家賃です。売買の利ザヤだけではありません。

1.2 建物は土地の価値を実現する資産

日本人は土地に価値があると考える土地信仰がありますが、土地だけ(更地)では何の利益も生みません。市街地では土地の上に建物を建てて、それを使用収益する事で利益を得ます。そして現在は日本でも、土地の価値はその上の建物の収益性で評価されます。(収益還元法)です。80年代バブルでの土地高騰の後に、その反省から収益還元法が導入されたのです。(地域や建物の状態等の条件は、利回りに相当するキャップレートで調整されます。)

つまり建物も、土地の価値を実現する資産なのです。同じ土地の同じ建物でも、上手に経営をして良い状態に維持し利益も多く産めば、土地と建物の価格は高くなります。それらを怠り、ボロボロの建物で利益もなければ、相当投資をしなければ利益を産む状態に戻せないため、相当に安くなります。

1.3 建物資産維持の全体像

上記例の違いを作るのが、建物資産のアセットマネジメントですが、この説明の前に、建物資産維持の全体像を見てみましょう。これは収益ビルの例です。自用の場合は、PMの賃貸管理がありません。

資産所有者にとって、所有の形は重要です。これは相続で変わります。所有者だけではなく、共有になったり、逆に一人の完全所有権にまとめる事もあります。(ここでは借地借家の話は除外します。)

現場的には、建物資産所有や経営は、多くの専門分野が関わります。賃貸は不動産屋に声をかけ、建物設備に問題があれば、各専門工事業者に修繕を依頼します。税対策も税理士に相談をします。 こうした現場の問題を采配するのが、管理です。自主管理の方もいれば、管理者を雇う方、管理会社に管理を委託する方もいます。管理の目的は、PLの収益の最大化です。日本では今まで古いビルが少なく、比較的築浅建物ばかりだったので、一般には、「不動産経営=管理」 と思われてしまっています。これがネックだったのです。

1.4 築浅時代は、建物資産アセットマネジメントを考えなくても困らない

建物価値は、新築がベストです。賃料は新築プレミアムで高く、建物トラブルが無いので修繕費もほとんどかかりません。差額は利益です。 基本的に管理は難しくなく、管理さえできていれば、十分に利益が残ります。だから左うちわと言われたりします。ただ実際には新築時の利益は、建設投資の回収でしかありません。本当の意味では「資産利益」とは言えないのです。実際この時期に失敗をして、金融機関に召し上げられる方は少なくありません。

1.5 築30年を過ぎると、管理だけでは建物維持が難しくなる

30年を過ぎると、建物設備機能のあちこちで経年劣化が出てきます。機能不足が出てくる場合もあります。経年劣化した建物設備機能をリニューアルしたり、見た目を綺麗にしたり、機能不足の追加工事・・・これらは本当は会計上の「資本的支出工事」です。減価償却の対象です。

ところが管理の考えしかないと、これをPLの高額な「費用」と考えてしまいます。そして高額費用だから、古い建物にお金をかけても無駄と考えて工事をしなかったり、その時々に管理者や工事業者に説得されて、工事をしたり、または建設業者に依存して、高額なリノベーション投資や大規模改修工事投資を行ったりする事になります。いずれも、建物がボロくなるか、過剰投資で負債化するかのリスクが高く、結果古い建物は負動産、と言うことになってしまいます。

1.6 建物資産アセットマネジメントの役割

「建物資産アセットマネジメント」は、この築30年を過ぎて必要になる、経年劣化した建物設備機能をリニューアルしたり、見た目を綺麗にしたり、機能不足の追加工事・・・会計上減価償却の対象となる「資本的支出工事」をどう行うかを判断する事です。ただこれは、ではビルメンに長期修繕計画表を作ってもらえばよい、という単純なものでは決してありません。

建物資産アセットマネジメントの目的は、建物が使用経営利益をベストに得られるように、建物資産を維持する事です。 必要な工事内容は、将来どうビルを使用し、どのように使用経営の利益を得ると考えるかで、違ってきます。なるべく利益を残すためには、必要な工事(内容)は行いつつも、無駄な工事(内容)は排除しなければいけません。建物資産には、物リスクと数字リスク、現在リスクと将来リスクがそれぞれ相反関係であります。そのバランスを取らなければいけません。この判断をするのは、資産所有者です。管理者でも工事業者でもありません。
その具体方法が、

→ 分散修繕
→ 安定ビル資産経営 

1.7 築30年を過ぎると、建物資産アセットマネジメントが必要

日本では、会計上の建物耐用年数が50年だから建物は50年で寿命という人がいますが、これは間違いです。本来、減価償却期間が終わって会計上の資産が小さくなっても、利益を産み続ける事に、建物資産の特別な価値があるのです。

この使用経営の利益を産み続ける建物資産の特別な価値は、上手に維持すれば、子供の代も孫の代もその先も代々、新築投資の高リスクなしに、低リスクで利益を享受できるようになります。社会経済の先行き不透明な時代に、どれほどありがたい事でしょうか。これを実現をするのが、建物資産アセットマネジメントです。

そしてこれがさほど難しくない事は、ビルの本場ヨーロッパをはじめ世界中で、大資本ではない一般資産所有者が所有する、築50年はもちろん築100年築200年それ以上の古い建物でも、綺麗に維持されて使用を続けられている事から、わかるでしょう。



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2 ビル等建物資産の3面性・収益ビル等建物資産の4面性

ビル等建物が古くなると、先にご紹介をした建物資産アセットマネジメントとして判断が必用になる事の他に、所有や賃貸や管理や建物やら全般に問題が増えて、専門業者/家に相談をしてもなかなか、良い問題解決ソリューションが見つからないという問題が出てきます。これも古い建物を諦める理由の一つになっています。

ここで必要になるのが、建物資産の多面性の理解です。建物資産には3面性があります。収益物件であれば、更にもう1面増えて、4面性があります。それぞれの面は関係しあっています。だから1面の問題解決でも、すべての面を考え、しばしば複数面の対応が必要になります。(これは、同時対応の場合と、段階的な対応の場合があります。) 従来ビル経営判断は、勘と経験と言われてきましたが、従来はこの多面性理解を、勘の良い人が経験でしか得られなかったのです。けれども現在では、こうして理論として学ぶ事ができます。良い時代です。

とにかくそれぞれの面の性格を見てみましょう。

2.1 ビル等建物資産の3面性

日本人は土地に価値があると考えてきました。ただ土地だけでは利益を産みません。市街地では所有「権利」している土地の上に建物「物」を建てて、その建物を使用収益する事で利益「数字」を得る事が出来ます。実際現在では既に、市街地の土地や土地の上の建物の価値は、収益還元法で評価されます。つまり土地の上の建物が生む利益「数字」が、土地と建物の価値(価格)を決めるのです。

2.11 ビル等建物資産の「物」面

ビル等建物は「物」の集合です。「物」は経年劣化します。箱ものと呼ばれる事もありますが、箱は丈夫でも建物設備機能や内装・外装が劣化し機能しなくなれば、スラム化・廃墟化します。「物」は滅失したら終わりです。

ただビル等建物は「物」の躯体(箱)は丈夫です。建物設備機能や内装・外装は何度でもとっかえひっかえリニューアルや追加ができます。そうして使用・経営ができる状態を保つ事ができます。人間で言えば、病気になった血管や内臓を交換しながら、永遠にでも生きるようなものです。

2.12 ビル資産の「数字」面

建物は使用経営の利益(数字)を産むから「資産」です。赤字(数字)が続ければ「負債」になります。土地も建物も持ち続けられなくなります。

ビル等建物が「資産」であり続ける事は、土地と建物を失わないために必須条件です。「物」は経年劣化しますが、建物設備機能や内装・外装は何度でもリニューアルできます。ただしその費用(数字)が使用経営の利益(数字)を超過すれば「負債」です。つまりビル等建物を「資産」として維持続けるためには、「数字」面のコントロールが必須なのです。

2.13 ビル資産の「権利」面

ビル資産の「権利」面は、「所有の権利」です。付随して「契約で生じる権利義務」も含まれます。 ビル資産の「権利」面は、問題がなければ無視できますが、問題があれば適切に対応しなければ、面倒な事になります。

■ 所有の権利

ビル等建物の使用経営の利益を得られる理由は、所有の権利を持つからです。完全所有権であれば問題ありませんが、共有、区分所有権、借地または借家等の場合、それぞれ固有の問題があります。共有の場合は民法の、区分所有の場合は区分所有法の規定がありますが、特に古い建物で建物維持工事を行う、売却等を考えるといった場面で、関係者の意見が揃わず、しばしば感情問題に発展しがちです。特に共有はトラブルの元と言われ、長期的には解消をお勧めします。

■「契約で生じる権利義務」

「契約」は「数字」を守るために欠かせない権利義務です。 ビル維持に必用な管理や点検、工事等で第三者に仕事をしてもらう場合には、全て管理委託契約書や工事請負契約書等を締結します。単に支払金額を決めるだけではなく、契約書はトラブルの際の対応マニュアルにもなります。契約は口約束でも成立しますが、適切な契約書を作成する事で、トラブルによる損失を防ぐ事ができます。賃貸の場合は、賃貸借契約書に基づき賃料収入という「数字」が生まれます。こちらも賃貸借契約書を適切に作成する事で、賃貸トラブルによる損失を防ぐ事ができます。

いずれも弁護士丸投げではなく、自分自身の「権利・契約」として、主体的に取り組むべきものです。

2.14 問題対応をビル等建物資産の3面性で考える例



2.2 収益ビル等建物資産の4面性

収益ビル等建物資産は、上記ビル等建物資産の3面性に加えて、「営業」面が加わります。 「営業」面とは、自分が賃貸リーシング営業をするという意味ではなく、自ビルの賃料収入をつくるために必要な全てをさします。

2.21 収益ビル等建物資産の「営業」面

賃貸は、「営業」です。

物件は、地域賃貸マーケットの中で物件を探しているテナント候補に選ばれて、初めて賃貸借契約が成立します。物件を探している人たちは、地域賃貸マーケットの中で、他の物件と比較検討をしながら、より条件が良くより賃料にお得感がある物件を探しています。

つまり収益ビル等建物の経営者は、商品(自物件)を、地域賃貸マーケットの中で物件を探しているテナント候補に選ばれるように準備(時に賃貸効果目的工事等を加える)し、選ばれ価格(賃料)をつけて、営業代理人(不動産屋・賃貸リーシング業者等)に効果的に営業(賃貸リーシング活動)を行ってもらう事で、売れる(テナントが決まる)のです。

建物が新しい間は、営業代理人(不動産屋・賃貸リーシング業者等)にお任せでも良い値段(賃料)で売れ(テナントが決まり)ますが、経年と共に建物は築古となり、地域の賃貸マーケット環境も変わります。すると経営として、準備(時に賃貸効果目的工事等を加える)を含めた営業戦略次第で、大きく違いが出てくるのです。ここで必要なのは、地域賃貸マーケティングを行う事です。不動産屋やリフォーム業者は、相談相手にはなりますが、結果を決めるのは彼らではありません。

2.22 問題対応を収益ビル等建物資産の4面性で考える例





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はじめに
→ 建物を負債化させずに長く使用するための分散修繕
→ 地域賃貸マーケティングで賃貸も継続する安定ビル資産経営 
→ 建物資産のアセットマネジメントと多面性

現在のビルはまだ100年超使用できます。ビルオでは、世界標準の分散修繕による低予算低リスクな工事取り組みをはじめ、地域賃貸マーケティング、賃貸、管理、共有等の従来一般に知られていなかった問題解決ノウハウを、リーズナブルな料金で助言・解決支援をしています。もう建替え・売却は忘れましょう。一棟から十数棟ポートフォリオまで、古い建物維持と、古い建物の街づくりについて、ビルオにご相談ください。豊富な経験があります。まず無料オンライン相談でお話をしましょう。ご要望に応じてご相談前に守秘義務誓約書を差し入れします。

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