築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者のための
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ビル資産維持工事の低予算低リスクを実現する分散修繕

分散修繕は、ビルの使用を継続しながら低予算低リスクでビル資産維持に必要な工事を行い、中小ビル資産100年超維持を実現します

サマリー


‐中小ビルの分散修繕は、 ビルの本場ヨーロッパや世界中の中小ビル資産所有者が実践している普遍的な中小ビル維持に必要な工事取り組みの方法
‐分散修繕は、ビル資産維持工事・・つまり現在の利益を守り将来の利益を作る
‐分散修繕は、ビル資産所有者が自分で工事を決めるから低予算低リスク  
‐最初は30年分散修繕計画の作成が欠かせない
‐ビル資産所有者にはビル資産所有者の工事予算削減ポイントがある

Ⅰ 中小ビル資産の分散修繕

中小ビル資産の分散修繕とは、ビルの本場ヨーロッパや世界中の中小ビル資産所有者達が実践している、築古ビルに必要な工事取り組みの方法です。 ビルの使用を継続しながら、必要な工事を低予算低リスクで行い、現在のビルを、使用経営の安定利益を産み続けるビル資産として維持します。特別な専門知識は必要ありません。ただ、「工事判断のための考え方」が必要です。

1.1 中小ビル維持には工事が必要

中小ビル維持には工事が必要です。ところが「費用」の問題があります。中小ビルは、必要な工事をしなくても、高額工事をやりすぎても、維持が出来なくなるリスクが高まっていきます。だから判断が難しいのです。
1.11 中小ビル資産維持の工事
ビルは経年と共に経年劣化します。のまま放置すれば、いずれビルは使用できなくなり廃墟化して負債となります。けれども、経年劣化部分のリニューアルを繰り返す事で、ビルの使用を継続できます。そして使用の利益を産む資産であり続けます。だからヨーロッパ等では古いビルが未だに維持できているのです。

1.12 問題はどう工事に取り組むか
問題はそこで、
  • ・何のビル資産維持工事をするか
  • ・どのように予算削減をするか
をどう考えるかです。 というのも、「物」が経年劣化した、だけでは工事を決められないからです。「費用」の問題もあります。高額のリノベーション投資や大規模改修工事が、「費用」を見て躊躇うのは当然です。逆に安ければ良いと、工事業者の見積書を叩き、安い業者ばかりを選んでいては、安かろう悪かろうでビルの状態が悪化するのも当然です。築古ビルには、次の3つのリスクがあります。簡単には工事を決められないのです。
1.13 築古中小ビルの3つのリスク
実際に中小ビルの維持には、次の3つのリスクがあります。

1 物のリスク
ビルは建物設備や内装・外壁・防水保護等、「物」の集合ですが、各「物」が経年劣化すると、機能しなくなったり、停止や事故を起こすリスクが高まります。内装や外壁も放置をすると、美観や清潔感を失います。いずれビルの使用が難しくなります。

2 数字のリスク
ビル資産は、使用経営の利益「数字」があって、初めて資産です。しかしビルの工事に費用をかけすぎると、赤字化して「負債」に転落します。

3 負のサイクルに陥るリスク
「必要工事をしない」物のリスクも高額工事をしすぎる」数字のリスクも、すぐには影響が出ません。けれど負のサイクルに陥ります。

負のサイクルは何十年と時間をかけて進行します。人間の病気と同じで、負のサイクルが悪化してからでは、ビルの立て直しハードルがより高くなり、やがてビルが寿命になります。怖いリスクです。

1.2 中小ビル資産の分散修繕

中小ビル維持にあたって、私達日本人が目指したいのは、アジアのスラム街ではなく、古くても趣あるヨーロッパの古い街並みの古いビルではないでしょうか?この先でご紹介する分散修繕は、そのための方法です。 ビルの本場ヨーロッパや世界中の中小ビル資産所有者が実践している普遍的な、中小ビル維持に必要な工事取り組みの方法:分散修繕です。ヨーロッパの資産家は「ケチ」と聞いた事があると思います。中小ビル資産の分散修繕は、その実践です。
1.31 分散修繕とは
分散修繕とは、築古中小ビル資産所有者が、低予算低リスク」なビル資産維持工事取り組みで、安定したビルの使用経営を継続する方法です。

・ビルの使用を継続しながら
・なるべく借金を作らず
・自分の予算でビル資産維持に必要な工事に取り組みます。
実際に取り組み方は、次の通り「工事予算を準備して工事をする」パターンの繰り返しです。

ただ、このパターンありきで必要な工事が出来ず、「物」のリスクを高めても、各工事で、重要ではない工事や必要以上に高額工事をしていては、意味がありません。それでは長期的に負のサイクルに陥ります。そうならないよう、よく考えた判断が必須です。分散修繕はそのために考え方です。
1.22 低予算低リスク
分散修繕はの特徴は、「低予算低リスク」です。従来であれば、予算とリスクは反比例すると思われてきました。そこに従来工事取り組みとは違う、分散修繕の特徴があります。

中小ビルの分散修繕は、ビル資産所有者が考えるべき事を考える事で、「低予算低リスク」を実現します。

「低予算」は、自分の予算に合わせて、必要工事と必要ではない工事、工事予算から省ける箇所を判断して、実現します。
「低リスク」は、「物」のリスクを高めすぎないよう、必要時期に必要な工事を行う判断をして、実現します。
1.23 分散修繕での工事判断ができるために必要な理解
中小ビルの分散修繕でのビル資産維持工事判断は、ビルの本場ヨーロッパを始め世界中の中小ビル資産所有者が、行っています。専門知識は必要ありません。特別難しいものでもありません。

ただ日本では従来なかった考え方です。だから分散修繕でどのようにビル資産維持工事判断をするかを見ていく前に、その基盤となる分散修繕の対象となる工事の性質について、理解を確かなものにしなければいけません。
  • 分散修繕工事の対象は、ビル維持ではなく、ビル資産維持工事
  • ビル資産維持工事は、将来利益のために行う
  • ビル資産維持工事取り組みは、修繕工事取り組みとは違う
  • 修繕工事とビル資産維持工事とは、会計的性質も違う
  • ビル資産維持工事では、工事業者とビル資産所有者では判断する事が違う
  • ビル資産所有者は、現在のビルと予算、将来のビルと利益を考えて、現在のビル資産維持工事を判断する
まずこれらを確かめてから、より具体的な中小ビル分散修繕の工事判断に移ります。

1.3 ビル維持ではなくビル資産維持

分散修繕は、経年劣化をした建物設備等のリニューアル工事等工事を、ビル資産維持の工事として取り組みます。これは、通常の修繕工事とは、違います。まずこの違いの理解が、分散修繕の第一歩です。
1.31 ビル維持とビル資産維持の違い
ビルは「物」です。だから物が壊れれば修繕をします。これがビル「維持」です。

同時にビルは、土地「資産」の価値を実現する「資産」です。
ビル「資産」は、使用経営で利益を産むから「資産」です。利益がなくなれば「負債」になります。 だからビル「資産維持」とは、ビルを負債化させずに、使用経営の「利益を維持」する事です。 つまり「ビル資産維持」は、単に「物」の問題解決だけではなく、「数字」の「利益維持」も考えます。工事が高額すぎて負債を作っては、元も子もないのです。

実のところ、ビル資産には3面性があります。「物」と「数字」に加えて「権利・契約」です。「権利」がなければ利益を得られません。契約で収入と支出は実現します。ただ「権利・契約」は性質が違うので、ここでは扱いません。
1.32 ビル資産維持の工事とは、将来の「利益」を作る事。だから「将来」も考える
ビル資産維持の工事は、ビルの「将来」利益を作るための先行投資です。

「現在」の「物」の建物設備の問題を解決する事で、「将来」も使用の利益が作れるビルであり続けるようにするのです。そこには、「将来」に問題を高めない事も含まれます。

負のサイクルで説明をした通り、工事をしない/費用をかけすぎた、といった「物」「数字」のリスクは、直ぐに悪影響が出てきません。ただ負のサイクルに陥ると将来確実に悪化していきます。だからリスク対応判断も、将来負のサイクルに陥るリスクが高いかどうかの観点で行います。
1.33 ビル資産維持の工事とは、相見積りをしてはいけない工事のこと
つまり、ビルの将来利益を守るビル資産維持の工事は、単なる修繕工事とは、取り組みの考え方が全くちがいます。一言で言えば、ビル資産維持の工事とは、相見積りをしてはいけない工事です。

例えば排水管で漏水事故があれば、直ぐに修繕工事をします。エレベータ部品が壊れてエレベータが動かなくなれば、即、部品交換の修繕工事を行います。こうした修繕工事は、相見積もりで安い業者を選びます。

一方ビルの将来利益を守るビル資産維持の工事とは、そうしたトラブルが増えたため、排水管リニューアル、エレベータ・リニューアルをして問題を根本解決する工事です。または、今までなかったけれど、途中で必要になった建物設備機能を追加する工事もあります。こうした工事は、本当に必要なのか、今でなければいけないのか、どの業者がいいのか、どの程度(機能性能グレード等に)予算をかけるか、ビル資産所有者として考える事が多数あります。安い高いの問題ではないのです。

だから修繕工事とビル資産維持工事とは、会計上の扱いも違います。

1.4 ビル資産所有者がビル資産維持工事を判断するとは

分散修繕は、中小ビル資産維持の工事取り組みを、ビル資産所有者が判断します。ただもちろん、専門知見がないのに、専門業者の仕事に口出しは出来ません。ビル資産所有者は、ビル資産維持工事で「何を判断するのか」の理解が、分散修繕の第一歩です。
1.41 工事業者が決める事とビル資産所有者が決める事の違い
もちろん専門知識を持たないビル資産所有者が、工事見積の内容を判断したり、工事業者に指示が出来る訳ありません。(簡単な内装工事程度なら出来ますが)専門の工事業者が決める事とビル資産所有者が決める事は違います。

1.42 現在のビル資産維持工事は、将来のビルの使用利益を作るために行う
1つは、現在のビルと予算、将来のビルと利益を考えて、工事の方針を判断します。既に1「1.32 ビル資産維持の工事とは、将来の「利益」を作る事。だから「将来」も考える」 でご説明をした通りです。

これは逆に言えば、将来のビル使用利益に影響がなければ、その工事は必要ないかもしれないという事です。つまり、将来のビル使用利益の観点から考えると、その工事は本当に必要なのか、必要としてどの程度の工事が必要か、「工事の優先順位」が付けられるようになるのです。そうして優先順の低い対象を削減する事で、工事予算の削減が自分で判断できるようになる訳です。
1.43 将来への過程で、負のサイクルに陥るリスクを高めない事も必須
ビル資産所有者は、将来利益を考えて現在のビル資産維持工事を判断する訳ですが、そこでもう一つ、将来への過程で負のサイクルを高めていないかどうかを考える事も忘れる訳にはいきません。将来も利益を産み続ける自ビルは、途中で負のサイクルに陥らない事で、実現するからです。

だからビル資産維持工事の判断で将来を考える際には、その過程で、負のサイクルに陥るリスクを高めていない事も考えなければいけないのです。

ビル資産所有者は、現在のビルと予算、将来のビルと利益を考えて、更に過程で負のサイクルに陥らない事を確かめ、ビル資産維持工事ををするかしないか、今やるか先に延ばすか、どの業者に相談をするか、どの程度の内容に(予算)で行うか等々を、判断をする訳です。そして、これはさほど難しくありません。
1.44 実際のビル資産維持工事取り組みは、専門業者とビル資産所有者の共同プロジェクト
ビルの経年劣化部分のリニューアル等工事といったビル資産維持工事において、工事業者が決める事とビル資産所有者が判断する事が違う事から想像出来る通り、ビル資産維持工事は、専門家・専門業者とビル資産所有者との共同プロジェクトです。

専門家・専門業者は、ビル資産所有者がビル資産維持工事の方針を決めていると、方針に沿った合理的な工事提案ができます。けれどもビル資産所有者も、そもそも専門家・専門業者のアドバイスがなければ、ビル資産維持工事の方針を決められない訳です。低予算で工事を行うためには、専門家・専門業者に過剰なサービス負担をかけない配慮も必要です。

特に「低予算低リスク」で、ビル資産維持工事を行うためには、「低予算低リスク」を維持できるビル資産維持工事方針が必要です。

1.5分散修繕のビル資産工事判断

さて、このようなビル資産維持工事の判断を、分散修繕ではどのように行うのでしょうか?
1.51 分散修繕のビル資産工事判断
先に「1 .21 分散修繕とは」で確かめた通り、分散修繕は「資金を準備してビル資産維持に必要な工事をする」の繰り返しです。

都度ビル資産工事の判断をしていては、負のサイクルに陥るリスクを高めずに継続するのは、難度が高いです。重要工事が必要なタイミングが重なったり、予算準備を待っていられない状態になったり、そもそも重要な必要工事を見落としては、「物」のリスクが高まるからです。しかも資金を準備し、必要なタイミングで相談をする事は、全く自ビルのビル資産維持工事の方針が白紙では、出来ません。

つまり分散修繕は、事前に自ビルのビル資産維持工事の方針を大まかに考えておく、準備が必要です。
1.52 分散修繕のビル資産工事判断に必要な力
事前準備にしろ、実際の工事判断の場面にしろ、分散修繕で、自分の予算内かつ低予算低リスクでビル資産維持工事を考え判断できるためには、次の3つ、


・自ビルに必要な工事の全体を把握できる
・工事判断の結果の、将来ビルとその過程を想像できる
・工事に優先順位を付けられる

力が必要です。ヨーロッパや他国の中小ビル資産所有者達は、歴史的経験から、自然にそうした考えと力が身についていて、日ごろから自ビルの維持の予算と方針を考えて、準備をしている訳です。
1.53 分散修繕のビル資産工事判断力を身に着けるために
私達日本人は、そうしたビル資産工事取り組み方針を決める経験が今までありません。昔はこうした判断ができるまでに、長い経験で勘を養う必要があると考えられてきました。けれども、現在では私達日本の中小ビル資産所有者も、次の準備を行う事で、短期間で分散修繕のビル資産工事判断力が出来るようになります。

で、短期間で分散修繕のビル資産工事判断力を身に着ける事が出来ます。

判断とは選択です。例えば「工事をする」判断は、「工事をしない」判断と比較検討の上で、「工事をする」を選んでいます。現実の「ビル資産維持工事判断」には、正解がありません。数多く自分で試行錯誤をすればするほど、選択肢が増え、工事の時期や内容・条件を含めて、より望ましいビル資産維持工事判断ができるようになります。 机上の30年無難修繕計画であれば、こうした試行錯誤や検討を手軽に行う事ができます。そうした試行錯誤が経験となって、実際のビル資産維持工事判断の場面で、生きるのです。

1.6 30年分散修繕計画を作成する

この先、30年分散修繕計画作成の手順を通して、ビル資産維持工事の具体的な考えか方を見てきます。が、その前に、いくつか留意点を確かめ、全体の流れを見て見ましょう。
1.61 30年分散修繕計画作成の留意点1:単なる予算の配分モデル
30年分散修繕計画作成の目的は、30年分散修繕計画の作成目的は、準備が出来ている事で、実際の場面でも、専門業者とビル資産所有者との共同プロジェクトとして、低予算低リスクに分散修繕のビル資産維持工事に取り組めるようにする事です。 とりあえず自分で30年の総工事予算を決めてみて、その予算でいつ何の工事にどの程度予算配分すれば、低予算低リスクで将来も納得して使用ができるビルであり続けられるかを検討して、モデルを作成してみるのです。 つまり30年分散修繕計画は、工事の実施計画ではありません。どうせ10年後20年後のビルの状態は、実際のところわかりません。将来の工事費用やビル使用も予測しかできません。だから細かいところや、細かい金額にはこだわる必要はありません。
1.62 30年分散修繕計画作成の留意点2:物状態を同時に想像する
30年分散修繕計画は、30年の総工事予算の予算配分モデルとはいえ、机上の空論では作成の意味がありません。だから30年分散修繕計画の検討を通しては、数字と同時に各建物設備機能や見た目を含めたビル全体を、毎年毎年想像します。横に数字を追いながら、どのように経年劣化をしていくか、想像をします。最初は管理会社や専門業者に尋ねる事もあるかもしれません。そうして「物」の想像力を高める事で、「物」のリスクを抑える事ができるのです。
1.63 30年分散修繕計画作成の流れ
30年分散修繕計画は、実際には次の3ステップで作成をします。
  1. 準備として考える事を考える
  2. 総工事予算と何の工事に予算を配分するかを決める
  3. リスクを分散させる
る このステップを1つ1つ順を追って見ていきます。

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Ⅱ 30年分散修繕計画の作成は、まず考える

30年分散修繕計画の作成にあたって、エクセルに向かう前に、まず3つほど、大切な事を考えておきましょう。考えるべき事を考えておく事で、自分の予算かつ低予算の分散修繕が実現できます

2.1. ビル資産所有者が考える事

分散修繕計画を作成する前にビル資産所有者が考えておくのは、次の3つです。それぞれ見ていきます。

1つは、ビル維持工事予算の財源
1つは、今後のビル使用者
そしてもう1つは、30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子

2.11 ビル維持工事予算の財源を考える
今後30年のビル資産維持工事の財源を考えます。財源がなければ、どうやっても工事ができませんから、これは大切です。借入は最終手段として極力避けましょう。

望ましいのは、安定財源です。つまり収益ビルなら賃料収入、企業なら事業売上、個人であれば個人手雲集です。既に修繕資金の準備や、臨時財源の予定がある場合でも、安定財源は考えておきます。 100年の維持を考えれば、準備金はいずれ尽きます。他に使用する用が出来るかもしれません。安定財源は、長期的に安定して確保できる分散修繕工事予算目線を考える際の目安になります。
2.12 今後のビル使用者を想像する
次に、今後30年のビル使用者を、具体的に想像します。

30年後のビル使用者がどんな状態の自ビルを使用しているか、具体的に想像します。分散修繕が目指すのは、単なる現在ビルの維持ではなく、将来のビル使用者が使用するビルを作る事だからです。ここを具体的に細部まで想像する事で、将来のビル使用者にとって重要かどうかの観点で、工事に優先順位をつけて、優先順位の低い工事を削減する事ができるようになるのです。

例えばビル使用者は女性が多いか、男性が多いか、若年層が多いのか平均年齢が高めか・・、使用は事務所か、店舗か、事務所と一言言っても、来店型か、堅い雰囲気か、自由なスタイルを好むか・・手法としてマーケティングのペルソナ手法が役に立ちます。インターネットで検索をするとサンプルが多数出てきますから、ぜひ参考にして作ってみてください。
2.13 30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子
もう一つ、今後のビル使用者を想像したら、同時に今後のビル使用者が使用している自ビルの姿についても、想像してみます。こちらは、可能性は無限大です。だからずっと常に考え続ける永遠のテーマです。

細部の内装工事等を想像する事は不可能ですが、例えば常に新しく綺麗な状態なのか、古いけれども手入れは良い状態なのか、相当に古さを感じさせる状態なのか?現状と同じ雰囲気か、何かガラリと変わるのか? 建物機能も現状維持なのか、古い建物だから多少のトラブルは仕方がないと考えて使用されるのか、時代に合わせた新しい機能性能が加わるのか?

もちろん自分の予算は念頭におきます。潤沢な予算があれば潤沢な予算に合わせ、予算が厳しければ厳しいなりに、自ビルの様子を想像できるでしょう。

自分の予算でどのようなビルでいられるか、検討してみなければわからないところもありますから、次章を検討しながら、検討をしてみて、改めて立ち返って自ビルの在り方を想像します。同時に、次章の工事計画は、ここで想像する将来のビル像を作る事でもあります。だから何度も繰り返し、見直します。また他ビル等を見て、突然アイデアが湧く事もあるでしょう。そうしてアイデアを常にアップデートしていきます。

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Ⅲ 今後30年のビル資産維持工事予定のモデルを作るる

ここから、エクセルに向かいます。とはいえ最初は調べる事の方が多いかもしれません。 自分で、任意に30年総工事予算を決めてみて、何のビル資産工事ができるのか、各工事でどのように工事予算を削減できるのか、検討をしてみます。 この段階では、まず対象工事を決めて、自分の予算かつ低予算を検討します。リスクについては、ここでは考えません。それは次章で検討をします。

3.1 30年分散修繕工事モデル作成の全体像

ビルの工事をどうすべきか、について、決まった正解はありません。ただ低予算でビル資産を維持するためには、ビル資産維持に必要な工事を必要なタイミングで行い、重要ではない工事(内容)を削減する判断が必要です。今後30年の工事予算配分モデルを試行錯誤する事で、この判断力を高める事ができるのです。具体的な内容を見る前に、留意点を確かめておきます。
3.11 基本は30年総工事予算の予算配分
くどくなりますが、30年分散修繕計画は、30年総工事予算の配分計画です。工事実施計画ではありません。ただ必要なタイミングで「低予算低リスク」の分散修繕としてビル資産維持工事の判断ができるために、準備として、30年総工事予算の配分のイメージを持っておきたいのです。

まず自分の予算且つ低予算の30年分散修繕工事モデル作成にあたっては、次の2つが重要検討テーマです。
1つは、「何の工事を予定するか」(何の工事はしないで済ませられるか)
もう1つは、「どう各工事予算を削減するか」

例え自分の総工事予算内で低予算で工事を組み立てられても、内装工事ばかりを予定して、(物のリスクを高めて)建物設備で重大な事故が起こったり、(数字のリスクを高めて)後から建物設備の工事が必要になったけれど予算が無い!では意味がないのです。だから丁寧に検討をしたいのです。
3.12 どうやって工事費用目安を調べるのか
ところで、各工事の費用目安は、どう見つければよいのか?

見積書は必要ありません。正確な数字は必要ありません。どうせ変わってきます。

大まかな目安は、現在ではインターネット検索が第一手段で、かなりの情報は手に入ります。例えばキュービクル、更新とサーチすれば目線は出てきます。ただわかりにくい分野は、管理者や工事業者に意見を聞きます。 ただ現在はインフレ基調にありますから、多少保守的(現在の目安金額+α)で見ておく事をお薦めします。

意見を聞く時の注意は、見積書を貰わない事です。あくまでもざっくり聞く事です。なるべく相手に負担をかけない事を心がけましょう。ましてや、相見積もりは厳禁です。
3.13 30年分散修繕工事モデル作成で検討事項の全体像


3.2 Ⅰ 30年総工事予算を決める

まず、30年総工事予算を決めます。後から増減できますから、まずは仮で決めて、計画を立ててみます。様子を見て、調整をします。
3.21 理想的な30年総工事予算
理想的な30年総工事予算はccc、毎年一定金額を確保します。

目安は、収益ビルであれば財源である賃料収入の5%前後~10%です。(当然、収益規模とビルの状態によって異なります。)事業用ビルや自用ビルでも、賃貸を想定して、同様水準をベースラインに考えます。(事業の賃料目安が収益の30%を上限に言われがちな事を鑑みるに、築古ビル維持は固定資産税を支払っても、十分に経済的です。)財源に余裕があれば、もちろん上げる事も可能です。


財源の予算が厳しい場合は、毎年確保可能な金額を見積ます。予算が厳しい場合でもどうにかなります。心配は不要です。

3.3 Ⅱ 何のビル資産維持工事を予定するのか

次に30年で何のビル資産維持工事をするかを、洗い出し、優先順位をつけます。まず準備として、本当にビルの使用維持に必要な工事が含まれているか?優先順位付けが適切か?が非常に重要です。その上で、「時期」と各工事「予算配分」と共に検証をします。
3.31 ②今後30年で必要と思われる工事を洗い出す
自ビルに、躯体以外にどのような建物設備機能や外壁、内装等の潜在的な工事対象があるは、ビル資産所有者であれば把握をしておくべきです。まず、潜在的にビル資産維持工事の対象なる(躯体以外の)建物設備機能等を全て洗い出しましょう。耐震関連工事ももちろんです。工事対象を後から外す事は簡単ですから、まずは見落としが無い事が一番重要です。

そこから、今後30年のビル資産維持工事対象として、
  • 今後必要ない建物設備機能等
  • 30年ではリニューアル工事が必要ない建物設備機能等(十分に使える)
対象を外します。一方で、「2.13.30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子」で新規に建物設備機能追加を考えていれば、それを加えます。


これは、業者が作成した長期修繕計画があれば、それをベースにできます。長期修繕計画表ほど細かい明細は必要なく、「対象物」ベースで把握をすれば十分です。
3.32 工事におおまかな優先順位をつける
洗い出したビル資産維持工事対象をカテゴリー分けして、優先順位をつけます。といっても3段階くらいに分類すれば十分です。その時に、工事の性質も次の4カテゴリーに分けておくと、実際の優先順位付けの時に検討しやすくなります。


3.33 ② 30年総工事予算を優先順位の高い潤に配分してみる
今後30年で必要と思われるビル資産維持工事を洗い出し、優先順位を付けたら、先に考えた30年総工事予算を配分してみましょう。(30年分散修繕計画のエクセル表に工事予算を入れてみます。) 最初は各工事予算は標準的な参考予算で構いません。それでどの程度の(数の)今後30年で必要と思われるビル資産維持工事が出来るかを確かめてみましょう。もしあまりに必要工事が出来ない事に、ショックを受けたとしても、大丈夫です。(それが普通です。)この先で調節をしていきます。 (ある程度工事予算削減がわかっていれば、もちろん削減した工事予算で予算を配分します。)
3.34 ③ 工事サイクルを決める(工事予算の削減)
ビル資産維持工事のサイクルは、分散修繕で非常に重要な考えです。ビルを数百年使用する事を考えれば、ビル資産の使用維持に必要な各建物設備機能リニューアル工事の多くは、1回で終わりではなく、繰り返し必要になります。つまりサイクルなのです。

工事サイクルが短いとは、建物設備が事故など起こす前に早めにリニューアル工事を行う事です。「物」のリスクは高めませんが、100年200年の長期で見ると工事総額が大きくなります。 一方工事サイクルが長いとは、なるべく遅めにリニューアル工事を行う事です。多少のトラブルは古いビルだから仕方がないという訳です。長期での工事総額は抑えられますが、「物」リスクが高まります。。例えばエレベータ更新を例に取れば、次の通りです。


現在ビルの建物設備機能等について、30年で工事不要に入れるか、工事対象に入れるかは、この工事サイクルをどう考えるかで決まります。また工事サイクルの引き延ばし、つまり工事の後延ばしは、一番手っ取り早い工事予算削減方法です。ただ後延ばししすぎると「物」リスクが高まりますから、自分の予算と相談をして、自分で適当なタイミングを検討します。決めるのはビル資産所有者です。

3.4 各工事の予算を削減する(取り組み方針)

3.33 ② 30年総工事予算を優先順位の高い潤に配分してみる」で30年総工事予算配分の対象となった各工事の予算削減を検討します。各建物設備機能や内装等工事には、それぞれ固有の費用削減のコツがあります。知っていれば個別で考えます。ビルオで作成をお手伝いする場合は、助言します。ただ30年分散修繕計画作成段階で知らなくとも構いません。ビル全体の方針を大まかに決めておきまましょう。対象工事について、後から調べる時間が十分にあります。
3.41 自ビル工事予算削減方針としての、各工事予算削減ポイント
自ビル工事予算削減方針としての、各工事予算削減ポイントは次の通りです。
④工事業者のサービス水準
⑤機能性能グレード
⑦工事範囲
⑥素材等(耐久性等) 各工事でどこを特に削減するかは違いますが、おおまかな方針は決めおいた方が、効率的です。
3.42 ③ 工事業者のサービス水準
誰も教えてくれないけれど、工事費用インパクトが大きいのが、相談をする業者のサービス水準です。腕の良し悪しと言う話ではありません。サービスやマネジメントが良い工事業者は、その分費用が嵩んで当然だという事です。

「サービスやマネジメントの良さ」=工事の「安心」です。「安心」は高額なのです。

建設業者に相談をすれば、実績あるプロが工事内容を考え、プロが工事を監督し、手厚い説明とサポートがあり安心だけれど、工事総額の30%の工事監理費その他多くの管理費が発生して超高額です。自分でDIYで工事をすれば材料費だけ、または職人に指示すれば、+人足代で済みます・ただ 工事内容を決めて材料を選び施工まで全てが自己責任です。費用水準が低い業者に、過剰サービスを求めるのは、「業者いじめ」と言います。わからない設備工事を無理にDIYしても、更なるトラブルを引き起こすリスクが高まります。各工事で、自分がどの程度業者の「サービスやマネジメント」を必要とするかは、ビル資産所有者が決める事です。


こうした業者のサービス水準は、工事業者のHPを見たり実際に話を聞いて、確かめます。
3.43 ⑤機能性能グレードを決める
ここも予算への影響が大きいところです。この削減は「ケチ」の腕の見せ所でしょう。

工事に際し、どのように工事をすべきかは工事業者が決める事ですが、その仕上がりの機能性能グレードをどの程度求めるかは、ビル資産所有者が決め事です。例えばエレベータ更新でも、せっかくだからと内装のグレードアップや、震災時制御やらテレビモニターやらを付けると、相応に金額が嵩みます。空調にしろ消防設備にしろ、付加価値を付ければ費用が嵩みます。内装工事も、高級やデザインを追求すれば、費用は天井無しです。


もちろん、将来のビル使用者が必要とする機能性能グレードは維持しなければいけませんが、日本のビルは設備機能グレード過剰が多いので、ここは予算の削減しどころが沢山あります。
3.44 ⑥素材等(耐久性等)を決める
素材、時に工法についても、同様です。「どうせ工事をするなら長く使えるものを・・」は合理的ですが、信頼性や長持ちは、比例して高額です。例えば。屋上防水工事も、保障期間が5年、10年、20年で比例して費用が増額します。

長期総額の観点から見れば、長持ちする方が合理的とはいえ、寿命を優先させて直近で必要とする他の重要工事予算が厳しくなれば意味がありませんから、予算調整で「余裕があれば、の選択肢」になります。
3.45 ⑦工事範囲を決める
工事範囲も、素材と同様です。日本では、「どうせ工事をするならまとめて行った方が、共通費が節約できる」と言われがちですが、実はそうとは限りません。 例えば1フロアで漏水事故が頻発するから排水管を更新する時に、ついでだから全フロアを更新するのは、合理的に聞こえますが、他フロアは漏水事故もなく後100年使用できるかもしれません。工事規模が大きくなると、不随する中間費も増額します。まとめて工事は隠れ費用も増え、必ずしも経済効果があるとは言えません。後が楽な事は確かです。ただ工事予算が厳しい場合、本当に必要な範囲だけを、小さく行う方が、その時には低予算かつ他の工事に予算を回せて、合理的です。
3.46 何度も何度も検討する
同じ総工事予算でも、どう予算配分をすれば、より「2.13.30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子」に近づくのか、多少試行錯誤しなければわかりません。試行錯誤によって、30年総工事予算を更に減らせる場合もあれば、増やしたい場合もあるでしょう。より現実的な2.13.30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子」を描けるかもしれません。


「決断する」とは「選択する」です。多くの分散修繕モデルを作成して、多く比較検討するほど、それが経験となって、「選択」=「決断」の精度があがります。だから是非沢山検討をしてみて区ださい。その中では、シンプルビル化や個性ビル化といったテーマで考えてみる事も、お薦めです。

3.5 主要ビル資産の維持工事の取り組みヒント

    ここで主要ビル資産の維持工事取組を勘がる際のヒントを大まかにご紹介します。実際の判断は個別の事情できまります。あくまでもご参考です。
3.51 電気設備・幹線
  キュービクルあるビルでは、電気主任技術者の助言を聞きます。ただキュービルのリニューアルといって、中の設備の必要部分だけを交換する場合と、箱ごとリニューアルする場合があります。もちろん後者の方が費用がかかります。近年電気使用量が増えているので、その対応が必要な場合もあります。

電気幹線は、これも電気技術主任者の助言があった場合ですが、増えた電気使用量に合わせて電気幹線も交換する場合もあります。

部屋の照明器具やコンセントは内装リニューアルの際に、変えていると思いますが、あまり古いままの箇所があれば、どこかで交換します。

忘れやすいのが、収益ビルの子メータですが、法律上は、10年に1回交換です
3.52 給排水管・設備
  排水管漏水はよくあるトラブルです。ただ昔の鋳鉄管の場合や、ジョイント部分に鋳鉄管が使われている場合、錆リスクがあります。ただ水使用量が多い住居・飲食ビルに比べて、水使用量が少ないオフィスビルは、そうそうありません。そう酷くない場合は、ライニング工事で対応ができます。

給水管は通常交換する必要はありませんが、給水が屋上高置タンク式の場合、現在は直結増圧式が推奨されていますから、タンク老朽化と共に、タンクを撤去して、直結増圧式に変更する例は多くあります。この時に給水菅の耐圧に心配があると、給水管を更新する事になります。 パイプスペースのアクセスが悪かったり、フロアごとにコンクリートで遮断されている場合は、新規パイプを建物の外側に設置します。よくある話です。
3.53 外壁
  外壁は、1に剥落事故リスクの防止 2に防水効果のリニューアルです。 マンションも含めて外壁修繕工事業者は多数ありますが、マンションに強い系は過剰サービスで高額工事を売る傾向がありますから、要注意です。防水工事は、保障がありますから、これもチェックします。

外壁タイルが古く補修タイルが手に入らず、全交換の予算もない場合は、タイルの上から塗装する手法もあります。 建物の印象を決めますから、塗装塗料の種類と色は、必ずサンプルを多数見て、じっくりと選ぶ事です。(なんとなく業者にお任せして、満足ではない・・という話は少なくありません。) また古いビルで外壁塗装をする場合、足場をかけたついでに、サッシ、鉄部、看板支柱等外回りの対応も必要に応じて行います。

屋上の防水塗装は、より短い頻度で行っている事でしょう。近年防水工法によって、10年や15年20年等がありますから、予算と相談をして選びます。防水工事は必ず保証があります。保証内容をしっかり確かめます。
3.54 エレベータ
  エレベータは、エレベータ保守会社が交換の助言をします。だいたい築30年を過ぎると交換を言われますが、50年以上使用しているエレベータも少なくありません。40年程度で保守部品保管期限が過ぎたという手紙をもらう事がありますが、部品はあるものです。(他の交換エレベータから取った部品が保管されています。) 古いエレベータでは、基準不適格が指摘される場合がありますが、これは違法ではありません。

エレベータ交換は、基盤交換か、かごも含めた全交換か、メーカー系エレベータ会社か、独立系エレベータ会社かで、費用が大きく変わります。またその後の保守費用も、POGかフルメンかで違います。 更に、付加価値設備をどの程度つけるかでも、費用が大きく変わります。バリアフリー対応や、地震時に近い階で自動停止といった機能、かご内モニターをつけると、当然に費用が嵩みます。どれを選択するかは、分散修繕として自分の頭で考える事です。

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Ⅳ リスク分散の確認とリスク調整

30年の工事予算配分モデルをある程度決まったら、再度にリスク分散の確認と、リスク調整のひと手間が残っています。30年の工事予算配分モデルで「自分の予算」「低予算」を考えました。最後にここで「低リスク」を実現する訳です。そしてここに「分散修繕」の名称の由来があります。

4.1 適切なリスクと工事の分散が、リスクを高めない秘訣

分散修繕でも、実際のビルの経年劣化部分のリニューアル工事等は、必要なタイミングで行います。ただそれが、「壊れたら工事式」行き当たりばったりではなく、「低予算低リスク」でビル資産の使用経営利益を100年以上維持する「分散修繕」である秘訣が、リスクの分散です。リスクを分散させて高めないから、分散修繕と言うのです。

ちなみに、リスク分散を考えなければいけないのは、築40年~築50年過ぎのビルです。外壁やエレベータ更新等や、漏水排水管の更新等重要工事の必要性が集中しがちだからです。中小ビルの建物設備機能数はさほど多くないので、この時期を過ぎると、心配せずとも自然にリスクが分散されていきます。
4.11 「数字」のリスクを高めない:理想の低リスク分散修繕
  分散修繕で数字のリスクを高めないビル資産維持工事取り組みは、最初に紹介をした通りです。

つまり「予算を準備して工事をする」「工事が終わると次の工事の予算を準備して工事をする」の繰り返しです。これを続けている限り、「数字」は赤字予算になりません。ところが「物」のリスクはまた別です。ここで数字を優先して工事ができず事故が起これば、元も子もありません。そこで「物」のリスクも徹底的に確かめます。
4.12 「物」のリスクを高めない
  「物」のリスクの確認は、30年分散修繕計画の表で、各建物設備内装等について、横に30年辿って、経年数からその状態を想像し、酷く悪化するところがないかどうかを、確認します。 例えば、
  • 重要工事の予定が、同じ時期に重ねる
  • 重要工事の必要時期に、必要予算が準備できない


といった場合、単純に工事サイクルを引き延ばして後延ばしにしていると、明らかに「物」リスクが高まります。ではどうすればよいのでしょうか?

例えば、次のような「物」のリスクを低減させる調整を行います。
  • 重要な工事を早めに行う
  • 重要度の低い工事を少し後ろ倒しにする
  • 重なる時期の工事規模を更に分割する
  • 重なる時期の工事予算をもっと削減する
4.13 負のサイクルを避ける分散修繕による築古中小ビルの在り方
  理想的にビル資産維持工事を分散して低予算かつ低リスクでビル資産維持が出来ている築古中小ビルは、次のような状態です。

一棟のビルの中に、古い設備や内装外壁と新しい設備や内装外壁とが、混在しています。多少不便なところや経年を感じるところがあっても、最新機能設備は揃っていなくても、酷く悪い状態はなく、必要最小限の機能性能や美観清潔感はあって、見た目も居心地も悪くありません。

こうした状態が「当たり前」になると、一次的に「物」のリスクや「数字」のリスクが高まる事があっても、酷く悪くなる前に低リスクな「当たり前」状態に向かい、リスクを軽減して、「当たり前」の低リスク状態を取り戻します。

そうして気が付いたらビルは100を過ぎているでしょう。

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Ⅴ 30年分散修繕計画の作成

ⅢとⅣは実際には30年分散修繕計画を作成しながら検討をします。

5.1 30年分散修繕計画の作成

30年分散修繕計画は、マイクロソフトエクセル等表計算ソフトを使用して作成をします。
5.11 30分散修繕計画の作成
基本は、縦に各建物設備を並べます。 横は、1年から30年後まで、毎年の留保予算とその累計、工事使用金額と使用後の残額累計が分かるようにします。

5.12 30分散修繕計画作成のコツは計算式の入れ込み
30年分散修繕計画作成では、計算式の入れ込みがコツになります。例えは一つ工事予定の数字を入れると、関係する全ての数字に反映されなければいけません。

適切な計算式の入れ込みがある事で、30年分散修繕計画は、単なる計画ではなく、検討と比較のツールとなります。30年の様々な分散修繕工事の計画を検討し、比較をしてより低予算低リスクの分散修繕工事を選ぶ事ができます。

5.13 いずれ計画なしでも自然に分散修繕ができるようになる
30年分散修繕計画の作成を通して、自ビルの分散修繕予算目線と、維持すべき建物水準がわかるようになれば、もうエクセルで計画を作成せずとも、自然にビルの将来と全体を考え、優先順位をつけて、必要な工事は必要と判断をして、予算を準備できるようになります。「当たり前」として現在ビルは築100年以上すぎても、適切に維持され、古くても趣あるヨーロッパの古い街並みの古いビルのような趣あるビルとして、存続しているでしょう。

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Ⅵ 分散修繕工事の実践

築古ビル資産所有者は、経年劣化がある自ビルの状態について、時々目を配る事が必須です。30年分散修繕計画の対象として厳選してビル資産維持工事はもちろんのこと、他にも必要な工事が出てくるかもしれません。低予算と低リスクでビル資産の利益を維持するビル資産所有者は、修繕対象の例えば「給排水ポンプ」や部品は別として、ある日突然重大故障や重大事故が起こる「物」のリスクを避けるべく、そこまで「物」リスクが高める前に、対応を判断しなければいけません。

6.1 準備

実際のビル資産維持工事判断は、実情ありきですが、状態を見てそろそろ工事が必要かな・・・と感じるようになると、早めに工事の下準備を始めます。  
6.61 予算準備
工事予算の準備を始めます。分散修繕計画で想定している期間の準備が必要です。この期間は、工事で工事予算を使ってしまわないよう、ビル全体に配慮して、工事予算を準備します。
6.62 工事業者を探す
同時に、工事業者の選定も始めましょう。時に想像以上に年月がかかります。 基準は、「3.42③ 工事業者のサービス水準」で決めたサービス水準の工事業者です。 ただ実際の決め手は、
  • 同様工事でどれだけ経験があるか
  • 相談のしやすさ
  • どれだけビル資産所有者の方針を聞いて考えてくれるか
です。相性の問題ですから、他ビルの事例の話などを聞きながら、相性を見極めます。この段階では、およその費用目線を話し合います。見積書は貰わないようにします。 低予算低リスクでビル資産維持を守りたいのであれば、例えば誰かから紹介を受けた問、〇〇さんの紹介だから・・では、選ばない事です。
6.63 図面等をなるべくデータ化しておく
既にデータ化されている方は必要ありませんが、まだの場合、工事に先立ってビルの竣工図や設備図、その後の追加工事書面、管理記録等書類は全てデータ化して整理をしておきましょう。 googleやマイクロソフトの共有フォルダに入れておくと、業者にアクセス権の付与だけで、必要データを渡せるようになります。

6.2 GO判断

(極力準備ができたら)工事GOの判断をします。トリガーは、人それぞれあるでしょう。例えば次の通りです。

「物」対象建物設備等の状態が悪化している
「数字」予算が準備できた。(税対策相続対策等の事情で)このタイミングで支払いをしたい。
「分散修繕計画」この後に重要工事を控えているから、その準備のためにこのタイミングで工事をしておきたい。
「個人的事情」工事検討の手間を、今ならかけられる。
6.31 共同プロジェクトとして、対等な立場で相談をする
ビル資産維持に欠かせない(資本的支出の対象となる)重要工事取り組みは、専門家・専門業者とビル資産所有者の共同プロジェクトです。

「1.3 ビル維持ではなくビル資産維持」「1.4 中小ビルの資産維持工事は、ビル資産所有者が判断する」の通り、専門工事業者は、「物」の現在のベストな問題解決考えます。 ビル資産所有者は、現在の自分の予算「数字」を考え、、将来のビル使用者の使用と将来の利益を考え、ビル全体でどのように分散修繕を行うかを考えます。

「3.4 各工事の予算を削減する(取り組み方針)」で検討をした各予算削減ポイントについても、改めて見直しをして決めます。

実際の工事において、最初からお互いが納得できる事は滅多にありませんから、お互いに話し合って工事プランをブラシュアップしていきます。
6.32 30年分散修繕計画で確かめる
またビル資産所有者は、該当対象工事の事だけを考えて、ビル資産維持工事を決める事はできません。工事時期、費用、内容を30年分散修繕計画に入力して、「数字」と「物」について他の工事予定や建物設備状態とのバランスを確かめます。必要に応じて他の工事予定を修正します。ここで他の工事予定の修正が難しい場合、より根本的な見直しが必要になります。

6.33 相見積もりは厳禁
より根本的な相見積りの問題は、相見積りには、そこに
「ぼったくられるのではないか不振」
「相手を損させても自分だけは損したくない」 という、相手不振の考えがある事です。自分が、「損させられるのではないか」と警戒していては相手も分かります。信頼関係が築けない相手に対して、業者も「相見積もり」されるのではと警戒します。自ビルの工事をどうやったら「経済的」出来るかを考えてもらえる訳がありません。先の例でも、Aの業者も二度とあなたの仕事をしなくなります。Bの業者も、「そういう人」として、通りいっぺんの仕事しかしてくれなくなります。 経済的に良い仕事をしてもらう事を望むなら、必要なのは相手への「敬意」です。

6.4 工事決定

工事内容がおおよそまとまったら、見積書を作成してもらい、最終確認をします。実際の工事決定にあたっては、「工事金額」だけではなく、次の3つも留意します。
6.41 工事内容に疑問を残さない
大きな工事にトラブルは尽きません。だから契約にあたっては、工事内容に疑問を残さない事です。特に営業担当者が入っている場合、営業担当者の説明と、実際の工事内容では、担当者が異なるため微妙に違う事はよくあります。ここを確かめる事に、遠慮をしてはいけません。工事業者もトラブルを嫌いますから、ビル資産所有者が理解をする事に協力をしてくれます。
6.42 補償・保証を確かめる
請負工事の契約記載「保証」は、工事内容や工事規模によって異なります。分散修繕ではあまり大規模工事は想定しませんが、トラブル防止として次の事は確かめておく事をお薦めします。
  • 工事完了の保証 (万が一業者が工事できなくなった場合、どこかが責任を持って引き受けてくれるのか)
  • 工事費用の保証 (工事中に増額の可能性があるかどうか)
  • 工事後の保証期間 
  • 工事中に誤ってビルを築づけたりビル使用者に損害を与えた場合の補償
6.43 免責事項を確かめる
また工事の免責事項についても、説明を受けておく事をお薦めします。たいていの場合、異議の余地はありませんが、トラブルの際にスムーズに効果的な対応が出来るようになります。

6.5 工事後

工事中は、トラブルが無い限り専門業者に仕事を任せます。滞りなく工事が進捗すると、工事完了(予定)日の連絡が入ります。
6.51 工事完了検査は必ず立ち会う
工事の大小に関わらず、工事完了検査は必ず行います。そして工事完了検査には、必ず立ち会い、工事業者から直接工事結果の説明を受けます。結果に不満なところがあれば、その場で言って直してもらいます。
6.52 工事書類は必ず受け取る
工事の大小に関わらず、工事書類は必ず受け取ります。図面やカタログ等があります。どこの何の工事をしたか、記録を残しておく事が重要です。また工事保証がある場合、工事保証書も忘れずに受け取ります。
6.53 保証期間終了前に、再点検する
特に防水工事等、一定期間の工事保証がある場合、保証期間が終了する前に、状態を確認しましょう。何か気になるところがあれば、例え些細な事でも工事保証期間内であれば、言う権利があります。時にそれは「問題ではない」と言われる場合もありますが、専門業者と話をする事で、安心できます。施工業者はたいてい自らの施行の後が大丈夫か気にかけています。だから嫌がられる事はありません。


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計画作成・助言・コンサルティング

総合案内
・自ビルに必要な工事の全体を把握できる
・工事判断の結果の、将来ビルとその過程を想像できる
→30年分散修繕計画の作成
・工事に優先順位を付けられる 将来のビル使用等を考える

100年時代ビル資産維持経営の考え方