築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者のための
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古い建物をどう延命させるか?建設業界ソリューションであるリノベーション・大規模改修工事は、数億円の高額投資です。一般向けではありません。けれど建物は、躯体及び多くの建物設備機能の集合です。個別に経年劣化個所をリニューアルするならば、さほど費用はかかりませんが、それでも数百万円~1千万円以上高額工事が普通です。それを、工事業者に勧められるままに工事をしていては、後で工事予算不足になり重要工事ができなくなります、またそのリスクを恐れて、工事を先延ばしにして、重大事故が発生したり、建物がひどくぼろビル化します。そして建物が負債化すれば、長く持ちきれません。
建物の延命は、専門工事業者の仕事ですが、建物所有者にとって、建物は負債化させては、長く持ちきれません。従来日本にはこの考え方がありませんでした。ビルの本場ヨーロッパをはじめ世界中では、
これがわかっています。だから建物を負債化させずに、築50年どころか築100年築200年のビルを現役で使用できています。その方法が分散修繕です。この分散修繕を日本で初めてご紹介します。便宜上、中小ビルを想定していますが、考え方は、マンション・戸建て・工場他すべての建物に共通です。
ちなみに分散修繕は、習うより慣れろ、です。だから遠慮なく直接聞いてください。
Ⅰ 分散修繕 |
分散修繕は、建物の寿命を延ばすための工事(資本的支出工事)を、自分の予算かつ低予算低リスクで取り組み、建物を負債化させずに、資産として長く延命続ける方法です。PLの修繕工事ではなく、BSの資本的支出工事が対象です。分散修繕の低リスクは、物のリスクと数字のリスク、現在リスクと将来リスク、をいずれも高めない事で実現します。こうしたリスクを高めない方針は、30年分散修繕計画作成を通して見つけ、自ビル長寿化プランとして決めておきます。方針がある事で、いつ資本的支出工事が必要になっても、ぶれずに分散修繕方針で工事を決め、建物を負債化させません。
まず具体的な分散修繕取り組みを見る前に、その特徴を確かめておきましょう。
分散修繕は低予算です。けれども工事業者の見積りを叩くという意味ではありません。またお金をかけるべきところには、お金をかけます。分散修繕は、必要な工事(内容)と重要度の低い工事(内容)を区別して、省ける工事(内容)を行わない事で、長期的に低予算を実現します。その結果、リノベーション工事と比べて、30年でも1桁少ない予算で建物延命ができます。
1.21 分散修繕の低予算とは
分散修繕の低予算とは、必要な工事はするが、過剰な工事をしない。工事で必要以上にお金を使わない。
というシンプルなものです。生活でもこうしたケチを徹している人は多いでしょう。
問題は「必要」と「過剰」 「必要な予算」の水準です。これは所有者が決める事です。管理者や工事業者ではありません。自分で必要と考えるところにはお金を使う。これを合理的に判断するのが、分散修繕です。
1.22 分散修繕は、自分の予算ありきの低予算
分散修繕は、自分の予算ありきです。ただ安ければよい低予算とは違います。
建物のどこにどの程度お金をかけて延命をするか、それはビル資産所有者が決める事です。それは、建物資産所有者にとって、どの程度の予算なら、建物が負債化しないか、の問題だからです。
予算が厳しければ、もしくはお金はあるけれどもお金をかけたくなかったら、ケチに徹した工事のやり方があります。一方で、建物を文化の体現として、建物の品格・グレード感に建物価値を見ていれば、相応の費用投下は必要です。
1.23 低予算とは、相見積もりで費用を叩く事ではない
相見積もりは、修繕工事では行っても構いませんが、資本的支出工事では、(工事仕様書を自分で作成できない限り、)相見積りは厳禁です。なぜならば、資本的支出では、単なる技能ではなく、「どう工事をするか考えてもらう」ところが、重要だからです。
どのみち相見積もりでは、そもそもその工事が本当に必要なのかどうかが、判断できません。どうであもよい工事を安く行っても、無駄な支出に変わりません。
分散修繕の低予算は、建物資産所有者が、必要な工事(内容)と重要ではない工事(内容)を判断して、重要ではない工事(内容)を削減する事で実現します。
1.24合理的な低予算は、大きすぎず小さすぎない工事規模で実現する
分散修繕の低予算は、必要な工事はするが、過剰な工事をしない。過剰な工事費用を削減する事で実現しますが、そのためには、適度な工事規模である事が必須です。
日本では、まとめて工事をした方が共通費を節約できるという考えがあります。これも間違いではありませんが、思慮の足りないまとめて工事は、
分散修繕で、何の工事(内容)はする、何の工事(内容)は、うちには必要ない 及び必要な工事をいつ頃するか、を考える際に重要な基準が「低リスク」です。低リスクを保てる限り、建物は負債化しないのです。そこでこの資本的支出工事のリスクを理解します。
1.31 資本的支出工事には2種類のリスクペアがある
資本的支出工事には2種類のリスクペアがあります。
「物」リスクと「数字」リスク
「現在」リスクと「将来」リスク
いずれも相反しています。片方のリスク対応を重視すると、もう片方のリスクが高まるのです。
1.32 「物」リスクと「数字」リスク
工事は、建物という「物」の問題を解決する事です。
資本的支出工事では、資本的支出工事費用の「数字」を投下して、BSの「資産」の数字を守ります。
この「物」リスクと「数字」リスクの相反は次のとおりです。
「物」リスクを恐れて、どんどん工事をすれば、工事費用過大で「数字」の負債化リスクが高まります。一方で「数字リスク」を恐れて、工事費用をケチりすぎると、建物設備のトラブルが増えて事故が起こったり使えなくなったりする「物」リスクが高まります。
1.33 「現在」リスクと「将来」リスク
また資本的支出工事は、建物の寿命を延ばし建物資産の「将来」を作る工事です。だから先の「物」と「数字」リスクを考える際に、将来のリスク考慮が重要なのです。また建物としての「将来」の「物」リスクには、Aの工事の結果が後からBで問題を引き起こす、といったリスクも含まれます。
この「現在」リスクと「将来」リスクの相反は次のとおりです。
分散修繕は、建物の使用を続けるために必要な資本的支出工事を、自分の予算かつ低予算低リスクで行い、建物を負債化させずに資産として使用を継続できるようにします。工事を分散してリスクを高めないので、分散修繕といいます。
1.41 分散修繕の基本形
分散修繕の基本は「なるべく定額の工事予算を留保し、工事資金を準備してから、工事をする」です。
これならば負債化せずに資産であり続けます。ただここに
30年分散修繕計画は、次の手順で作成をします。
2.1 準備1 将来のビルの在り方を考える
自ビルの長寿化マスタープランは、自ビルを資産として維持するプランです。
だから「将来のビル使用者が使用する将来のビルはどうあるべきか」をまず考えます。
2.2 準備2 現在の建物にある建物設備機能とその状態を洗い出す
一方で現在のビルにある建物設備機能や内装・外壁等、資本的支出工事の対象を洗い出し、状態を確認します。その後、将来のビル使用者が使用する将来のビルを考えて、優先順位のカテゴリー分けをしておきます。
2.3 総工事予算を決める
自分の予算ありきの分散修繕だから、まず自分で30年総工事予算を決めます。もちろん検討をしながら、削減が出来れば削減をしていきます。
2.4 何の工事にどの程度予算を配分するか
自分で決めた総工事予算を、優先順位が高い工事から割り当てていきます。ここで問題が、
各工事にどの程度予算を割り当てるか?
各工事をどのタイミング(工事サイクル)で行うか?
で出来る対象工事も違ってくることです。
実際には、どこの予算を削減するかで、試行錯誤する事になります。
2.5 各工事予算の削減
電気、給排水、外壁塗装、エレベータ、消防設備、内装等、各工事には特有の検討ポイントがあります。それは後で紹介をしますが、一方で建物所有者視点での、共通の予算削減ポイントがあります。
2.6 沢山比較検討をする
最初はいろいろな案を作成して、どれが「イケ」そうか、比較検討をします。将来のビルのあり方として、ぜひ検討に入れるべきが、シンプルビルです。
2.7 リスクを分散する
30年分散修繕計計画の仕上げとして、数字と物のリスクの分散を確かめます。リスクが高い時期がある場合には、更なるリスク分散で調節をします。
2.8 自ビル長寿化のマスタープランを作成する
最後に自ビル長寿化のマスタープランとしてまとめます。マスタープランはタイムレスです。状況がかわったら、修正変更もしくは作成しなおします。
具体的手法の全体像を見てみます。
自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕で、現在の建物はまだ100年超長寿化できます。建替えや高額リノベーションは不要です。築30年以上中小ビル資産・一棟所有中小マンション資産のご相談はまずビルオへ。長寿化プラン、安定ビル資産経営、その他問題解決の助言・指導・支援。また古い建物が持続できる街作りに対する助言も行っています。
ここから実践です。30年分散修繕計画の作成は、最初からエクセルに向かうのではなく、まず最初に考えておくこと(3.1)と準備(3.2)が重要です。資本的支出工事とは、ビルの将来の使用を作る事だからです。だから特に将来ビル像のイメージを持っておくことは重要です。自分の総工事予算(3.3)を何の工事(内容)に配分すれば、最も理想の将来ビルになるか、(3.4)どう予算を削減できるか(3.5)、計画を通して比較検討(3.6)をします。そして最後に更にリスク分散を確かめます(3.7)。そこから自ビルの長寿化マスタープランができます。(3.)
一方で現在のビルにある建物設備機能や内装・外壁等、資本的支出工事の対象を洗い出し、状態を確認します。ここは建物管理者や専門工事業者とも話し合う事をお勧めします。建物の将来について話し合うきっかけになります。また急がず必要なだけ時間をかけます。
2.21 自ビルの建物設備機能を全て洗い出す
潜在的な工事対象は、すべて洗い出しておきましょう。
業者が作成した長期修繕計画表がある場合には、その項目を見ます(キュービクル、給排水管等、概項目で十分です。細かい項目は工事業者の考える領域です。)竣工図は細かすぎます。長期修繕計画表がなければ、ビル管理会社/管理人に洗い出してもらうか、目視で点検確認をします。
2.22 過去の対象工事履歴の整理もしておく
必須ではありませんが、先に過去の建物設備機能のリニューアル等工事の履歴も確かめておきます。ビルの状態理解や工事サイクル検討の重要情報になります。
いつ頃どこをどう工事をしたか、だいたいわかれば十分です。正確な年月や金額は必要ありません。過去の工事履歴情報があれば一番ですが、無い場合過去の確定申告書も参考資料になります。税理士が固定資産一覧表を作成して、そこに資本的支出工事も入れている場合は、それも参考になります。記録がなければ、人の記憶や目視で工事の後をみつけて、なんとなく推測しておきます。どのみち築25年より前は、大きな工事はほぼありません。
2.23 洗い出した自ビル建物設備機能を状態で色分けする
洗い出した建物設備機能や内装外壁等について、一般的な実耐用年数を基に、過去の工事履歴も参考にして、現時点の状態で色分けします。例えば
無色:実耐用年数内
黄色:実耐用年数を過ぎている
赤:明らかな問題がわかっている対象
青:旧耐震基準建築建物等で耐震問題がある場合
2.24 今後30年で赤になる可能性がある建物設備機能をオレンジにする
次に今後30年の状態変化を考えて、30年内に赤になる対象を、30年分散修繕工事対象候補としてオレンジにします。ほとんどの主要建物設備はオレンジになるかもしれません。また耐用年数の短いものは複数回必要になります。例えば屋上防水工事です。
特別な調査は必要ありません。ここは予算も考えず、なんとなくで構いません。
2.25 今後30年で新しく追加したい建物設備機能をリストする
ここは遠慮なく、普段欲しいなーと思っている建物設備機能を全て追加します。どうせ後で優先順位をつけて検討しますから、気になるものは全てリストをしておきましょう。
2.26 洗い出した自ビル建物設備機能の方針を分類する
次に洗い出した自ビル建物設備機能(3.23)と新しく追加したい建物設備機能(3.24)を、次の方針に分類します。
この先工事検討の対象となるのが、赤、オレンジ、新しく追加したい建物設備機能候補です。せん。分類基準は2.13 30年後の自ビル使用者が使用している自ビル像実現です。ここもまた後で何度も見直しますから、最初はなんとなくで構いません。
2.27 工事対象候補に優先順位をつける
分類した工事対象候補に、優先順位を付けます。といっても3分類(絶対必要/なるべく必用/できれば)に分ける程度で構いません。これは現在の色ではなく、将来ビルの必要性で分類します。ついでに4タイプにも分類をしておきましょう。後で色々考えやすくなります。
2.28 リニューアル/新規追加工事対象について、具体工事名を挙げる
30年内にリニューアル/新規追加工事に分類した対象建物設備機能等について、実際に必要となる具体工事を調べます。中には技術が変わって単純リニューアルではない対象もある事に留意します。例えば屋上高置給水タンクは、現在では直結増圧式が水道局で推奨されています。またまとめて工事をする場合もあるでしょう。
ここでは、建物管理者や専門工事業者に意見を求める事もあるでしょう。(見積書は不要です。)
2.29 優先順位が高い工事の予算目線も調べておく
各工事予算の目線も調べておきます。現在であればインターネット検索でかなり調べられます。わからなければ、ビル管理者や工事業者にさらりと聞いてみます。調査や見積書作成は提案を受けても断りましょう。
各工事予算目安は、幅があります。だから各工事予算は、例えば200万円~400万円といった費用幅として把握します。
まず30年総工事予算を仮に決めます。その後の検討を通して、増減をします。
3.31 30年総工事予算を仮決めする
まず、30年総工事予算を仮決めします。
原則は、毎年一定金額確保です。
理想は、自用ビルであれば賃貸を想定して3%‐7%
収益ビルで財源である賃料収入の5%-10%
既に修繕資金の準備がある場合や、今後一時的な修繕資金確保の予定がある場合は、それはボーナスとして、毎年定額工事資金確保はやりましょう。一時金予定が狂った時でも、最低限の対応ができます。
財源確保が厳しければ、可能な限りで十分です。例え年間100万円でも30年で3000万円分工事ができます。
3.32 30年総工事予算もブラッシュアップする
この後予算配分で、足りなければ増額、予算を圧縮できれば30年総工事予算も削減します。工事予算削減は、経験とともに上達します。
自分で決めた総工事予算を、優先順位が高い工事から割り当てていきます。ここで
・何の工事をするか
・どの程度の予算を配分するか
・どのタイミングで行うか(工事サイクル)
を検討します。同じ総工事予算でも、これらの考え方次第で、リスクも将来ビルの在り方も違ってくるわけです。
2.41 必要工事に工事予算を配分してみる
30年総工事予算の箱を仮決めしたら、既に確かめた工事優先順位に従って、予定工事を入れていきます各工事予算は、この後の「各工事予算削減」でもっと考えますから、最初は調べた工事幅から、任意で選んでおきます。
最初は、全然予算が足りない!と絶望的に感じる事は普通です。
2.42 優先順位のどこまで工事対象にするか
予算が全ての工事対象リストの全てに回らない場合、一部の工事を切り捨てる事になります。
つまり「次の30年では工事しない」又は、「廃止」に分類を変えるのです。
必須工事はなるべく出来るようにします。(ここで難しい場合には、各工事予算削減で、工事を入れ込みます。)
2.43 工事時期(サイクル)の検討で、リスクバランスを考える
資本的支出工事は、工事サイクルです。100年200年を考えれば、必要工事は1回ではないからです。
どのみちいつリニューアル工事を行うかを考える事は、まさに「物」リスクと「数字」リスク、「現在」リスクと「将来」リスクのバランスを考える事です。
「 物」としてなるべく早めに工事すべきだけれど、予算節約を考えたら、なるべく先延ばしにしたい。
最初はこんなものかな、で仮決めしてみます。ここでどの時点なら予算が準備できるか、が問題にもなります。予算の準備を待って工事が遅すぎて「物」リスクも高めすぎてもいけない。
だから建物全体として、の調整が必要になります。つまり時期を調節したり、工事規模を小さくして工事予算を削減したりします。
特に建物が築40年築50年代では、重要工事が重なり勝ちです。ただ工事の先延ばしは、手っ取り早い工事予算削減の方法ですが、延ばしすぎるとリスクを高めるだけです。だから工事時期の検討をすることで、どこかで決める勇気を出す練習になります。
2.44 各工事予算の削減は非常に有効
もう一つの手が、各工事予算の削減です。もちろん見積書の単価や総額を叩く事ではありません。見積書の中身は、各工事業者が考える事です。素人の口出しや、また意見をもらおうと見積書を他社に見せるような事は厳禁です。そこで「ぼったくられているかも」と感じるような信頼できない専門業者に、相談をしている事に問題があります。
そうではなく、ここで言う工事予算の削減とは、工事の中でビル資産所有者が、必要な中身と削減できる中身とを分ける事です。これは見積書を読むという意味ではありません。ビル資産所有者が水準を決める事で、削減できる機能性能グレードや、工事業者の営業・マネジメントにかかる予算があるのです。次の2.4 各工事予算の削減で見ていきます。
実際の工事では、それぞれ専門工事業者の考えもあり、必ずしも計画の通りに工事ができるとは限りませんが、資産所有者が適正水準を考えてある事で、工事業者と建設的な話し合いをして、工事内容を煮詰める事ができるようになります。
電気、給排水、外壁塗装、エレベータ、消防設備、内装等、各工事には特有の検討ポイントがあります。それは後で紹介をしますが、一方で建物所有者視点での、共通の予算削減ポイントがあります。
基本は建物としての方針を見つけます。(それが一番無駄がありません。)ただ、工事対象によって色を付ける事で、より柔軟に予算を削減したり、またはより個性あるビルを実現したりすることができます。
2.51 工事時期の考え方(工事サイクル)
各建物設備機能や内装等のリニューアル工事は「サイクル」です。1度で終わりでありません。このサイクル概念が非常に重要な理由は、ここをどう考えるかで100年200年といった長期での工事総額が大きく変わるからです。エレベータの例は次の通りです。
完全に機能停止すれば別ですが、その前の「経年劣化状態」の判断は人によって違います。その時間的幅は大変広いのです。ただリニューアル工事を早め早めに行えば「物」の事故のリスクは高まりません。けれども長期間で総額が相当に高額になります。一方でリニューアル工事を引き延ばせば、工事費用は節約できますが、「物」の事故リスクは高まります。だからどの程度にするか、「物リスク」と「数字リスク」を天秤にかけて自分で決めなければいけません。
尚、工事サイクルは、各建物設備機能等一定ではなく、素材や工法の進歩でサイクルが劇的に伸びるものもあります。(例えば給排水管が鋳鉄管から塩ビへ移行)そもそも終了するものもあります。(多くの地域で屋上高置給水タンクが推奨されなくなった)
2.52 ・何をリニューアル工事のきっかけにするか
各建物設備等機能等のリニューアル工事サイクルを決めたら、何をリニューアル工事を決めるきっかけみするかも考えておきます。誰でも早目に対処をしたい気持ちがありますが、現実的な予算の問題もあるのです。
例えば次のようなきっかけがあります。
最初はいろいろな案を作成して、どれが「イケ」そうか、どれが負のサイクルに陥るリスクが一番なさそうかを、比較検討をします。将来のビルのあり方として、ぜひ検討に入れるべきが、シンプルビルです。
2.61 作成イメージの例
例えば小さ目中規模ビルでキュービクル・エレベータ有 予算は厳しく年間120万円確保し、30年で3600万円の計画は次の通りです。
2.62 沢山検討する
1つ作成して終わりではなく、工事予算の配分パターンを色々と考えます。それはイコール「何の資本的支出工事を行うか(何は工事しないか)」の選択肢を自分で沢山作る事です。決めるとは、選択です。だから沢山の選択肢を検討すればするほど、より良い方針が見つかります。ここはいろいろな可能性を検討してみましょう。計画であれば費用は発生しません。
2.63 将来のビル像も何度も見直す
工事予算の削減は、イコール「将来ビル像の見直し」です。将来ビル像を見直し、総工事予算を見直し、工事予算配分を見直す・・・を何度も繰り返して、工事予算は削減できます。日本のビルは、一概に設備過剰が多いですから、見直しの余地は沢山あります。
2.64 シンプルビル化の検討は必須
低予算で実現ができる将来ビル像の傾向として、
30年分散修繕計計画の仕上げとして、数字と物のリスクの分散を確かめます。リスクが高い時期がある場合には、更なるリスク分散で調節をします。
2.71 まず数字のリスク分散を確かめる
数字のリスク分散の基本は、既にのべた通りシンプルです。
分散修繕の基本たる「なるべく定額の工事予算を留保し、工事資金を準備してから、工事をする」が出来てれいば、数字のリスクは高まりません。問題があるとすれば、予算計画の実現性です。
2.72 現在から将来に至る物リスクを確かめる
問題は、「物」リスクです。特に操作しやすい数字リスクを抑えるために、つい物リスクを高めてしまっている事は、ありがちです。
30年分散修繕計画の作成では、各建物設備機能の状態とビル全体の状態を、毎年想像して確かめます。
3.22 洗い出した自ビル建物設備機能を状態で色分けするで、建物設備機能設備や内装外壁等を状態で色分けしました。
無色:実耐用年数内
黄色:実耐用年数を過ぎている
赤:明らかな問題がわかっている対象
次に、3.23 今後30年で赤になる可能性がある建物設備機能をマークするで30年の推移を考えました。ここでは更に30年の分散修繕工事の結果も踏まえて、考えます。
つまり例えば排水管といった1建物設機能は、
無色ー黄色ーやがて漏水事故を起こす赤になり、リニューアルで無色に戻ります。
各建物設備機能はそれで構いませんが、建物一棟として並べて見た時に、
ある時期に赤が集中すると、それは「物」リスクが高い状態です。長い間にはそうした状態もあり得ますが、長く続いて「負のサイクル」に陥ると、問題です。「負のサイクル」リスクが高まっているならば、それはリスク対応をしなければいけません。これを確かめます。
3.73 物リスクが高い時期の調整1 数字の調整
赤が多い時の調整として、まず予算にある場合は、臨時予算の投入があります。また、推奨しませんが、工事のための借入金の手もあります。負債も資産のうちという人もいますが、それは低金利時代の話です。借入金は金利支出を作ります。これから金利上昇時代に向けては、より慎重になるべきです。
3.74 物リスクが高い時期の調整2 工事費用の更なる見直し
赤が多い時の調整として、赤が多い時期の各工事費用を更に削減して、なるべく早く次から次へと工事ができるようにする手も有効です。
この工事予算の削減には、
最後に自ビル長寿化のマスタープランとしてまとめます。マスタープランはタイムレスです。今後長い間に状況がかわったら、その都度修正変更もしくは作成しなおして、気が付いたら自ビルは資産とし100年超をとっくに過ぎているでしょう。
3.81 30年より先の工事対象も考慮する
30年分散修繕計画では、とりあえず30年と期限を区切って、自分の予算で何の工事をどのようにできるかを考えました。マスタープランとしては、改めて全ての建物設備機能が対象です。
30年で工事対象に入らない建物設備機能には2種類あります。
計画作成前に既にリニューアル工事を行ったものと、
今まで何もしていなけれど状態悪化リスクが低いものです。
前者には、作成した30年分散修繕計画と同じ考え方で、工事サイクルを決めます。
後者については、便宜上工事サイクルを100年としておきましたが、そのまま100年超使用ができても驚きません。せいぜいひょっとしたらもあるから念のため程度の位置づけです。
自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕で、現在の建物はまだ100年超長寿化できます。建替えや高額リノベーションは不要です。築30年以上中小ビル資産・一棟所有中小マンション資産のご相談はまずビルオへ。長寿化プラン、安定ビル資産経営、その他問題解決の助言・指導・支援。また古い建物が持続できる街作りに対する助言も行っています。
30年分散修繕計画が出来たら、ここでそれを活用して実際の工事判断をどのように進めるか、例をご紹介します。工事取り組みスタイルに決まりはありませんから、この通りである必要はありませんが、相談をする専門工事業者に過大な負担を与えない配慮及び資本的支出工事で相見積りは厳禁であることは、留意をしてください。
実際のビル資産維持工事のような重要工事検討の流れは、次の通りです。
ビル資産所有者は、工事の必要性を認識すると、30年分散修繕計画をもとに、必要に応じて他の工事も調節して、工事予算を確保し、工事の検討を始めます。
分散修繕工事対象で計画作成時に考えていた「リニューアル工事のきっかけ」になりそうになったら、または計画をしていなかったけれど工事の必要性が出てきたら、工事を検討します。
30年分散修繕計画表を確認し、他の工事予定と重なる等、30年総工事予算を確保できるか、確認をします。ここでバッティングがある場合、改めて調整を検討します。
基本は、2.41 工事業者のサービス水準 で決めたサービス水準の業者を探します。管理会社や人の伝手、HP検索など方法はいろいろあります。なるべく多くの業者と話す事をお勧めします。
最初は見積書や現地調査などはお断りして、話を聞きます。特に同様建物の事例と費用目線、工事に対する姿勢をを聞きます。
最初のゴールは、より具体的な相談に進む業者を決める事です。評価は、実力や仕事に対する熱意、同様事例の経験、それから話のしやすさです。ただ営業担当者がトークが上手なだけ、という場合もあるので、そこは留意をします。
話が出来そうであれば、分散修繕計画作成で考えていた、
感触の良い専門業者に出会えるようになったら、相談をする専門業者を選びます。
現地調査後に、改めて建物方針をどう実現するか、話し合います。
ここで参考情報として、将来のビル使用者や他の工事計画等も話をしておくと、より建物に合った案が出てきやすくなります。
最初の提案が、最初から完璧な事はまずありません。お互いに意見を出し合ってブラッシュアップをしていきます。話し合いを続けて、どうしても合わないと感じた場合は、お断りをして次の相談業者を探します。(現地調査費だけお支払いをする場合もあります。)
ある程度予算目線が見えたら、30年分散修繕計画表で、現在年度い該当工事の予算を入れます。必要に応じて他の工事も調整してアップデートをします。 そうして、自分の予算かつ低予算低リスクが続く事を確かめます
分散修繕対象のビル資産を維持するための資本的支出工事では、相見積りは厳禁です。現在費用節約を狙って現在のリスクを避けて、将来のリスクを上げる行為です。
ちなみに公共工事では相見積りを行いますが、役所が工事仕様書を作成します。時に工事仕様書を作成するコンサルタントを雇っています。そして安い業者に依頼したことを議会で説明するために行いますが、談合等問題が多い事はご存じの通りです。
けれども一般の私達は、工事仕様書など作成できません。そして「低予算」=必要以上の工事(内容)を省いて工事予算を削減するには、専門工事業者に考えてもらう事が沢山あります。ただその「考えてもらう」は無料ではありません。相手に考える時間、手間、そして何より貴重な知恵をサービスしてもらっています。これは相見積りをするなら、本来コンサルタントにお金を払って考えてもらう事が含まれています。
ところが、相手が手間と時間と知恵を費やして作成した見積書を、安易に相見積りと称して他の専門工事業者に見せたり、内容を話したりする中小ビル所有者が後を絶ちません。これが非常に問題になっています。
例えばそこでAという工事業者が考えた見積書を、相見積りと称してBの工事業者に見せれば、それはA社のアイデアをB社に流出させる窃盗行為です。B社はA社のアイデアをいただいた上で、アイデアを考える手間もなく、より安い見積書の作成ができます。ただB社もそんな人のために、良い仕事はしません。A社もB社も、将来にわたってそのような人は信頼しません。
相見積もりの背景にあるのは、「ぼったくられるのではないか不振」「相手を損させても自分だけは損したくない」という、業者不信です。それでは、工事業者と良い関係を築き、低予算でかつ良い仕事をしてもらう事は難しいでしょう。
本当に工事業者に、低予算で良い仕事をしてもらうためには、相見積は絶対に厳禁です。
工事請負契約締結に際しては金額及び支払時期、工事内容及び工事期間の確認はもちろんのことですが、発注側の重要権利として、
さて、ひとたび工事請負工事契約を締結した後は、工事終了まで、専門工事業者がリーダーです。
専門工事業者は工事を請負い、工事期間中は自らリスクを請け負って工事をしてくれます。だから専門工事業者の工事に協力し、素人口出しで邪魔をしてはいけません。発注者としても、工事中は不慮の事態にいつでも対応ができるようにしておきます。
工事が終了したら、工事完了検査は必ず立ち会います。 工事仕上がりで気になった点は、すべて遠慮なくここで言い、修正が必要であれば修正をしてもらいます。図面、工事仕様書、説明書、保証書の類の書面は必ず受け取ります。
工事保証期間がある場合には、補償期間終了の直前に、自分で点検をするか、工事をした専門工事業者に工事保証終了前点検をしてもらいます。(空調や消防設備といった「物」系はあまりやりませんが、屋上や外壁の防水等工事は、必ず見てもらいます。)
自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕で、現在の建物はまだ100年超長寿化できます。建替えや高額リノベーションは不要です。築30年以上中小ビル資産・一棟所有中小マンション資産のご相談はまずビルオへ。長寿化プラン、安定ビル資産経営、その他問題解決の助言・指導・支援。また古い建物が持続できる街作りに対する助言も行っています。
ここでは、主要工事取り組みのヒントをご紹介します。
キュービクルある建物では、電気主任技術者と相談をします。キュービルのリニューアルが必要な場合でも、中の設備の必要部分だけを交換する、箱ごと総リニューアル等いろいろなやり方があります。もちろん後者が高額です。
近年電気使用量が増えて、増えた電気使用量に合わせて電気幹線も交換する場合もあります。
部屋の照明器具やコンセントは、内装リニューアルの際にリニューアルし、LED化もされていると思いますが、古いコンセントは火災リスクがあります。また蛍光灯は廃棄費用が高額になりつつありますから、あればどこかで更新をします。
忘れがちが収益ビルの子メータですが、法律上は、10年に1回交換です。
排水管漏水はよくあるトラブルです。昔の鋳鉄管や、ジョイント部分に鋳鉄管が使われているタイプでは、更に錆リスクがあります。
水使用量が多い居住用マンション・飲食ビルは、漏水事故が起こりやすいですが、水使用量が少ないオフィスビルは、さほど漏水事故は起こりません。
よほど酷くならない限り、ライニング工法(管更生)工事で対応ができます。ただ漏水事故が頻発する箇所では、該当横菅を更新します。
ビル・マンション等の給水は、昔は高置給水タンクが一般的でしたが、現在は多くの地域で、10階建てくらいまでは、直結増圧式が水道局に推奨されています。(時々対象外がありますが、給排水菅工事の業者に聞けばわかります。)高置給水タンクから直結増圧式にリニューアルをすると、建物内水質が良くなる上に、毎年の高置給水タンク清掃・保守・修繕費が発生しなくなります。ただ一方で、単純リニューアルとはならず、給水縦管を増圧に耐えられるものにリニューアル、ついでに排水縦管もリニューアル。また必要なくなった屋上高置給水タンクを地上に降ろす、その後を防水処理する・・等工事が不随して総額が高額になりがちです。やるにしろ、予算確保とタイミングは30年分散修繕計画で計画をします。
給水ポンプや排水ポンプは、定期的に壊れますから、その都度修繕費で交換します。
外壁は、マンションも含めて大規模修繕工事業者は数多くありますが、高額になりがちな一方で、サービスや考え方が千差万別で、業者を選ぶのも工事内容を決めるのも、大変難しい領域です。
外壁修繕工事には、雨漏り止める、美観を回復する、防水保護をする、の3つの目的があります。同時に鉄部やサッシ工事等を行う場合もあります。それぞれ何が必要か、どうすべきか、丁寧に話し合います。
市街地の防火地域の耐火建物で隣建物と隣接している場合建物は、前面だけで手入れで済む場合がほとんどです。(雨漏りがない限り)外壁タイルが古く、補修タイルが手に入らない場合、タイルの上から塗装する手法もあります。このあたりはアメリカでは既に3Dプリンタで安価に補修タイル作成ができていますから、3Dプリンタ修繕の導入を待ちましょう。
屋上の防水塗装は、既に行っていると思います。近年防水工法によって、10年や15年20年等がありますから、予算と相談をして選びます。防水工事は必ず保証があります。保証内容をしっかり確かめます。
エレベータのリニューアルは、やり方で費用インパクトが多いところです。だから慎重に考えましょう。
エレベータリニューアルの判断そのものの相談相手は、現在のエレベータ保守会社です。だいたい築30年を過ぎると交換を言われます。40年程度で保守部品保管期限が過ぎたという手紙をもらう事がありますが、部品はあるものです。(他の交換エレベータから取った部品が保管されています。)既存不適格を指摘される場合がありますが、これは違法ではありません。
ただしリニューアルに際しては、リニューアル費用+30年の保守費用の総額で考えます。
■会社を選ぶ
エレベータ会社には、メーカー系と独立系があります。前者は、三菱・日立・東芝・日本オーチス・フジテックの5大メーカー三菱や東芝といった大手メーカーです。独立系は、多くは保守会社ですが、自社でエレベータ開発をしている会社や外資もあります。両社を比較すると、メーカー系は高額で独立系はかなり経済的です。
■工事内容を選ぶ
エレベータのリニューアル工事は主に2つのやり方があります。基盤交換と籠ごと交換です。前者は、経年劣化するのはエレベータを制御する基盤だから、その基盤だけを交換します。ただ数十年たつとエレベータ内部も汚れてきます。新しい地震制御や緊急通話等の追加もしたい。すると籠ごとすべて全交換することになります。もちろん後者の方がはるかに高額です。
■その後の保守メニューを選ぶ
エレベータ保守には、フルメン契約(フルメンテナンス)とPOG契約があります。フルメン契約では、故障の際の対応や(軽微な)交換部品がすべて込みです。POG契約は、故障の際の対応を都度修繕工事費として支払います。ただしフルメン契約は、毎月のエレベータ保守費がPOG契約と比べて、はるかに高額です。エレベータリニューアルの際は、その後の保守について、両方の費用を聞いて、それぞれの30年総額を比べて、どちらにするか選びます。例えば30年総額で、フルメン契約の方が1千万円よりはるかに高い場合、それでもう1回エレベータリニューアルが出来る訳です。
日本では内装工事もすぐに、内装工事業者にお任せですが、本場ヨーロッパや他国の一般のビルやマンション、戸建て住宅所有者は、内装工事のかなりを自分でやります。建物内部のリフォームを、必要なところだけ職人さんを雇って、住みながらすべて自分で工事をする人も少なくありません。現在では、工事のやり方を教えるyoutubeプログラムも沢山あります。
→ はじめに
→ 建物を長寿化とは、建物を負債にしない事
→ 建物を負債化させずに長く使用するための分散修繕
→ 地域賃貸マーケティングで賃貸も継続する安定ビル資産経営
→ 建物資産のアセットマネジメントと多面性
自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕で、現在の建物はまだ100年超長寿化できます。建替えや高額リノベーションは不要です。築30年以上中小ビル資産・一棟所有中小マンション資産のご相談はまずビルオへ。長寿化プラン、安定ビル資産経営、その他問題解決の助言・指導・支援。また古い建物が持続できる街作りに対する助言も行っています。