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住宅をマンションを中小ビルを永久資産化で、縮小時代に豊かさを手に入れようで述べた通り、 住宅、マンション、中小ビル、社会的インフラストラクチャー等は、適切に建物の寿命を延ばす資本的支出工事を行えば、いくらでも延命ができる。そして昭和後半の人口増大需要増大投資適格時代と異なり、人口激減経済縮小で先行き不透明なこれからの日本では、新築/取得投資からの積み上げ利益の最大化を考えるアセットマネジメントの視点では、建物は極力長く使用利益を保つように延命を続ける事が、低リスクで合理的だ。中でも大資本や不動産投資家、公共団体と違い、個人の住宅、マンション、中小ビル所有者は、あらゆる高リスクを避けなければいけない。分散修繕は、そうした個人の個人の住宅、マンション、中小ビルを永久資産にする方法として、本場英欧米をはじめ、世界中で実践されている方法だ。分散修繕は、特別な専門知識も必要せずに低予算低リスクで建物使用納得度を保つ資本的支出工事を行う。日本人は、日本は地震国だから木造建築文化国だからと言いたがるが、世界では地震国も木造建築文化国も日本だけではない。日本でも、もちろん分散修繕は実践できる。つまり、日本の住宅、マンション、中小ビル等建物も、永久資産となり、次世代、その先の世代へと承継できる価値ある資産なのだ。 分散修繕の対象は、全ての建物・建造物だ。
1 建物を永続資産にする分散修繕とは |
分散修繕は、住宅、マンション、中小ビルの使用利益を長く延命して、永久資産にする工事取り組みの方法だ。基本は、
建物の使用を継続しながら、
低予算かつ将来のリスクを高めずに、建物使用者の納得度を高め、
ビル資産を延命・長寿化させる。
1.1 分散修繕は、建物を経済的に延命する方法
最初におさらいをすると、建物は建物躯体と建物設備機能の群の集合体だ。

建物延命には、1度にまとめて建物設備機能群をリニューアルする方法(フルリフォーム・リノベーション・大規模改修工事・再生工事)及び経年劣化や機能不足建物設備機能を個別にリニューアルや新設する方法(壊れたら工事式、分散修繕)がある。分散修繕は、一件壊れたら工事式に見えるが、将来リスクも高めないよう、よく考え準備が出来ているところが、単なる壊れたら工事式とは違う。)
1.2 建物は資産でなければ維持ができない。建物が負債化へのリスクとは
しかし建物延命には、重大な原則がある。それは所有者にとっては、建物は資産であり、資産でなければ維持ができない事だ。だから物の建物延命であれば、フルリフォーム・リノベーション・大規模改修工事・再生工事が有効でも、金額が高すぎるという理由で、普通は手を出せない。つまり建物が資産ではなく、負債になるリスクが高いから、選択できないのだ。
建物延命のリスクには、物リスクと数字リスクのペアがある。また現在リスクと将来リスクのペアもある。いずれも片方を下げると反対側が高まるシーソーの性質がある。多少リスクが高い状態でダメになるほと建物資産はやわではないが、いずれかが高い状態が続くと、どんどんリスクが高まる負のサイクルに陥り、建物は寿命になる。従って、建物延命では、極力いずれかのリスクが高い状態を長く続けない事が、原則だ。
1.3 建物資産延命の利益と費用の考え方
ところで建物を使用利益を産む資産として延命続けるとは、
建物延命で得られると期待できる利益>延命工事の費用
を継続する事だが、日本人は、その利益の考え方と費用の考え方の両方を、新しく学ばなければいけない。
つまり従来日本人は、建物について管理(プロパティマネジメント)の考え方しかなく、工事費用は修繕工事費用の考え方しかなかった。管理(プロパティマネジメント)はPL及びBSのPLしか見ない。だから賃料収入(自用/自宅の場合は、賃貸した時の賃料を払わずに済んでいる事が収入と考える。)が、建物が古くなり減少すると価値が無いと考え、一方で建物延命にかかる工事は、修繕工事同様に工事業者任せで、かつ費用が高額で利益がなくなると考えた。
しかし実は建物の延命は、建物アセットマネジメントとして考える事だ。つまり建物延命で期待すべき利益は、長期で考える利益総額であり、一方で建物延命の工事とは、建物資産価値を(工事をしない場合に比べて)上げる(守る)資本的支出工事である。資本的支出工事はBSの資産として計上され、減価償却で費用化される。だから収益上の延命工事費用のインパクトは、減価償却分しかない。
この考え方がわかると、建物延命の長期利益の観点で、時に高額な資本的支出工事を行っても、費用インパクトは減価償却分だから、使用利益は維持できる事になる。
1.4 分散修繕が実現する建物が永久資産とは
従って、上手に建物延命に必要な資本的支出工事を行えば、次の通りの永久資産の会計モデルが実現できる。

もちろん数字が優先して、物のリスクを高める事はできない。賃料収入は立地条件で変わるが、工事費用はどこでもさほど変わらないため、多くの中小ビルやマンションでは、工事予算はタイトになる。そこで自分の所有する中小ビルやマンション他建物で、どのようにこの永久資産の会計モデルを作るかを考えるのが、分散修繕だ。
1.5 分散修繕の基本系
永久資産の会計モデルを実現する分散修繕の資本的支出工事取り組みは基本系がある。工事予算を準備してから、資本的支出工事を極力低予算で行う。終わると次の工事予算を準備し、工事予算が準備できてから、次の資本的支出工事を極力低予算で行う。この繰り返しで、負債を作る数字リスクが高まらない。
1.6 低予算低リスクの基準は人によって違う:自分なりの分散修繕の基本方針を見つけなければいけない
この実現が簡単そうで簡単ではない理由は、実現の在り方が建物1棟1軒/所有者の一人一人で異なる事だ。建物使用利益は立地等条件によって大きく異なるが、工事費用は日本全国およそ変わらない。工事予算準備がある人もいれば、逆にまだ負債返済が続く人もいる。建物に何の機能性能グレードがどの程度求められるかは、将来の建物使用者によって違う。だから分散修繕にあたっては、資産所有者は自分なりの分散修繕の基本方針
1自分の総工事予算
2何の工事が必用な(効果がある)のか
3自分の低予算水準
4自分のリスク許容度
を実は自分で決めなければいけない。
分散修繕を伝統的に行ってきている英欧米や世界の他国の住宅、マンション、中小ビル等所有者達は、自然にこれらを効率良く考えている。日本はその伝統と経験はないが、30年分散修繕計画を作成する事で、自分で見つける事ができる。
1.7 資本的支出工事は、建資産所有者が決める事と専門工事業者が決める事がある
尚、この建物資産所有者が決める事についても、修繕工事との違いを整理して理解する必要がある。
通常の修繕工事であれば、工事は管理者や専門工事業者に任せて構わない。(結果に大きな違いはないからだ。)まただから「安い」を基準に選ぶ事もできる。
しかし建物の寿命を延命する「資本的支出工事」は違う。建物資産所有者は、自分の資産と利益を長期に守る観点から、建物アセットマネジメントとして、
計画作成が必用なのは最初だけである。一度方針を見つければ、通常のマンション、中小ビルならば、同じ方針で建物資産の延命・長寿化が継続できる。だから建物延命・長寿化が文化になっている英欧米をはじめ世界中のマンション、中小ビル所有者達は、わざわざ計画作成したりしていない
作成には次の下準備が必用だ。
最初に、自分の総工事予算を考える。これは純粋に数字として考える事ができる。自分の予算が決まっている場合は、自分の予算で考え、特に決まっていない場合は、まず一般的な予算目安で考え、それからこの後の「3自分の低予算水準」で予算を削減し、総工事予算の削減も検討する。
2.1 準備: 将来⑤30年の資本的工事予算の財源を確かめる
今後30年の資本的工事予算の財源を確かめる。原則は、安定財源だ。収益ビルなら賃料収入、企業なら事業売上、個人であれば個人の定収入がその例である。既に修繕資金の準備や、臨時財源の予定がある場合は、予備費として取っておく事をお勧めする。100年200年を考えると、安定財源こそが頼りだからだ。
2.2 予算⑥30年の分散修繕工事予算を仮決めする
ここは、30年分散修繕計画作成の目的の1つである・自分の総工事予算の検討にあたる。さりげに重要だ。
まずは、総工事予算を仮決めする。(検討中にプラスマイナスもありえるため、最初は仮決めとする。)
30年総工事予算の原則は、毎年一定金額確保。
理想は、
自用ビルであれば賃貸を想定して3%‐7%
収益ビルで財源である賃料収入の5%-10%
ベースは毎年定額工事資金確保として、修繕資金の準備がある場合や、今後一時的な修繕資金確保の予定がある場合は、ボーナスの予備資金として留保しておく。
2.3 自分にとって利益を確保し無理のない予算で十分
もし財源から上記の留保が難しければ、可能な限りで十分だ。例え年間100万円確保できれば、30年で3000万円分工事ができる。工事予算が潤沢ならそれなりに、工事予算が厳しくともそれなりに、工事のやり方はある。
2.4 30年総工事予算も検討を通して、どんどん削減していく
最初の30年総工事予算は、あくまでも仮決めだ。この30年総工事予算で1つ計画が出来てもそこで終わりではなく、次は30年総工事予算そのものの削減を検討する。
どのみに工事予算は、経験が少ないと不安で多く見積りがちとなり、経験と共に思い切った削減もできるようになる。だから何度も何度も繰り返し見直し、30年総工事予算の削減に努めたい。
先に、費用対効果を出すために欠かせない、「2何の工事が効果があるのか」を先に考える。
3.1 準備:30年後に向けた将来の建物使用者をイメージする
ここは考えどころだ。今後30年のビル使用者を、具体的に想像する。例えばビル使用者は女性が多いか、男性が多いか、若年層が多いのか平均年齢が高めか・・、使用は事務所か、店舗か、事務所と一言言っても、来店型か、堅い雰囲気か、自由なスタイルを好むか・・といった具合だ。手法としてマーケティングのペルソナ手法が役に立つ。
3.2 準備: ③30年後に向けた将来の建物使用者がどのように建物を使用するか
更にその延長として、この考えた将来の建物使用者が、建物をどのように使用するか?具体的に考える。例えば、住居、オフィス等用途で異なるが、朝から夜までの一日を考える。
3.3 ④この建物が使用者が納得して使用できているであろう将来の建物イメージ
そして、更に重要な考えどころとして、そのように建物使用者が納得をして使用している自ビルが将来どのような様子か、具体的に想像する。なるべく具体的かつ細かく想像する。
例えば現状維持という場合でも、本当に何も変わらないのか、細かな使い勝手は改善されるのか、等バリエーションは多い。ここで言うのは「使用者の納得」であり、「使用者満足」ではない事に留意したい。使用者満足を求めては、いくら費用をかけても際限がない。最終的に追及をしたいのは、低予算で実現できる「使用者の納得」のボトムラインだ。
3.4 沢山考える。低予算で高納得度を追求する
将来にビル像は、1つ2つではなく、無数の可能性がある。またどのみち具体的な予算を検討している時に、何度も何度も将来ビル像を見直す事になる。将来ビル像にこうあるべきといった解はないが、よほど潤沢な予算が無い限り、目指すは低予算かつ将来建物使用者の高納得度だ。
低予算かつ将来建物使用者の高納得度のコツは、なるべく現在建物の個性、良さを生かす事だ。大金を投じた全身整形でみんな同じ顔より、個性を愛する人は多い。また色々多くの同様物件(海外事例も含めて)を見る事も、参考になる。
一方で、注意をしたいのが、改善点を他人に教えてもらおうとする事だ。「親切に」改善点を教えてくれる人は、決して予算の心配をしてくれない。他人の意見はあくまでも参考である。
3.5 低予算将来ビル像の例
特に低予算を追求するのであれば、次のテーマは基本だ。
■シンプルビル
シンプルビル化は、 徹底的な工事対象削減+建物機能性能グレードの低減だ。欧州はシンプルな築古ビルが多いが、シンプルならではの趣がある。
■個性化ビル
これは、建物の建物設備機能にメリハリを付けたり、建物外観や内部に強い特徴を持たせ、築古ならではの個性を作る方法だ。ただし自信と確信が必用だ。
ここから、具体的な自分の建物の資本的支出工事について「3自分の低予算水準」を考えるが、最初はまず準備の準備として、現在の建物にある建物設備機能を洗い出し、過去の修繕履歴を調べ、非常に重要なプロセスである、工事の優先順位付けを考える。建物設備機能に慣れていない人は、管理者や各専門工事業者、ビルオ等の助言が必用だろう。ただし、検討して決めるのは自分という建物アセットマネジメントの立場を忘れてはいけない。長期修繕計画や工事履歴記録が存在している場合は話が早いが、そうではない場合、確認や調査に多少時間がかかるところだ。
4.1 準備 現在①現在建物にある建物設備機能をすべて洗い出す
まず準備の準備として、現在時点での建物設備機能をもれなく把握する。ただし細部までは必要ない。長期修繕計画表があれば、その主項目を拾う程度で十分。竣工図は参考になるが、情報が細かく、竣工図と現在が違っている事もあるため、最後は必ず目視で確認をする。
4.2 準備 過去②今までの資本的支出工事履歴及び大きな修繕工事履歴を確かめる
また②建物の過去の資本的支出工事や重大工事履歴も、わかる範囲で確認する。必要なのは、何の工事をしたか?のみで十分。費用等は必要ない。
工事履歴があれば一番簡単だが、無い場合は過去の確定申告での資本支出工事又は高額修繕費支出を確認する。ない場合は、過去を知っている人の記憶をたどる。
4.3 工事対象候補の洗い出しと優先順位付けする
ここから準備の本番だ。ここで工事対象候補の見落としや、必須にもかかわらず低優先順位付けがあれば、結局分散修繕は実現しない事になる。このプロセスでは各工事候補の見積書や提案書は必要ないが、必要に応じて管理者や工事業者の意見を聞く事はお勧めする。ここでは専門知識がない人でも取り組みやすいやり方を、手順を追って説明する。
4.4 洗い出した自ビル建物設備機能を30年分散修繕計画表に記入し、状態で色付けする
まず4.1 現在①現在建物にある建物設備機能をすべて洗い出すで洗い出した現在の建物設備機能や内装外壁等のリストを、30年分散修繕計画表の縦蘭に記入していく。ちなみに、4つに分類をしておくと、後から検討しやすい。そして現時点の想定状態で色分けをする。調査は必要なく、一般的な実耐用年数を基に、過去の工事履歴も参考にして、せいぜい建物管理者に聞けば十分だ。色分け例は次の通りだ。
無色:実耐用年数内
黄色:実耐用年数を過ぎている
赤:明らかな問題がわかっていて早期にリニューアル等資本的支出工事が必要な対象
青:旧耐震基準建築建物等で耐震問題がある場合
4.5 今後30年で赤になる可能性がある建物設備機能をオレンジにする
先につけた赤色は、現在明らかに対応が必要な問題だが、30年の時間軸の間にリニューアル等の資本的支出工事が必要になる対象には、その時期から背景をオレンジにする。特に工事サイクルが20年未満で複数回必要となる工事対象に留意をする。
4.6 今後30年で新しく追加したい建物設備機能をリストする
次に3.3 ④この建物が使用者が納得して使用できているであろう将来の建物イメージまたはそのバリエーションでイメージした現在ビルの30年後実現に必要な新規追加したい建物設備機能があれば、それも追加する。どうせ後で落とせるから、気になるものは遠慮なく追加する。
4.7 今後30年で廃止できる建物設備機能を考える
それから、3.2 ③30年後に向けた将来の建物使用者がどのように建物を使用するかで想像して、イメージした現在ビルの30年後には使用しなくなる建物設備機能を廃止候補として、グレーに色を付ける。これにはソリューションの変化も含まれる。
4.8 工事対象候補に優先順位をつける
さらに、赤若しくはオレンジの資本的支出工事候補に、優先順位を付ける。3分類(絶対必要/なるべく必用/できれば)程度で十分だ。分類の基準は、将来ビルにとっての必要性である。後で見直すから、最初から精緻に考えずとも構わない。
4.9 リニューアル/新規追加工事対象について、具体工事名を挙げ、工事予算目安も調べておく
工事対象候補の優先順位が高いものについて、必要となる具体工事名を調べる。ここでは、建物管理者や専門工事業者に意見を求める事もあるかもしれない。(見積書は不要。)
そして各工事の予算目安も調べる。インターネット検索でかなり情報収集ができるが、わからなければ、ビル管理者や工事業者に参考費用幅をさらりと聞く。(調査や見積書は不要だ。)
各工事予算目安には幅がある。だから各工事予算は、例えば200万円~400万円といった費用幅として把握する。
さてここからが、自分の建物の低予算の水準 を見つけるための山場だ。どのくらいの自分の低予算水準であれば、自分の建物が永久資産になるのか、建物使用者の納得度は保ったまま、もっと工事予算を削減できないか、低予算でももっと建物使用者の納得度を上げられないか、検討をする。
5.1 自分の低予算水準とはどういうことか
最初に、自分の低予算水準とはどういうことかを、復習しよう。
この低予算水準とは、建物アセットマネジメントとしての建物を延命する「資本的支出工事」の低予算だから、修繕工事のように単純に支払い金額を抑える話ではない。
この低予算水準とは、長期的な合計(つまり計画上は30年の合計)で
無理のない予算かつ
該当資本的支出工事が作る効果ー該当資本的支出工事の費用=ベスト
かつリスクもさほど高めない
資本的支出工事の水準だ。通常の建物は、資本的支出工事で作れる効果などしれている。せいぜい経年劣化で減りゆく使用利益の減少を緩やかににするか、食い止めるかといった程度だ。だからいかにそれを低予算水準で実現できるかが問題になる。そもそもどの「低予算」の水準も、資産所有者の考え方次第だ。だから「こうあるべき」という正解はない。自分で、自分の「低予算水準」を見つけなけばいけない。
5.2 30年分散修繕計画検討のイメージ
そこで手始めに、まず仮決めした30年の総工事予算でその予算配分を考える。最初はそれでも、予算不足を感じるのが、普通だ。
ここで、30年の目盛りがある箱とイメージしてみよう。この箱に、各予定工事のブロックを入れると考える。すると自然に、工事が重ならず、分散修繕の基本系になる。
ブロックの長さは予算額を示す。検討したいのは、

| ①何の工事をする/しない の「しない」を増やす | 将来ビル像がシンプルになる |
|---|---|
| ②どの程度の機能性能グレードを維持するか?の水準を下げていく | どの程度が納得の最低ラインかを見つける |
| ③どの程度の問題(トリガー)で、寿命にするか?の時期を後ろ倒しにする | リスクの許容範囲を見つける |

各建物設備機能(例えば電気、給排水、外壁塗装、エレベータ、消防設備、内装等)等の固有検討ポイントは別途検討では、各建物設備機能固有の論点もあるが、ここでは扱わずに、共通の予算削減ポイントのみを考える。各各建物設備機能リニューアル等工事で、どこまで低予算が可能かを考える事は、同時に、どこまでの機能性能に将来建物使用者にとっての、費用対効果があるのか、を考える事でもある。だからここは同時に、2 何の工事が効果があるのか を考える事でもある。
6.1 共通する各工事予算の削減ポイント
専門知識を持たない建物資産所有者の視点では、各建物設備機能リニューアル等資本的支出工事の、工事予算削減ポイントは、次の通りとなる。

原則として建物全体で方針を統一したいが、メリハリをつける事も建物の個性になる。
6.2 ソリューションの選択
1つの問題対応にソリューションはいくつもある。工事業者の考えも重要だが、高額なもの、安価な方法、高性能なもの、どの程度が自ビルにふさわしいかは、ビル資産所有者が自分で決める事だ。一般に、過剰なほど営業熱心な傾向があるだけに、自分で考えたい。
6.3 工事業者のサービス水準
誰も教えてくれないけれど、工事費用インパクトが大きいのが、相談をする業者のサービス水準だ、これは腕の良し悪しとは違う。

高レベルのサービスやマネジメントには、その分高額費用を請求されて当然だという事だ。
サービスやマネジメントの良さは、「安心」でありお高い。安い業者に、高サービスを求める事は、「業者いじめ」と言う。
実際、建設業者に相談をすれば、実績あるプロが工事内容を考え、プロが工事を監督し、手厚い説明とサポートで安心だ。だが30%の工事監理費その他多くの中間費が発生する。一方でDIYなら材料費だけ。直接職人に指示できれば、+人足代で済む。もちろん誰でもDIYが出来る訳ではなく、職人に指示できるだけの知識がある訳でもなく、専門に任せる方が、工事は確実だ。ただ自分はどの水準の工事後湯者に依頼するかは、予算と自分の実力を考慮して、自分で決める事だ。
6.4 ④機能性能グレードを決める
ここも予算への影響が大きく、「ケチ」の腕の見せ所だ。
工事に際し、どのように工事をすべきかは工事業者が決める事だが、その仕上がりの機能性能グレードをどの程度必要と考えるかは、工事発注側の判断となる。例えばエレベータ更新1つ取っても、せっかくだからと、震災時制御やバリアフリーやテレビモニターやらを付ければ、相応に金額が嵩む。空調にしろ消防設備にしろ、付加価値を付ければ費用が嵩む。内装工事も、高級素材やデザイナーズ内装にすれば、費用は天井無しだ。

機能性能グレードは工事業者に相談をすると、後から足りないと文句を言われないために、余裕を持った提案になりがちだ。この程度で十分。はビル所有者側が決める事。日本の建物は設備機能グレード過剰が多いから、ここは予算の削減しどころが沢山ある。
6.5 ⑤素材等(耐久性等)を決める
素材や耐久性も、費用インパクトがある。「どうせ工事をするなら長く使えるものを・・」は合理的に聞こえるが、 そのために他の必要工事が出来なくなっては、元も子もない。例えば屋上防水工事も、保証期間が5年、10年、20年と伸びると、相応に費用が増額する。
6.6 ⑥工事範囲
工事範囲も、予算削減ポイントとなる。日本では「どうせ工事をするならまとめて行った方が、共通費が節約できる」という考えがあるが、実際は逆だ。中間費が増え、また使える部分もスクラップにする無駄で高額となる。
例えばあるフロアで漏水事故が頻発し、排水管をリニューアルするとする。ついでだから全フロアという考えもある。ただ他フロアはまだ100年使用できるかもしれない。そもそも、建物全体での総工事予算に余裕があるかどうかで決まる。工事範囲を狭める事は、工事予算削減ではよくある方法だ。
6.7 耐震対策について
旧耐震基準建築建物については、全てに耐震性が無い訳ではない。数百年に一度の大震災の激震地に当たり、かつ倒壊するリスクは、地域と立地と地盤で大きく異なる。もし耐震性に不安がある場合でも、多くは部分耐震補強で済む。旧耐震基準建築で、耐震対策が必用かは、個別判断による。しかし耐震診断は信頼性が低い事に留意しておきたい。古い手書きの構造計算書など誰も読めず、推測が多くなる。そのため同じ建物で複数の耐震診断を受けると、全く違う結果が出る事が珍しくない。ここも他者に依存zンするのではなく、自建物をよく見て考えるべきところだ。
先に、 5 3自分の低予算水準 検討編において、5.3 予算削減を検討するの
③どの程度の問題(トリガー)で、寿命にするか?の時期を後ろ倒しにする →リスクの許容範囲を見つける
を考える事を後回しにしたが、ここでそれを考える。つまり、工事時期を決めるとは、自分のリスク許容度を決めるこという事だ。そしてこれを考えるにあたっては、各建物設備機能が経年劣化し、リニューアル等工事が必用になる時期を、工事サイクルとして考える。なぜならば、永久資産としての建物では、リニューアル工事は1度工事をすれば永遠ではなく、何度も必要となるサイクルと考えられるからである。そして長期費用の観点から、このサイクル意識が非常に重要となる。
7.1 工事サイクルとは
建物設備機能が固有のタイムスパンで経年劣化する。そして建物を100年200年使用する事を考えると、建物設備機能の経年劣化は何度も繰り返される工事サイクルだ。この工事サイクルを決めるとは、自分のリスク許容度を決める事だ。工事サイクルは短すぎても長すぎても、リスクが高まる。
7.2 工事サイクルの数字と物のリスクの関係
工事サイクルは、長期の総工事予算に非常に関係する。
例えばエレベータの例は次の通りだ。

工事サイクルは、短いと長期総額が大きくなり、長いと長期総額が節約できる。ところが工事サイクルが長いと、物の(事故・トラブル)リスクも比例して高まる。だから、どの程度のリスクで、寿命とするかは、所有者が考える事となる。
7.3 工事サイクルは、具体的なトリガーと結びつく
工事サイクルは数字ですが、具体的にどのような状態をトリガーとして考えるかの問題です。各建物設備機能によって、特徴的な問題は異なりますが、一般的な表現では次の通りとなる。
ここまでで、30年分散修繕計画の作成を通して、自分の分散修繕の基本方針
1自分の総工事予算
2何の工事が効果があるのか
3自分の低予算水準
4自分のリスク許容度
を例え仮であっても、決めたら後は、仕上げに、リスクの分散を確かめ、必要に応じてリスクを調整する。このリスクの分散は、分散修繕の名前の由来だけに絶対に欠かせない。そして30年分散修繕計画が出来上がる。
8.1 最終の物リスク確認を行う
分散修繕の基本形で、数字のリスクは高まっていないが、物のリスクは別である。
30年の間に物のリスクが高まるところがないかは、全ての建物設備機能について、
30 年間の状態を確かめる。

確認の例として、4.4洗い出した自ビル建物設備機能を状態で色分けするで使用した色分けルールを、30年間にわたり、状態を推測して、適用する方法が分かりやすい。
無色:工事サイクル内
黄色:工事サイクルを過ぎた
赤:リニューアルトリガー状態を超えている
時々赤があるのは仕方がないとして、黄色と赤が何年も続いたり数が増えたりする所があれば、見直すべきである。
8.2 31年目以降も、低予算低リスクである事を確かめる
工事サイクルの検討でも留意したが、30年の分散修繕計画は理想的な低予算だが、31年目以降に工事が集中していては意味がない。30年以降の5年10年で、工事サイクルが集中する事がないかどうか、確認をする。
8.3 問題があれば、何度でも計画を見直す
問題があれば、5 3自分の低予算水準 検討編に戻って、問題d解消を検討する。
例えば工事が集中しがちの時期に効果的な方法は、
30年分散修繕計画作成の後に、30年分散修繕計画だけでも構わないが、出来れば作っておきたいのが100年長寿化プランだ。30年分散修繕プランは、長い建物サイクルの30年を切り取り、
一棟築古中小ビル(一棟所有マンションも含む)資産所有者・経営者・後継者の方、現在ビル資産の長寿化は、まずビルオにご相談ください。管理会社や建設業者とは違う、自分の土地と建物資産を守る建物アセットマネジメントの視点で、低予算かつ将来リスクも高めない分散修繕の工事取り組みによる100年長寿化プラン作成、更に高効果で賃貸も継続する安定ビル資産経営、その他建物アセットマネジメント観点での賃貸、管理、建物、所有の問題解決、ビル資産管理会社の経営の助言等を、リーズナブルな費用で行っています。まず無料オンライン相談でお話をしましょう。ご要請に応じてご相談前に守秘義務誓約書を差し入れします。
分散修繕対象のビル資産を維持するための資本的支出工事では、相見積りは厳禁です。現在費用節約を狙って現在のリスクを避けて、将来のリスクを上げる行為です。
ちなみに公共工事では相見積りを行いますが、役所が工事仕様書を作成します。時に工事仕様書を作成するコンサルタントを雇っています。そして安い業者に依頼したことを議会で説明するために行いますが、談合等問題が多い事はご存じの通りです。
けれども一般の私達は、工事仕様書など作成できません。そして「低予算」=必要以上の工事(内容)を省いて工事予算を削減するには、専門工事業者に考えてもらう事が沢山あります。ただその「考えてもらう」は無料ではありません。相手に考える時間、手間、そして何より貴重な知恵をサービスしてもらっています。これは相見積りをするなら、本来コンサルタントにお金を払って考えてもらう事が含まれています。
ところが、相手が手間と時間と知恵を費やして作成した見積書を、安易に相見積りと称して他の専門工事業者に見せたり、内容を話したりする中小ビル所有者が後を絶ちません。これが非常に問題になっています。
例えばそこでAという工事業者が考えた見積書を、相見積りと称してBの工事業者に見せれば、それはA社のアイデアをB社に流出させる窃盗行為です。B社はA社のアイデアをいただいた上で、アイデアを考える手間もなく、より安い見積書の作成ができます。ただB社もそんな人のために、良い仕事はしません。A社もB社も、将来にわたってそのような人は信頼しません。
相見積もりの背景にあるのは、「ぼったくられるのではないか不振」「相手を損させても自分だけは損したくない」という、業者不信です。それでは、工事業者と良い関係を築き、低予算でかつ良い仕事をしてもらう事は難しいでしょう。
本当に工事業者に、低予算で良い仕事をしてもらうためには、相見積は絶対に厳禁です。
→ 住宅をマンションを中小ビルを永久資産化して、縮小時代の豊かさを手に入れる
→ マンション・中小ビルを永続資産にする30年分散修繕計画作成
→ 建物を延命し賃貸も継続する安定ビル資産経営
→ 住宅・マンション・中小ビル・・建物資産の4面性
分散修繕による住宅、マンション、中小ビル他あらゆる建物及び建造物の資産延命・永久資産化のスペシャリスト。築古中小ビル、一棟マンション所有者、経営者、後継者の方向けに、本格建物アセットマネジメント思考と建物永久資産化の助言、30年分散修繕計画、30年安定ビル資産経営計画の作成、セミナー、又住宅及び街の存続の助言、セミナー他。秘密厳守。ご相談者には守秘義務誓約書を差し入れしています。