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日本の建物長寿化を実現する:自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕

リノベーションなら数億円。分散修繕なら30 年でも数千万円。リノベーションより1桁少ない低予算でかつ低リスクで無理なく建物を延命する分散修繕とは

建物を負債にしない分散修繕


建物の延命は難しくありません。建物は躯体と建物設備機能の集合です。経年劣化部分をリニューアル続ける事で永遠にでも延命ができます。だからビルの本場ヨーロッパや世界では、築50年築100年はもちろん築数百年のビルが使用続けられています。日本でも江戸時代以前の寺社城、豪農の家、飛騨の合掌作りや町屋等、未だ使用が続けられています。 ただし問題は、延命工事の取り組み方です。建設業界ソリューションである高額なリノベーション・大規模改修工事は、中小ビルのソリューションではありません。それはなぜか?どう取り組むのか?それをご紹介します。 便宜上、中小ビルを想定していますが、考え方は、マンション・戸建て・工場他すべての建物に共通です。


コンテンツ

Ⅰ 分散修繕とは
Ⅱ 30年分散修繕計画作成の準備
Ⅲ 30年分散修繕計画の作成
Ⅳ 自ビル長寿化計画の作成
■ 相見積もりは厳禁
Ⅴ 主要建物設備機能の要点

Ⅰ分散修繕とは

分散修繕は、建物の寿命を延ばすための工事(資本的支出工事)を、自分の予算かつ低予算低リスクで取り組み、建物を負債化させずに、資産として長く延命続ける方法です。壊れたら工事式と違い、リスクをコントロールするために、事前に工事の予算を準備し、時間をかけて工事内容を精査して、準備をしています。そのため、建物の長寿化プランは必須です。最初は、30年分散修繕計画作成を通して、検討をします。ちなみに分散修繕は、習うより慣れろ、です。だから遠慮なく直接聞いてください。

1.1 なぜリノベーションや壊れたら修繕式では、ビル長寿化が難しいのが?

自ビル長寿化の方法として、分散修繕を理解する前に、まずどうして今まで日本で使われているリノベーションや壊れた修繕式では、ビル長寿化が難しいのかを、理解します。

1.11 建物老朽化とはどういう状態か
日本では当たり前のように思考停止で老朽化ビルという言葉が言われますが、ビルの老朽化とはどのような状態でしょうか? 建物は躯体及び多くの建物設備機能から成り立っています。建物設備機能は十数年~40年50年で、経年劣化します。日本でビル老朽化と言う場合、ほぼ建物設備や外壁内装の経年劣化をいいます。

しかし、建物躯体は丈夫です。建物の鉄筋コンクリートは、タイル/塗装で保護されており、保護機能をリニューアルを繰り返して長く使用ができます。

1.12 建物は物だが所有者にとっては資産
では建物延命のための工事は、どう取り組んでも建物を長寿化できるのでしょうか?いいえ、そうはいきません。建物は物です。建物の延命とは、物の延命工事で実現します。けれども建物は、所有者にとっては、資産です。建物は資産としてでなければ、維持ができません。負債になってしまうと、赤字を垂れ流す建物を、誰も長く持ち続ける事はできません。


1.13 高額なリノベーションは赤字負債を作る
建物は資産でなければ維持ができない。するとどうして高額なリノベーション工事や大規模改修工事は、一般の中小ビルには向かないか、自明です。赤字負債を作るからです。古い建物のためにそんな高額工事はできない、と考える事は、ある意味正しいのです。 高額なリノベーション工事や大規模改修工事は、ハイコスト・ハイリスク・ハイリターンを求める大資本の手法です。

1.14 壊れたら修繕式も、負債化リスクが高いまま
経験豊富なビル所有者であれば、高額なリノベーション工事や大規模改修工事でなくとも、建物設備機能に問題があれば、都度該当工事を行えば、ずっと経済的に工事が出来る事を知っています。ただ行き当たりばったりでは、負債化リスクが高いままです。なぜならば、

  • この先建物にいくら費用がかかるか読めない
  • 各工事で、結局不要や不適切工事が入るリスクを除去できない
ある時「この工事にこれだけ費用がかかる」と言われて、それが負債になるリスクが高いままなのです。だから日本の中小ビル所有者は、ビルがいつまで使えるか確信を持てないままです。

1.15 怖いのは負のサイクルに陥る事
ビルは多少問題が増えても、すぐに使用できなくなるほど「やわ」ではありません。ただ、問題が放置され、積み重なると、ますます解消が難しくなり、負のサイクルに陥ります。負のサイクルに陥りこれが進行すると、それこそリノベーション工事やビル再生といった大資本を投下しない限り、もはやビルは廃ビル一直線です。

だから、ビルを長寿化するためには、多少の問題は容認できても、負のサイクルに陥る事は、絶対に避けなければいけません。

1.16 PLの修繕工事の考え方だけでは、建物は延命できない
日本の工事取り組みは、修繕工事の考え方しかありません。修繕の考え方では、建物の延命工事は難しいのです。修繕の考え方だけでは、負のサイクルに陥るリスクを避けられません。では、どうすればよいのでしょうか?

1.2 建物資産の寿命を延ばす資本的支出工事とは?

建物資産の寿命を延ばす工事は、BSの資本的支出工事です、これはPLの修繕工事とは、考え方も取り組み方も全く違います。だから自ビル長寿化には、この資本的支出工事を理解する事が重要なのです。

1.21 建物の寿命を延ばす工事は資本的支出工事
資本的支出工事は、会計用語です。建物の使用可能期間(建物の寿命)が延長し、(工事をしない場合と比べて)資産価値を高める工事を資本的支出工事といいます。 古い建物の場合は、資産価値を失わせない工事という理解で十分です。 資本的支出工事は、経年劣化をした建物設備機能のリニューアル工事や新しく必要になった建物設備機能の新設工事を指します。


1.22 修繕工事と資本的支出工事の違い
資本的支出工事は建物の寿命を延ばす工事です。一方で通常の修繕工事は何でしょうか?修繕工事は、該当の建物設備機能の問題を解決してその機能性能を維持する工事です。ただ修繕工事だけでは、根本的な経年劣化に対応ができません。

1.23 修繕工事と資本的支出工事の違いの会計的意味
資本的支出工事は、「資産の追加取得」と考えて、会計上、固定資産として取り扱い、減価償却をして少しずつ経費としていくものです。つまり効果が長期に及ぶとして減価償却の対象になる工事です。ここが一般の修繕工事と資本的支出工事との、違いです。



1.24 修繕工事と資本的支出工事は取り組み方も違う
PLの修繕とBSの資本的支出工事では、工事の取り組み方も違います。最も重要な点は、資産の事である資本的支出工事は、そもそものところで、工事をするかしないか、いつどの程度工事をするか、ビル資産所有者が決める事だと言う事です。


1.25 資産としては、負債と、減価償却後の赤字化に留意しなければいけない
建物アセットマネジメントとして考えると、建物の老朽化以外に、BSの資産を失う要因がある事がわかります。 例えば資本的支出工事で資産が増えても、負債が大きいと、注意が必要です。地価右肩上がり時代やほぼゼロ金利時代は、「負債も資産のうち」と言えましたが、金利が上昇し様々な困難が増える時代に、負債の返済が出来なければ、容赦なく土地と建物は召し上げられます。また建物の使用利益に対して資本的支出工事の原価償却費が大きすぎ、PLが赤字を垂れ流すと、やはり負債超過で資産維持は難しくなります。

1.26 資本的支出工事は、建物を負債にしないように行う事が大原則
資本的支出工事が、ビルという建物の寿命を延ばす工事である、建物は資産でなければ持ち続けられない性格である以上、これを負債にして維持できなくなれば元も子もありません。つまり資本的支出工事は、建物を負債にしないように行う事が大原則なのです。

1.27 資本的支出工事は、「将来」の「物」「数字」を作るために行う
資本的支出工事は、ビル資産の経年劣化による資産価値減少に対して、資産価値を押し戻し(資産価値を上げるとも言います)将来も使用の利益を産む状態として、維持する事です。 つまり将来の「物」のリスクを高めない事ですが、同時に、「将来も使用の利益を産む」状態であり続けるためには、負債過多にせず、「数字」のリスクを高めない事も、含まれます。

これに対して、従来修繕的取り組みでは、現在の建物状態という過去の延長として、また工事費用は工事業者が決めるものとして、考えました。だから今までは、建物を長く使用する事が難しく見えたのです。


1.28 資本的支出工事の相反するリスク
これが簡単ではない理由は、資本的支出工事は2つのリスクペアありますが、いずれのペアも、リスクが相反するからです。 「物」リスクと「数字」リスク 「現在」リスクと「将来」リスク

つまり、片方のリスク対応に集中をして反対側を考えなければ、負のサイクルに陥るのです。
「現在」の「物」の問題解決を優先すると、「将来」の他の工事予算が無くなる「数字」リスクが高めます。
「将来」の「物」リスクを恐れて過剰に工事をすると、「現在」工事費用を使いすぎて「数字」リスクが高めます。
「現在」と「将来」の「数字」リスクを高めないために工事をしなければ、「将来」の「物」の故障や事故リスクを高めます。

1.3 中小ビルを資産として延命する資本的支出工事の取り組み方:分散修繕とは

先にハイコストハイリスクハイリターンのリノベーション工事や大規模改修工事は、大資本の手法であって、一般の中小ビル資産を守る方法ではないと話をしました。では中小ビルは、どのように資本的支出工事に取り組み、資産として延命ができるのか?その方法が分散修繕です。

1.31 ビル資産所有者が資本的支出工事で決める事
資本的支出工事の例として、例えば漏水事故を繰り返す排水管のリニューアルを提案された時、ビル資産所有者は、
それが本当にビルの将来にとって必要な工事か(つまり費用対効果を産むものか)、
今工事すべきかもう少し後でよいか、
どの程度工事をすべきか(部分か全体か)
を判断します。排水管は必要でしょうと思われるかもしれませんが、その付近で水使用を廃止する選択もあります。

1.32 資本的支出工事は単独では決められない 建物アセットマネジメントで考える事
資本的支出工事は、相反するリスクを回避して、「将来」のビル資産の「物」「数字」を作るために行います。単独の該当建物設備機能のリニューアルだけを考えても、それは分かりません。 つまり資本的支出工事は、建物アセットマネジメントの観点が必要なのです。

1.33 世界中の建物資産延命方法は、分散修繕
そこで、ビルの本場ヨーロッパをはじめ世界中の、大資本ではない一般の中小ビル資産所有者が実践している方法が、分散修繕です。なぜヨーロッパ他国では古い建物が使用できているかといえば、建物寿命を延ばす工事を分散修繕で行い、建物を負債化させないからです。

1.34 自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕
分散修繕の基本は、自分の予算かつ低予算低リスクです。 建物の工事がいくらかかるか決めるのは、専門工事業者です。けれども自ビルの工事にトータルでいくらかけるかを決めるのは、建物資産所有者です。潤沢な予算があればそれなりに、予算が厳しかったりなるべく予算を節約したければそれなりに、工事の取り組み方があります。

自分の予算で資本的支出工事を行う事は、ビルを負債化させないための必須条件です。低予算で資本的支出工事を行う事も、自ビルの使用利益を残すための、必須条件です。けれども低リスク、それも将来の低リスクとバランスを取るためには、建物アセットマネジメントの観点で考えなければいけない事があります。

1.35 分散修繕の低リスクは、工事の「分散」で実現する
分散修繕の基本形は、「工事予算を準備してから工事」の繰り返しです。
これが続く限り、赤字負債を作りません。けれども予算準備を優先させて、必要な工事が出来なければ、結局負のサイクルに陥ります。だから、「工事時期の判断」が重要になります。

1.36 工事の時期判断も、リスクコントロール
工事時期を早めに判断すれば、「物」リスクは下がりますが、長期的に工事費用が膨らみ、将来の「数字」リスクが高まります。逆に工事時期を遅めに判断すれば、長期的な工事費用は抑えられますが、「物」リスクが高まります。どの程度が適切かは、物の状態と自分の予算との兼ね合いです。建物全体の建物アセットマネジメントとして、考える事になります。


1.37 低予算は、将来のビルに必要/省ける工事(内容)を所有者が判断する事で実現する
分散修繕の低予算も非常に重要です。分散修繕の低予算とは、相見積りで工事業者の見積書金額を叩く事ではありません。 そもそもとして、この工事は必要か、必要にしろどの程度の工事範囲や、機能性能グレードが必要か、どのサービス水準の工事業者に相談をするか、で工事金額は違ってきます。最初にこれらをビル資産所有者が適切に判断しなければ、いくら見積書価格を叩いても、そもそも必要のない工事や工事内容であれば、意味がないのです。

1.38 分散修繕は、壊れたら修繕式と何が違うのか
分散修繕は、経年劣化部分を必要なタイミングで必要対象だけ工事します。これは一見「壊れたら修繕式」と同じに見えます。けれども分散修繕が違う点は、 ・準備がある 事です。資本的支出工事を必要と判断するタイミング(きっかけ)や、どの程度の機能性能グレードが必要かは、該当の建物設備機能工事だけでは決められないのです。建物資産維持の観点から、無駄や過剰な工事支出が無いように、事前に考えて、予算も準備できており、また事前に専門工事業者等とも時間をかけて相談をしている下準備がある事で、イザという時に、低予算低リスクな分散修繕による資本的支出工事ができるようになるのです。

1.39 分散修繕は、建物資産維持の見通しが必要
つまり分散修繕は、建物資産維持の将来の見通しが必要なのです。 単に現在の建物設備機能を延長するのではなく、将来のビル使用者にどの程度必要かの観点で、工事(内容)の必要/省けるを判断します。 自分で捻出できる長期的な資本的支出工事の予算を考えて、この予算を何の工事(内容)にいつ、配分すれば、「物」と「数字」の低リスクを維持して、負のサイクルに陥らずに、現在も将来も使用利益を産む資産であり続けるかを考えます。

1.4 分散修繕による長寿化プランと30年分散修繕計画の作成

建物資産維持の将来の見通しを持ち、建物資産長寿化に必要な資本的支出工事を、自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕で行い、建物資産長寿化を実現できるようになるためには、ビルの100年の長寿化プランの作成をお勧めします。そしてビルの長寿化プランを作成するためには、まず30年分散修繕計画の作成は必須です。

1.41 建物長寿化プランとは
建物長寿化プランは、決まりはありませんが、今後100年くらいの、
毎年準備(留保)すべき資本的支出工事予算
10年間隔で、何の工事が必要か
各工事の工事サイクルの考え方及び機能性能グレード水準 をまとめておく事をお勧めします。見通しができるでしょう。
ビルの本場ヨーロッパや世界の中小ビル資産所有者達は、長年分散修繕で建物を100年200年超世代を超えて使用を続けていますから、所有建物の建物長寿化プランは、自然に頭の中で出来ています。ただ私達日本人はその経験がありませんから、最初は計画として作成する事が必須です。

1.42 分散修繕の 建物長寿化プランを見つけるためには30年分散修繕計画の作成が必要
建物長寿化プランが実際に分散修繕として実現できるためには、まず30年程の分散修繕計画を作成する事です。30年という期間は、長期修繕計画やDCF法で採用される期間です。ある程度大きな工事が入り、具体的な長期見通しをたてるのに長すぎず短すぎない期間です。

30年程分散修繕計画の作成目的は、TODOを決める事ではありません。 30年分散修繕計画を作成を通して資本的支出工事を検討する事で、

  • 建物全体を考える
  • 将来の建物と数字を考える
  • 工事の優先順位をつける
事ができるようになる事が目的です。

分散修繕で、低予算低リスクに資本的支出工事を行い、自ビル資産を確実に長寿化するためには、準備が必要です。具体的には自ビルの建物長寿化プランを、ビル資産所有者が自分で作成する事です。最初は、30年分散修繕計画の作成から入ります。

1.43 30 年分散修繕計画はエクセルで簡単に作成ができる
30年分散修繕計画は、実際にはエクセル等で簡単に作成できます。ただし、単なる計算表ではなく、試行錯誤のツールとして使うには、適切な計算式の入れ込みが必要です。ビルオでは、ご相談者様に計算式入りのフォームをご提供しています。


1.44 30年分散修繕計画作成の手順



1.45 30年分散修繕計画作成の考え方
30年分散修繕計画とは、現在のビルを、30年後に想像する自ビルの姿を実現するために、無理のない30年総工事予算で、何の工事にいつ頃どの程度の工事予算を配分するか、の計画です。工事対象を決め、工事予算の配分を検討するために、作成をします。つまりTODO計画ではありません。

これを考えるためには、まず現在のビルの建物設備機能状態を把握し、同時に30年後の将来誰がどのようにビルを使用するか、具体的に描く準備が必要です。また30年の資本的支出工事予算の財源も確かめます。

30年後の将来ビル実現に向けて、必要と思われる工事及び工事内容に優先順位をつけて、何の工事(内容)が必要でどの工事(内容)は優先順位が低いかを、検討します。この考え方は一棟一棟のビル所有者によって違いますから、管理者や専門工事業者の意見を聞きながらも、ビル資産所有者が自分で考えるなければいけません。

通常やりたい工事は多々あれど、自分の予算と低予算低リスクの制約があります。工事予算削減には、
  • 工事対象を減らす
  • 各工事予算を減らす
  • 工事サイクルを先に延ばす
の3つがあります。それぞれリスクや将来ビルの在り方が違ってきますから、どこで予算を削減して、自分の30年総工事予算に収めるかは、試行錯誤をして検討が必要です。

ある程度決まると、仕上げにリスクの分散を確かめます。物リスクが高まり予算を準備してから工事を行う分散修繕パターンが難しい場合は、更なる工事の細分化等の調節を加えます。

1.45 自ビル長寿化プランの作成
そうして30年分散修繕工事計画が出来ると、それを元に100年のビル長寿化計画へと拡張します。


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Ⅱ30年分散修繕計画作成の準備

建物の将来の工事計画を考えるに際しては、エクセルに向かう前にいくつかの準備が出来ている事が重要です。将来のビルの使用者とあり方を考える事及び、過去の工事履歴を確かめる事です。30年分散修繕計画とは、建物を延命する資本的支出工事により、今までのビルを、30年後の将来に繋ぐ計画だからです。

2.1 準備1 将来のビルの在り方を考える

自ビルの長寿化マスタープランは、将来のビル資産の実現プランです。 だから「将来のビル使用者が使用する将来のビルはどうあるべきか」を見つけるために、次の3つをまず考えます。

2.11 ビル維持工事予算の財源を考える
原則、安定財源を考えます。つまり収益ビルなら賃料収入、企業なら事業売上、個人であれば個人手雲集です。既に修繕資金の準備や、臨時財源の予定がある場合は、ボーナスとしておきましょう。

2.12 将来のビル使用者を想像する
今後30年のビル使用者を、具体的に想像します。例えばビル使用者は女性が多いか、男性が多いか、若年層が多いのか平均年齢が高めか・・、使用は事務所か、店舗か、事務所と一言言っても、来店型か、堅い雰囲気か、自由なスタイルを好むか・・手法としてマーケティングのペルソナ手法が役に立ちます。

2.13 30年後の自ビル使用者が使用している自ビルの様子
すると現実的な」予算で、将来おビル使用者が使用している自ビルはどんな様子でしょうか?
具体的に想像をします。将来の自ビルの在り方に解はあ解りませんから、普段から自由に考えておきます。当然に何の工事をするか?の結果ですから、次の検討の過程でも何度も見直します。

2.2 準備2 現在の建物にある建物設備機能とその状態を洗い出す

一方で現在のビルにある建物設備機能や内装・外壁等、資本的支出工事の対象を洗い出し、状態を確認します。ここは建物管理者や専門工事業者とも話し合う事をお勧めします。建物の将来について話し合うきっかけになります。また急がず必要なだけ時間をかけます。

2.21 自ビルの建物設備機能を全て洗い出す
潜在的な工事対象は、すべて洗い出しておきましょう。

業者が作成した長期修繕計画表がある場合には、その項目を見ます(キュービクル、給排水管等、概項目で十分です。細かい項目は工事業者の考える領域です。)竣工図は細かすぎます。長期修繕計画表がなければ、ビル管理会社/管理人に洗い出してもらうか、目視で点検確認をします。

2.22 過去の対象工事履歴の整理もしておく
必須ではありませんが、先に過去の建物設備機能のリニューアル等工事の履歴も確かめておきます。ビルの状態理解や工事サイクル検討の重要情報になります。

いつ頃どこをどう工事をしたか、だいたいわかれば十分です。正確な年月や金額は必要ありません。過去の工事履歴情報があれば一番ですが、無い場合過去の確定申告書も参考資料になります。税理士が固定資産一覧表を作成して、そこに資本的支出工事も入れている場合は、それも参考になります。記録がなければ、人の記憶や目視で工事の後をみつけて、なんとなく推測しておきます。どのみち築25年より前は、大きな工事はほぼありません。

2.23 洗い出した自ビル建物設備機能を状態で色分けする
洗い出した建物設備機能や内装外壁等について、一般的な実耐用年数を基に、過去の工事履歴も参考にして、現時点の状態で色分けします。例えば
無色:実耐用年数内
黄色:実耐用年数を過ぎている
赤:明らかな問題がわかっている対象
青:旧耐震基準建築建物等で耐震問題がある場合


2.24 今後30年で赤になる可能性がある建物設備機能をオレンジにする
次に今後30年の状態変化を考えて、30年内に赤になる対象を、30年分散修繕工事対象候補としてオレンジにします。ほとんどの主要建物設備はオレンジになるかもしれません。また耐用年数の短いものは複数回必要になります。例えば屋上防水工事です。 特別な調査は必要ありません。ここは予算も考えず、なんとなくで構いません。


2.25 今後30年で新しく追加したい建物設備機能をリストする
ここは遠慮なく、普段欲しいなーと思っている建物設備機能を全て追加します。どうせ後で優先順位をつけて検討しますから、気になるものは全てリストをしておきましょう。


2.26 洗い出した自ビル建物設備機能の方針を分類する
次に洗い出した自ビル建物設備機能(3.23)と新しく追加したい建物設備機能(3.24)を、次の方針に分類します。
この先工事検討の対象となるのが、赤、オレンジ、新しく追加したい建物設備機能候補です。せん。分類基準は2.13 30年後の自ビル使用者が使用している自ビル像実現です。ここもまた後で何度も見直しますから、最初はなんとなくで構いません。

2.27 工事対象候補に優先順位をつける
分類した工事対象候補に、優先順位を付けます。といっても3分類(絶対必要/なるべく必用/できれば)に分ける程度で構いません。これは現在の色ではなく、将来ビルの必要性で分類します。ついでに4タイプにも分類をしておきましょう。後で色々考えやすくなります。

2.28 リニューアル/新規追加工事対象について、具体工事名を挙げる
30年内にリニューアル/新規追加工事に分類した対象建物設備機能等について、実際に必要となる具体工事を調べます。中には技術が変わって単純リニューアルではない対象もある事に留意します。例えば屋上高置給水タンクは、現在では直結増圧式が水道局で推奨されています。またまとめて工事をする場合もあるでしょう。
ここでは、建物管理者や専門工事業者に意見を求める事もあるでしょう。(見積書は不要です。)

2.29 優先順位が高い工事の予算目線も調べておく
各工事予算の目線も調べておきます。現在であればインターネット検索でかなり調べられます。わからなければ、ビル管理者や工事業者にさらりと聞いてみます。調査や見積書作成は提案を受けても断りましょう。
各工事予算目安は、幅があります。だから各工事予算は、例えば200万円~400万円といった費用幅として把握します。


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Ⅲ 30年分散修繕計画の作成

ここからエクセルで30年分散修繕計画を作成します。目的は、試行錯誤を通して、低総工事予算でも、将来のリスクも高めない資本的支出工事取り組みの感覚をつかむ事です。机上では費用もかからずリスクもありませんから、思いつく限りを検討してみましょう。

3.1 30年分散修繕計画作成のイメージ

最初に30年分散修繕計画の作成イメージを持って置きましょう。30年分散修繕計画の作成とは、自分で決めた30年総工事予算を、

  • 何の工事に
  • いつ頃
  • どの程度の工事予算
を配分するかを検討する事です。もちろん目指すは、低予算低リスクな分散修繕の基本形です。


3.11 30年分散修繕計画作成の手順
  1. まず、30年総工事予算を仮決めします。
  2. この工事予算で収まるように、何の工事にいつ頃どの程度の予算を配分するか、検討をします。
  3. 余地があれば、更に総工事予算を削減していきます。
  4. ある程度決まったら、リスクの分散を確かめます。

3.2 総工事予算を決める

まず30年総工事予算を仮に決めます。その後の検討を通して、増減をします。

3.11 30年総工事予算を仮決めする
まず、30年総工事予算を仮決めします。
原則は、毎年一定金額確保です。
理想は、自用ビルであれば賃貸を想定して3%‐7%
収益ビルで財源である賃料収入の5%-10%
既に修繕資金の準備がある場合や、今後一時的な修繕資金確保の予定がある場合は、それはボーナスとして、毎年定額工事資金確保はやりましょう。一時金予定が狂った時でも、最低限の対応ができます。 財源確保が厳しければ、可能な限りで十分です。例え年間100万円でも30年で3000万円分工事ができます。

3.12 30年総工事予算も、どんどん削減する
この後予算配分で、足りなければ増額、予算を圧縮できれば30年総工事予算も削減します。ただ一作成したら、次はより総工事予算を削減して、より工事予算の削減を検討しましょう。どのみち工事費用の削減は、経験とともにより削減ができるようになります。

3.3 何の工事にいくら予算を配分するか

資本的支出工事に際して、同じ総工事予算でも、小予算で工事の数を増やすか、工事の対象を絞り費用をかけて行うか、やり方は色々あります。やり方によって将来のビルが違います。だから最初は多くの可能性を検討して、より望ましい将来ビルを実現できるプランを選びます。

3.31 必要工事に工事予算を配分してみる
30年総工事予算の箱を仮決めしたら、既に確かめた工事優先順位に従って、30 年内の予定工事を入れていきます最初は時期は考えずアバウトで構いません。また 各工事予算は、この後の「各工事予算削減」でもっと考えますから、最初は調べた工事幅から、任意で選んでおきます。

最初は、全然予算が足りない!と絶望的に感じる事は普通です。そこから工事予算を絞るから、分散修繕は低予算なのです。

3.32 総工事予算で収めるための方法
そこで総工事予算内に工事計画を収めるには、次の3つの方法があります。

  1. 各建物設備機能リニューアル等工事予算を削減する
  2. 各工事サイクルを引き延ばす →リスクコントロール
  3. 工事対象を削減する  →将来ビル像の見直し
2の工事サイクルは次で述べます。まず1と3を見てみます。

3.33各建物設備機能リニューアル等工事予算を削減する
各建物設備機能リニューアル等工事予算は、積極的に取り組むべき工事費用削減です。 建物資産所有者目線での、必要な工事内容にはお金をかけるけれど、削減できる工事内容は削減するの、削減ポイントは、この先3.5でよりみてみます。

機能性能グレード水準は、将来ビル像に影響しますが、日本のビルは過剰機能性能グレード水準が多いので、思い切って削減をしても大丈夫です。

3.34 工事対象を削減する
工事対象を減らす事も効果的な工事費用削減方法です。通常優先順位の低い対象から削減していきますが、時に思い切った削減で個性化ビルを目指す場合もあります。

工事対象の削減は、30年後のビル像が変わる事を意味します。だから単に予算の数字だけを見るのではなく、都度2.1に立ち返って、将来のビル使用者に影響があるか、将来のビル像がどう変わるのか、を確認しながら、削減をします。

3.35 一つの例を作ってみる
例えば小さ目中規模ビルでキュービクル・エレベータ有 予算は厳しく年間120万円確保し、30年で3600万円tとしても、色々な工事計画があり得ます。


3.36 多工事低予算か、少数工事高額予算か
他にも色々なパターンを検討してみます。工事予算削減の可能性は無限大です。多工事低予算か、少数工事高額予算か、どの程度の中間か、は検討のしどころです。
机上で試行錯誤する分にはリスクがありませんから、思い切った削減をしてみて、どんなビルになるか想像しても面白いと思います。思いもよらなかった可能性が見つかるでしょう。

3.37 よくある予算削減の典型
目指すは、低予算低リスクで使用者の使用満足度が損なわれない築古ビルです。次の方針は一般的です。

■シンプルビル
シンプルビル化は、 1各建物設備機能の機能性能グレードを削減する 3工事対象を削減する  を限界まで追求します。欧州はシンプルな築古ビルが多いです。シンプルならではの趣があります。


■個性化ビル
これは、 1各建物設備機能の機能性能グレードを削減する 3工事対象を削減する  に極端なメリハリを作る事です。築古ならではの個性が生まれます。

3.38 インフレをどう考慮するか
近年建設系工事費の高騰とインフレで、工事単価が上昇しています。この上昇は今後も続くものと思われます。(IT化による費用削減の可能性もありますが、それはここでは想定をしません。)インフレの場合、合わせて総工事予算も増やすのが原則ですが、無理の場合はさらなる工事予算削減を見直す事になります。 インフレを考慮する場合、将来に向かい、毎年留保する予算額及び工事予算を一定率で引き揚げます。 つまり例えば、現在で200万円とみると、10年後には230万円 20年後には260蔓延 30年後には300万円といった具合です。

3.4 工事をいつ頃予定するか(工事サイクル)

工事サイクルをどう考えるかは、建物と数字のリスク及び長期的な総工事予算に直結します。自ビルと自分にとって適切な工事サイクルを見つける事が、低予算低リスク分散修繕の要です。

3.41 工事の時期を決める意味
工事がいつ必要か?決めるのは専門知識を持つ建物管理者や専門工事業者と思っている方が少なくありませんが、工事

3.42 工事の先延ばしについて
工事の先延ばしは、一番手っ取り早い工事予算の削減方法です。ただ工事の先延ばしで、

  • 重大事故が起こる(将来の物のリスク)
  • 将来に必要工事が重なり予算が足りなくなる(将来の数字のリスク)
では元も子もありません。例えば30年分散修繕計画をまとめても、必要工事が35年目に積み重なっていては、そこで分散修繕は続けられません。分散修繕は、建物永続の積りの計画だから、工事予算削減のための先延ばしは、その後を慎重に考えるべきです。

3.43 工事サイクルとは

各建物設備機能や内装等のリニューアル工事は「サイクル」です。1度で終わりでありません。そしてこのサイクルをどう考えるかで100年200年といった長期での工事総額が大きく変わるからです。エレベータの例は次の通りです。

尚、工事サイクルは、同一各建物設備機能でも、素材や工法でサイクルが変わります。素材や工法の進歩で、サイクルが劇的に伸びるものもあります。(例えば給排水管が鋳鉄管から塩ビへ移行)

3.44工事サイクルとは、具体的にどのような状態か?
問題は、どの程度の「経年劣化状態」を、リニューアルが必要な状態と判断するかです。細かく言えば各建物設備機能等で異なりますが、例えば次の通りです。
  1. 法定寿命
  2. 実寿命
  3. トラブルが1回発生したら
  4. トラブルが数回発生したら
  5. トラブルが頻発するようになったら
  6. トラブルの規模が重大になったら
  7. もうこれ以上は限界と言われるようになったら
  8. もうこれ以上は限界と何度も言われるようになったら
  9. 深刻なトラブルが頻発するようになったら
もちろん下ほど工事サイクルが長く、「物」リスクが増大します。

もちろん下ほど工事サイクルが長く、「物」リスクが増大します。ここは頭では早い方が良いとわかっていても、工事予算を抑えるためには、なるべく遅くしたいところです。各建物設備機能がどのような状態でリニューアルトリガーと考えるか、いつ頃その時期が到来すると考えるべきか、建物管理者や専門工事業者とも、話をしてみる事をお勧めします。

各設備について、それぞれの該当時期を割り振ります。そしていくつかの工事サイクルで計画を作成して比較をしてみる事です。決められないと感じる時には、必ず比較選択です。

3.44各工事サイクルを引き延ばす
30年分散修繕計画の中で、重要工事が重なる事はしばしばあります。特に築40年代築50年代です。 こうした場面では、後で述べるリスク調整方法がいくつかありますが、片方の工事サイクル引き延ばしは、よくある方法です。 あるトリガー状態には、幅があります。だから多少の工事サイクル引き延ばしは、理論上は大きな問題が無い事になりますが、すなわち該当の資本的市支出工事の予算準備が遅れる事を意味します。つまり想定より早期に悪化した場合、対応に苦慮する事になります。 工事サイクルの引き延ばしを検討する場合には、少しづつ慎重に、トリガー状態がどうなるか?早期に悪化した場合に、他を調整して対応ができそうか?しっかり考えます。

3.5 各工事予算の削減

電気、給排水、外壁塗装、エレベータ、消防設備、内装等、各建物設備機能リニューアル工事には、固有の検討ポイントがあります。そちらは後でご紹介します。 ここでは、建物資産所有者目線で、資本的支出工事で検討すべき、共通の予算削減ポイントをご紹介します。

3.51 ソリューションの選択
1つの問題対応にソリューションはいくつもあります。高額なもの、安価なもの、築古ビルとしてどの程度が必要か、適切なソリューションの検討も、工事予算削減には欠かせません。過剰なほど営業熱心な傾向があるだけに、自分でよく考えなければいけません。


3.52 工事業者のサービス水準
誰も教えてくれないけれど、工事費用インパクトが大きいのが、相談をする業者のサービス水準です。腕の良し悪しの話ではありません。

高レベルのサービスやマネジメントには、その分費用を請求されて当然だという事です。サービスやマネジメントの良さは、工事の「安心」です。「安心」はお高いのです。費用水準が低い業者に、高サービスを求める事は、「業者いじめ」と言います。

建設業者に相談をすれば、実績あるプロが工事内容を考え、プロが工事を監督し、手厚い説明とサポートで安心です。ただ工事総額の30%の工事監理費その他多くの管理費が発生して超高額です。自分でDIYで工事をすれば材料費だけ、または職人に指示すれば、+人足代で済み激安です。YoutubeビデオでDIY を学べる時代です。ただ工事内容を決めて材料を選び施工まで全てが自己責任です。どの程度が自分には望ましいか、決めるのは自分しかいません。

3.53 機能性能グレードを決める
ここも予算への影響が大きく、「ケチ」の腕の見せ所です。工事に際し、どのように工事をすべきかは工事業者が決める事ですが、その仕上がりの機能性能グレードをどの程度必要と考えるかは、工事発注側の判断です。例えばエレベータ更新でも、せっかくだからと内装のグレードアップや、震災時制御やらテレビモニターやらを付けると、相応に金額が嵩みます。空調にしろ消防設備にしろ、付加価値を付ければ費用が嵩みます。内装工事も、高級やデザインを追求すれば、費用は天井無しです。

機能性能グレードは工事業者に利益になる事と、後から足りないと文句を言われないために、余裕を持った提案になりがちです。この程度で十分。はビル所有者側が言うべき事です。日本の建物は設備機能グレード過剰が多いので、ここは予算の削減しどころが沢山あります。

3.54 素材等(耐久性等)を決める
素材、時に工法についても、予算と相談をして決まります。「どうせ工事をするなら長く使えるものを・・」は合理的に聞こえますが、 それだけの「高額費用」をそのタイミングで出す事が合理的か、も問題です。例えば屋上防水工事も、保証期間が5年、10年、20年と伸びると、相応に費用が増額します。

3.55 工事範囲
工事範囲も、予算削減の重要ポイントです。日本では「どうせ工事をするならまとめて行った方が、共通費が節約できる」と考えられがちですが、実は違います。中間費が増え、また使える部分もスクラップにする無駄があります。

例えば1フロアで漏水事故が頻発するから排水管を更新する際に、ついでだから全フロアを更新するのは、合理的に聞こえますが、他フロアは漏水事故もなく後100年使用できるかもしれません。工事規模が大きくなると、中間費も増額します。隠れ費用も増えます。建物使用者への影響が大きくなります。

3.56 耐震対策について
最後に耐震対策について、簡潔にコメントをしておきます。旧耐震基準建築建物の全てに「耐震性がない」ではありません。数百年に一度の大震災の激震地に当たり、地盤が悪ければ新耐震基準ビルでも倒壊します。 震災倒壊リスクは、地域と立地と地盤で大きく異なります。そしてもし耐震性に不安がある場合でも、通常揺れの方向及び不安箇所は限られています。だから多くの場合は、最低限の支柱追加等で足ります。現実的に判断をします。

3.6 リスクの分散:リスクのバランス感覚をつかむ

ある程度自分の予算で工事が収まると、そこで満足をしたくなりますが、まだリスクの分散の確認と調整が残っています。ここを丁寧に検討して自ビル資産の物と数字、現在と将来のリスクのバランス感覚をつかむ事で、今後の問題対応に際して、リスクを高めない対応判断ができるようになります。

3.61 分散修繕の基本形に並べる
数字のリスクを下げる分散修繕の基本形「工事予算を準備してから工事」に並べてみます。


3.62 物のリスクを徹底検証する
30年の各年度を縦に見て、想定工事サイクル時期に工事ができず、「物」リスクが高まるものがないかを、確かめます。

3.63 建物設備機能状態の色分けを活用する
ここでは、建物設備機能状態の色分けが役に立ちます。赤を各建物設備機能のリニューアルトリガー時期を想定して、次の通りに色分けします。
無色:実耐用年数内
黄色:実耐用年数を過ぎて自分の決めたリニューアルトリガー状態まで
赤:リニューアルトリガー状態を超えている
もちろん赤は想定だから、この想定も心配性の方と気楽な方とでは、違ってくるでしょう。

3.64 重要工事の集中時期をやり過ごす
重要工事が集中する場合、多少の工事の先延ばしでは調整が難しい場合があります。そうした場合は、

  • 重要な工事は少し早めに行っておく
  • 工事規模を更に小さくして、より短い予算準備期間で工事ができるようにする
といった調整を考えます。

3.65 30年分散修繕工事計画例の出来上がり 
そうしてまとまれば、30年分散修繕工事計画例の出来上がりです。 もちろん作成して終わりではなく、何度も見直して、ブラッシュアップを重ねていきます。それから計画は、沢山バリエーションがあっても構いません。


3.66 築40年~50年代で最初の山が過ぎたら後は自然にリスクは分散される 
ちなみに、30年分散修繕計画で赤が多くても、さほど悲観する事はありません。山場時期を過ぎると、各重要工事サイクルが自然に分散されて余裕ができます。そうしたらもう計画なしに、予算を準備しているだけで、分散主膳が自然にできるようになります。ここを目指しましょう。


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Ⅳ 建物長寿化プランを作る

30年分散修繕計画の作成が出来たら、これを元に自ビルの分散修繕による建物長寿化プランを作成します。基本方針は既に決めてあるので、さほど手間もかかりません。

4.1 建物使用者及び将来建物像は30年後の自ビルの延長を考える

30年も十分先ですが、今から50年後100年後に誰がどう自ビルを使用するか、そこで何が求められるか、具体的に想像する事は難しいので、30年後のビルをそのまま延長する事を考えます。

4.2 30年分散修繕計画の工事対象分類を確かめる
30年後の自ビル使用者が使用している自ビル像実現計画として、「2.26 洗い出した自ビル建物設備機能の方針を分類する」で確かめた、工事分類に戻ります。もちろん30年分散修繕計画確定版のものです


4.3 対象外だった工事対象を確かめる
ここで「30年では工事しない(使用継続)」分類した対象について、(絶対必要/なるべく必用/できれば)の工事優先順位を付けます。ついでに4タイプにも分類をしておきます。

4.4 工事サイクル(トリガー)を割り当てる
優先順位が高い工事対象を決めます。そしてその工事サイクル(トリガー)を決めます。 相当期間使用ができるものは、仮として工事サイクルを110年にしておきます。 例えば排水管を鋳鉄管から塩ビに更新したら、やはりその先は110年でしょう。

4.5 優先順位が高い対象で、工事費用を仮決めする
工事費用も参考までに、仮決めしておきます。30年分散修繕工事対象での各工事費水準を参考に、多め/少なめを決めておきます。

4.6 30年分散修繕工事対象と合わせる
元の30年は工事しない(使用継続)分類の中で優先順位が高いに分類した建物設備機能と、 既に30年分散修繕工事で決めている工事対象とを合わせます。

4.7 100年内に繰り返す工事の繰り返しも追加する
30年分散修繕工事対象だけれど、工事範囲を小さく分散している対象は、残りもどこかに加えます。(配管更新や、空調やトイレ・キッチン等内装工事がしばしばこれに該当します。) 30年分散修繕工事で決めている工事対象及び既に工事済で30年分散修繕工事に含まれなかった建物設備機能は、工事サイクルに合わせて、100年の期間では、2回3回それ以上に工事が必要となります。これも計画をします。

4.8 10年単位の工事目安時期に分類をする
各建物設備機能工事対象を、工事サイクルに従って 10年単位の工事目安時期に分類をします。

4.9 偏りがあれば、調節をする
長い目で見ても、一時期に工事が集中するといった偏りがあれば、工事サイクルを確かめながら調整をします。調整方法は、分散修繕と同じです。

4.10 自ビルの分散修繕による建物長寿化プラン完成


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一棟築古中小ビル(一棟所有マンションも含む)資産所有者・経営者・後継者の方、現在ビル資産の長寿化は、まずビルオにご相談ください。管理会社や建設業者とは違う、自分の土地と建物資産を守る建物アセットマネジメントの視点で、低予算かつ将来リスクも高めない分散修繕の工事取り組みによる100年長寿化プラン作成、更に高効果で賃貸も継続する安定ビル資産経営、その他建物アセットマネジメント観点での賃貸、管理、建物、所有の問題解決、ビル資産管理会社の経営の助言等を、リーズナブルな費用で行っています。まず無料オンライン相談でお話をしましょう。ご要請に応じてご相談前に守秘義務誓約書を差し入れします。

お気軽にフォームお問合せ又は30分無料オンライン面談をご予約下さい

注意:資本的支出工事で相見積もりは厳禁

分散修繕対象のビル資産を維持するための資本的支出工事では、相見積りは厳禁です。現在費用節約を狙って現在のリスクを避けて、将来のリスクを上げる行為です。

ちなみに公共工事では相見積りを行いますが、役所が工事仕様書を作成します。時に工事仕様書を作成するコンサルタントを雇っています。そして安い業者に依頼したことを議会で説明するために行いますが、談合等問題が多い事はご存じの通りです。

けれども一般の私達は、工事仕様書など作成できません。そして「低予算」=必要以上の工事(内容)を省いて工事予算を削減するには、専門工事業者に考えてもらう事が沢山あります。ただその「考えてもらう」は無料ではありません。相手に考える時間、手間、そして何より貴重な知恵をサービスしてもらっています。これは相見積りをするなら、本来コンサルタントにお金を払って考えてもらう事が含まれています。

ところが、相手が手間と時間と知恵を費やして作成した見積書を、安易に相見積りと称して他の専門工事業者に見せたり、内容を話したりする中小ビル所有者が後を絶ちません。これが非常に問題になっています。

例えばそこでAという工事業者が考えた見積書を、相見積りと称してBの工事業者に見せれば、それはA社のアイデアをB社に流出させる窃盗行為です。B社はA社のアイデアをいただいた上で、アイデアを考える手間もなく、より安い見積書の作成ができます。ただB社もそんな人のために、良い仕事はしません。A社もB社も、将来にわたってそのような人は信頼しません。

相見積もりの背景にあるのは、「ぼったくられるのではないか不振」「相手を損させても自分だけは損したくない」という、業者不信です。それでは、工事業者と良い関係を築き、低予算でかつ良い仕事をしてもらう事は難しいでしょう。

本当に工事業者に、低予算で良い仕事をしてもらうためには、相見積は絶対に厳禁です。


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Ⅴ 主要工事の取り組みヒント

ここでは、主要工事取り組みのヒントをご紹介します。

5.1 電気設備・幹線

キュービクルある建物では、電気主任技術者と相談をします。キュービルのリニューアルが必要な場合でも、中の設備の必要部分だけを交換する、箱ごと総リニューアル等いろいろなやり方があります。もちろん後者が高額です。

近年電気使用量が増えて、増えた電気使用量に合わせて電気幹線も交換する場合もあります。

部屋の照明器具やコンセントは、内装リニューアルの際にリニューアルし、LED化もされていると思いますが、古いコンセントは火災リスクがあります。また蛍光灯は廃棄費用が高額になりつつありますから、あればどこかで更新をします。 忘れがちが収益ビルの子メータですが、法律上は、10年に1回交換です。

5.2 給排水管・設備

排水管漏水はよくあるトラブルです。昔の鋳鉄管や、ジョイント部分に鋳鉄管が使われているタイプでは、更に錆リスクがあります。 水使用量が多い居住用マンション・飲食ビルは、漏水事故が起こりやすいですが、水使用量が少ないオフィスビルは、さほど漏水事故は起こりません。

よほど酷くならない限り、ライニング工法(管更生)工事で対応ができます。ただ漏水事故が頻発する箇所では、該当横菅を更新します。

ビル・マンション等の給水は、昔は高置給水タンクが一般的でしたが、現在は多くの地域で、10階建てくらいまでは、直結増圧式が水道局に推奨されています。(時々対象外がありますが、給排水菅工事の業者に聞けばわかります。)高置給水タンクから直結増圧式にリニューアルをすると、建物内水質が良くなる上に、毎年の高置給水タンク清掃・保守・修繕費が発生しなくなります。ただ一方で、単純リニューアルとはならず、給水縦管を増圧に耐えられるものにリニューアル、ついでに排水縦管もリニューアル。また必要なくなった屋上高置給水タンクを地上に降ろす、その後を防水処理する・・等工事が不随して総額が高額になりがちです。やるにしろ、予算確保とタイミングは30年分散修繕計画で計画をします。

給水ポンプや排水ポンプは、定期的に壊れますから、その都度修繕費で交換します。

5.3 外壁・屋上

外壁は、マンションも含めて大規模修繕工事業者は数多くありますが、高額になりがちな一方で、サービスや考え方が千差万別で、業者を選ぶのも工事内容を決めるのも、大変難しい領域です。

外壁修繕工事には、雨漏り止める、美観を回復する、防水保護をする、の3つの目的があります。同時に鉄部やサッシ工事等を行う場合もあります。それぞれ何が必要か、どうすべきか、丁寧に話し合います。 市街地の防火地域の耐火建物で隣建物と隣接している場合建物は、前面だけで手入れで済む場合がほとんどです。(雨漏りがない限り)外壁タイルが古く、補修タイルが手に入らない場合、タイルの上から塗装する手法もあります。このあたりはアメリカでは既に3Dプリンタで安価に補修タイル作成ができていますから、3Dプリンタ修繕の導入を待ちましょう。

屋上の防水塗装は、既に行っていると思います。近年防水工法によって、10年や15年20年等がありますから、予算と相談をして選びます。防水工事は必ず保証があります。保証内容をしっかり確かめます。

5.4 エレベータ

エレベータのリニューアルは、やり方で費用インパクトが多いところです。だから慎重に考えましょう。

エレベータリニューアルの判断そのものの相談相手は、現在のエレベータ保守会社です。だいたい築30年を過ぎると交換を言われます。40年程度で保守部品保管期限が過ぎたという手紙をもらう事がありますが、部品はあるものです。(他の交換エレベータから取った部品が保管されています。)既存不適格を指摘される場合がありますが、これは違法ではありません。

ただしリニューアルに際しては、リニューアル費用+30年の保守費用の総額で考えます。

■会社を選ぶ
エレベータ会社には、メーカー系と独立系があります。前者は、三菱・日立・東芝・日本オーチス・フジテックの5大メーカー三菱や東芝といった大手メーカーです。独立系は、多くは保守会社ですが、自社でエレベータ開発をしている会社や外資もあります。両社を比較すると、メーカー系は高額で独立系はかなり経済的です。

■工事内容を選ぶ
エレベータのリニューアル工事は主に2つのやり方があります。基盤交換と籠ごと交換です。前者は、経年劣化するのはエレベータを制御する基盤だから、その基盤だけを交換します。ただ数十年たつとエレベータ内部も汚れてきます。新しい地震制御や緊急通話等の追加もしたい。すると籠ごとすべて全交換することになります。もちろん後者の方がはるかに高額です。

■その後の保守メニューを選ぶ
エレベータ保守には、フルメン契約(フルメンテナンス)とPOG契約があります。フルメン契約では、故障の際の対応や(軽微な)交換部品がすべて込みです。POG契約は、故障の際の対応を都度修繕工事費として支払います。ただしフルメン契約は、毎月のエレベータ保守費がPOG契約と比べて、はるかに高額です。エレベータリニューアルの際は、その後の保守について、両方の費用を聞いて、それぞれの30年総額を比べて、どちらにするか選びます。例えば30年総額で、フルメン契約の方が1千万円よりはるかに高い場合、それでもう1回エレベータリニューアルが出来る訳です。

5.5 内装工事

日本では内装工事もすぐに、内装工事業者にお任せですが、本場ヨーロッパや他国の一般のビルやマンション、戸建て住宅所有者は、内装工事のかなりを自分でやります。建物内部のリフォームを、必要なところだけ職人さんを雇って、住みながらすべて自分で工事をする人も少なくありません。現在では、工事のやり方を教えるyoutubeプログラムも沢山あります。

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はじめに:日本もストックの時代:時代が、建物資産を守り引き継ぐ時代に反転した
→ 日本の建物長寿化を実現する:自分の予算かつ低予算低リスクの分散修繕
→ 建物を延命し賃貸も継続する安定ビル資産経営 
→ 築古ビル資産問題解決に欠かせない2つの視点

一棟築古中小ビル(一棟所有マンションも含む)資産所有者・経営者・後継者の方、現在ビル資産の長寿化は、まずビルオにご相談ください。管理会社や建設業者とは違う、自分の土地と建物資産を守る建物アセットマネジメントの視点で、低予算かつ将来リスクも高めない分散修繕の工事取り組みによる100年長寿化プラン作成、更に高効果で賃貸も継続する安定ビル資産経営、その他建物アセットマネジメント観点での賃貸、管理、建物、所有の問題解決、ビル資産管理会社の経営の助言等を、リーズナブルな費用で行っています。まず無料オンライン相談でお話をしましょう。ご要請に応じてご相談前に守秘義務誓約書を差し入れします。

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