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住宅をマンションを中小ビルを永久資産化して、縮小時代の豊かさを手に入れる

住宅、マンション、中小ビル、社会的インフラストラクチャー等、全ての建物・建造物は長く使用利益を産む資産。この価値を生かす事に、私達日本人の縮小時代の豊かさがある。


日本人は、住宅を、マンションを、ビルを、社会的インフラストラクチャー等を、築40年築50年ともなると、老朽化だ寿命だ建替えだと言う。ところが近年は、人口激減で需要が無くなり、建替え投資ができず、空き家やシャッター街、ビルやマンションの老朽化、公共施設や社会的インフラストストラクチャーの老朽化が、社会問題になって久しい。街づくりやコンパクトシティー化といった言葉も盛んだ。しかし一度目を外に転じると、英欧米や他国では、住宅もマンションもビルも、道路、交通機関、上下水道、等の社会的インフラストラクチャーも、50年100年どころか数百年でも問題なく使用している。すると問題は、なぜ長く使用できるのか?その経済的合理性はどこにあるのか?日本の住宅、マンション、中小ビル、社会的インフラストラクチャー等も、長く使用する事はできないのか?である。日本で初めて、この問題を解き明かす。


コンテンツ

1 建物は築40年築50年で寿命と言われてきた日本が直面している問題
2 古い建物をどうするかを考えるのは不動産アセットマネジメント
3 建物の寿命とはどういう事か
4 建物・建造物は物だが、資産でもある
5 資本的支出工事とは
6 建物アセットマネジメントとして考える資本的支出工事
7 建物資産のリスク
8 建物を永久資産にする分散修繕
9 初めて分散修繕を実践するための準備
10 建物の永久資産化が実現するゆとりある生活と社会の持続可能性向上

1 建物は築40年築50年で寿命と言われてきたが

日本人は、戸建て住宅やビルやマンションといった建物、道路、交通機関、上下水道、電力・ガス等社会的インフラストラクチャーと言われる建造物が、築40年築50年ともなると、老朽化だ寿命だという。そして、
  • 建替える
  • 再開発する
  • 朽ちるまで使う
が検討される。最近ようやく延命・長寿化も検討されるようになったが、まだ「建替えられないから仕方が無く」の位置づけだ。まずこの背景を理解し、現在の問題を認識しよう。

1.1 開発と建替えで豊になった昭和の人口激増時代
昭和後半の日本は、人口激増、経済高度成長、生活水準の向上に伴う良質住宅・ビルへの移動のトリプルアクセルにより、未曾有の新築戸建て住宅、マンション、ビル需要が生じた。沸いて出来る需要に応えるべく、戦後焼け野原に建てられた木造狭小建物の街と農村だった日本が、
都市部では、市街地再開発法による再開発、ビル・マンションへの建替え、
郊外では、宅地造成・開発、デベロッパーによる団地及びマンション建築 が急ピッチで進めらた。第二次世界大戦後の高度経済成長後、地価は右肩上がりにあがり、市街地再開発、宅地造成、ビル・マンションへの建替えを通して、一億総中流で欧米先進国の豊かな中流生活を手に入れた。

1.2 需要激増時代は古い建物は建替えが合理的だった
需要激増時代は、市街地であれば、建物が古くなったら、より新しく大きな建物に建て替える事で、土地が産む使用利益を増やし、資産価値を高める事ができた。その最たる手段が、市街地再開発法ビジネスモデルである。木造狭小建物の街で、土地をまとめて大きなビルやマンションを建てる事で、保留床で建築費を賄い、かつ公共施設も設置するこの手法は、地権者は資産が増え、良質物件需要者には需要が現れ、地域は街がきれいになり、市区町村は公共施設を無料で設置でき、デベロッパーは利益になる。5者WINの完璧な錬金術法だった。

1.3 人口激増時代から人口激減時代へと転換した
しかし日本は2008年をピークに人口が減少に転じた。平成の頃はまだ繁栄の余韻が続いたが、令和も深まり近年、人口激減が本格化し、少子高齢化がもたらす社会の歪みが各所で見えるようになった。
また都市計画法(昭和43年)都市再開発法(昭和44年)施行から50年以上が建ち、早期に建てられた住宅、マンション、中小ビル、その他社会的インフラストラクチャーが築50年前後に到達するようになった。
ところが私達日本人の、築古建物に対する方針は、昭和時代から変わらない。特に(大資本や公共機関ではない)個人所有の住宅、マンション、中小ビルは、築40年~築50年ともなると、当たり前に、
  • 建替える
  • 再開発する
  • 売却する
が選択される。それらが出来なければ、
  • 朽ちるまで使う
である。

1.4 建替困難な人口激減時代が意味する事
建替えを選択するための最低3条件は、
  • 将来も需要が続く事、
  • 従前より多くの使用収益が得られる事、
  • なるべく早く建替え投資費用を回収出来る事
である。需要激増時代に木造狭小建物からの建替えや、ゼロからの宅地開発では、これらが可能だった。しかし需要が尻つぼみ時代に、建設費高騰及び金利上昇で、高額投資回収期間が20年30年それ以上では、回収すら不可能リスクが高い。30年もたてば使用収益は減る一方でまた建物修繕費が増える。借入金が返済できなくなれば、せっかくの資産を金融機関に取り上げられて失う。 再開発も供給過剰で限界に近づき、各地で遅延や中止が出てきている。売却は、誰もが考える程簡単ではなく利益も少ない。 とりあえず「朽ちるまで使う」は問題の先送りでしかなく、朽ちるまで使った後の廃屋・廃家に使用利益は無く、固定資産税他維持管理費の支払いだけが発生し、次世代が解体費を負担しなければいけないかもしれない。なにより近隣迷惑である。

1.5 貧しくなるしかない日本人
つまり、現在の日本人の考え方では、日本の住宅、マンション、中小ビル、社会的インフラストラクチャー等、全ての建物・建造物は全て築40年築50年で寿命となる。つまり、1世代使用で終わりだ。そして現在は既に人口減少寿命激減時代であり、この潮流は今後更に悪化して60年後には人口が半減する。このような時代に、建替えられない住宅、マンション、中小ビル、社会的インフラストラクチャー等の全ては、負債となる。次世代はこの負債をかかえながら、経済成長しない時代に、またゼロから、恐らく多額の住宅ローンや借入金を背負って、住宅、マンション、中小ビル、社会的インフラストラクチャー等新築の費用を負担しなければいけない。つまり各世代は、収入の少なくない金額を、住宅ローンもしくは家賃支払いに費やし、結果として何も残らない。またその次の世代も、ゼロからやり直し。これでは誰かが何か上手くいかなければ、あっという間に中流から転落し、貧しい生活となる。 社会的にも、街の公共施設や社会的インフラストラクチャ―の老朽化、AKIYA・廃墟増加による地域環境の悪化、それらの解体費用負担等のマイナスの社会負担ばかりが増える。そうして少数の富める者以外は、だんだん貧しくなっていく。しかしそもそも、人口激減で貧しくなるしかないのは、仕方がない事なのか?

1.6 中流階級の豊かさを維持している他の先進国
一方英欧米に目を転じれば、英欧米社会では、国によって経済状態は様々だが、中流階級はそれなりに豊かな生活を維持している。階級社会だから貧富差はあるが、二極化ではなく、一定の中流階級が存在する。貴族が建てた高級建築とは別に、普通の住宅、マンション、中小ビルが建ち並ぶ。大卒会社勤めの中流階級であれば、しばしば日本より広い住宅に住み、年に1回は休暇で海外旅行を楽しむ。英欧米と一言で言っても、経済水準は異なり、それぞれに社会経済の波は激しい。しかしその中で共通して、中流階級は生き延びている。 そして中流階級個人において、生活水準維持に大きく寄与しているのが、日本と違い住宅やマンション、ビルが一代限りで寿命にならない事実だ。いずれの国も、第二次世界大戦後の復興及びベビーブームで1950年代殻1970年代にかけて、日本と同じようなビル・マンション・戸建て住宅が数多く建てられた。しかし誰も、寿命だ建替えだとは悩まない。より古い建物ともども基本「当たり前」として建物を延命する。もちろん再開発もあるが、それらは大資本の投資であり、取り壊しは個別の事情に基づく。基本は、ある世代が大金を投じて住宅やマンション、ビルを新築/取得をすれば、それが資産として子供へ孫へ先の世代へと受け継がれる。子供は自分自身で家を持つかもしれない。けれどやがて親の家を相続すれば、別宅を持つ、賃貸に出し賃料を得るといったゆとりができる。孫は住宅ローンを負わずに、家を手に入れる。気に入らなければ家は貸して、その賃料で自分の好きな家に住めばよい。そうして積み重ねが、生活のゆとりを作っていく。

1.7 他先進国の中流階級の豊かさ維持の秘訣を学ぼう
従来日本で、英欧米の建物維持を参考にするというと、貴族が建てた高級建築を見るか、もしくは日本人は日本は地震国だから、木造建造物化だからと、無理な言い訳ばかりが並べられた。しかし貴族趣味も、西欧文化VS日本文化の反発も、人口激減時代の現実問題に何ら答えを提供しない。世界中では、地震国も木造建築文化国も日本だけではない。日本でも長く存続している寺社、豪邸、城、町屋、明治大正時代築のビル等は数多くある。

問題は、好き嫌いではなく、英欧米や世界の人たちがやっているからではなく、私達日本人の中流階級が、社会環境の変化に合わせて、自分の所有する建物を資産としてベストな利益を得る方法を、自分で選ぶ事ができるかどうかなのだ。

それは「みんな一緒にこうしなければいけない」ではなく、少なくとも、自分でベストな利益を選び、住宅やマンションや中小ビルを資産として次世代に引き継ぎ、中流階級の豊かさを引き継ぎたい人が、それを選ぶ事ができる事なのだ。

現在の日本人が、英欧米や世界の他国の建物所有者がどのように考えて住宅・マンション・中小ビル等を世代を超えて引き継ぐ資産として維持しているか、具体的な手法である分散修繕及びその考え方を学ぶためには、いくつかの理解のステップを要する。その第一歩として、古い建物の将来の選択をどう考えるのか、もう一度見直そう。

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2 古い建物をどうするかを考えるのは不動産アセットマネジメント

所有する建物について、「損」をしたくないと考えるのは、当然だ。どうせならば、一番「利益」な方法を選択したいと考えるのも、当然だ。では古い建物をどうするのが、最も利益か?それを考えるのが、不動産アセットマネジメントだ。もちろん考え方がある。 所有する建物について、「損」をしたくないと考えるのは、当然だ。どうせならば、一番「利益」な方法を選択したいと考えるのも、当然だ。では古い建物をどうするのが、最も利益か?それを考えるのが、不動産アセットマネジメントだ。もちろん考え方がある。

2.1 アセットマネジメントとは
アセットマネジメントは、基本は「新築/取得した資産(アセット)で、どうすればベストな利益総額を得られるか?」という、誰でも当然に考える事の考えと実践だ。(新築/取得の投資に当たっては、その見込みで投資を判断する。) アセットマネジメントの重要な点は、問題は目の前の収入が大きいかどうか、ではない事だ。 アセットマネジメントが考える利益は、最初の投資に対するリターンの積み上げ総額で、期間は様々だが、最後にEXITするまでの期間となる。

2.2 アセットマネジメントは機会とリスクのマネジメント
通常アセットマネジメントを言う場合は、過去の結果の分析ではなく、これから将来に、 「新築/取得した資産(アセット)で、ベストな利益総額を実現する」ために、

  • 将来の利益機会 と同時に
  • 実現できないリスク
の両方を考える事を指す。将来の利益機会だけを考えるのは、高利回り投資詐欺に飛びつくのと変わらない。利益見込みの検討は、リスクに検討とペアになるのが、アセットマネジメントだ。

2.3 アセットマネジメントの種類
一般にアセットマネジメントという場合は、不動産、債券、資本(株式等)の3種類について、それらに投資し、ベストなリターンを得る事を言う。それぞれ特徴があり、その中の不動産アセットマネジメントも、様々な「不動産」タイプややり方がある。不動産アセットマネジメントは、広義では、ショッピングモールやスキー場開発、高層ビル高層マンション再開発も含まれるが、ここではそうした大資本の手法は扱わない。

2.4 不動産アセットマネジメントのキャピタルゲインとインカムゲイン
不動産アセットマネジメントには投資的に、キャピタルゲイン型とインカムゲイン型がある。キャピタルゲイン型は、高値売却利益を狙い、インカムゲイン型は、建物の使用の建物使用利益(インカムゲイン)を積み上げる方法だ。一般のキャピタルゲイン狙い手法は、問題ある物件を安く購入し、問題を解決して高く売却するバリューアップだ。個人でも例えばAKIYAを安く手に入れ、セルフリノベで価値を上げて、高値で売却する手法は、世界中で広く実践されている。 ただ、バリューアップで高く売れる理由も、相応の使用収益(インカムゲイン)を産むからである。どのみち使用収益(インカムゲイン)を高める事が第一であり、それが出来れば、キャピタルゲインも得られる。ただ売却は、その時の不動産マーケット状態及び、交渉能力といった外部要因も関係する。誰でも成功する類ではない。

2.5 築35年建物の不動産アセットマネジメント
具体的に建物アセットマネジメントを考える必要が出てくるのは、建物が築年数を重ね建物設備機能のトラブル出てきて、使用利益が減少するタイミングだ。ここで不動産アセットマネジメントとしては、このまま維持、売却、建替え等を考える事になる。
ⅰ)(再開発)
ⅱ)建替え
ⅲ)売却
ⅳ)建物延命(一度に建物を全てリニューアル)
ⅴ)建物延命(建物の使用を継続しながら、必要な個所を都度リニューアル)
ⅵ)朽ちるまで使う これらの比較は、例えば30年後くらいの将来まで含めて、考える。

2.6 建替えの利益と問題
ⅰ)再開発は特定地区に限られ、ⅱ)建替えはペイできないリスクが高すぎる事は、既に述べた通りである。ⅱ)建替えを考える場合は、建替え準備から建替え期間使用利益が無くなり、一方で公租公課等支出は続き、建物解体及び建替え費用が発生する。自宅であれば、建替え期間の住居費及び引っ越し費も発生する。建替え後は使用利益があるが、建替え直後から使用利益が生ずるとは限らず、また新築時こそは新築プレミアムで高い使用利益が可能であっても、また経年とともに利益は減少し修繕費用等がかかるようになる。現実的に想定をしなければいけない。

2.7 売却の事実
売却はEXITでキャピタルゲインを得る方法だ。ただ売却は買い手がいて成立する。現在の日本は、高く売れる地域と売れない地域の二極化が進んでいる。都市部で高く売れた場合でも、譲渡所得税と仲介手数料がかかる。 不動産アセットマネジメントとしては、
売却時点までの使用利益+売却価格ー譲渡所得税ー他(印紙代・登記費用等)ー仲介手数料
で他の案と比べる事になる。買替特例を使用した場合は、他の不動産購入費用、購入側の仲介手数料及び印紙代・登記費用等を見込み、またその後の使用利益と費用を考えなければいけない。

より問題が、地方部や住宅街の売れない住宅、マンション、中小ビルだ。売却できない訳ではない事はこの後で述べるが、いずれにしろ高値売却は望めず、利益が期待できない。他の案と比較検討をしたい案だ。

2.8 朽ちるまで使うは次世代に迷惑
一方で積極的にリスクを取ってEXITにしないのが、
ⅳ)及びⅴ)の)建物延命=延命工事を行う
ⅵ)朽ちるまで使う=延命工事を行わない
だが、先にⅵ)を見ると、朽ちるまで使うと方法は、大きな延命工事支出はないが、使用利益は先細りし、いずれ確実にゼロになる。しかもそこで終わりではなく、全く使用利益を得ていない次世代に空き家維持費や解体費といった費用負担だけを送る。だから避けるべき選択だ。

2.9 建物延命も、リフォームリノベーション等は高額投資
一方で、建物延命につていて、日本でまず言われるⅳ)の一度に建物を全てリニューア手法とは、建物を空にして一度に建物を全てリニューアルする、フルリフォーム、リノベーション、大規模改修工事、再生工事等だ。 建設業者等が好む手法だが、考え方は建替えと基本同じだ。建替えよりは、費用が少ないが、工事後の使用利益も通常は建替えより少ない。そしてまた経年劣化で賃料収入は減少し、建物延命工事が必用となる。気になれば自分で計算をすればよいが、一般にこれでペイができる建物は限られている。基本は不動産投資もしくは大資本の手法なのだ。つまり、古くぼろい家やマンション、中小ビルを格安で購入し、綺麗にして使用する/高値で売る手法で用いられる。このバリエーションとして費用を抑えるセルフ・リノベーションがあるが、自分で考え自分でアイデア能力気力時間が必用だ。誰でもできる方法ではない。これもやはり古くぼろい家やマンション、中小ビルを格安で購入し、大金をかけずに自分で綺麗にして使用価値を上げたい人が行う方法だ。いずれにしろ、大きな投資であり、実現できないリスクも高く、これを考えなければいけない。

2.10 問題は、延命工事の費用と効果をどう考えるのか
ここまで古い建物を最大に生かす選択として遡上に残ったのが、
ⅴ)建物延命(建物の使用を継続しながら、必要な個所を都度リニューアル)
だ。とはいれこれも、従来日本で実践されている「壊れたら工事」式では、いくら費用がかかるわからない。外壁や屋根補修に、言われるままに必要のない高額工事を行う例も少なくない。 しかしこの「建物の使用を継続しながら、必要な個所を都度リニューアル」には、他にないメリットがある。それは、延命工事のやり方次第で「延命工事の費用」をある程度建物所有者でコントロールできる事なのだ。英欧米や世界の他国の建物所有者が実践している分散修繕は、まさにその考え方だ。そこでここで建物延命のアセットマネジメントを、建物アセットマネジメントと呼ぶ。この建物アセットマネジメントをこの先で考えるとして、先に建物アセットマネジメントを考えるために欠かせないいくつかの概念、そもそもとして、建物の寿命とはどういう事か、建物を維持するためには何が重要なのか、利益と費用はどう考えるのか、を一つ一つ考えよう。

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3 建物の寿命とはどういう事か

建物の延命を考えるには、建物の寿命とはどういう事か、正しく理解しなければいけない。日本の建物や建造物は、築40年築50年で老朽化だ寿命だと言われる。けれどどのように建物寿命になるか、理解している人はほとんどいない。そこでまず「建物」とは何かの理解を深め、それから建物の寿命とはどういう事か、深く考えてみる。

3.1 建物とは建物は建物躯体と多くの建物設備機能の集合体
建物という「物」は、1軒、1棟、といった単位で扱われる。けれど実態の建物は、建物躯体と多くの建物設備機能群の集合体だ。建物設備機能群には、外壁保護の塗装・タイルから、給排水管、設備、電気設備、空調、エレベータ、外壁断熱等から、耐震性能も含まれる。  

つまり人が使用する建物は箱ではなく、多くの建物設備機能群が機能して、人が生活したり仕事をする空間を作る。ちょうど一人の人間が、多数の臓器や血管、皮膚等が機能して、生きているのと同じだ。

3.2 建物老朽化とはどういう状態か
日本では、建物や建造物が築40年築50年で老朽化と言われる。そして老朽化だから寿命だと言われる。この老朽化とは、建物を構成する建物設備機能群の少なくない数で経年劣化が進行して、建物の見た目や機能が明らかに劣化した状態を指す。 しかし、住宅の梁や建物躯体は丈夫だ。鉄筋コンクリート造建物では、コンクリート寿命が言われるが、通常は、塗装もしくはタイルで保護されていて、保護機能を維持すればそうそう劣化しない。 問題は外壁保護機能他、建物を構成する建物設備機能群の各々で、ライフサイクルが短い事だ。40年50年すればいくつも建物設備機能が経年劣化し、個別建物設備機能の老朽化が増えると、建物自体が老朽化と呼ばれるようになる。 とはいえある日突然、建物の建物設備機能の全てが機能しなくなったり、建物が倒壊する訳ではない。軍艦島の廃墟マンションは1916年築で放置されたまま築100年を経過しているが、まだ倒壊していない。

3.3 建物延命とはどういう事か
一方で、では建物の延命とはどういう事か。建物延命とは、建物の中の経年劣化した建物設備機能を新規リニューアルし、機能性能を回復して存続する事を言う。 建物は人間と違い、劣化した臓器内臓や皮膚や血管を交換する事で、生き続けられる言えよう。この交換は何度でも可能であり、アップデートも可能だ。だから、築100年築200年でも、使用出来ている建物は使用が出来ている。

3.4 旧耐震基準建築である事や地震国である事は、建物寿命とは関係ない
ところで日本では、旧耐震基準建築建物は、建替えなければいけない。日本は地震国だから建物短命は仕方がないと言われる。しかし、整理をしよう。旧耐震基準建築である事や地震国である事は、建物寿命とは関係ない。世界中で地震国は日本だけではなく、環太平洋地域や大陸内陸部の特徴である。日本全国一律に数百年に一度の巨大地震のごくわずかな激震地に見舞われるリスクがあるのではなく、また該当地域でも、被害程度は地盤が関係する。新耐震基準建築でも地盤が悪ければ倒壊し、旧耐震基準建築建物でも、耐震性がある建物は多く、耐震補強技術もある。結局耐震性は、個別に判断されるべきものである。なんでもみんな一緒一律に判断したがるのは、日本人の悪い癖だ。

3.5 建物寿命とは、延命が選択されない事
つまり、建物の建物設備機能群は経年劣化するが、リニューアルし延命する事ができる。どのような建物・建造物であれ、延命は可能だ。ところが「延命が選択されない」時、その建物は寿命となる。


3.6 日本の建物・建造物の多くは、経済的寿命
現在の日本で建物が選択されない理由は、「1.5 延命・長寿化の利益とデメリットは何か」で述べた通り、延命・長寿化に利益があると思われていないからである。つまり経済的寿命だ。 昭和の建替え適格時代は、
・建替えや再開発投資をした方が、より大きな利益を得られる
だったから、日本では「延命・長寿化に利益」の考えが育たなかっただけでしかない。 また日本では建物延命というと、高額リフォーム・リノベーション、大規模改修工事、再生工事といった、建設業界の建替えに準ずる高額ソリューションが言われるため、 建物延命で得られると期待できる利益<延命工事の費用 と考えてしまう事も、建替えや再開発投資をした方が利益という考えを強化してきた。

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4 建物・建造物は物だが、資産でもある

日本の住宅、マンション、中小ビル他建物は、経済的理由で寿命になる。つまり、建物は「物」だが、所有者にとっては単なる「物」ではなくお金をかける価値があるかどうかを問題にする「資産」なのだ。そして建物が資産ではないとは、負債だ。建物は負債になると、持ち続けられない。負債化を恐れて、経済的寿命にしてしまうほど、建物が資産であり続ける事は、建物延命の条件だ。この資産の認識は非常に重要だ。

4.1 建物・建造物は物だが、所有者にとっては資産
建物・建造物は、物だが、所有者にとって、資産である。 建物が資産とは、
建物延命で得られると期待できる利益>延命工事の費用
である。 分散修繕である。これを理解するために、まず建物は資産でなければ維持できない事、それから建物延命の利益と費用を考えるために、「利益の考え方」として「建物アセットマネジメント」を、及び建物延命の費用の考え方として、「資本的支出工事」を学ぶ。更に留意すべき「リスク」を学ぶ。そしてようやく、具体手法として住宅・マンション・中小ビルを永久資産にする「分散修繕」の考え方を学ぶ事ができる。


4.2建物資産は、土地と一体の資産
この建物資産は、土地と一体で土地の価値を実現する資産という性質を持つ。日本人は土地こそ資産と考えるが、土地はそれだけでは利益も生まない。現在では市街地の土地の価格も、土地の上の建物の収益価値で評価される(収益還元法)通り、建物の使用価値は土地の価値をも決める。そして建物が負債になると、土地も手放す事になる。

4.3 建物資産の価値はどこから生まれるか
建物の資産価値は、建物使用者の使用の利益で決まる。(建物築年数とは関係ない。) この使用の利益は、賃貸の場合は賃料収入から諸費用(管理費、修繕費、公租公課、火災保険、借入金返済等)を差し引いた残りとなる。 自宅や自用の建物の場合は、賃貸した場合に支払うべき賃料を、賃料収入と見做し、同様に計算をする。これは、その物件を賃貸した時に支払う賃料を支払わずに済んでいる事が賃料収入と仮定する。では、この賃料収入がどう決まるかというと、これは地域賃貸マーケティングで調べる事になる。これについてはまた後で触れる。


4.4 建物が資産ではなくなるとは、負債になる事
建物資産観が重要な理由は、建物が資産ではない、つまり
建物延命で得られると期待できる利益<延命工事の費用
では、建物が負債になるからだ。


4.5 所有者にとっては建物は資産でなければ延命ができない
建物が負債になれば、土地も価値を失う。誰も長く持ち続けられなくなる。 だから住宅、マンション、中小ビル所有者にとっては、建物が資産であり続ける事が延命の必須条件だ。つまり建物延命とは、建物を負債にしない事であり、また
建物延命で得られると期待できる利益>>延命工事の費用
が成り立つ事だ。しかし、建物延命のための、建物設備機能のリニューアル費用は、時に少なくない。そこでそもそも「延命工事の費用」と「建物延命の利益」の両方について、どう考えるかが問題となる。

4.6 英欧米や世界の他国の建物所有者は、経済的寿命にせず資産として維持する
つまり、英欧米や世界の他国の古い建物が長く使えている理由は、建物所有者が、所有する住宅を、マンションを、中小ビルを経済的寿命にせずに資産として、延命を続けるからだ。もちろん個別では負債化もあるが、基本は、分散修繕で、
建物延命で得られると期待できる利益>>延命工事の費用
とし、建物を負債にしない。これを実現するための、延命工事の費用の考え方があるのだ。

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5 資本的支出工事とは

建物「延命工事の費用」を考えるための重要な概念が「資本的支出工事」だ。「資本的支出工事」は、建物資産の寿命を延ばす工事を指す会計用語だ。会計を学ぶ必要はないが、建物延命にあたっては、通常の修繕工事との違いの理解は欠かせない。ここでは「資本的支出工事」の意味と、建物を資産として維持するための「資本的支出工事」の留意点を考える。

5.1 建物の資本的支出工事とは
建物の寿命を延ばす工事を、会計用語で、資本的支出工事と言う。具体的には、 資本的支出工事とは、建物の使用可能期間(建物の寿命)が延長し、(工事をしない場合と比べて)資産価値を高める工事と定義される。

5.2 資本的支出工事の会計的特徴
資本的支出工事は、会計的に「資産の追加取得」と考え、次の図の通りの特徴がある。

  • PLの費用ではなく、BSの資産(固定資産)に入る
  • 減価償却で、減価償却期間の年数をかけて費用計上される
(ちなみにこの図の賃料収入は、既にご説明をしている通り、賃貸物件の場合はその賃料収入、自宅や自用の建物の場合は、そこがもし賃貸だったら払ったであろう家賃が、払わずに済んでいるので賃料収入と想定する。)

5.3 資本的支出工事と修繕工事の違い
この資本的支出工事の特徴は、修繕工事と比べると、更に際立つ。 修繕工事は、建物延命の工事ではなく、建物を構成する建物設備機能群のうちの該当物の延命の工事だ。だから修繕工事は、建物の資産価値をあげたり、建物寿命を延ばしたりといった効果は期待できない。資産価値に関係がない修繕工事はPLの費用として、その年に費用化される。つまり金額が高い修繕工事を行うと、比例してその年の利益が減る。 これに対して、資産価値を高め建物寿命を延ばす資本的支出工事はBSの資産に入る。例え高額でも、単年度の費用インパクトは、減価償却分だけになる。だから工事金額の大きさと利益の減少が比例しない。

5.4 資本的支出工事とは具体的にどのような工事か
もう一つ資本的支出工事と修繕工事の違いとして、重要なのは、具体的な工事内容の違いだ。

例えば漏水対応や故障対応は、いわゆる修繕工事に該当し、該当の建物設備機能を延命させる。ただ経年劣化の進行は止められない。そうしてトラブルが頻発・重大化するようになると、漏水する給排水管や、故障するエレベータそのものを交換して新規リニューアルする。これが資本的支出工事という。 つまり、建物を構成する建物設備機能群について、個別の建物設備機能の延命が修繕工事。経年劣化した個別の建物設備機能そのものを交換して、集合体としての建物を延命するのが、資本的支出工事となる。資本的支出工事には、他にも新規に建物使用に必要な機能性能を加える場合も含まれる。

5.5 資本的支出工事は投資
この資本的支出工事は、先行投資である。つまり、「資本的支出工事」と称すれば、必ず使用利益の効果がある訳ではない。想定した効果がないリスクが必ずある。 だから資本的支出工事を考える際には、投資判断として、
>「費用対効果」がある事
リスクが高すぎない事

も考えなければいけない。特に金に糸目をつけないのではなく、建物を資産として延命続けるための「資本的支出工事」では、この両方が重要となる。このうちリスクについては、この後「建物資産のリスク」で考える。「費用対効果」については、ここではまず建物を資産として維持するために重要な、3つの留意点を考える。

5.6 資本的支出工事の効果を決めるのは、建物使用者
建物を資産として維持するための資本的支出工事で「費用対効果」を考える際に、留意すべき事その1は、この「効果」を決めるのは、所有者でもなく、工事業者でもなく、「建物使用者」だという事だ。建物の資産価値を上げる資本的支出工事は、単なる現在建物の延命工事ではない。検討対象の建物設備機能は、
現在の建物にあるが、今後の建物使用者には必要ない(重要ではない)
現在の建物にないが、今後の建物使用者には必要で新しく設置したい
場合がある。必要とする建物設備機能グレードの必要程度も、現在と将来では違うかもしれない。将来の建物使用者に重要ではない資本的支出工事をいくら行っても、費用対効果は生まれない。「費用対効果」の高い資本的支出工事を行うとは、将来の建物使用者の満足度維持に欠かせない工事を行う事だ。特に賃貸の場合は、その「資本的支出工事」でどの程度上の賃料を払ってよいとテナントが考えるか、つまり具体的にどの程度の賃料効果があるか、で決まる。 だから資産としての使用利益を作る資本的支出工事を考える際には、「物」「数字」に加えて「建物使用者」を考える必要がある。

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6 建物アセットマネジメントと資本的支出工事

ようやく、建物アセットマネジメントに戻る。建物アセットマネジメントは、建物が古くなったらどうしようかと考える不動産アセットマネジメントの中で、「3建物の使用を継続しながら、必要な個所を都度リニューアルする」建物延命方法だ。 建物延命の方法としては、
ⅳ)建物延命(一度に建物を全てリニューアル)
ⅴ)建物延命(建物の使用を継続しながら、必要な個所を都度リニューアル)
があるが、>ⅳ)の建物を空にして一度に建物を全てリニューア手法とは、フル・リフォーム、リノベーション、大規模改修工事、再生工事等は大資本や不動産屋の、セルフ・リノベーションは費用を抑えたい個人の、売買時や建物が空になる機会があった時だけに出来る、バリューアップ投資手法だ。 これに対してⅴの建物を使用を継続しながら必要な個所に都度資本的支出工事を行い、建物を延命する方法は、現在住宅、マンション、中小ビル等建物を資産として使用し利益を得ている建物資産所有者にとって、もっとも現実的に建物を負債にせずに資産として維持できる。

6.1 建物アセットマネジメントとは
建物アセットマネジメントは、建物に特化し、建物の使用を続ける事を前提として、「新築/取得した資産(アセット)で、どうすれば建物使用を続けてベストな利益総額を蓄積できるか?」と、使用収益(インカムゲイン)の蓄積の最大化を考える。

6.2 建物アセットマネジメントとしての建物延命
改めて定義をすると、建物アセットマネジメントとしての建物延命で考える事は、どうすれば、「建物延命の利益」が続くか? つまり、会計サイクルで使用利益を産む状態を継続させる事だ。

これが続く限り、建物は使用利益を産む資産であり続ける。長く続ければ続ける程、最初の新築/購入からの利益は積み上がり続ける。だから建物アセットマネジメントとしては、この使用利益を産む会計サイクルを可能な限り長く続ける事が、目標となる。

6.3 建物アセットマネジメントとしての建物延命の利益は長期で考える
建物アセットマネジメントが考える使用利益は、実務上、現在から将来に渡る長期の利益機会だが、過去の利益は確定だから、建物アセットマネジメントが考えるのは、現在から先の将来の建物使用利益である。つまり、
建物延命で得られると期待できる利益>>延命工事の費用
の建物延命の利益とは、1年2年の利益ではなく、10年20年30年の長期利益で考えなければいけない。すると例えば、資本的支出工事の効果が、1年目は高利益だけれど数年で利益が下がるといった短期利益のものは効果が高いといえず、本当に長期効果がある工事だけが評価される。また一時的に赤字になる事があっても、長期的に黒字に戻り使用利益を産む見込みが高ければ、建物を諦める必要もない。

6.4 建物アセットマネジメントと管理(プロパティマネジメント)の違い
建物アセットマネジメントの建物延長の利益は、長期で考える。実はこれこそが、建物アセットマネジメントとプロパティマネジメントの違いだ。そして建物の将来は建物アセットマネジメントで考えなければいけない理由だ。

プロパティマネジメントは、今年のBSの建物資産から、1年間の利益のベストを実現する。賃貸物件であれば、リーシングを成功させ、建物問題を解決し、費用削減に取り組む。これに対して建物アセットマネジメントが考えるのは、所有するアセット(建物資産)の所有期間全てを通して、どうやってベストな総利益にするか、だ。単年度ではなく、保有期間での利益合計のベストを考える。

会計的に言えば、プロパティマネジメントはPLだけを考え、建物アセットマネジメントは、BSとPLの両方を考える。


6.5 建物アセットマネジメントの資本的支出工事は、資産所有者が判断する
そしてもう一つの建物アセットマネジメントと管理(プロパティマネジメント)との違いが、管理(プロパティマネジメント)は管理者や管理会社等に任せる事ができるが、建物アセットマネジメントを考え、判断するのが、建物資産所有者しかいない事だ。つまり、建物アセットマネジメントの資本的支出工事は、建物資産所有者が、どうするか考え、自己責任として決めなければいけない。

6.6 資本的支出工事は、建物全体で考えなければいけない
留意すべき事その2は、例え1つの建物設備機能のリニューアル工事でも、建物全体で考えなければいけない事だ。

なにしろ「建物としての使用利益」は、例えば建物の建物設備機能の1つのリニューアルであっても、1軒1棟の建物としては、数字の「建物資産」(図の①)を増加でしかなく、その効果も、「建物としての使用利益」(図の②)で評価される。いくら減価償却が出来ると言っても、数が増えれば累積される。だから建物資産として利益水準、費用水準が適正であるためには、1つの資本的支出工事でも、建物全体で考えなければいけない。

6.7 予算の上限を意識しなければいけない
更に留意すべき事その3は、資本的支出工事の予算には上限がある事だ。 そしてその使用利益は、立地や建物条件で決まる上限がある。当然に厳しい地域が大半である。建物の使用利益を守るためには、立地や建物条件で決まる上限に対して、工事総額が大きくなりすぎないように、抑えなければいけない。「建物の将来のため」とさえ言えば、何でも工事が出来る訳ではない。具体的には、建物全体で、資本的支出工事の優先順位付けが必用となる。

6.8 リスクを意識しなければいけない
リスクの考え方については、次でより詳しく説明するが、リスクを考える事は、これからの美味しいプランを考える事と同じくらいに重要だ。 想像通りに上手くいったプランを考える事は、楽しい。けれども問題は、プランがある事ではなく、どのくらい実現性があるか、逆に言えばどのような実現できないリスクがあるか、なのだ。それを考えられなければ、あなたは「かも」と言われて仕方がない。

6.9 建物アセットマネジメントとしての資本的支出工事の取り組みに必要なこと
これらを総括すると、建物を資産として延命続けるための資本的支出工事を考えるためには、建物所有者は、

  • 建物の全体を考える 
  • 将来の結果を考える (リスクを高めない)
  • 工事に優先順位をつける (費用対効果の高い工事だけ行う)
事が必須である。これを具体的にどのように身に着けるかは、この後で考えるとして、先にもう少し古い建物維持のリスクを考えててから、具体的な実現方法である分散修繕を考える。

6.10 建物アセットマネジメントとして所有者がベストな方針を決める事で、方針に沿った提案を貰えるようになる
ところでここまで建物資産所有者は、建物アセットマネジメントとして、資本的支出工事を決めるという話をしたが、とはいえ全て好き勝手に決めてよい訳ではない。 現在の建物設備機能の状態やどう工事ができるかは、専門工事業者が決める事だ。建物管理者でなければわからない事も多い。 建物資産所有者は、管理者や専門工事業者の意見を聞いて、自分にとって「ベストな利益総額を得られる」方針を決めなければいけない。それは、例えば古い建物には価値がないから、工事をしない、もひとつの方針だ。ただ建物アセットマネジメントとしては、どうした方針がベストか、自分で考えて自分で決めなければいけない。 建物資産所有者が、自分の方針を持っていると、建物管理者や管理会社、専門工事業者等は、その「ベストな利益総額を得る」方針に合わせたベストな問題解決を提案できるようになる。

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7 建物資産のリスク

ここで、アセットマネジメントで利益機会とペアで重要な「リスク」検討を考える。ここでは売買や建替え等リスクは考えず、築古の住宅、マンション、中小ビル等建物資産維持のリスクのみを考える。建物資産維持のリスクには、物と数字のリスク及び現在と将来のリスクの2つのリスクペアがある。 リスクの過不足ない評価が出来る事は、所有者の責任だ。リスクを高めない事が、建物資産所有者の自己責任と言える。ちなみにここで考えるのは、工事の失敗といった個別リスクではなく、より固有のリスクである。

6.1 建物延命の2つのリスクペア
建物資産には、2つのリスクペアがある。だから建物の将来を考える差には、この2つのリスクペアを両方考えなければいけない。



6.2 物のリスクと数字のリスク
まず建物資産の物の面と数字の面に対応する、物のリスクと数字のリスクだ。 物のリスクとは、物の建物が経年劣化で事故を起こしたり機能しなくなる事を指し、 数字のリスクとは、使用収益が減少したり、工事が高額で、建物が負債化する事である。

この物のリスクと建物のリスクはペアで、片方に対応すると、反対側が高まる性質がある。例えば、経年劣化した建物設備機能に対して、物のリスクを考えて高額工事をすると、数字リスクが高まる。数字リスクを考えて工事をしなければ、物の事故リスクが高まる。といった具合だ。

6.3 現在のリスクと将来のリスク
次に、物のリスクと数字のリスクのペアは、すぐには反対側のリスクの結果が出ない。。必ず時間差があり、数年後の場合もあれば十数年後のバイもある。つまり、現在リスクと将来リスクのリスクペアもある。怖いのがこの将来リスクだ。

6.4 最悪は、負のサイクルに陥る事
将来リスクが怖い理由は、これが高まると負のサイクルに陥り、建物負債化に一直線だからだ。 建物は多少問題が増え「物」リスクが高まったところで、すぐに使用できなくなるほど「やわ」ではない、けれども10年20年と問題が積み重なると、より解消に費用がかかるようになり、数字リスクが高まる。すると余計に「物」リスク解消に費用がかかり、対応できず、「物」リスクが高まるか、「数字」リスクを高めて対応するか、いずれにしろ、この悪化が繰り返される負のサイクルに陥り、やがて建物は寿命となる。



6.5 工事失敗、震災災害等リスクも、全て物と数字のリスクで考えられる
より一般にリスクとして考えれる工事失敗や震災災害等のリスクも、全て物と数字のリスクに行きつく。 例えば工事失敗は、物の問題が解決しない事で物リスクを高め、費用が無駄になる事で数字リスクも高める。原因としては、工事業者とのコミュニケーション不足やそもそも適切な実力ある工事業者を選ばなかった事にある。 また震災災害等も、やはり物と数字のリスクに行きつく。そして問題は、適切な震災災害対策を行っていなかった事で、物のリスクの高まりを放置した事である。

6.7 古い建物維持リスクの考え方
つまるところ建物に完全なリスクフリーは存在しない。古い建物ではなおさらだ。極端なリスク怖がらせ、もしくはリスク無しを言うのは、投資詐欺の営業文句だけだ。現実では、リスクを無くす事はできないが、高めない事はできる。そして特定リスクを高めない最も合理的な方法は、リスクペアのバランスを取る事である。その手法を、次にご紹介するが、その前にもう一つだけリスクの大原則がある。

6.8 安定維持こそが低リスク
建物アセットマネジメントの長期視野で考えた場合、リスクの大きな変動はそれ自体がリスクとなる。リスク対応は、それ自体が常に成功しないリスクがあるからだ。つまりリスク対応の方針では、、リスク変動が少ない状態、安定の維持を目指す事が、最も将来が低リスクとなる。このリスク対応の大原則は、重要だ。

6.9 つまり現在の日本で、建物延命が難しく感じられた理由
先に進む前に一旦立ち止まると、ここまでで現在日本で、建物延命が難しく考えられてしまった理由が見えてくる。
従来日本人は、建物資産観が希薄で、建物について管理(プロパティマネジメント)の考え方しかなく、工事費用は修繕工事費用の考え方しかなかった。管理(プロパティマネジメント)はPL及びBSのPLしか見ない。だから賃料収入(自用/自宅の場合は、賃貸した時の賃料を払わずに済んでいる事が収入と考える。)が、建物が古くなり減少すると価値が無いと考えた。工事取り組みは、建設業者に依存的で、言われるままに高額リフォーム、リノベーション、大規模改修工事、再生工事等の高額ソリューションを提案をそのまま受け取る。そうした建物延命にかかる工事を、修繕工事と同じに考えるから、高額で利益がないと考えた。
自分で「建物延命で得られると期待できる利益>延命工事の費用」を考える方法を持たないから、結局、高額リフォーム・リノベーション、大規模改修工事、再生工事といった、高額ソリューションでなければ、DIYのセルフリノベといった両極端に走り、自分で「建物延命で得られると期待できる利益>延命工事の費用」を考えるという発想すら育たなかった。 しかしそれも今現在までだ。時代が需要増大の投資適格時代から需要激減に変わった現在、難しい時代でも英欧米をはじめ世界中の個人が住宅、マンション、中小ビル資産を永久資産にしている分散修繕を、これから学ぶ。

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8 建物を永久資産にする分散修繕

さて、ようやく、一番最初の命題である、英欧米や世界の他国の建物所有者が、どのような利益感で、住宅・マンション・中小ビルを延命しているのか、具体的にどう建物の延命をしているのか、の答えである「分散修繕」を考えるために必要な基礎が身に付いた。尚、分散修繕の名称は、彼らが実践している方法を、日本で名付けたものである。

8.1 分散修繕とは
分散集残は、英欧米や世界の他国の(大資本や不動産業者ではない)個人の建物所有者が実践している、住宅、マンション、中小ビルの使用利益を長く延命して、「新築/取得した資産(アセット)から得られる利益総額を増やし続ける」建物アセットマネジメントの方法だ。

を継続させるために分散修繕は、建物の使用を続けながら、建物の延命・長寿化の条件である

  • なるべく少ない延命工事予算で
  • なるべく高い建物使用利益効果を出し
  • かつ低リスク
を実現する。しかも特別な専門知識は必要としない。

8.2 分散修繕の基本系
分散修繕を知るには、分散修繕の基本系を見るのが一番わかりやすい。

工事予算を準備してから、資本的支出工事を極力低予算で行う。終わると次の工事予算を準備し、工事予算が準備できてから、次の資本的支出工事を極力低予算で行う。この繰り返しで、リスクとリスク対応の工事が分散され、負債を作る数字リスクが高まらない。このように工事を分散するから、分散修繕という。ただし単なる壊れたら工事式とは違い、分散修繕は、このサイクルが回るように、考える準備がある。


8.3 工事の分散が低予算と低リスク及び高費用対効果の全てを実現する
分散修繕のコンセプトは、「資本的支出工事」を小さく分散する事で、リスクを高めない事だ。ただ単にリスクを高めないだけではなく、次の効果がある。

■なるべく少ない延命工事予算
  • 余計な中間費やまだ使える対象の工事を削減し、長期でも劇的に工事費用の削減ができる。
  • 個別建物設備機能工事に時間をかけることで、専門知識がなくとも内容を理解し過剰や不要工事を削減できる。
  • 個別の建物設備機能等工事予算を削減できる事で、事前に工事予算を準備できる。
  • つまり「資本的支出工事」として、借入金過多や大きすぎる減価償却の問題を回避できる。
■なるべく高い建物使用利益効果
  • 建物所有者が自分で考えるから、一般的基準での費用対効果の低い工事を排除できる。
  • 建物所有者が自分で考えるから、将来建物使用者の納得度向上を具体的に考えられる。
  • 個別建物設備機能工事に時間をかけて取り組み工事内容の無駄や過剰を排除し、費用対効果を高められる。
■かつ低リスク
  • 工事規模が小さくなる事で、柔軟に必要に応じて対応し、物のリスクを高めすぎない。
  • 同時に工事金額が小さくなる事で、数字のリスクも高め過ぎない。
  • 借入金を作らない事で、将来のリスクも高めない。
■実現性
  • 工事規模が大きくないから、建物の使用と利益を継続しながら工事ができる。
  • 物のリスクも数字のリスクも高めずバランスを取る事で、安定した長期利益を実現できる。
  • 工事予算を準備し工事の繰り返しという長い時間軸で考えるから、建物アセットマネジメントの長期的な利益で、考える事ができる。
建物の一戸・一棟工事は、確かに素人には分からないのが当然だが、個別の建物設備機能のリニューアル工事であれば、素人の建物資産所有者でも、その内容を理解して、過剰や無駄を排除する事ができる。

8.4 分散修繕の基本系サイクルを回す
このサイクルを回し続けるには、現在も将来も必要なタイミングで工事予算が無く困らないよう、普段から無駄や過剰工事を行わわず、費用対効果の高い工事だけを厳選して行う事が必須だ。

ただ、低予算、必要工事、費用対効果といった言葉の中身は、建物によっても所有者によっても違う。だから分散修繕は、建物資産所有者が、これら自分の水準をまず自分で決めなければいけない。つまり、
1自分の総工事予算
2自分の低予算水準
3自分のリスク許容度
4何の工事が効果があるのか
を自分で見つけなければいけない。

8.5 自分の予算で工事をする
まず、分散修繕の総工事予算は、建物資産所有者が自分の予算で決める。工事予算を工事業者や建物管理者が決める限り、「お金が無いから工事ができない!」という数字のリスクが避けられないからだ。建物延命=いくら、の固定費用ではないのだ。予算が潤沢なら潤沢なりに、予算が厳しければ厳しいなりに、工事の取り組み方がある。

8.6 自分で低予算の水準を決める
また分散修繕は、低予算が必須である。ただどの水準以下を低予算とするかの基準も、建物資産所有者が決める事だ。実際には建物資産所有者が勝手に決めるのではなく、建物資産所有者は、自分の予算で実現ができる、将来の建物使用者が納得して使用できる建物設備機能等の「最低水準」を見つけなければいけない。 この低予算は、見積書をたたくのではなく、建物資産所有者が、必要のない工事(内容)等を行わない、過剰サービスを求めない、という合理的判断で、実現する。

8.7 自分でリスク許容度を決める
物及び数字のリスクをどこまで許容できるかも、建物資産所有者が決める事だ。具体的には予算を捻出できる経済状況及び建物使用者によって、違う。例えば古い建物だから仕方がないと多少の建物設備トラブルが容認される場合もあれば、そうでない場合もある。リスクは無くす事はできないが、予防や回避で高めないコントロールはできる。予算と建物使用者の納得水準を考慮して、リスク許容度を建物資産所有者が決めなければいけない。

8.8 自分で何が費用対効果があるかを見つける
低予算の分散修繕工事は、過剰や重要性が低い工事(内容)を削減し、長期的な費用対効果が高い資本的支出工事のみを行う事で実現できる。費用対効果の効果は、もちろん建物使用者にとっての必要度と納得度で決まる。建物資産所有者は、何が「効果」があるかを見つけ、自分の予算、低予算の水準及びリスク許容度を考えて、費用対効果の高さがどの程度の資本的支出工事を行うか、自分で考えなければいけない。具体的な考える方法は、この次の30年分散修繕計画、30年安定ビル資産経営計画の作成で考える。

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9 初めて分散修繕を実践するための準備

建物設備機能のトラブルが増えてリニューアル工事等を考えるようになった際に、分散修繕として永久資産になるように工事をどうするか決められるようになるためには、建物資産所有者は、所有する建物を分散修繕で永久資産にするために4つの水準を、準備として、自分で考えておかなければいけない。この役割は、管理者や不動産屋や建設業者や工事業者や税理士、金融機関等に任せる事はできない。ただ昔は、こうした事を考える力を身に着けるためには勘と経験が必用と言われたが、現在であれば、机上の計画作成を通して、自分で考えて自分で見つける事ができる。

9.1 分散修繕の対象建物
分散修繕の対象は、全ての建物・建造物だ。

  • 戸建て住宅
  • 中小ビル、一棟マンション
  • 公共施設
  • 社会的インフラストラクチャー:道路、交通機関、上下水道・電力・ガス施設等
の全てで、分散修繕は通用する。

9.2 分散修繕の取り組み開始時期
分散修繕の取り組み開始時期に決まりはない。建物設備機能について、一般に言われる法定寿命や実寿命は、あくまでも一般的な目安だから、これに従う必要もない。ただ、多くの建物は、通常築35年前後くらいから、どこかしら建物設備機能の経年劣化が気になるようになる。 そのくらいの時期から、分散修繕を考えだすと、楽に建物を良い状態で延命できる。ただもちろん築40年築50年からでも、問題はない。10年20年かけて、建物を良い状態に持って行こう。

9.3 分散修繕取り組みには準備が必用
分散修繕は、特別な専門知識は不要だ。専門知識は専門家に任せればよい。しかし専門業者等の意見を参考に、所有する建物の分散修繕の基本方針
1自分の総工事予算
2自分の低予算水準
3自分のリスク許容度
4何の工事が効果があるのか
を自分で準備として、考えておかなければいけない。 建物延命・長寿化が文化の英欧米をはじめ世界中の住宅、マンション、中小ビル所有者達は、当たり前の事して自分で考えているが、私達日本人は、それがない。

9.4 最初の分散修繕取り組みには計画が必用
そこで私達日本人は、まず30年程度の計画を作成を通して、試行錯誤し、自分の住宅、マンション、中小ビルを永久資産にできる分散修繕の基本方針を見つけなければいけない。

30年という期間に決まりはないが、大きな工事が含まれ、平準化できる期間として、一般の長期修繕計画でも採用されている期間だ。この計画作成の目的は、いつ何の工事をすべきか決める事ではなく、自分の分散修繕の基本方針を見つけるとともに、資本的支出工事の判断に欠かせない、
  • 建物の全体を考える 
  • 将来の結果を考える (リスクを高めない)
  • 工事に優先順位をつける (費用対効果の高い工事だけ行う)
力を身に着ける事だ。

9.5 30年分散修繕計画/30年安定ビル資産経営計画の作成
現在は、パソコンの表計算ソフトを用いて、計画を作成し、検討ができる。 具体的な計画作成の方法は、

・30年分散修繕計画の作成

収益物件では、地域賃貸マーケティングに基づく
・30年安定ビル資産経営計画の作成 

で考える。 面倒に思われるかもしれないが、こうした計画作成に必要なのは、最初だけである。一度方針が見つければ、通常の住宅、マンション、中小ビルでは、後はさほど苦労しない。

9.6 在建物永続資産の利益
適切に分散修繕を続ける限り、住宅、マンション、中小ビル等建物は、使用の利益を産み続ける。築古としての年間の建物使用利益は、確かに新築よりかなり見劣りがする。しかし既に初期投資を回収した後は、継続すればするだけ、建物アセットマネジメントとしての新築/取得時からの利益は、積み上がり続ける。

なにしろ例えば建築時/取得時に、利回りが10%だっとすれば、単純計算で、10年で初期投資をペイできる。その後も安定したインカムゲインが続けば、純粋に利益が続く。経年と共に賃料収入は減少するが長期ではインフレもある。例えその後が新築時賃料収入の半分(計算しやすいように)になったとしても、その後20年で、初期投資の倍、築50年で初期投資の3倍、築100年で初期投資の4.5倍、築200年で9.5倍の利益が、低リスクで積み重ね、新しい利益機会を子孫に承継する事ができる。こんなに美味しい話が他にあるだろうか?

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10 建物の永久資産化が実現するゆとりある生活と社会の持続可能性向上

ところで、人口激減時代に古い建物を維持して、需要はあるのか?と思われるかもしれない。確かに人口が減少する事で、需要「数」は減少するだろう、単身者世帯の増加や、外国人の増加では、とても全てをカバーでない。しかし私達日本人は、まだ「使用面積の増加」という空間のゆとりを増やす余地がある。の先にある、個人と街と自然環境及び社会のサステナビリティを、私達日本人はまだ知らないだけだ。

10.1 英欧米中流階級のゆとりある生活
イギリスの長細い庭付きテラス・ハウス、欧米の広い庭付きの大きな戸建て一軒家、年1~2回は長期休暇を取り、家族で海外旅行。英欧米中流階級のライフスタイルだ。もちろん中流の幅は広く一概には言えないが、大卒共働き夫婦であれば、当然に目指し実現できるライフスタイルだ。 背景にはワークライフバランスの考え方、労働効率の良さもあるが、もう一つ英欧米中流階級のゆとりある生活を実現を可能にしているのが、住宅、マンション、中小ビル、社会的インフラストラクチャーが永続資産にしている事だ。 特に個人に関して言えば、新築はともかくとして、永続資産の古い住宅、マンション、中小ビルを安く購入して、自分で手を入れて建物価値を上げる事は一般的だ。居住用であれば、高値で売却して、より良い住宅、マンションに買い替えたり、又は賃貸として、より高い賃料を得る。そうした得た資産のストックにより、子供や孫世代は、使用利益価値ある建物資産を受け継ぎ、住宅ローンの縛りから解放され、金銭面のゆとりと同時に、広い面積をゆったりと使用出来るゆとりを堪能する事ができるようになる。つまり世代を重ねる程豊かになれる道がある。

10.2 住宅ローンに縛られ貧しくなる日本人と違い、住宅ローンの縛りから解放され豊になる英欧米人
現在の日本の住宅、マンション、中小ビル等が築40年築50年で寿命という考え方は、つまり個人は、人生の重要な時期に住宅ローンを支払い続け、ローンに縛られた人生を送る事を意味する。しかもそうしてローンを払い続けた建物は、自分の代で価値がなくなる。従って子供の代はまた0から、住宅ローンを払い続け・・・・を繰り返す。持ち家を得られなければ、一生家賃を支払い続ける。いずれにしろ代々住宅ローンの奴隷もしくは家賃の奴隷の生涯だ。

一方で、住宅、マンション、中小ビル等を、個人が自分で永続資産する英欧米では、親が住宅ローンを払った、住宅、マンション、中小ビル等を、子供は使用利益を産む資産として、相続できる。子供は、相続した親の家に引っ越して暮らす、既に自分の家があれば、別宅別荘として使う、手入れして賃貸に出す、売却するといった自由な選択ができる。 例えば子供が自分で自分の家のローンを支払っていても、親から相続した家を賃貸し、その賃料収入を得ていれば、生活にゆとりが出て、家族で海外旅行にも行けようというものだ。階級社会が色濃く残る英欧米では、大卒が10%弱であり、いわゆる中流階級は社会の大多数を占めてはいない。それでも中流階級に足をかけて住宅、マンション、中小ビル等資産を一度手に入れれば、極力その資産をベストに生かすアセットマネジメントを真剣に考える。

10.3 日本も建物の永久資産化が実現する、 広い空間を使用できるゆとり
私達日本人も、住宅、マンション、中小ビル、社会的インフラストラクチャーを分散修繕で永続資産にすれば、新築投資費用回収が終われば、後は分散修繕用の少ない予算留保で延命を続けられる。費用が安いから広い面積をゆったりと使用出来るようになる。つまり、「ウサギ小屋」生活から卒業ができる。富裕層ではない中流階級でも、英欧米のように広い空間でゆとりある生活を手に入れる事ができる。 私達日本人が、英欧米の中流階級のようなゆとりを得る鍵が、住宅、マンション、中小ビルが永続資産となる事だったのだ。ローン返済がとっくに終わった築古の住宅、マンション、中小ビル等は、分散修繕用の少ない予算留保で延命できるから、例え築古として賃料が下がっても、実は使用利益は十分にのこる。だから使用者は、広い面積を使用する事ができる。割安の古い物件は、賃貸でも人気であり、適切に手入れされている古い建物は、もちろん売買でも値が付く。

10.4 複数住宅を持つゆとり
既に日本でも二拠点生活、三拠点生活という言葉があるように、英欧米や世界の他国では、複数住宅を持つ人が少なくない。例え都市部の自宅は狭くとも、地方都市や郊外にセカンドハウスがある、趣味の別宅がある。そうした文化が、空いている時期に、レンタルホリデーハウス・ホリデーアパートメントとして貸し出すマーケットとなり、AirBnBへと発展している。生真面目に毎週末訪れるのではなく、数日から1週間から数週間単位の休暇を取って、ゆったりと訪れ滞在する。

10.5 単身者でも、大きな家で生活するゆとり
まただから英欧米や世界の他国では、単身者でも、大きな家や広いマンションの部屋で、ゆとりある生活をしている人も多い。収入が高い人は新築高級マンションの広い部屋に住むとして、普通の中流階級でも、永久資産化して賃料が安い古い住宅、古いマンションで、広くゆとりある空間を、自分の趣味に仕立て上げて自分の世界観で暮らす。自分の趣味や好みの空間に仕立て上げられる事が、まさに古い建物の良さなのだ。ニューヨークを見てみよ。ニューヨーカーたちは、古い建物の広い部屋を自分好みの空間にして暮らしている。

10.6 建物永久資産化が実現するステップアップライフのゆとり
住宅、マンション、中小ビルが永久資産となっている英欧米や世界の他国では、大卒の若い人は、仕事が決まるとまず住宅ローンで、手入れが悪いフラット/家を安く買う。そうした手入れが悪いフラット/家とは、たいていが高齢者が暮らしていた部屋や家だ。前所有者は、古い内装と設備だが、自分の空間として人生を全うする。そしてお金がない若い世代は、資産を安く手に入れる事ができる。そしてリフォーム業者やリノベーション業者には頼らず、自分で住みながら修繕し内装に手を入れ綺麗にして価値をあげる。そうして5年10年たちお給料も上がると、価値が上がった最初のフラット/家は、貸すか売るかして、次のより良いフラット/家を購入する。これを2-3回繰り返し、やがて結婚し、納得できるフラット/家を手に入れ子供を育てる。このライフプランの利点は、例え人生が理想通りに進まずとも、とにかく資産を手に入れている事だ。

10.7 建物の永久資産化こそが街の存続
そして街は、建物の集合体だ。だから建物の永久資産化は、街の存続でもある。人口減少で、建物が維持できなくなれば街は廃れるが、建物が維持できれば街も存続できる。街を構成する住宅、マンション、中小ビル、社会的インフラストラクチャーが永続資産になる事は、街の存続そのものだ。だから英欧米では、古い建物が建ち並ぶ趣きある街が存続している。そして古い建物が建ち並ぶ趣が、街の魅力として人を惹きつけ、街の価値になっている事を知っているから、1軒1棟がその趣を壊さないよう建物の外観を維持する。地方部では、建物数軒数十件の集落も珍しくない。現在の技術では、社会的インフラストラクチャーも低予算で維持ができる。日本も、建物の永久資産化が実現し、最新技術を取り入れれば、地方都市問題の多くが解決できる。

10.8 建物の永久資産化こそが環境サステナビリティ
また建物を安易に建替えない事は、安易に大量の産業廃棄物を排出しない事を意味する。建物の永久資産化こそが、本物の自然環境サステナビリティなのだ。日本も過去の貧しい時代の木造安普請の小屋や長屋暮らしであれば、最後は自然に戻った。しかし現在の新素材住宅、鉄筋コンクリート造等のマンションや中小ビル等は違う。建物を寿命にする事は、自然に還らない産業廃棄物を排出し、どこかの自然環境を汚す行為だ。現在のSDGs時代に、家や建物を安易に産業廃棄物にする日本人には、SDGsを言う資格がない。

10.9 土地と建物の永久資産化で日本もゆとりと持続可能性を高める
日本人も、従来土地こそ資産、土地を多く保有している地主が豊かさの象徴だったが、その本質は未だ変わらない。ただ現在の宅地では、土地の価値も土地の上の建物の使用利益で決まり、土地の上の建物が維持できなくなれば、土地も失う。だから、土地の上の住宅を永久資産化は、土地資産を守る方法なのだ。土地の上の建物永久資産化は、人口激減の難しい時代に使用利益を産む資産を低リスクで手に入れられる子供も孫も喜ぶ、街も存続できる、社会も存続できる、自然環境のサステナビリティも向上する。私達日本社会は、従来になかったゆとりを手に入れ、昭和の考え方では実現できなかった持続可能な社会を手に入れる事ができる。

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住宅をマンションを中小ビルを永久資産化して、縮小時代の豊かさを手に入れる
→ マンション・中小ビルを永続資産にする30年分散修繕計画作成
→ 建物を延命し賃貸も継続する安定ビル資産経営 
→ 住宅・マンション・中小ビル・・建物資産の4面性

分散修繕による住宅、マンション、中小ビル他あらゆる建物及び建造物の資産延命・永久資産化のスペシャリスト。築古中小ビル、一棟マンション所有者、経営者、後継者の方向けに、本格建物アセットマネジメント思考と建物永久資産化の助言、30年分散修繕計画、30年安定ビル資産経営計画の作成、セミナー、又住宅及び街の存続の助言、セミナー他。秘密厳守。ご相談者には守秘義務誓約書を差し入れしています。

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