築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者向け

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地域賃貸マーケティングで全く難しくない

築古中小ビルの永続的な安定ビル資産経営

ビル経営ではなく、ビル資産経営で、築古中小ビルは賃貸を継続して安定利益を継続できます。

サマリー

  • 築古収益ビルには、建物設備等の経年劣化部分のリニューアル工事以外に、賃貸効果目的工事が必要
  • いずれも、「低予算」「低リスク」「高効果」で利益を守る事がテーマ
  • 「高効果」はテナントに選ばれて実現する。だから地域賃貸マーケティングが必須
  •  地域賃貸マーケティングで、自ビルを選ぶテナント像とライバル物件を知る事が重要
  • 安定した利益を産み続けるビル資産経営は、安定ビル資産経営のサイクルで実現する
  • 30年安定ビル資産経営計画作成での試行錯誤が、経験として実判断で生きる


コンテンツ

Ⅰ 安定ビル資産経営とは
Ⅱ 地域賃貸マーケティング
Ⅲ 築古賃貸経営
Ⅳ 分散修繕
Ⅴ 30年安定ビル経営
補足 賃貸リーシングの改善

Ⅰ 安定ビル資産経営とは

収益ビルは、分散修繕だけでは足りません。賃貸が続かなければ、分散修繕の予算も確保できません。日本では築古賃貸は難しいと言われますが、適切に維持されている割安な築古ビルは逆に好んで選ばれます。安定ビル資産経営は、この賃貸経営と分散修繕を、地域賃貸マーケティングが結ぶ事で、「低予算」「低リスク」「高効果」なビル資産維持工事を実現して、自ビルの利益を守ります。まず概要を理解しましょう。

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1.1 築古ビル経営の問題

ビル経営は経年と共に難しくなる。が日本の常識です。具体的に何が難しくなるのでしょうか?
1.11 経年とともに賃料が下がり空室が長期化する
経年ともに賃料が下がります。ビルから清潔感が失われ、あちこちが古臭くなります。賃貸募集をしても、すぐに次のテナントが決まらなくなり、空室が続く事もあります。そうして賃料収入が減っていきます。
1.12 一方で工事費用は増える一方
築古ビルはただでさえ、経年劣化した建物設備機能等のリニューアル工事が必要です。加えて賃貸が難しくなると、リフォーム工事やリノベーション工事を勧められます。けれどもリフォーム工事やリノベーション工事はしばしば高額投資です。ペイができない恐れがありますから、おいそれと手を出せません。
1.13 築古ビル経営の負のサイクル
そうして、賃料収入が減ると、当然利益が減ります。ビル建物設備の経年劣化等のリニューアル工事等やリフォーム工事等賃貸効果目的工事の予算捻出の判断が更に難しくなります。 必要な工事がされていないと更に、賃貸が難しくなり賃料収入が下がる一方、改善のための工事費用は大きくなります。この負のサイクルが続くと、ビルの状態が悪いからテナントが退去し、その後次のテナントが入らなくなります。空室が増えて経営が破綻します。

1.2 築古ビルにはビル資産経営が必要

築古ビルに、ビル維持ではなくビル資産維持が必要なように、築古ビルの経営を継続するには、ビル資産経営が必要です。
1.21 築古ビルも賃貸で選ばれる
築古ビルだから、賃貸で選ばれない事はありません。古くてぼろくて管理が悪いのに賃料が高ければ、それは誰も選びません。けれども築古でも適切に手入れされて賃料が割安であれば、好んで選ぶテナントは大勢います。
1.22 問題は、資本的支出工事をいかに低予算低リスク高効果で行うか
分散修繕で、経年劣化部分のリニューアル工事は、ビル維持ではなくビル資産維持する工事として資本的支出工事に該当し、PLの費用ではなくBSの資産の部に入る事を確かめました。 同じく収益ビルでは、ビル経営ではなく、ビル資産経営が必要になります。内装のリニューアルといった賃貸効果目的工事もここに入ります。こうした工事を、単なる支出ではなく、「低予算」「低リスク」「高効果」で行う事で、ビル資産経営者は、ビル資産経営が生む利益を守り続ける事ができるのです。

1.23 ビル資産経営の4面性
分散修繕では、ビル資産の3面性:「物」と「数字」と「権利・契約」:のうち、「物と「数字」を特に考えました。ビル資産経営は、更に「営業」の1面が加わって4面性があります。そして「物」と「数字」と「営業」の3つを中心に考えます。

この「営業」は実務的には不動産屋・賃貸仲介業者が行う賃貸リーシングですが、ビル資産経営者にとってはその前段階の「地域賃貸マーケティング」を意味します。

1.3地域賃貸マーケティング

賃貸は、地域賃貸マーケットで決まります。だから築古ビル経営には、地域賃貸マーケティングによる地域の賃貸マーケット理解が欠かせないのです。
1.31 地域賃貸マーケット
賃貸マーケティングというと難しく聞こえるかもしれませんが、賃貸で利益を得る以上、地域でどんなテナントが自ビルを選ぶか、自ビルの賃料ポジションはどの程度か、地域の賃貸の動向はどうか、くらい知っておきたい訳です。地域賃貸マーケティングの目的は、次の3つがあります。
1.32 自ビルを選ぶ可能性が高いターゲットテナントを理解する
自ビルを選ぶ可能性が高いターゲットテナントが、何を評価して自ビルを選ぶのかがわかると、どこを改善すればより高い賃料で選らんでくれるか、わかるようになります。 当然賃貸リーシングもターゲットテナントに向けて効果的に行えるようになります。
1.33 自ビルのライバル物件を理解する
地域賃貸マーケットの中で、自物件の賃料は、他ライバル物件との比較で決まります。 だから自ビルのライバル物件を理解して、ライバル物件との比較として自物件の賃料ポジションを理解すると、常に自物件の適切な募集賃料を見つけられるようになります。 また、ターゲットテナントは通常ライバル物件と比較検討をして、自ビルを選びますから、 ライバル物件を研究すると、より客観的に自物件の強みと改善ポイントが分かるようになります。
1.34 地域の動向にも目を配っておきたい
相変わらず再開発ラッシュですが、足元では人口は激減基調にあり、中小企業数も減少基調にあります。縮小社会では、需要は椅子取りゲームです。街の動向やターゲットテナントビジネスの動向にも目を配り、じっくり対策を考えなければいけない問題の兆候は、早めにキャッチできるようにしたいのです。

1.4 目指すのは安定ビル資産経営

地域賃貸マーケティングをベースに賃貸経営と分散修繕が融合するビル資産経営。目指すのは安定です。
1.41 ビル資産経営
ビル資産経営は、地域賃貸マーケティングで将来の実現可能な賃料収入を見込み、そこから無理のない分散修繕工事予算を確保します。そして必要なタイミングで、地域賃貸マーケティングで「低費用」「低リスク」「高効果」に、ビルが一定賃料水準で選ばれる状態を維持できるために必要な工事を行います。結果、目指す賃料収入を維持する事で、安定利益を維持します。

1.42 目指すは「安定」ビル資産経営
一般の中小ビル資産所有者にとって、更に重要なのが、「安定利益」継続を目指す事です。といっても全く同じ利益を維持するという事ではありません。大きな変動は極力避ける。と言う事です。時に多少の変動があっても、安定に戻る事を目指します。

変動は「不安」です。投資の世界では、ボラティリティと言い警戒されます。例えが高額リノベーション工事投資をしても、想定通りの賃料収入が得られる保証はありません。高リスクです。

安定は「安心」です。安定はある程度は惰性でも維持できます。そしてビル資産経営は、テナント満室の間は安定賃料収入が続き、安定を維持しやすい事が特徴です。このせっかくの特性を生かさない手はありません。
1.43 安定ビル資産経営のサイクル
実際ビル資産経営は、賃貸経営と分散修繕のサイクルとして維持できます。このサイクルが回り続ける限り、安定ビル資産経営が維持できます。

1.5 30年安定ビル資産経営計画の作成

安定ビル資産経営も、最初は30年安定ビル資産経営計画の作成が欠かせません。賃貸は心配ないという場合でも、将来の賃料収入見込みを確かめ、将来の利益のために低予算低リスク高効果の分散修繕を考える必要があります。
1.51 低予算低リスク高効果の工事判断
中小ビル資産を維持する分散修繕では、ビル資産所有者は、専門知識は必要ありませんが、次の3つの分散修繕力が必要です。

1.自ビルに必要な工事の全体を把握できる
2.工事判断の結果の将来のビルを想像できる
3.工事に優先順位を付けられる
収益ビルのビル資産経営判断では、更に
4. 低予算低リスク高効果の賃貸効果目的工事内容を見つけられる
が加わります。

「物」「数字」「営業」全てを考えるために、まず最初は「数字」の30年ビル資産経営計画を作成して、そこに「物」と「営業」を合わせて考えられるようにする訳です。
1.52 目指すは安定ビル資産経営のサイクルを実感できる事
一度自ビルの将来の賃貸方針と賃料収入目線、利益を守った上で無理のない分散修繕工事予算目線と、低予算低リスク高効果な工事方針の目途がつくと、自ビルのビル資産経営のサイクルが分かります。この自ビルの安定ビル資産経営のサイクルが実感できるようになると、実際の賃貸、管理、工事等のあらゆる判断の場面で、自ビルの安定ビル資産経営のサイクルから外れない判断ができるようになります。つまり安定ビル資産経営の判断ができるようになるのです。
1.53 30年安定ビル資産経営計画の作成



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Ⅱ 地域賃貸マーケティング

地域賃貸マーケティングは、これからご紹介する6つのポイントがあります。ビル資産経営者であれば、感覚的に出来ている事も多いでしょう。改めて整理をして見直しましょう。

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2.1 地域賃貸マーケット

地域賃貸マーケットの全体像は次の通りです。

2.11 地域賃貸マーケット(のセグメンティング)
知りたいのは、自ビルにとっての地域賃貸マーケットです。自ビルにとっての地域賃貸マーケットは、ライバル物件が存在する範囲です。

一般的に不動産屋が名づける切り口には、例えば、渋谷、新宿、池袋といった単位の場合もあれば、東京六区(千代田区、港区、中央区、新宿区、渋谷区、文京区)と、城南 城北 城東 城西といった区分もあります。

中小ビルの場合、逆にもっとローカルな場合も少なくありません。例えば渋谷という一つの地域を取っても、恵比寿原宿を含む渋谷地域の場合もあれば、渋谷駅に限定の場合、更に道玄坂付近/宮益坂付近、駅前繁華街や少し駅から離れたブランド地域といったより限定した切り口もあります。当然ですが地域賃貸マーケットの把握が適切である程、様々な検討の精度が上がります。

2.12 自物件の特徴
自物件の特徴とは、賃貸マーケットでの自物件の情報です。良し悪しはありません。全て自ビルの個性です。 この自物件の特徴には、固有の特徴(変えられない特徴)と変えられる特徴があります。

経年によってテナントが物件に求める条件は変わってきますから、時に変えられる特養を選ばれる状態に保つ事でテナントに選ばれ続けます。
2.13 自物件を選ぶターゲットテナント
地域賃貸マーケティングで最も重要かつ永遠の課題が、「自物件(の特徴)を選ぶターゲットテナント」を見つけて、理解する事です。

テナントは、事業規模や事業タイプに適した「条件」をつけて物件を探します。 例えば
  • 貸室の床面積は、部屋を使用する従業員数や事業規模と関係します
  • また立地条件やビルグレードも、事業のタイプと関係します
  • 来客型ビジネスは、駅に近い繁華街や主要通り沿いを好みます。逆に裏通りの静かな環境を好む会社も少なくありません。女性が主の会社に好まれやすいビルと、男性が主の会社に選ばれるビルとは、雰囲気が違います。といった具合です


知りたいのは、どのような条件で部屋を探しているテナントが、自ビルの特徴を選ぶ可能性が高いのか、です。そしてそれはどうしてなのか、ターゲットテナントの選好性を理解したいのです。 ちなみに1棟のビルで、ターゲットテナントは1タイプだけではなく、多数あります。沢山見つけられる程、より賃貸がやりやすくなります。
2.14 自物件のライバル物件
自物件のライバル物件とは、自物件を選ぶ可能性が高いターゲットテナントが、物件探しの時に他に比較検討をするビルです。貸床面積や立地条件をはじめ物件特徴が似通っているビルが該当します。
特に築古ビルでは、地域賃貸マーケットの中で比較検討されるライバル物件、つまり自ビルと条件が似たビルは、ある程度決まっています。

自ビル物件の募集賃料は、ライバル物件との比較で決まりますから、ライバル物件を知っておくことは重要です。また賃貸効果目的工事をする場合にも、ライバル物件を研究すると、より無駄なく効果的に出来るようになります。
2.15 自物件のポジショニング
自物件のポジショニングとは、自物件の賃料の事です。自ビル物件の募集賃料は、地域賃貸マーケットの水準とその中での他のライバル物件との比較できまります。他のライバル物件との比較による自ビルの賃料ポジションが、自物件のポジショニングです。
自物件のポジショニングが重要な理由は、ポジションはビル資産経営次第で上下するからです

ベースとなる地域賃貸マーケットの相場は、社会経済の動向や、地域の興隆衰退で常に上下しています。ただリーマンショック後の低迷期のような場面では、個人で対抗できるようなものではありません。一方自物件のポジショニングは、経年と共に下がりますが、賃貸効果目的工事投資等でアップする事ができます。つまり個人で変えられるのです。
2.16 地域賃貸マーケットの動向を読む
現在の地域賃貸マーケットが見えてきたら、将来の動向を読む訓練も始めます。

賃貸マーケットは、様々な社会経済事情の影響を強く受けます。
  • 社会経済環境による影響(例えばリーマンショック後や、特定産業の衰退)
  • 地域の今後の人口減少が激しい
  • 近隣で再開発等があり人の流れが変わる
  • 学校や企業等の移転が予測されている
  • ターゲットテナントの事業環境の変化
時に厳しい状況が予測される時には、何らかの対策を練る必要があります。
時に厳しい状況が予測される時には、何らかの対策を練る必要があります。先の先まで様々なケースを想定して、利益と資産を守るための手立てを考えておくのが、ビル資産経営者の在り方です。

将来の動向を読むには、ある程度経験が必要です。トライアンドエラーを繰り返す事で、視野が広がり、精度が上がってきます。

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Ⅲ 築古ビルの賃貸経営:賃貸方針

実際の賃貸は、その時の地域賃貸マーケット状況で決まります。 ただ築古ビルの賃貸維持には、遅かれ早かれ賃貸効果目的工事が必要になります。これを低予算低リスク高効果で行iい安定利益を守る判断ができるためには、やはり賃貸経営の将来を考えておく必要があるのです。

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3.1 ビル賃貸経営の全体像

最初に賃貸経営の全体像を理解しておきましょう。賃料を作るのは、賃貸リーシングですが、ベスト賃料で成功するには、準備があってです。賃貸管理で、安定賃料収入を維持します。
3.11 賃貸経営の全体像
ベストな賃料収入を維持続ける賃貸経営は、
賃貸方針 (賃料収入を計画して物件を準備する)
賃貸リーシング (賃料収入を実現する)
賃貸管理 (賃料収入を守る) の3つから成ります。
3.12 賃貸方針が重要
賃貸方針は、次の通りです。賃貸方針を考える目的は、ベストな賃料収入を得る事です。いくら賃貸リーシングは成功しても、賃貸方針が悪く低い賃料では、自ビルの資産価値が生かせず、もったいない話ではないでしょうか。
地域賃貸マーケットは、通常は変える事はないでしょう。現在の用途で先行きに不安がある場合については、後で見て見ます。 ターゲットテナントは、ある程度絞ります。その方が賃貸効果目的工事を考えやすいからです。そして自ビルの賃料ポジションを評価します。
3.13 問題は賃貸効果目的工事の判断
問題は、賃貸ポジションです。現状のままで自物件の賃貸ポジションを評価する事もできますが、築古ビルではたいていの場合、賃貸効果目的工事投資を行う事で、賃貸ポジションを上げる事ができます。ここで重要なのが、賃貸効果目的工事をどう使うかなのです。
賃料ポジションは無制限に上げられるものではありません。賃貸効果目的工事投資は、お金をかければ必ず効果がでるものでもなく、予算にも限りがあります。 だから賃貸計画では、この先行投資の賃貸効果目的工事をいつどう使うかを検証する事が非常に重要になります。 この賃貸効果目的工事は、「物」の分散修繕の一部です。そもそも将来の賃貸ポジションは、分散修繕による自ビル資産維持の結果です。一方で賃貸効果工事として何をすべきかは、地域賃貸マーケティングという「営業」視点で決まります。だから賃貸効果目的工事を考えるには、「物」「数字」「営業」全ての視点が必要になります。

3.2 賃料はどう決まるのか?
ところで賃貸計画を立てるためには自ビルの将来賃料目安を決めなければいけませんが、自ビルの募集賃料はどう決まるか、ご存じでしょうか?
3.21 賃料は地域賃貸マーケット内の賃料ポジションで決まる
基本的には、自ビルの賃料ポジションは、地域賃貸マーケットの中での他のライバル物件との比較で決まります。 ただ実際の賃貸リーシングの際に単純に比較できるかというと、まずその時々での比較は、全部のライバル物件が賃貸募集中ではありませんから、その時に賃貸リーシング中のライバル物件次第です。 また自物件もライバル物件も、必ずしも合理的に募集賃料を付けている訳ではありません。早く決まるように安い募集賃料を付けるビルもあれば、理由なく高めの募集賃料で、長く賃貸募集中のビルもあります。そうした例外(多いのですが)は、読み取る必要があります。
3.22 地域賃貸マーケットの水準自体も変化する
募集賃料を付けるのが難しい理由は、そもそも地域賃貸マーケットの水準自体、常に変動しているからです。数年単位の大きなトレンドで上下する場合もあれば、リーマンショック直後のように短期で急激に下がる場合もあります。 こうした地域賃貸マーケット水準の変化は、個人では太刀打ちできません。相場が悪い時には、相場の回復を待つしかありません。短期借家契約で相場回復を待つといった次善の手を採用します。
3.33 将来の地域賃貸マーケット水準は、わからないから保守的に見込む
現在と過去の地域賃貸マーケット水準は、わかりますが、将来の地域賃貸マーケット水準動向は、わかりません。(プロでも難しいものです。)そもそも地域賃貸マーケットが好調低調も、所詮は相対的な比較です。「基準水準」が無いのです。

だから地域の過去の地域賃貸マーケット水準の波を分析した上で、将来の地域賃貸マーケット水準は、真ん中より少し控え目程度に、見ておきます。将来地域にマイナス要因がある場合は、更に下げます。こうした控え目に予測する事を「保守的に見込む」と言います。ただ保守的に見込みすぎると、分散修繕の予算も減るので、どの程度保守的に見込むかは、これも30年安定ビル資産経営計画を作成しながら、試行錯誤するところです。

3.3 賃貸方針で重要なアップサイドとは
30年安定ビル資産経営計画で、賃貸経営計画として賃貸方針を考える際に非常に重要な概念が、「数字」のアップサイドです。これを理解し、これを賃貸経営計画でどう使うかも、ここで確かめておきましょう。
3.31 自ビルのアップサイドとは
築古ビルの現在賃料ポジションがAだとします。でも内装のリニューアル工事やリノベーション工事等を始め、何らかの賃貸効果目的工事を行ったら、賃料ポジションを上げられる。 その上昇幅が、アップサイドです。
もちろんアップサイドには限度があります。地域賃貸マーケットの賃料幅の中で、自ビルのような中小ビルがどんなに頑張ってしも新築高層ビルと同水準の高賃料は無理です。だからこの上限を見極めるために、アップサイドは重要なのです。

築古ビルは賃料が上がらないと言われますが、経年による更なる賃料低下を食い止める事も、手を入れなければ更に下がったであろう賃料ポジションに対して、アップサイドを実現しています。
3.32 最高のアップサイドが最も高利益とは限らない
賃貸方針では、このアップサイドをいつどの程度取るかを検討します。 この検討が重要な理由は、最高のアップサイドを取れば当然に賃料収入はベストを維持できますが、最高のアップサイドを取る事が必ずしも最も高利益とはならないからです。

そもそも賃貸効果目的工事は、やれば投下費用に比例して賃料ポジションがアップするような単純なものであはありません。安定利益を守るためには、賃貸効果目的工事には、次に紹介をする予算上限があります。 一方、賃貸ポジションアップは、お金をかけようがかけまいが、それでテナントが「アップした賃料」を払って借りたいと思う事をすれば、効果があります。だからこのツボがわかっていれば、そうお金をかけずとも最高のアップサイドを取れるかもしれませんが、このツボがわからなければ(それが普通です。)、過剰投資でペイできないリスクがありますから、予算上限を決めて、予算上限で実現できると見込めるアップサイドを、見込みます。
3.33 30年安定ビル資産経営計画の賃貸経営計画作成
実際の30年安定ビル資産経営計画の作成では、各部屋のテナントサイクル(テナントの入居期間)を想定して、テナント退去予測時点(テナントサイクルの終わり)で、賃貸があると想定します。 その時に

  1. 現状維持ができる
  2. 賃料ポジションが下がる
  3. アップサイドを取る

の3つの選択肢を、地域賃貸マーケティングを元に検証します。 ここで3のアップサイドを取る場合は、同年内に賃貸効果目的工事予算が入ります。 この判断では、次の2つの検証が必要です。
1つは、「物」としてその時点のビル全体が、アップサイドの賃料で選ばれるであろうかどうか?
もう1つは、地域賃貸マーケットのライバル物件との比較で、どの程度のアップサイドが実現できるか? いずれも正解がない問題だから、複数案を比較検討して選ぶ事になります。
3.34 大きく賃料低下が予測される場合
時々将来大きく賃料低下が予測される場合があります。例えば現在のテナントがいずれも良い賃料で長く入居してくれているが、経営者が高齢で長期継続は望めないといった場合です。 こうした場合、地域賃貸マーケットの賃料水準に立ち上って、ベストなアップサイドを検討します。そのために必要な分散修繕工事予算は、早めに準備しておくように、心がけます。

3.4 賃貸効果目的工事

賃貸効果目的工事は、築古賃貸経営の花形?です。過剰投資リスクが高い一方で、創意工夫で結果を出せます。そこに面白みを感じる人には、やりがいがあるプロジェクトです。
3.31 賃貸効果目的工事の例
リフォーム/リノベーション工事は、高額です。実際に賃貸効果目的工事は、例えば次のような対象があります。予算を削減するには、個別に考えて分散修繕として予算を削減します。
3.32 何が(低予算で)効果があるのか?
で、何が(低予算で)効果があるのか?これが簡単にわかれば 、苦労はしないところです。30年安定ビル資産経営計画の作成時点で、10年後20年後の工事内容を決める必要はありませんが、ある程度目途をつけておかなければ、予算も効果も見込めません。逆に低予算高効果の賃貸効果目的工事ができるビル資産経営者は、これがわかっています。

何が効果があるかは、ピータードラッカーの名言の1つ、「強みの上に築け」 が全くその通りです。実際、 ターゲットテナントに選ばれる自物件の強みの理解
  • ターゲットテナントの選好性の理解
  • 他のライバル物件との比較検討

  • を深めて、ターゲットテナントの目線でインスピレーションを磨くしかありません。(ターゲットテナントに聞いても、彼らも言語化できるとは限りません。また彼らはビル資産所有者の経済合理性を考える責任もありません。) ターゲットテナントの選好性は、エコや事業タイプといった、ターゲットテナントの価値観に基づきます。そしてそれは、しばしば色や仕上り、些細な工夫やセンスといった、投下費用とは関係ない細部で表現されます。「神は細部に宿る」とも言います。ターゲットテナントの理解はもちろんのこと、ターゲットテナントが選ぶ他のライバル物件の研究が欠かせません。
    3.33 賃貸効果目的工事における3つの数字上限
    賃貸効果目的工事の予算は「分散修繕」に入ります。ただ、賃料収入に対する費用対効果も必須です。ここを間違うと負のサイクルに陥ります。だから実際には、次の3つの「数字」の予算上限を守ります。
    3.33-1アップサイド賃料の上限
    賃貸効果目的工事で工事をしなかった場合と比べて賃料をアップするにも、そのアップ幅は地域賃貸マーケットの中で上限があります。築古中小ビルがどんなに頑張っても、新築Aクラスビルの賃料水準は無理でしょう。 現実にアップサイドの上限がどの程度かは、賃貸効果目的工事を検討する前に、地域賃貸マーケティングでわかります。必ず調べておきます。それだけでリフォーム業者等の営業に乗せられなくなります。
    3.33-2 分散修繕工事の予算上限
    分散修繕工事予算として、賃貸効果目的工事の予算の上限を決める事は、長期的なビル資産経営維持に欠かせません。 賃貸効果目的工事の予算も、30年分散修繕工事予算から賄われます。空室長期化が嫌だからと、賃貸効果目的工事に予算を使いすぎてビル資産の維持に必要な工事ができず、事故が多発してテナントが出ていってしまっては、元も子もありません。

    賃貸効果目的工事は、いつ現在テナントが退去して必要になるか予測ができませんから、早めに予算を確保しておきます。また賃貸効果目的工事は、部屋毎に必要な工事は部屋の数、トイレ・給湯室はフロアの数、必要になる事にも留意します。
    3.33-3 費用回収期間
    費用回収期間は、自ビルの利益を守るために重要な数字です。 例えばテナントが10年程度で入れ替わるビルで、入替りの都度必要な工事で費用回収期間が10年を超しては、実質費用回収が出来ないのです。早期退去のリスクがありますから、5年でも不安です。 ただし効果見込み期間が数十年と長い場合は、多少長くても許容範囲です。 費用回収期間は、最後は自分で決めるものですが、長い程自分の利益が無くなると理解しておきます。

    計算方法は次の通りです。
    3.34 費用対効果は比較検討で使う
    賃貸効果目的工事で使われる数字として、もう一つ費用対効果があります。リフォーム業者等の営業で、費用対効果が高いですよと言われる場合もありますが、しょせんん「効果」は想定だから、費用対効果の数字単体ではあまり意味がありません。

    費用田効果の数字は、複数案を比較検討する時には使えます。 「効果」の実現度が高く、かつ費用対効果が高い案 を選ぶのです。ビル資産経営で、決める、とは複数の選択肢から選択をする事です。賃貸効果目的工事を検討する時も、必ず複数案を比較検討して、「効果」の実現度が高く、かつ費用対効果が高い案を選択します
    3.34-1 費用対効果の計算
    費用対効果の計算は次の通りです。
    3.35 沢山検討する
    例えば現在のビルでほとんど変えなくても十分、と判断できる場合でも、色々な可能性を考えるだけなら、費用はかかりません。何を手を入れなかった場合に、30年後どこまで賃料が下がるか、もしくは他のビルにない個性を作ってみると、どの程度の賃料を狙えるか、分散修繕と合わせて30年安定ビル試案経営計画として、色々考えてみる事をお勧めします。その試行錯誤が後で経験として、生きます。

    3.4 用途や賃貸マーケットの先行きが難しい場合

    先に、3.21 現在の用途で将来も大丈夫か?で、現在の地域賃貸マーケットの将来を考えましたが、時に現在の用途の地域賃貸マーケットが消滅もしくは激減して、明らかに将来も大丈夫ではないと予測される場合もあります。学校や大きな会社・スーパー・工場が移転する・・と言った例です。そうした場合に、他の用途等を検討する際のヒントを簡単に述べておきます。(縮小日本では、AがだめならBといった単純な事はまずありません。)
    3.41 貸会議室・シェアオフィス・貸倉庫等)
    こうした空間ビジネスを入れる事をオペレーション導入といいます。(空間を)オペレーション(する)ビジネスが成功するかどうかは、ビジネス運営者(オペレーター)の手腕で決まります。立地や物件は関係ありません。そして長く生き残るのはわずかです。 一時は空室対策の切り札としてもてはやされ、営業も盛んです。自分に広告宣伝集客力と運営力があるか、さもなければ能力が高いオペレーターと組む事ができる場合だけ、手を出す事ができます。
    3.42 用途変更
    オフィスがダメだから居住用に変更する。ホテルに変更する。といったソリューションもあります。用途変更は最終手段です。相応の改装投資をペイするためには、長期の需要見込みが必要です。 また例えばオフィスから住居、ホテルへといった場合、マーケットが変わるだけではなく、建物にかかる建築基準法の適用も変わります。住居やホテルはオフィスとは比べ物にならない程水使用量が増え、給排水管の問題も増加します。そうした新天地の特徴も十分に考慮しま
    3.43 それも見当たらない場合
    人口縮小時代には、色々検討をしてもどれも思わしくない、という場合が少なくないでしょう。どうすれば良いのか?

    安易にダメだと結論して思考停止しない事です。想定したより状況が悪くない場合もあるし、想定していなかった新規流入がある場合もあります。地域賃貸マーケットが消滅するような事態なら、地域全体で街おこし/街の再生を話し合うべきです。(需要が激減する時代に大型再開発依存は、すべきではありません。将来に負債となります。)

    補足 賃貸リーシングの改善

    ご参考までに、賃貸計画で計画をした賃料収入を実現するための、賃貸リーシングの改善を、最後の補足でご紹介しています。

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    Ⅳ 収益ビル資産の分散修繕

    収益ビル資産の分散修繕計画の考え方は、30年分散修繕計画の作成でご紹介しています。ただ収益ビルでは「低予算」「低リスク」のみならず「高効果」(高い賃料収入効果で十分にペイが出来る事)が求められます。ここではそこで留意すべき点について、言及をします。


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    4.1 収益ビルの分散修繕計画作成で考えるべき事

    30年安定ビル資産経営計画の中での分散修繕計画の作成で考えるべき事は、ほぼ賃貸経営計画で考えています。高効果実現のためには、地域賃貸マーケティングを重視します。
    4.11 分散修繕工事の財源
    分散修繕工事の財源は、賃貸方針で想定をした賃料収入です。

    ただ、将来の賃料収入予測は、賃貸計画の賃貸方針で変わります。賃貸方針の検討では、分散修繕で維持するビルが、想定する賃料ポジションで選ばれる状態であるかどうかを検証します。だから、分散修繕で想定する将来の賃料収入には、幅があります。とはいえ1円単位で検証する事は現実的ではありませんから、松竹梅ならず高、中、低もしくはプランA、プランB、プランCといった3パターン以上に分類して、それぞれで検証しましょう。
    4.12 将来のビル使用者
    将来のビル使用者は、ターゲットテナントです。地域賃貸マーケティングと賃貸経営で、ターゲットテナントを絞り絞ったターゲットテナントの特性や選好性を検証しているはずです。
    4.13 将来のビルの在り方
    30年ごのビルの在り方とは、30年後に想定の賃料ポジションでターゲットテナントに選ばれるビルです。賃貸計画では、賃貸効果目的工事について考えましたが、分散修繕として、経年劣化した建物設備等の更新や外壁等のリニューアル工事も含み、ビル全体の見た目と機能性能グレードが対象です。

    先に分散修繕工事の財源として、プランA、プランB、プランC・・・を考えましたが、それぞれに対して賃貸効果目的工事の可能性は多数ありますから、実際には、検討の数だけ考える事になります。ただそうして色々検討する事が、経験になります。必要工事の精度が上がるのみならず、業者の営業に乗って安易に過剰や重要ではない工事に散財するリスクを減少できます。

    4.2 収益ビルの分散修繕工事の予算と対象

    4.2 収益ビルの分散修繕工事の予算と対象 収益ビルの分散修繕工事の対象は、大きく2種類があります。つまり収益ビルの分散修繕工事計画では、各工事への予算配分を考える前に、まずこの2つへの予算配分を考えます。
    4.21 収益ビルの分散修繕の工事予算目安
    収益ビルの分散修繕では、賃料収入の5%~10%が分散修繕工事予算の目安です。もちろん収益規模やビル状態によって変わります。重要工事が必要な時期だけ、多めに確保をする事もあり得ます。
    4.22 収益ビルの分散修繕の対象は2種類


    - ビル資産の使用維持に必要な工事
    - 賃貸効果目的工事

    まず両者への予算配分を考え、更に各々で各工事への予算を配分します

    留意すべきは、厳密にそれぞれが分かれる訳ではない事です。例えばビルの経年劣化部分のリニューアル等必要な工事に、賃貸効果目的を考えた機能性能グレードが必要といった具合です。

    将来の賃貸効果目的工事は、内容をあまり早く決めても仕方がありませんから、予算だけ確保をしておきます。ただし賃貸効果目的工事は、数に注意をします。例えば1部屋の内装リフォームに費用をかけすぎて、他の部屋の予算がなくなると、非常に困った事になります。賃貸効果目的工事は、ついお金をかけたくなりますから、予算上限を意識して、「ビル資産の使用維持に必要な工事」に必要な予算が配分されるように、賃貸効果目的工事を抑えます。
    4.23工事サイクルは賃料ポジションで決まる
    収益ビルの工事サイクルは、いずれもビル資産経営者が勝手に決める事ができません。

    ビルの経年劣化部分のリニューアル等必要な工事の工事サイクルは、ビルの賃貸ポジションで期待されるレベルで決まります。賃料が割安ならば、多少工事サイクルが長めで時々停電や漏水といったトラブルがあっても、大目に見てもらえるでしょう。賃貸ポジションが高ければ、それだけ「トラブル」を起こさない責任を求められます。

    また、賃貸効果目的工事の工事サイクルは、どの頻度でアップサイドを取るかを表します。これは賃貸計画でみこんだ賃貸サイクルの倍数です。テナント退去毎に工事を行うのか、数回に一度で大丈夫なのか、工事の効果と、想定する賃料ポジションで選ばれる物件の在り方を検討して、決める事になります。

    将来の想定賃料ポジションで、工事サイクル維持が難しい場合は、賃貸計画に戻って賃貸方針を見直す事になります。

    4.3 収益ビルの分散修繕工事の工事予算予算削減

    分散修繕工事の予算削減のポイントは、30年分散修繕計画の作成でご紹介をしている通りです。ここでは収益ビルとして特に留意すべき工事予算削減ポイントを述べます。

    4.31 基本、機能性能グレードは賃料ポジションに比例する
    収益ビルで必要とされる機能グレードや工事業者のサービスレベルは、工事サイクル同様に、賃料ポジションに比例します。
    4.32 高効果の観点から、費用対効果の低い対象を予算削減する
    ただ工事の中身を丁寧に見ていくと、高効果の観点から、費用対効果の低い機能性能グレードや、工事範囲、重要ではない念のため工事の削減箇所は少なくありません。

    と言うのは簡単ですが、工事の中身を丁寧に見るために、専門知識は必要ありませんが、やはり相応の時間と考える手間をかける事になります。つまり、実際の工事に際して、丁寧に時間をかけた検討ができると思えれば、工事予算を抑えに見込む事ができます。いや本業の仕事が忙しくて検討の手間をかける時間がない、のであれば、少し大目に見込む事になります。
    4.33 小規模ビルや立地条件が有利ではないビルは、DIYも恐れない
    賃料収入規模が相対的に小さくなりがちな小規模ビルや、地方都市で中心部ではないといった立地条件が有利ではないビルの場合、どうやっても分散修繕予算が厳しい場合、内装工事等のDIYも十分に選択です。壁や鉄部・サッシにペンキを塗る。壁紙も今はシールタイプもあります。現在ではyoutube等でhow to も学べます。

    英欧や世界の中小ビル資産経営者達は、DIYでかなりの工事を自分でやります。そうして利益を守り資産を守っているのです。

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    Ⅴ 安定ビル資産経営

    ここまで見てきた30年賃貸計画と30年分散修繕計画を合わせて、30年安定ビル資産経営計画を作成します。賃貸経営と分散修繕それぞについて、検討もありますが、30年安定ビル資産経営として、「低リスク」の確認も忘れないようにします。

    5.1 安定ビル資産経営とは

    ビル資産経営が目指すのは、「安定」です。つまり30年後の数字のつじつま合わせをすればよいのではなく、「数字」「物」「営業」面の全てで「安定」を求めます。

    5.11 安定ビル資産経営とは
    安定ビル資産経営とは、
    ・事故を起こさず 
    ・賃貸を継続   
    ・負債を作らず  
    ・利益を維持する 

    4つが満たされた状態です


    5.12 ビル資産経営の4面性から見た安定ビル資産経営
    これをビル資産経営の4面性で見ると、
    4面性安定ビル資産経営ビル資産経営での内容
    物の面事故を起こさずビルの経年劣化部分のリニューアル等工事を行う
    営業面賃貸を継続地域賃貸マーケティングで賃貸方針+物のビルに賃貸効果目的工事を行う
    数字:BS 負債を作らない計画的に分散修繕に取り組む
    数字:PL利益を維持する地域賃貸マーケティングで、低費用高効果の工事内容を精査
    ここには出てきませんが、所有の「権利」はもちろんある事が前提です。

    5.13 安定ビル資産経営のサイクル
    この安定ビル資産経営は、安定ビル資産経営のサイクルで維持できます。

    一度安定ビル資産経営のサイクルを作ると、サイクルの力で比較的楽に安定ビル資産経営を維持できるようになります。だから最初に30年安定ビル資産経営計画を作成して自ビルのベストな安定ビル資産経営サイクルを見つけておくと、後は楽にビルを維持できるのです。

    5.2 安定ビル資産経営のストーリー
    この「安定ビル資産経営」のサイクルは、ストーリーとして確かめられます。「数字」のストーリーと「」営業のストーリーと「物」のストーリーがあります。それぞれが密接に関係します。

    5.21 安定ビル資産経営:数字のストーリー
    30年安定ビル資産経営計画の数字のストーリーは、最も確かめやすいものです。基本は分散修繕と同じです。

    賃料収入から経費や公租公課や税金等を支払い、一定の安定利益を維持した上で、工事予算を準備し工事をする、また工事予算を準備し工事をする、の繰り返しです。ただ将来の安定した数字を作るのは、「営業」のストーリーと、「物」のストーリーです。だから両者の裏付けが非常に重要です。

    5.23 安定ビル資産経営:営業のストーリー
    賃貸経営のストーリーは、賃貸経営計画として既に考えましたが、改めて確かめます。

    テナントは、回転サイクル毎に退去します。その次に入居するテナントの賃料は、地域賃貸マーケット内でのその時の自物件の賃貸ポジションです。どこかで賃貸効果目的工事投資を行って、アップサイドを取ります。そうして賃料収入が大きく下がる事を避け、賃料収入の安定を守ります。 ただ将来を実現するためには、「物」のビルがアップサイドの賃料で選ばれるだけの状態でなければいけません。「数字」も、必要な賃貸効果目的工事等に費用を投資して、利益を守れなければいけません。だから、「営業」のストーリーは、「物」のストーリーと「数字」のストーリーの裏付けが必要です。

    5.22 安定ビル資産経営:物のストーリー
    収益ビルの「物」のストーリーは、建物設備機能の状態を、基本は、想定している賃料ポジションで選ばれる水準で安定して維持します。入居テナントの満足度に関わるからです。賃貸リーシングでアップサイドを取るタイミングで、賃貸効果目的工事投資を行います。 この分散修繕工事予算の原資は、将来の賃料収入だから、「数字」と「営業」のストーリーが見込み通りでなければ、将来の賃料収入は減少して、利益が損なわれます。だから「物」のストーリーも、それ自体「数字」のストーリーと「営業」のlストーリーの裏付けが必要です。

    この「安定ビル資産経営」が続く状態である事は、ストーリーとして確かめます。ストーリーが破綻していたり、実現可能性が感じられなかったら。まだまだ見直しが必要という事です。全体としての安定ビル資産経営サイクルと、数字のストーリー、物と営業のストーリーの3つのストーリーで確かめます。

    5.3 30年安定ビル資産経営計画の作成

    実際の検討は、マイクロソフトエクセルで30年安定ビル資産経営計画の作成を通して、試行錯誤を繰り返します。

    5.31 30年安定ビル資産経営計画表の作成
    30年ビル資産経営計画は、

    賃貸経営計画
    (管理計画)
    (資金計画)
    分散修繕計画
    を一体に統合

    したものです。 賃貸経営計画~(資金計画)までは、損益計算書(PL)と同じです。残る利益から更に分散修繕予算を確保して、その下に分散修繕計画があります。

    5.32 30年安定ビル資産経営計画表の検討
    30年ビル資産経営計画作成の意義は、無難な利益数字を作る事ではなく、30年のシミュレーションを通して様々な安定ビル資産経営のストーリーの実現性を考える事です。

    シミュレーションでのトライアンドエラーが経験となり、実判断でリスクを避けられるようになるのです。このシミュレーションをストレスなく行うには、30年分散修繕計画表での適切な計算式の入れ込みが欠かせません。

    ビルオでご相談を頂きますと、計算式の入った30年ビル資産経営計画表のひな型をご提供しています。

    5.33 沢山検討、繰り返し見直し、再作成する
    既に賃貸計画で、多くの検討が必要です。例え将来の賃料ポジションを、プランA、プランB、プランCの3パターンに絞り、それぞれで3パターンの賃貸効果目的工事とその他分散修繕計画を計画しても、3x3=9パターンの30年安定ビル資産経営計画を検討する事になります。

    けれどもそうして検討の経験を積む事で、実際の賃貸や工事のビル資産経営判断の場面でも、大きなリスクを避けらえっるようになります。

    現在ビルには、まだ無限の利益を積み上げるポテンシャルがあります。数多く検討をすればするほど、高いポテンシャルを見つけ、自信を持って取り組み、またリスクを回避できるようになります。

    安定ビル資産経営サイクルの軌道に乗れば、後はそう難しい事はありません。50年でも100年でも200年でも、安定したビル資産経営を継続して、利益を積み上げる事ができます。

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    築30年以上中小ビル分散修繕・安定ビル資産経営についてのご質問、その他中小ビル資産の維持・経営・所有等のご不安問題は、ビルオへお気軽にご質問下さい。ビルオは、日本で唯一の築30年以上中小ビル資産所有者、経営者、後継者のビル資産維持相談窓口です。利益と資産を守ります。一棟から十数棟ポートフォリオまで、幅広くご対応します。

    補足 賃貸リーシングの改善

    30年安定ビル資産経営の作成からは外れますが、これを実現するために欠かせない、実際の賃料収入実現に欠かせない、賃貸リーシングの改善を簡単にご紹介しておきます。賃貸リーシングの改善力が身につくと、賃貸計画でより弱気にならずに、自ビルの賃貸ポジションに確信を持てるようになります。

    補足.1 募集賃料の決定
    まず入居テナントから退去予告が出ると、次のリーシングに向けて、自ビルの募集賃料を決めなければいけません。
    補足.11 地域賃貸マーケティングで現在賃料ポジションを決める
    地域賃貸マーケティングで、現在の地域賃貸マーケットの状況(活況か低調か)(相場は高めか低めか)を確かめて、自ビルの賃貸ポジションを確かめます。もちろんアップサイドの検証もするでしょう。
    補足.12 アップサイドを取る場合はアップサイドを決める
    アップサイドを取る場合は、テナント退去後に遅滞なく必要な工事ができるように、内容及び工事業者の選定(DIYや職人への依頼も含む)等準備を進めると同時に、アップサイドでどの程度の賃料ポジションが実現できるか、しっかり検証して、アップサイドでの募集賃料を決めます。
    補足.13 募集賃料と募集条件を決める
    賃貸開始にあたっては、募集賃料と募集条件を決めます。

    募集賃料は、基本は、賃貸ポジションの賃料です。ただ一般に、早く入居者を入れたい場合は低めに、マーケットが活況の場合には、少し高めにつけます。

    同時に、募集条件も決めます。募集条件は、(敷金、礼金、更新料)ですが、時にフリーレントや段階賃料、A工事といったテナントへのサービスも含まれます。こうした募集条件は、だいたい決まっているビルがほとんどですが、中上級者はここで勝負をします。

    つまり、「初期費用」と呼ばれる総額を下げる事で、賃料水準を高めで守るのです。

    こうした戦略検討は、元受け不動産屋/管理会社/賃貸リーシング業者と相談をして、共同で決定します。つまりこうした相談ができる元受け不動産屋/管理会社/賃貸リーシング業者との付き合いが望ましいのです。相談をして決定すると同時に、実現のコミットメントも貰います.

    補足.2 賃貸リーシングの強化と改善
    準備が出来たら、賃貸リーシングです。実際のリーシングの営業活動は「元受け」不動産屋・賃貸仲介業者が行います。ただ、ビル資産経営者も一緒に戦略
    補足.21 賃貸リーシングの全体の流れ
    築浅で、元受け不動産屋や管理会社に空室が出る事を伝えると、すぐに次のテナントを連れてきてくれた間は問題ありませんでしたが、空室長期化不安や、賃料下落不安が出てくるようになると、賃貸リーシングの強化と改善策が時に必要になります。
    補足.22 賃貸リーシングの全体像
    賃貸リーシングの全体像は次の通りです。

    自ビルの物件情報が、自ビルを選ぶ可能性が高いターゲットテナントに魅力的に届き、ターゲットテナントが内覧しても良いと思ってくれる事が、リーシングの第一歩です。
    補足.23 賃貸リーシングの改善
    賃貸リーシングの改善ポイントは次の通りです。元受け不動産屋とPDCAサイクルを回しながら、各ポイントを次の順番で改善していきます。

    ① ターゲットテナントがどのような媒体で物件を探すか検討する
    ② ターゲットテナントが探す媒体の中でどこに営業アピールするか見直す
    ③ 自物件のアピール文句・写真を見直す
    ④ ターゲットテナント像を見直す
    ⑤ 元受け不動産屋/賃貸仲介業者を見直す


    このうち①と⑤については、この先で改めて見て見ます。 こうした対策を一通り行っても、効果の期待がない場合は、次に戻ります。


    A 募集賃料・募集条件を見直す
    B 賃貸効果目的工事を加える


    いずれも利益が減少しますから、最終手段です。募集賃料や募集条件を下げるのは、既に情報が出回っていますから、その後に情報周知の徹底が必要になります。 そうした混乱を避ける手段として、期間限定オファーにする場合もあります。
    補足.24 インターネット上の自物件紹介の改善
    現在では、事業用物件のテナントもインターネットで物件探しが珍しくありません。例えオフィス仲介業者から紹介を受けても、インターネット検索ででも物件を確認する事が普通です。

    インターネット上での物件掲載は、インターネット物件検索サイトと不動産屋が自社HPで紹介する場合があります。通常インターネット物件検索サイトは、SEO対策がされていて、インターネット検索で上位にきがちです。

    ビル資産経営者であれば、自物件をエゴサーチしてみましょう。検索サイトに出てくる自物件の紹介文や紹介写真が、もっと良くできると思えば、遠慮なくコンタクトをして、改善を要望しましょう。オーナーからのコンタクトは、通常喜ばれます。たったそれだけの事で、自物件の印象が上がるのだから、やらない手はありません。
    補足.25 元受け不動産屋との付き合いスタイル
    賃貸リーシング改善の時に、ありがちなネックが、付き合いの長い元受け不動産屋が、高齢や得意分野の変化、代替わりで、あまり協力をしてくれない・・問題です。そのために空室が長期化していたり安い賃料で決めざるを得ない残念なビルが少なくないのが現実です。

    そうした場合、元付不動産屋の変更や対応策を考える事になります。

    1 A社からB社に変える。これは一番楽です。付き合う相手が変わるだけで今までと同じです。ただし、今まで付き合いがなく相手の実力や相性が分からないまま、1社に賭けるのはリスクもあります。 2 複数社に元受けとして声をかける方法もあります。こちらは可能性が高まります。けれども、情報や管理の手間が級数的に増えます。 3 少なくないのが、リーシング力に不満はあるけれど、現在入居テナントの入居管理をしてくれているし、様々な関係から、「変えるのは難しい」という場合です。その場合は元受け不動産屋は今までのままで、貸主が自分で客付け不動産屋に営業をします。 これと思う客付け側不動産屋に、自物件資料を持って行って、紹介をお願いしますと言って回る訳です。客付け不動産屋も、顔を知っているとより力を入れて営業をしてくれるようになります。手ぶらではお願いしづらければ、広告宣伝費1ヶ月を手土産にします。 要は自物件を選ぶ可能性が高いターゲットテナントに、自ビルの物件情報を(魅力的)に知ってもらいたいのです。テナントはテナントで、物件探し手段があります。 賃貸リーシングはやってみなければわからないところがあるので、最初から期待通りの内覧があり即入居申込書が入る事は滅多にありません。2週間ほど状況を見て、手ごたえがなければ早いペースでPDCAサイクルを回します。内覧が増え、手ごたえが現れ、入居申し込みが入ります。

    通常元付不動産屋(PM会社の事もあります)は、営業パートナーです。リーシング中は、2週間に一度は打ち合わせをします。どうも上手く行かない場合は、ここの対策も考えます。
    補足1.3 元受け不動産屋との付き合いスタイル
    現実には、付き合いの長い不動産屋が高齢や得意分野の変化、代替わり等で動きが弱くなったために、空室が長期化していたり安い賃料で決めざるを得ない残念なビルが少なくないのが現実です。

    そうした場合、元付不動産屋の変更を考える事になります。
    1 A社からB社に変える。これは一番楽です。付き合う相手が変わるだけで今までと同じです。ただし、今まで付き合いがなく相手の実力や相性が分からないまま、1社に賭けるのはリスクもあります。
    2 複数社に元受けとして声をかける方法もあります。こちらは可能性が高まります。けれども、情報や管理の手間が級数的に増えます。
    3 少なくないのが、リーシング力に不満はあるけれど、現在入居テナントの入居管理をしてくれているし、賃貸契約書の文言が変わるのも嫌だから、そこは変えたくないと言う場合です。その場合は元受け不動産屋は今までのままで、貸主が自分で客付け不動産屋に営業にまわります。自物件資料を持っていって、お願いしますと言って回る訳です。客付け不動産屋も、顔を知っているとより力を入れて営業をしてくれるようになります。手ぶらではお願いしづらければ、広告宣伝費1ヶ月を手土産にします。

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