築30年以上中小ビル賃貸経営者/後継者向け

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賃貸も継続する安定ビル資産経営

「低予算」「低リスク」に加えて「高効果」工事で賃貸も継続する安定ビル資産経営を学びましょう

中小ビルの安定ビル資産経営

中小ビルは、分散修繕で低予算で必要な工事を行い使用を継続できます。 けれども収益ビルの場合、賃貸が上手くいかなければ、そもそも工事の原資がありません。

その築古ビルの賃料は、経年劣化と共に下落します。そこで適度に内装リニューアルや改良を加える事で、下落を食い止め、経営を維持します。管理が良く賃料が手ごろであれば、築古ビルでも好んで選ばれます。ただ問題はここでも過剰投資・過少投資のリスクをどう避けて、負債化させずに安定利益を守り経営を維持するかです。それが、安定ビル資産経営です。

Ⅰ 中小ビルの安定ビル資産経営とは

築古ビルの安定ビル資産経営とは、賃貸経営+分散修繕です。目標は安定利益の長期維持です。 築古ビルが賃貸を継続するには、分散修繕として賃貸効果目的工事が必要です。これをどう「低予算」「低リスク」「高効果」でできるかが、築古ビルの安定ビル資産経営の鍵です。まず全体の考え方を見てみましょう。
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1.1 築古収益ビルの問題はどう賃貸を継続できるのか?

築古ビルが分散修繕で低予算で維持できる事がわかっても、収益ビルでは、 そもそもテナントが入らなくなければ、分散修繕の原資がなくなります。日本では築古の賃貸は難しいと言われます。しかも現在は人口減少で街の衰退や縮小があちこちで進行しています。どう賃貸を継続できるのか?が問題です。

1.11 対策はあれどもどう選ぶのか
世の中には、空室対策や賃料アップ対策の名目サービスが多くあります。 内装工事、リフォーム、リノベーションはもちろんのこと、様々な設備機能の追加もあります。 ただ問題はどれを選ぶか?これはビル経営者が決める事です。

1.12 費用対効果だけじゃ足りない
またこうしたサービスでは、それぞれの営業が費用対効果を言いますが、それを真にうける事ができない事も問題です。本当にそれで、テナントが入るのか?期待する費用対効果通りの効果がある賃料収入を得られるのか?そこでビル経営者が考える事が沢山あります。

特にリノベーション等工事等、大変高額が少なくありません。間違えば負債化、負のサイクルリスクが非常に高いのです。

1.13 けれども人が減るから築古ビル経営は難しいのでは?
けれども人口減少で街から人が減るから、築古ビル経営は難しいのでは?とお考えかもしれません。それは違います。安定ビル資産経営で低予算低リスク高効果の分散修繕で適切に維持されている築古ビルは、初期建設投資回収が必要で家賃を下げられない築浅ビルとは違い、安い賃料で部屋を貸しても、十分に経営が出来ます。人口激減時代、誰もが安い賃料で広い面積を使えるようになる事で、人もゆとりある生活が実現し、街は維持でき、ビル所有者も経営が継続できるようになります。実際にヨーロッパの地方の古い街はそうして存続続けています。それを私達も取り入れましょう。

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1.2 全ては地域賃貸マーケットが教えてくれる

ところで貸しビルの賃貸で、部屋を選ぶのは誰か?賃料を払うのは誰か?それはテナントです。このテナントが物件を探すのが、地域賃貸マーケットです。地域賃貸マーケットの中で、他の物件と比較検討をして、賃料等が納得できる物件を選びます。つまり、何をすれば選ばれるのか、どのくらい賃料効果を得られるのかは、全て地域賃貸マーケットが教えてくれます。それを確かめるのが、地域賃貸マーケティングです。地域賃貸マーケティングは、次章で確かめます。
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1.3 賃貸経営と分散修繕は切っても切れない

築古収益ビルが、築古賃貸経営を継続するには、内装リニューアル等賃貸効果目的工事が欠かせません。内装リニューアル等賃貸効果目的工事も資本的支出で分散修繕の一部です。また同時に、もちろん分散修繕の対象である、建物設備機能や共用部外壁等、経年劣化部分のリニューアル工事や機能不足部分の追加工事も必要です。これら全ての原資は、賃料収入です。だから築古収益ビルの賃貸経営と分散修繕は、切っても切れません。

いかに、低費用低リスクで高効果な分散修繕工事ができるか?築古収益ビルの賃貸経営で十分な利益を残し続けるための、問いです。

1.31 築古ビル資産経営の4面性
分散修繕で築古ビル資産には3面性があることを確認しました。収益ビルではそこに更に「営業」面が加わります。営業とは、自分が直接賃貸営業をするという意味ではなく、自ビル物件が賃貸マーケットで売れる(選ばれる)ために必用な準備の全てを言います。

この理解が重要な理由は、不動産屋や工事業者、税理士や弁護士もそうですが、問題解決を相談する専門家や専門業者は、それぞれの1面の問題解決の専門家だという事です。だから問題が複雑化して多面にわたる問題は、ビル資産所有者が多面の問題解決を采配する必要がある事を、知っておかなければいけません。
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1.4 安定ビル資産経営

ビル経営は賃貸経営+管理ですが、築古収益ビルは、賃貸経営+分散修繕の安定ビル資産経営で、利益を維持します。 賃貸が出来ても、分散修繕が出来ていなければ、工事が足りず物リスクが悪化するか、工事をやりすぎて数字リスクが悪化するかで、いずれにしろ負のサイクルに陥ります。分散修繕だけ出来ても、賃貸ができなければやはり賃料収入原資が減り、ビルを維持できなくなります。だから両方のバランスが重要なのです。

1.41 安定が必須
ここで安定ビル資産経営と言っているように、ビル資産経営は安定を目指します。時に難しい時があっても、安定を目指して修正をします。変動はボラティリティと呼ばれて、それ自体がリスクです。例えば今年は賃料収入ゼロ。来年は巨額のリノベーション投資。再来年は高賃料収入を予定しても、何かが狂えば負債化です。そんなリスクを取らずとも、低リスクで安定賃貸を継続すれば、100年200年で巨額の利益が積み上がります。

1.42 計画が必須
分散修繕に30年分散修繕計画作成が必須なように、安定ビル資産経営の実現にも、最初は30年安定ビル資産経営計画の作成が欠かせません。 合理的に自ビルの将来賃料収入見込みを立てて、また将来の現実的な見込み賃料収入を得るために、「低予算」「低リスク」「高効果」で何の工事をすべきか、ある程度考えておくことで、実際の賃貸や工事の場面で、不動産やや工事業者任せではなく、ビル資産経営者として、自ビルの長期利益を守る意見や判断が言えるようになります。

1.43 30年安定ビル資産経営計画
30年安定ビル資産経営計画は、PLの「賃料収入‐費用=収益」に更にBSの「資本的支出工事計画」が一体です。

より具体的には、マイクロソフトエクセル等シートで
賃貸経営計画
(管理計画)
(資金計画)
分散修繕計画
が縦に並びます。30年分散修繕計画同様、分析用の計算式が埋め込まれている事が重要です。ビルオでご相談を頂きましたら、30年分散修繕計画のひな型をご提供します。

1.44 30年安定ビル資産経営計画の作成
   実際の30年安定ビル資産経営計画は、次の手順で作成します。


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築30年以上中小ビル資産所有者・経営者・後継者の方の築古ビル維持と経営の問題、お困りごと、今後の見通し、将来の不安、賃貸、管理、工事、耐震、税対策、共有問題、承継etc 具体問題がまとまっていなくても構いません。現在ビル資産維持のための、問題対応と今後の見通しについて、 誰かと話をしてみたいとお考えの事をお話しましょう。秘密厳守。ご要望がありましたら、守秘義務誓約書を差し入れます。

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Ⅱ 30年安定ビル資産経営計画の作成

ここでは30年安定ビル資産経営計画の作成手順を通して、地域賃貸マーケティングをどのように行い、地域賃貸マーケティングに基づいて賃貸経営計画、分散修繕計画がどう関係をしていて、どのように考えて計画るのかを見学びます。 そして最後にそれらを安定ビル資産経営としてどうまとめるのかを、学びます。
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2.1 地域賃貸マーケットマーケティング

まずエクセル表に向かう前に地域賃貸マーケティングを行います。地域賃貸マーケットは、いわゆる取引所がありません。だから、自ビルの地域賃貸マーケットは、自分で見つけなければいけません。地域賃貸マーケットの全体像は次の通りです。

2.11 地域賃貸マーケット(のセグメンティング)
自ビルにとっての地域賃貸マーケットは、ライバル物件が存在する範囲です。これは切り取り方で変わります。

一般的に不動産屋が名づける切り口には、例えば、渋谷、新宿、池袋といった単位の場合もあれば、東京六区(千代田区、港区、中央区、新宿区、渋谷区、文京区)と、城南 城北 城東 城西といった区分もあります。

中小ビルの場合、もっとローカルに考えます。例えば渋谷という一つの地域を取っても、恵比寿原宿を含む渋谷地域の場合もあれば、渋谷駅に限定の場合、更に道玄坂付近/宮益坂付近、駅前繁華街や少し駅から離れたブランド地域等それぞれ違います。

2.12 自物件の特徴
自物件の特徴とは、賃貸マーケットでの自物件の情報です。良し悪しはありません。全て自ビルの個性です。

この自物件の特徴には、固有の特徴(変えられない特徴)と変えられる特徴があります。

経年によってテナントが物件に求める条件は変わってきますが、変えられない特徴は生かすしかありません。変えられる特養を選ばれる状態に保ちます。

2.13 自物件を選ぶターゲットテナント
「自物件(の特徴)を選ぶターゲットテナント」を見つけて、理解します。

理由は、物件を選ぶのは、テナントだからです。テナントは、事業規模や事業タイプに適した「条件」をつけて物件を探します。例えば
  • 貸室の床面積は、部屋を使用する従業員数や事業規模と関係します
  • また立地条件やビルグレードも、事業のタイプと関係します
  • 来客型ビジネスは、駅に近い繁華街や主要通り沿いを好みます
  • 逆に裏通りの静かな環境を好む会社も少なくありません
  • 女性が主の会社に好まれやすいビルと、男性が主の会社に選ばれるビルとは、雰囲気が違います
といった具合です。

「ターゲットテナント」が分かると、その好みや選好性がわかるようになります。1棟のビルで、ターゲットテナントは1タイプだけではなく、多数ありますが、一番低予算で高効果が出せるターゲットテナントを選びます。

2.14 自物件のライバル物件
自物件のライバル物件とは、自物件を選ぶ可能性が高いターゲットテナントが、物件探しの時に他に比較検討をするビルです。同じ地域賃貸マーケット内にある、貸床面積や立地条件をはじめ物件特徴が似通っているビルです。

自ビル物件の募集賃料は、ライバル物件との比較で決まります。賃貸効果目的工事も、ライバル物件を知ると、より無駄なく低予算で高効果な戦略を立てられるようになります。

2.15 自物件のポジショニング
自物件のポジショニングとは、地域賃貸マーケット内の自物件の賃料ポジションです。通常は他ライバル物件との比較できまります。

この自物件のポジショニングは、ビル資産経営次第で上下します。

ベースとなる地域賃貸マーケットの相場は、社会経済の動向や、地域の興隆衰退で常に上下しています。ただリーマンショック後の低迷期を思い出せばわかりますが、個人では買えられません。それに対して自物件のポジショニングは、経年と共に下がりますが、賃貸効果目的工事投資等でアップする事ができます。

2.16 地域賃貸マーケットの動向を読む
現在の地域賃貸マーケットが見えてきたら、将来の動向を読む訓練も日ごろから行っておきましょう。 賃貸マーケットは、様々な社会経済事情の影響を強く受けます。
  • 社会経済環境による影響(例えばリーマンショック後や、特定産業の衰退)
  • 地域の今後の人口減少が激しい
  • 近隣で再開発等があり人の流れが変わる
  • 学校や企業等の移転が予測されている
  • ターゲットテナントの事業環境の変化
一朝一夕でわかるものではありませんが、予測しては結果を見る・・を繰り返していると、精度が向上してきます。ビル資産経営者として、自ビル経営に関係ある地域の動向には、アンテナを高くたてておかなければいけません。

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2.2 築古ビルの賃貸経営計画

賃貸経営計画作成の目的は、単に将来のベストな賃料収入を見つける事ではありません。分散修繕側の賃貸効果目的工事(支出)と合わせて、ベストな「利益」が得られる賃貸方針、賃料ポジションを見つける事です。 当然ながら地域賃貸マーケットが深く関わります。ここから2.6までは、築古ビルの賃貸経営計画作成についてです。

2.21 賃貸経営の全体像
最初に賃貸経営の全体像を確かめておきましょう。全体では
賃貸方針 (賃料収入を計画して物件を準備する)
賃貸リーシング (賃料収入を実現する)
賃貸管理 (賃料収入を守る)

の3つから成ります。賃貸経営というと、賃貸リーシングと賃貸管理ばかりが言われますが、築古ビルでは賃貸方針が賃料収入を作るのです。賃貸リーシングは、最後で触れます。ここでは賃貸方針を考えます。

2.22 賃貸方針はどう決めるのか?
築古ビルでは、その後の賃料収入もビル経営も、賃貸方針で決まります。肝心の賃貸方針は、次のように決まります。
将来の賃料は、その時の地域賃貸マーケット相場でも上下しますから正確な予測は出来ませんが、合理的な傾向の予測と、地域賃貸マーケット内賃貸ポジションの検討はできます。

2.23 賃貸経営の特徴
賃貸経営の賃料収入は、賃貸借契約で固定です。時価ではありません。つまり、地域賃貸マーケットが上下をしても、入居テナントに退去がない限り、影響を受けないのです。この安定性はビル経営の魅力です。ところが例えば長く入居していたテナントが退去したような時、突然築古ビルとしての時価の風にさらされます。 のように決まります。
ここで大きな判断に迫られる訳です。
時価の低い賃料を受け入れ、利益を減らすか。
賃貸効果目的工事投資を行い、多少は賃料アップを狙うか。 です。

2.24 問題は賃貸効果目的工事の検討
賃貸効果目的工事は、効果が長期にわたる資本的支出工事だから、他の必要工事も加えて長期で検討をしなければ、費用対効果がわかりません。それ以上に、頭が痛い事があります。

賃貸効果目的工事は、費用をかければ効果がある類ではありません。効果がある事を行えば、効果が出ます。そしてその効果を作るのは、地域賃貸マーケットのターゲットテナントです。ターゲットテナントに刺さらなければ、いくらお金をかけても賃料効果は出ません。

賃貸効果目的工事の検討は、物と数字と営業(地域賃貸マーケット)を全てを考える総力戦です。

2.25 30年賃貸経営計画の作成
30年賃貸経営計画は、30年安定ビル資産経営計画の中で、賃料収入見込み部分の計画です。 エクセルでは、いわゆる賃貸管理表(レントロール)と呼ばれる部屋別の賃料管理表が標準です。(簡易では、全体の賃料収入見込みx空室率を除外でも構いません。)ただし30年分散修繕計画と一体で考えます。単体では意味が無い事に要注意です。

通常は(地域賃貸マーケット変更を考えない場合は、です。・・考える場合は2.6でみます。)

■いつテナントの入れ替わりを想定するか
各ビルのテナント入居期間はある程度傾向があります。5年、10年、20年等様々です。それをテナントサイクルとします。

■テナント入れ替わりでいくらの賃料を想定するか?
次の2.3 賃料はどうやって決まるか及び2.4自ビルの将来見込み賃料は、どう決めるのか? で確かめます。

■いくらの予算でどのような賃貸目的工事を行うか?
その後の2.5いくらの予算でどのような賃貸目的工事を考えるのか? で確かめます。
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2.3 賃料はどうやって決まるのか?

ところで、自物件の賃料はどうやって決まるか?ご存じでしょうか?貸し部屋の賃料は、大きく分けて次の2つの要素で決まります。
1つは、地域賃貸マーケットの賃料相場です。
もう1つは、地域賃貸マーケット内での自ビルのポジションです。
そこにインフレや希少価値、賃貸戦略が加わる訳です。


2.31 地域賃貸マーケットの賃料相場
地域賃貸マーケットの賃料相場は、地域の賃貸相場+地域動向+景気動向が関わります。社会経済の動向を影響を強く受けるのが特徴です。 大都市都市部であれば、大手オフィス仲介業者が賃貸マーケットリサーチレポートをネットで後悔していますから、それを読めば大きな傾向がわかります。 より地域の賃貸マーケット相場動向については、他物件募集状況を見たり(現在はネットでサーチできます)プロの不動産屋と話をしてだいたいのところを掴みます。

この地域賃貸マーケットの賃料相場は、一棟の中小ビルでは変えられません。例えばリーマンショック後の賃貸低迷時には、どうやっても賃貸が難しかった通りです。相場が悪い場合には、やり過ごす事を考えるのが現実手段です(対応手法は後でご説明します。)

2.32 インフレ等
もう一つの社会的要因として、長期ではインフレも無視できません。ただ2.32地域賃貸マーケットの相場が下落している場合、影響は、

地域賃貸マーケットの賃料相場 > インフレ等

です。つまりインフレなのに賃料は下落するというケースも多々あり得ます。

2.33 地域賃貸マーケットでの自ビルの賃料ポジション
各地域賃貸マーケットでは、相場の賃料幅があります。その中で自ビルが実現できる賃料が、地域賃貸マーケット内の自ビルの賃料ポジションです。

この自ビルの賃料ポジションは、地域賃貸マーケット内の他のライバル物件との比較で決まります。そしてここはビル経営として改善できるところです。効果的な賃貸効果工事で、より上のライバル物件より自ビルの魅力を高める事で、より高い賃料で選ばれるのです。

2.34 希少価値
ただ例外的に、もし地域賃貸マーケットの中での希少価値が高い場合、マーケットに影響されずに賃料を決める事が出来る場合があります。例えば駅間ロータリー沿い、地域唯一の広面積、特徴的な建物外観等です。ただし希少価値は、求める需要があっての希少価値です。

2.35 他物件も含めて賃料は必ずしも合理的に決まっていない
自ビル賃料を検討する際、地域賃貸マーケット内の他のライバル物件賃料の研究は欠かせませんが、他のライバル物件の賃料が必ずしも合理的に決まっていない事にも、留意が必要です。

が賃貸マーケットはいわゆる「レモンマーケット」です。客観的な相場がないので、極端に高い賃料で選ばれる物件や、極端に安い賃料で選ばれる物件が、混在しています。

だから地域賃貸マーケット調査が、単純に答えを教えてくれない理解は重要です。事例の適切さについての検証を、自分で行うか、自分で出来なければ不動産屋等と話合う事です。
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2.4 自ビルの将来見込み賃料は、どう決めるのか?

現在の募集賃料は、地域賃貸マーケティングで評価できます。では将来の賃料見込みはどう考えればよいのでしょうか?

2.41 将来賃料は下落していくと考える
将来賃料予測は、地域賃貸マーケットの変動↑↓とインフラ↑と経年劣化による地域賃貸マーケット内ポジションの下落↓のコンビネーションです。ただ現在は地域賃貸マーケットが良いため、更なる上昇はそう期待できません。基本下落で考えましょう。地域によって10年後何%20年後何%と下落を想定します。 想定をしても、テナントサイクルの終わりまでは、原高賃料収入が続きます。

2.42 テナントサイクルの終わりでどうするか?
問題は、テナントサイクルの終わりで、
  • そのまま時価の想定賃料へ下げるか、
  • 何らか賃貸効果目的工事を行い賃料を守るか
の2択のいずれかを決めなければいけない事です。賃貸経営だけ考えると、とにかく賃料収入を下げない事が第一に思えますが、実際には部屋の数だけ必要となり、分散修繕では、他に建物設備機能や共用部外壁等、経年劣化部分のリニューアル工事や機能不足部分の追加工事も必要です。自ビルの賃料収入から確保できる30年総工事予算の中で、実際に各部屋にまわせる予算は限られています。だからその予算を、どのタイミングで使うと、効果的なのか、30年安定ビル資産経営計画の中での賃貸計画として、検討をするのです。

2.43 想定賃料アップとはどういう事か?
賃料効果を考える際に、実際に将来の想定賃料をアップするとはどういう事かの理解がなければ、やはり机上の空論です。 将来の想定賃料をアップするとは、地域賃貸マーケットの中の自ビルポジションを上げる事です。更にいえば経年劣化した将来ライバルになる物件ではなく、維持したい賃料ポジションでのライバル物件に勝てる物件になる事です。だから次の3つの検討が必要です。

2.44 賃貸効果目的工事を検討する
ここで賃貸効果目的工事の検討する場合、
費用「数字」..費用対効果がある予算及び長期利益
内容「物」..現状どのような状態でどこを改善するか
効果「営業」..ターゲットテナント目線で何をすれば効果が出るのか の3点セットで検討をします。この3点が考えられていなければ、机上の空論だから意味がありません。

2.45 どの賃料ポジションを維持するか?
結局問題は、自ビルは将来どの程度の賃料ポジションを維持すべきか?です。これが頭が痛い理由は、「数字」「物」「営業」いずれもリスクが高いからです。 どんなに考えて賃貸効果目的工事をしても、テナントに選ばれなければ想定の賃料収入は実現しません。だからこそ、
「低予算」「低リスク」「高効果」
を徹底して考えなければいけないのです。ここでの低リスクには、物と数字のリスクに加えて、テナントに選ばれる想定効果が実現しない営業のリスクも含まれます。 効果の実現性にどれだけ確信が持てるかこれを高めるには、相当の試行錯誤が必用です。30年安定ビル資産経営計画の作成を通して試行錯誤を繰り返す事で、相当の失敗リスクを回避できます。
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2.5 賃貸目的工事をの予算と考え方?

賃貸効果目的工事は、具体的な内容は必用なタイミングで考えます。早く考えすぎても無意味です。ただどこをどのような感じで改善するといったイメージは必要です。

2.51 賃貸効果目的工事の例
賃貸効果目的工事は、例えば次のような対象があります。

貸室やフロアで必要な工事は、数に注意します。

2.52 賃貸効果目的工事は何が(低予算で)効果があるのか?(物・営業)
賃貸効果目的工事の効果は、自ビルを選ぶ可能性が高いターゲットテナントが決めます。 ターゲットテナントは、自ビルの物件特徴を何らか評価しています。 望ましい賃貸効果目的工事は、そこに更にこれが・・・だったら・・要因を改善する事です。 下手に逆にお金をかけて自ビルの特徴を潰してしまえば、元も子もありません。

ここでは一般論は意味ありません。自ビルの特徴とその特徴を選ぶターゲットテナントの選好性に対する洞察を深める事です。ターゲットテナントの選好性は、ターゲットテナントの価値観に基づきます。中小ビルの場合、しばしば数百万円の豪華内装より、色や仕上り、些細な工夫やセンスといった、投下費用とは関係ない細部で評価される事が少なくありません。「神は細部に宿る」という通りです。古臭くても、逆に自由な雰囲気が評価される事もあります。例えば共用部に12月はクリスマスツリー、正月前には正月飾りといった季節を演出が、評価される例もあります。

ライバル物件や他の物件、時に海外の築古中小ビル例等の研究をお勧めします。

2.53 賃貸効果目的工事の予算上限(数字)
一方で30年賃貸経営計画で決めておきたいのが、賃貸効果目的工事予算の上限です。これは次の3つの数字の上限を検証して、うち一番低い数字賃貸効果目的工事予算の上限とします。

①アップサイド賃料の上限
賃貸効果目的工事で工事をしなかった場合と比べてアップできる賃料は、地域賃貸マーケットの中で上限があります。築古中小ビルがどんなに頑張っても、新築Aクラスビルの賃料水準は無理です。上限は、地域賃貸マーケティングで調べておきます。

② 分散修繕工事の予算上限
また賃貸効果目的工事予算には、分散修繕工事予算としても、上限があります。賃料アップを見込んで、多額投資をして、見込み賃料収入を得られなかった場合、その後の他の工事予算もなくなり、負のサイクル一直線です。 分散修繕として、30年総工事予算から、建物使用に必用な必須工事予算に先に配分をした上で、賃貸効果目的工事予算配分を決めておきましょう。賃貸効果目的工事は、部屋毎に必要な工事は部屋の数、トイレ・給湯室はフロアの数、必要になる事も、留意が必要です。

③ 費用回収期間
ビル資産経営の観点からもう一つ重要なのが、費用回収期間です。 例えばテナントが10年程度で入れ替わるビルで、入替りの都度必要な工事で費用回収期間が10年を超しては、実質費用回収が出来ません。早期退去のリスクも考慮すれば、2-3年程度が理想です。ただし効果が続く場合はもちろん長く見る事もできます。

計算方法は次の通りです。

2.54 賃貸効果目的工事案の比較検討(費用対効果の比較)
いわゆる費用対効果は、言葉は有名ですが、これは単体で使ってもあまり意味がません。どうせ将来の想定だからです。大切なのは中身です。費用対効果は、賃貸効果目的工事案の数字面での比較検討用に使います。A案、B案、C案・・・に対して、「実現性」と「費用対効果」を比較検討して、「実現性が高く」かつ「費用対効果も良い」案を選ぶのです。

■ 費用対効果の計算
費用対効果の計算は次の通りです。

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2.6 地域の将来見込みが厳しい場合

ここでは、地域の地域賃貸マーケットが消滅しそう・・という場合を考えます。人口激減縮小時代には、街が衰退する・・学校や大きな会社・スーパー・工場が移転する・・将来の地域賃貸マーケット見込みが厳しい地域が大多数です。AがダメでもBが大丈夫という簡単な話はまずありませんが、他の用途等を検討する際のヒントを簡単に述べておきます。

2.61 貸会議室・シェアオフィス・貸倉庫等
こうした空間ビジネスを入れる事をオペレーション導入といいます。(空間を)オペレーション(する)ビジネスが成功するかどうかは、ビジネス運営者(オペレーター)の手腕で決まります。立地や物件は関係ありません。そして長く生き残るのはわずかです。 これに手を出して良いのは、自分の広告宣伝集客力と運営力の自信があるか、さもなければ能力が高いオペレーターと組む場合だけです。

2.62 用途変更
オフィスがダメだから居住用に変更する。ホテルに変更する。といったソリューションもあります。用途変更は最終手段です。相応の投資を要し、しかも一方通行です。 オフィスから住居、ホテルへといった場合、マーケットが変わるだけではなく、建物にかかる建築基準法の適用も変わります。住居やホテルはオフィスとは比べ物にならない程水使用量が増え、給排水管の問題も増加するといった具合です。

2.63 それも見当たらない場合は、地域での話合いを
検討しても、思わしい案が見つからない・・・場合が実際にはほとんどです。ではどうすれば良いのか?

安易に結論を急がない事です。

想定したほど悪くならない事もあります。そして問題は近隣地域全体の問題です。地域として、地域の街おこし/街の維持を話し合う事を御推奨します。資本を投下する街作りではなく、地域賃貸マーケティング手法を街全体に適用して、古い建物が生きる街の特徴を、一棟一棟ではなく街全体で作るのです。

ビルオでは、築古ビルの街作りの助言も行っています。
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2.7 収益ビル資産の分散修繕

ここから、分散修繕計画の話になります。 分散修繕計画作成のプロセスは、30年分散修繕計画の作成と同じです。ただし、財源が賃貸経営の結果です。だからサイクルを意識します。

ここでは、収益ビルに絞った留意点をご説明します。

2.71 収益ビルの30年分散修繕計画作成で考える事
30年安定ビル資産経営計画の中での分散修繕計画の作成で考えるべき事は、ほぼ賃貸経営計画で考えています。
分散修繕の工事財源:将来に渡る賃料収入
将来のビル使用者:自ビルのターゲットテナント
将来の自ビルの在り方:3.32 何が(低予算で)効果があるのか?で考えた事をを含めて将来の予定賃料ポジションでターゲットテナントに選ばれる自ビル

2.72 収益ビルの分散修繕対象工事と優先順位
収益ビルでは、分散修繕の対象工事には、建物設備機能等の経年劣化部分のリニューアル等工事に加えて、賃貸効果目的工事が加わります。ただ両者は綺麗に分かれる訳ではなく、1つの工事で両方の工事内容が含まれる事です。ビルの使用だけを考えるなら最低限のスペックで良くても、テナントに想定賃料を支払ってもらうには、もう少し機能性能グレードが必要だったりするのです。

優先順位は、それぞれ別々に考えます。

2.73 30年総工事予算
収益ビルの30年総工事予算は、 見込み賃料収入の5%から10%を推奨します。 そこから、検討を通して±していきましょう。

2.74 30年分散修繕計画作成での留意点
30年安定ビル資産経営としての30年分散修繕計画特有の留意点を述べておきます。

1賃貸効果目的工事の数
賃貸効果目的工事は、各部屋に必用な工事は各部屋数、各フロアに必用な工事は各フロア数必要です。これを全部まとめて計上しても構いませんが、テナントサイクルに合わせて必要数だけを計上する事もできます。(これが予算削減ポイントにもなります。)



2テナント退去時でなければ難しい工事
テナント退去時でなければ工事がやりにくい工事があります。例えば給排水管(横菅)の更新や、窓/サッシの更新、消防設備の更新がよくある例です。こうした工事は、時期をテナントサイクルに合わせて計画します。

3基準は将来も維持したい賃料水準でターゲットテナントに選ばれるために必用か?
ここでの分散修繕は、「低予算」「低リスク」「高効果」です。重要なのが「高効果」です。何の工事が必要か、どの程度の機能性能グレードが必要か、全て「将来も維持したい賃料水準でターゲットテナントに選ばれる」ために必用か?の観点で決まります。

何をすれば効果があるのか?効果を得るためにどの程度が必要か?は、1日2日ではわからず、経験とともに考えられるようになります。だから30年安定ビル資産経営計画は、何度も何度も見直す事で、より「低予算」「低リスク」「高効果」を高確度で実現できるようになります。

2.75 リスクの分散
30年分散修繕の仕上げである、リスクの分散は、30年ビル資産経営計画作成では、次の安定ビル資産経営の輪で確かめ、必要に応じて調整します。細かい調整のノウハウは、30年安定ビル資産経営計画で、学ぶ事ができます。
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2.8 安定ビル資産経営

30年安定ビル資産経営計画作成の仕上げが、安定ビル資産経営の確認です。安定こそが、低リスクです。安定こそが、人口激減の難しい時代にビル資産の経営と利益を守ります。

2.81 安定ビル資産経営とは
安定ビル資産経営とは、「数字」「物」「賃貸」面が全て「安定」している状態です。(ちなみに安定は一定とは違います。多少変動や下落等傾向があっても、長期傾向が見えているのが、安定状態です。) より具体的に安定ビル資産経営とは、     
・事故を起こさず 「物」
・賃貸を継続   「賃貸」
・負債を作らず  「数字:BS」
・利益を維持する 「数字:PL」

4つが満たされた状態です

2.83 安定ビル資産経営のストーリール
この安定ビル資産経営は、安定ビル資産経営のサイクルで維持できます。一度安定ビル資産経営のサイクルが出来ると、サイクルのモーメンタムで楽に安定ビル資産経営を維持できるようになり、安定ビル資産経営は何ら難しくなくなります。何かあればその時だけ、安定ビル資産経営サイクルが回り続けるように、問題対応をすればよいのです。

2.83 安定ビル資産経営のストーリー
この安定ビル資産経営サイクルは、安定ビル資産経営のストーリーで確かめられます。次の3つのストーリーに破綻が無い事が、安定ビル資産経営サイクルの要件なのです。

■「数字」のストーリー
30年安定ビル資産経営計画表は、数字「利益」のストーリーです。 分散修繕の数字のストーリーである、予算が準備できてから工事、はもちろんですが、賃貸経営のストーリーによる賃料収入のストーリーともかみ合い、なるべく安定利益が維持できなければいけません。



■「物」のストーリー
「物」のストーリーは建物の状態です。築古ビルとして、建物設備や内装等の経年劣化があっても、全体として見込み賃料で選ばれるビルであり続けなければいけません。悪化場所のリニューアル工事等を行い、建物全体では一定水準を保つのが、「物」のストーリーです。

■「賃貸」のストーリー
「賃貸」のストーリーは、賃貸経営のストーリーです。 地域賃貸マーケットの中で、空室が出たら時価で/賃貸効果目的工事を行い、目指す想定賃料で次テナントが入る。このストーリーが、地域賃貸マーケットの動向や他のライバル物件との比較で、合っていなければいけません。



■ 全体として安定ビル資産経営サイクルが見える
そして全体として、安定ビル資産経営サイクルが見える事も重要です。実際のビル資産経営は、何をすればこの結果が出るといった単純なものではありませんが、30年安定ビル資産経営の大きな図として、見える事を確かめます。

ストーリーの検証及び安定ビル資産経営計画の輪の確認及び微妙な修正は、30年安定ビル資産経営計画で、学ぶ事ができます。

2.84 沢山のストーリーを検討する
30年ビル資産経営計画も、沢山のストーリーを検討する事で、それが経験値として実際の場面で生きます。だから1つ作成して終わりではなく、エクセルのシートやファイルをコピーして、沢山のストーリーを検討しましょう。


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築30年以上中小ビル資産所有者・経営者・後継者の方の築古ビル維持と経営の問題、お困りごと、今後の見通し、将来の不安、賃貸、管理、工事、耐震、税対策、共有問題、承継etc 具体問題がまとまっていなくても構いません。現在ビル資産維持のための、問題対応と今後の見通しについて、 誰かと話をしてみたいとお考えの事をお話しましょう。秘密厳守。ご要望がありましたら、守秘義務誓約書を差し入れます。

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Ⅲ 賃貸リーシングの取り組み方

30年安定ビル資産経営計画はの実践として、賃貸リーシングの取り組み方をここでご紹介します。もちろん宅地宅建取引業者資格を取ればよいという話ではありません。
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3.1 賃貸リーシングの流れ

賃貸リーシングは、退去予告が出たところから始まります。普通賃貸借でもオフィス店舗は通常6ヶ月前予告です。その時点から6ヶ月間が、次のリーシングの準備期間です。

3.11 退去予告が出たらまず地域賃貸マーケティング
現在テナントから退去予告が出たら、まず地域賃貸マーケティングを行います。 現在の地域の賃貸状況がどうか、知り合いの不動産屋に聞いたり、またはネットでライバル物件の募集賃料を調べて、自物件の次の募集賃料を推測します。

3.12 何か工事が必要か?
ここで検討に上がるのが、何か工事が必要か?です。 30年安定ビル資産経営計画を参考にしますが、地域賃貸マーケット相場が良いから必要ない場合もあれば、逆に相場が悪すぎて効果がないから必要なくなる場合もあります。予定をしていなかったけれど、低予算高効果が見込めるから行う場合もあります。30年安定ビル資産経営計画で将来のビル資産経営への影響をシミュレーションをして決めます。

3.13 工事を行う場合
ここで工事を行うと決めた場合は、工事可能になったら遅滞なく工事を行い、早く次の賃貸準備ができるように、段取りよく進める必要があります。速やかに相談ができるためには、前々から業者を探して選定しておきたいものです。

ここで重ねて工事の手間を省くために、原状回復工事を費用で精算する場合もあります。こうした交渉は、通常は元受不動産屋が間に入って調整をします。

3.14 現テナントの退去条件もしっかり確認する
ところで、現在テナントから退去予告が出たら、現在テナントとの賃貸借契約書も読み込み、退去時条件を確認します。たいてい
  • 原状回復の内容
  • 原状回復工事業者の指定もしくは承認
  • 残置物の可否及び条件
  • 敷金返還の条件
が書いてあります。他に特約事項がある場合もあります。基本は契約書記載に則って、進めます。
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3.2 次の募集賃料の設定

次の募集賃料の設定は、「前と同じ」ではなく、地域賃貸マーケティングで決めます。次の募集賃料の設定は地域賃貸マーケティングで決まります。

ただ地域賃貸マーケットが上向きなら強気(高め)、地域賃貸マーケットが下向きなら弱気(低め)に設定する。着地賃料に対して、わずかに高めに募集賃料を設定して、賃料交渉可幅を不動産屋に伝えておくといった、プラスαテクニックもあります。ご興味があれば、ビルオに教えて欲しいとご要請下さい。

3.21 普通借か定借か
一時、建替えの時にテナント退去が面倒だから「定借」が流行りましたが、建替えを考えない安定ビル資産経営では、普通借で十分です。通常は普通借と定借では、定借の方が賃料が下がります。 流行の波がある店舗等は、定借の方がコントロールしやすいでしょう。ただ日本の定借は解約不可条項をいれず、再契約交渉も可のため、あまり定借のメリットがありません。

3.22 募集条件戦略
募集賃料の設定以外に、賃貸リーシングを有利に進めるための募集条件の戦略もあります。

募集条件戦略:敷金、礼金更新料を減らす。フリーレントや段階賃料を導入する。通常BC工事をA工事として行う。等初期条件を抑えて借りやすくする
ただ効果があるように行わなければ効果がありません。元受け不動産屋に実力が必用です。こうした戦略は、有望テナント候補が出てきた場合の賃料交渉札としても使います。

3.3 賃貸リーシングの強化

空室が出ると、1日も早く次のテナントを決めたいのは、誰もが同じです。そこでただ不動産屋に毎日まだかまだかと催促をしても、ウザがられるだけです。必要なのは、チームとして一緒に賃貸リーシング強化に取り組む姿勢です。

3.31 賃貸リーシングの全体像
賃貸リーシングの全体像は次の通りです。

3.32 賃貸リーシングの強化
賃貸リーシングはやってみなければ分からないところもあります。元受け不動産屋とPDCAサイクルを回しながら、各ポイントそれぞれに、改善箇所を見つけて、改善をしていきます。
  • ターゲットテナントの認識は正しいか?
  • ターゲットテナントの物件探し手法を分析できているか?
  • ターゲットテナントに強い不動産屋/媒体を分析できているか?
  • ターゲットテナントに刺さるように、物件紹介が出来ているか?
  • 元受け不動産屋/賃貸仲介業者の営業状況はどうか?

時に全部を見直しても効果が無いケースがあります。つまり地域賃貸マーケティングが上手くできていなかった/風向きが変わった場合です。この場合には、
募集賃料・募集条件を見直す
賃貸効果目的工事を加える
を検討します。ただ利益に関係するだけに最終手段です。

3.33 ネット対策は必須
現在であれば欠かせないのがネット対策でしょう。インターネットで自物件をエゴサーチしてみると、多くの物件紹介サイトが自物件を紹介している事がわかります。 そこで、
  • 募集条件が正しいか?
  • 写真や紹介文が魅力的か?
を確認します。間違いがあったり今一つであれば、遠慮なく連絡をしてアップデートをしてもらいます。

3.34 不動産屋との付き合いスタイル
貸主と不動産屋との付き合い方は、慣習が大きく、誰かに教えてもらう事はないでしょう。大きくわけて次のスタイルが可能です。

貸し主であるビル資産所有者が、誰に賃貸リーシングを依頼するか?そこに決まりはありません。一般/専任/専属専任は、不動産業者側のルールです。売買の時は問題になりますが、賃貸ではさほど重要視されません。貸す側としては一般で十分です。現在のようにインターネットで物件情報が出回っていると、この不動産屋でなければリーチできない特別なテナント/物件というのは、ほとんどないからです。

とはいえ貸し主側として、実務上、Aの1の不動産屋/賃貸管理会社/仲介業者とだけ付き合う/b>のが一番楽です。だからそれでテナントが決まる間は、問題になりません。ところが不動産屋/賃貸管理会社/仲介業者は、属人的なビジネスで、経年と共に、辞めてしまわれたり、意欲が下がったり、得意領域が違ってくる事は普通にあります。そうして自物件の空室が、決まりにくくなったり、相談できなくなると、不動産屋との付き合いを見直す必要が出てくる訳です。

そこでBのように多くに依頼をすると「当たり」に出会える可能性が高まりまりリスクがヘッジできます。けれど先に述べたようにAの方が断然に楽です。もし条件変更をした場合、全部に周知をするのは大変です。またもう一つ、様々な事情から、不満は多いけれど、現在の元受けの不動産屋/賃貸管理会社/仲介業者は変えられない・・場合もあります。そうした場合、Cののように貸主が自分でターゲットテナントとリーチできそうな不動産屋や賃貸仲介業者を回って、自物件の売り込みをしても全く構いません。慣れている人なら売り込みますし、手ぶらではお願いしにくいと感じる人は、広告宣伝費1ヶ月分を特別に付けます。

ちなみに広告宣伝費1ヶ月増額をどの不動産屋/賃貸管理会社/仲介業者に出すかは、自分で決めましょう。これは「あなたと特別親しくしたい」という証です。仲介業者等から、広告宣伝費1ヶ月増額してくれたら頑張ると言われて出すものではありません。

3.4 賃貸借契約書の作成

入居テナントが決まると、賃貸借契約書を作成します。不動産屋のひな型を使う事が多いと思います。自ビルのフォーマットがあればそれを使います。

3.41 賃貸借契約書はトラブル防止マニュアル
賃貸借契約書作成でまず確かめるのは、賃料その他賃貸条件ですが、賃貸借契約書はトラブル防止マニュアルです。通常条文で次の事を約束します。

例えば次のような事を、賃貸借契約書で取り決めます。
  • 賃料改定条件
  • 敷金に償却があるか
  • 賃料滞納の場合(通常2か月滞納で退去条件に)
  • 諸経費の負担
  • 工事の場合のルール(事前に書面届け出等)
  • その他届け出義務(社名、代表者、定款変更等)
  • 看板・広告等設置ルール
  • 立ち入り検査のルール
  • 退去を求める場合
  • 禁止行為
  • 損害賠償と免責
  • 契約消滅の場合
  • 退去時の原状回復と明け渡し
  • 造作買取請求権
  • テナントの表明保証(反社と関係ありません等)
  • 管轄裁判所 (紛争になった場合)


  • また個別の特別な約束は、特約で特記します。
    更に、店舗のようにテナントが内装工事をする場合は、内装だけではなく、電気、給排水、消防設備等を含めて 工事時のABC工事区分表とともに、原状回復工事でどの状態で返還されるかも、取り決めておきます。

    こうした契約内容は、覚える必要はなく、必用な場面で賃貸借契約書を思い出して確かめるだけで十分です。ただ 貸主としては、条文の約束事項が全室同じ方が、当然に楽です。だから遠慮なく書き換えを要求します。ただ契約は相手もありきだから、相手の要望がある場合は、落としどころを見つける事になります。

    3.42 建物使用規則も
    中小ビルでも、建物使用規則を書面で作成して、同時に交付しておく事をお勧めします。
    • 例えばゴミ出しのルール
    • 施錠時間がある場合は施錠時間について
    • 引っ越しや大きな物品搬入時のエレベータ使用ルール
    • 工事を行う場合のルール
    • 他テナントと紛争があった場合
    • 火災や災害時について
    等々を記載しておきます。

    3.43 減賃交渉を受けた場合のルール
    入居テナントが減賃要請をしてくる場合があります。 ここで地域賃貸マーケット状況が良いと強気に、悪いと退去されないように・・と話をする事になりますが、経営状態が悪いと言う場合、それが改善されるのかどうか、改善計画を聞きましょう。 そして賃料を減額する場合は、減額期限を設けて、覚書を締結します。期限が到来しても難しいという場合は、改めて話合いをして、期限を延長します。入居テナントからの要請に応じて期限無しで恒久的に賃料減額をしていては、経営者失格です。

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