ビルオ代表江本が、日本の中小ビル100年超維持に取り組むようになったきっかけが、資産家の家出身のドイツ人の友人が放ったこの言葉でした。
時は2000年頃、まだ20代のドイツ人友達が、親が所有する古い建物の外壁修繕と塗装工事を任されて、工事業者との交渉に苦戦をしている苦労話を友人達に日々メールでぶちまけていました。そこで日本人の感覚で「なぜ建替えないのか? 管理会社に任せたらどうか?どうせならリフォームしてバリューアップしたらどうか?」と尋ねたところ、返ってきたのがこの言葉です。相当な嫌味ですが、当時なぜこのように言われるか全く分かりませんでした。ただ他の国の友人達も「その通り」と思っているようです。そこから、彼らの古い建物工事取り組みやその価値観を知りたいと思い、注意深く理解に努めるようになりました。
代表 江本は1990年代半ば、英国ロンドン大学King’s College 物理学科で学び、イギリス人のみならず国際色豊かな友人関係に恵まれました。少数派の理系女子は結束が固く、卒業後は江本も日本に帰国し、友人達も世界中にバラバラに散らばりましたが、インターネット時代のおかげで、最初はインターネットメールで繋がりつづけ、やがてSNSの発達で距離感が縮まり、またお互いに行き来をしたり、オンラインビデオで話をしたりを続けて、現在もお互いに気楽に話ができる関係を維持しています。
そうした繋がりの中で気が付いたのが、大学卒業後数年も経つと、気が付いたら古いビルやマンション修繕の話が友人達の会話の多くを占めるようになった事でした。古いフラットやその後家を購入したり、また家の資産として古いビルを所有し、当然のこととして様々な工事に取り組んでいるのです。内装工事もあれば、ボイラー交換や家のインシュレーションやり直し、排水ポンプの交換が外壁塗装等本格工事も多くありますが、誰もそこで管理会社やリフォーム業者に任せたりしません。古い建物はダメだから建替えなども言いません。必要な工事を行うにも、必要以上の工事で無駄遣いをしないよう、工事業者と時間をかけて話し合い交渉をします。そして冒頭の言葉となった訳です。
冒頭の言葉について、引っかかるものの、価値観が全く違うと、聞き方の糸口さえわかりません。相手も何を聞かれているのか理解できないと、意図に沿った答えが返ってこないのです。ましてや個人資産に関する話題は、気軽にできません。だから話に入れるまででも、10年以上要しました。
一方日本でも、2000年過ぎから資産流動化に関する法律が整備され、欧米流の不動産評価法及び維持経営ノウハウが導入されてJ-REITが始まりました。そこで江本は英欧米の考え方と日本の考え方の両方についてより理解を深めるべく、日本で、不動産ファンドやJ-REIT等で不動産アセットマネージャとしてキャリアを重ねました。日本全国の築古を含めた中小ビルマンション200棟以上の経営改善を通して、日本の築古中小ビルにおいても、英欧型のビル観に基づき築40年築50年超ビルでも、低予算で必要な工事を行い、十分に収益を維持できる事、建物資産維持には経済的合理性がある事を確かめてきました。
同時に、30年近く毎年継続的に、イギリス・フランス・ドイツ他多くの国の多くの街で友人宅に滞在をし、友人や街の人たちと建物と街の話をすることで、より深い話ができるようになりました。そうして彼らの古い建物を安易に建替えずに多少苦労しながらも低予算で必要工事を行い、長く使用続ける合理性が徐々に理解できてきました。
■建物は建物設備機能の集合体
多くの人と話をして、一般の街の中流階級では、誰もリノベーションや大規模改修工事を行ったことがある人がいません。多くの人は、自分は建設業者とは一生縁がないと考えています。
そして皆、こつこつと、排水ポンプ、セントラルヒーティング、ボイラー、サッシ、インシュレーション、電気設備、外壁修繕、屋根補修といった一つ一つの建物設備の状態を見て、それぞれ該当する専門業者に相談をしています。
建物は、建物設備機能の集合体。だから人間が、具合が悪くなれば、胃、肺、心臓、血液、脳等の専門医に治療を受けるように、建物も問題個所が出てきたら、該当の専門業者に相談をするのです。
■建物は資産
建物は資産です。土地はそれだけでは使用利益を産みません。建物は土地の価値を実現する器です。だから例えば英欧では、売家や売マンションの広告で、土地の広さは強調されません。室内の広さが強調されます。だから家やマンションという資産購入に際して、土地ではなく実際の物件を見るのです。そして建物を大切に手入れして、使用利益のある資産として次世代に受け継ぐのです。
■資産は引き継ぎ受け継ぐもの
建物は、引き継ぎ受け継ぐ資産です。ある家族の中で、幼少時は祖母が管理し、やがて父が管理し、自分が管理を引き継ぎ、やがて子供に受け継ぐ。子供も同じストーリーが続きます。
建物資産を引き継いだ世代は、自分は新築や購入の高い支払いをする事なしに、その使用利益を得られます。だから時々問題個所の修繕や延命工事費用の支出があるだけで、ゆとりある生活ができるのです。そしてそのゆとりが、世代を超えて引き継がれ、蓄積するのです。
■街は建物
特にヨーロッパでは、1つの街の中に、地域によって様々な築年数の建物が混在しています。歩いているだけで、街の中心たる旧市街から、どのように街が発展したかが、地域の建物築年数から見て取れます。建物は街です。建物は街の歴史を語ります。そして街は常に発展するわけではありません。発展には波があります。そうして過去の発展時期に建てられた建物の集合で、街の個性が出来上がります。その様々な時代の重なりが、街の深みと趣を作ります。(大規模再開発高層ビルによる人口の街では作れない本物の街の魅力です。)
■建物価値は街から与えられる
特にヨーロッパでは、家一軒一軒、建物1棟1棟が、街に調和した建物外観をキープします。それは、単に共同体圧力があるからというのではなく、建物1棟1棟が、街に調和した建物外観をキープして、街の趣と魅力に貢献する事で、街は趣と魅力ある街として人を惹きつけ、それにより自分の資産たる自分の建物価値が高まるからです。土地と建物価値は、どれだけニーズがあるかで決まります。それは一棟一棟で成し遂げられるものではなく、街として人を惹きつける事で、実現する事をわかっているのです。
■維持こそが環境との共存
また安易に建物を取り壊してスクラップにしない事は、大量産業廃棄物を排出しない事です。例えば1000年以上存続しているヨーロッパの古い街で、石造やレンガ、モルタル、鉄筋コンクリートを使用した家やビルを、50年毎に建替えをしていたら、既に街の建物の20倍の産業廃棄物を排出しています。周辺地域は産業廃棄物の山になっています。そうではなく、一度資源を使って建てた建物は、木造であれ木梁であれ、だから建物が歪む事があっても、責任を持って手入れを続けて可能な限り大切に長く使用する。それが自然環境と共存して1000年でも2000年でも街と社会が存続する秘訣なのです。
■維持こそが難しい時代のサバイバル
結局、街に長い歴史の中で成長の時代とそうではない時代があるように、どの国もどの町も成長の時代とそうではない時代の波があります。成長の時代には建物を建てる。けれども時に個人ではどうしようもない不況や難しい時代がある。そうした難しい時代でも、すでにある建物を資産として大切に長く使用し、その使用利益を享受する事で、乗り越える事ができる。そうして家族の歴史は紡がれ、街の歴史も深まり、社会は存続していく。その厳しさがわかっているから、英国でもヨーロッパでも、古い建物資産所有者は、無駄遣いはしません。そうして資産を守ってきた実績があるから、工事に際堂々とケチです。そこに江本が建替えやバリューアップと気軽に言ったため、冒頭の嫌味となったのです。
日本も他人事の時代ではなくなった
「建替え、バリューアップ」と口にして、「お金持ち日本人は言う事が違う」友人に嫌味を言われた頃は、まだ日本は人口も増加基調の経済優等生国でした。しかしその後人口は減少基調に転じ、あと60年もすれば半減します。経済も世界GDPランキング10位内から転落し、建物需要も激減します。インフレに金利上昇、建築費の高騰もあります。需要が激増した昭和平成時代と同じ調子で、現在の建物が築40年築50年だからといって気軽に建替えられる時代ではありません。それどころか、「特別な経済成功の国」ではなくなった現在、私達日本人も、ヨーロッパや世界の他国と同じく、個人は建物資産を守り、またそれにより街と社会の存続に取り組まなければいけない時代に突入しています。いつまでも昭和の延長ばかりでは、取り残される人や街や社会が増えるだけです。
そこでまず日本の中小ビルが、リノベーションや大規模改修工事といった高額ソリューションに頼らずに、低予算で建物設備機能のリニューアル工事に取り組む方法を開発すべく、ビルオを設立いたしました。そして、様々なサービス拡充を通して、すべての建物を資産として長寿化が実現する事で、縮小時代に誰も取り残さない持続する日本の社会を実現を目指します。
会社名 | 株式会社ビルオ |
代表取締役 | 江本 真弓 |
所在地 | 東京都渋谷区渋谷2−2−17 3F |
連絡 | 電話:03-4363-2924 メール:info@builo.jp |
.