中小ビル経営7つのスキル4

中小ビル経営7つのスキル その4

さて築40年以上のビル経営の必須スキル4のご紹介です。

収益資産価値の維持が重要テーマになる築40年以上ビルにとって、収益資産価値の維持には何をすべきかを教えてくれるのが、このスキルです。

なぜJ―REITや不動産ファンドは成績が良いのか?

ところでしばしば不動産ファンドやJ―REITは物件が良いから、お金があって広告宣伝費をばらまけるから、テナントが決まりやすくて羨ましいと言った言葉を中小ビル経営者から聞くことがあります。実際にはいずれも正しくありません。
不動産ファンドやJ―REITがテナントを入れて利益を確保できる理由は、賃貸マーケットに合った適正賃料を決めることができるからです。物件の適正賃料の決め方は、日本でもスキルが確立されています。理論は、不動産鑑定士が拠り所にする不動産鑑定評価基準に定められています。具体的な考え方は、不動産鑑定士の不動産鑑定評価書を読めば書かれています。より経営・投資視点であれば、各J―REITの目論見書もしくは有価証券報告書を読めば、詳しく書かれています。興味がある方は読んでみてください。もちろん理論は知らなくともスキルがあれば十分に適切な募集賃料を見つける事ができます。 産価値の本質」理解があります。ビルを維持する所有者はもちろん、都市計画を作る役人、建築士から街の住民まで、多少の不便我慢があっても調和した街並みであることが、街の価値と個々ビルの価値を維持する事を知っているからなのです。別の言い方をすれば、このビル経営スキル3が当然にあるからです。

地域の賃貸マーケットを知らないと

そもそも地域の賃貸マーケットを知らないと、そんなに困るのでしょうか?
空室の募集賃料を決める。そんな難しい話ではないですよね。需要が十分にあれば。不動産屋に相談をすれば、近くのあのビルは賃料いくらで決まっていた、こちらのビルはいくらの募集賃料でそろそろ決まりそうだ等々を考えて、テナントが決まりそうな募集賃料を提案してくれるでしょう。地域の賃貸マーケット相場賃料は、そのように決まります。 それでは困るのでしょうか? 目先の空室問題にはテナントが入るかもしれません。けれども長期的には、収益資産価値の維持ができずに困る可能性があります。
というのは、自分で理解できていなければ近隣な事例やアドバイスが信用できるとどうやってわかるのでしょうか?賃料の設定は定価のない相対取引です。近所のビルでいくらの賃料で決まった!という話は、知人が高く/安く借りてくれたかもしれません。テナントが交渉上手で特別に安くさせることもあれば、ビル経営者がやり手で賃料は高めのまま内装工事をプレゼントしているかもしれません。その不動産屋はすぐにテナントを連れてきてくれるけれど、実は低めに募集賃料を設定して決まりやすくしているだけかもしれません。 さらに難しいのが、空室に内覧テナントも現れないような時です。数年前のリーマンショック後の賃貸不況はみなさん覚えていらっしゃると思いますが、しばらく待てばテナントが入るのか、不動産屋を変えれば状況は変わるのか、もっと根本的な対策が必要なのか、どうやって判断の材料を見つければ良いのでしょう? 地域の賃貸マーケットを知らなくとも、テナントは入るでしょう。けれどもテナントが安い賃料で入居し、長期的に賃料賃料収入が少ないために築40年築50年すぎて建物設備修繕費が足りないという困った事態になるリスクを抱えます。これではビル経営スキル2が出来ていません。

地域賃貸マーケットと自物件ポジショニング

地域の賃貸マーケットとは

そもそも地域の賃貸マーケットとは何か?

一般的なマーケットという言葉の定義は、売り手と買い手が出会って商品やサービスの取引が行われる場所、領域です。賃貸のマーケットは、貸し手と借り手が出会って賃貸借が成立する場、領域です。これを貸し手の側から見ると、貸室に入居している、あるいは入居する見込みのあるすべての個人および組織体の集合といえます。 地域の賃貸マーケットという場合、だからその地域は、自ビルを選ぶ可能性がある部屋探しのテナントが、他に候補物件を検討する可能性があるエリアを言います。地域の区分けは任意です。例えば銀座、京橋と分けたり、銀座で大まかに含めたり、中央区で区切る場合もあります。
地域には、大きなビルもあれば小さなビルもあります。好立地もあれば裏道に面したビルもあります。新しいビルもあれば築古ビルもあります。地域の賃貸マーケットは、地域内の全ての物件を対象に、貸室に入居している、あるいは入居する見込みのあるすべての個人および組織体の集合を含みます。
地域の賃貸マーケットを表す数字が、賃料です。(坪単価)補足が空室率です。地域の特徴を説明するために、地域の性質および地域で部屋を探す部屋探しテナントの特徴といった情報があります。地域には様々なビルがあるため、地域の賃貸マーケットの賃料には随分と幅があります。この幅はまた、序列です。

なぜ地域の賃貸マーケット理解が必要か?

地域の賃貸マーケットの中での自物件の適正賃料を見つけるのはポジショニングです。だから地域賃貸マーケットはそれほど理解する必要がないかというと、そんなことはなく、地域の賃貸マーケットの理解は必要です。なぜならば、ポジショニングが地域の賃貸マーケットの中で行われる以上、地域の賃貸マーケットの状況を理解していなければ、序列は理解できても、正しい適正賃料判断ができないからです。
地域の賃貸マーケット理解が重要な理由は、それが地域の需要を理解することだからです。地域の賃貸マーケットの状況を表す数字は、賃料と空室率ですが、この数字を記憶しても仕方がありません。今ではいつでもネットで検索できます。そうではなく地域の賃料相場と空室率の動向を時間軸で比較したり、他の地域と比較をする事で、地域の需要の動きを見る事ができます。この需要の動きが大切なのです。
賃料は、需要で決まります。需要とは求められることです。地域の賃貸マーケットでその時に入居者を募集している物件の数より物件を探しているテナントの数が多ければ、賃料は上昇します。逆に物件の数より物件を探しているテナントの数が少なければ、賃料は下がります。例えば需要が高い時には、少し高めの募集賃料でも決まる可能性は高いでしょう。けれども需要が低い時には、序列の中で同等物件と同じ募集賃料を設定しても、空室が続く可能性が高いでしょう。

一般に地域の賃貸マーケットで需要を増加させる要因の例は、
地域で再開発や、学校、大企業、工場等誘致による人口増加
逆に減少させる要因の例は、
近隣地域の再開発による人の流れの変化、学校、大企業、工場等誘致による人口減少
またさらに国や世界の社会経済状況の変化が影響する場合もあります。リーマンショック後の賃貸の急激な落ち込みは、記憶に新しいことでしょう。

物件のポジショニングとは

地域の賃貸マーケットの賃料幅の中で、自物件の適正な賃料のポジションを見つけることを、ポジショニングといいます。ポジションニングが重要な理由は、自ビルの賃料を、所有者が好きに決められるものではないからです。所有者がこのくらいなら適正に違いないと決めたところでもし、部屋を探しているテナントが、地域の賃貸マーケットの他の物件と比較して賃料が割高だと思えば、選んでもらえません。
大きな区分けでは、物件グレードによりAクラス、Bクラス、Cクラスという言葉が使われますが、一般に中小ビルが入るBクラス、Cクラスは、それ自体賃料幅が広く、その中でポジショニングがやはり必要です。地域の賃貸マーケットの序列は、築年数で並ぶような単純なものではなく、そもそも地域の賃貸マーケットは、その時にマーケットに出ている募集中物件と、その時に物件を探しているテナントの要求で、常に様子が変わり、それにより序列も変わります。築年数は一つの目安ですが、築年数を重ねると管理の状況や建物グレードによるビル個別の差が広がります。また最近は、リフォームやリノベーション、その他賃貸維持対策を行い、序列を上げるビルや維持するビルも増えています。つまり序列の入れ替えが絶えずあるのです。

退去届けが出たら?

地域の賃貸マーケットの状況と自物件のポジショニングを、ゼロから調査するのは難度の高い仕事ですが、だから中小ビルは退去届を受け取ったら、スキルを使って、要領よく次の適正賃料を決めたいのです。

【地域の賃貸マーケットの状況】

先に通常の満室の時でも、地域の賃貸マーケットに影響を与えそうな地域の経済環境変化や社会経済環境の変化の動向にはアンテナを立てておくことをお勧めします。長期的な変化を推測できるようになるからです。
地域の賃貸マーケットについて知りたいのは、現在地域の賃貸マーケットが酷く落ち込んでいたり、悪くなったりしていないか、それとも逆に好調なのかです。好調であれあれば強気で募集賃料を決められます。酷く落ち込んでいる場合は、対策をよく考える必要があります。地域の賃貸マーケット状況を確認する手っ取り早い方法は、地域の目立つビルや知っているビルで募集中物件や最近成約した物件があれば、その募集賃料が前回リーシング時と比べてどう変わっているかを比較しましょう。またテナントが決まるまでの空室期間についても、同様に比較をしましょう。違いがあればその理由、背景を不動産屋と話し合いましょう。

【自物件のポジショニング】

既に築年数が経過しているビルのポジショニングは実はそれほど難しくありません。地域の賃貸マーケットの中で、自物件のライバル物件を見つけましょう。数は5棟以上が望ましいです。ライバル物件は、自物件を選ぶ可能性がある部屋探しのテナントが他に候補として検討をする可能性が高い物件です。一般的には部屋の面積、設備、築年数、建物グレード等が似通った物件です。物件を選ぶ可能性がある部屋探しのテナントとは、もちろんビル経営スキル3で確認をしたテナント像です。ライバル物件の数は、5棟以上は抑えておきたいものです。 ライバル物件が十分に見つかったら、ライバル物件と自物件を比較してみましょう。ライバル物件より自物件が勝っていると思えれば、ライバル物件より少し高め、もしくは同じ募集賃料をつけられます。ライバル物件に比べて自物件が弱いと思えれば、ライバル物件より少し低い募集賃料をつけるか、リフォームや設備改修等で弱点を改善して、競争力をつけてから改めて比較します。どのように弱点を改善すると効果があるのかは、スキル3の通りです。最低でも5棟のライバル物件と比較をする事で、特別な例に引きずられるリスクを避けます。

最後に強気、弱気の匙加減を加えるかどうかが重要です。これは、地域の賃貸マーケットの状況とご自身の経営としての感触次第です。最初から弱気すぎる考えは、あまりお勧めしません。一般に募集賃料を後から下げることはできますが、一度入居申込書が入ると、後から賃料を上げることは難しいからです。

ビル経営スキル4の確認

自物件の適正賃料が決められる
繰り返しになりますが、自ビルの賃料の適正水準を経営者が判断できることは、築古ビルの収益資産価値の維持に絶対に欠かせないスキルです。何しろビルの収益資産価値を作るのは、賃料収入だからです。高い募集賃料で空室期間が長く続く。入居が決まるならと適正より安い賃料で募集を続けた挙句、建物設備修繕費が捻出できないのは、安い賃料でテナントを入れていたからだったという事態を避けるためにこのスキルが必要なのです。。